アフトクラトルの国旗は2つある

アフトクラトルの国旗は2つある

はじめに

※注意事項
●考察を円滑に進めるため、単行本・本誌掲載のページを記事内で引用しています。

ワールドトリガーの前身となる読み切り作品の詳細なネタバレを含みます。

●今後の展開予想を具体的に行っています。

●この記事の内容は全て一個人の解釈です。



第1章 アフトクラトルの国旗は2つある

ブログを閲覧いただきありがとうございます。

突然ですが皆さんは、アフトクラトルの国旗には2種類のデザインがある事をご存知でしょうか?

かく言う自分もその事を最近知り、当該のページを開いてみると確かに国旗のデザインは2種類ありました。

その比較画像が以下になります。

【上:ジャンプSQ.2020年11月号(集英社葦原大介)下:ワールドトリガー23巻P129(集英社葦原大介)】

上が本誌、下が単行本から引用したコマですが、この二つの画像を拡大してよーく観察すると、そのデザインの細部が異なっている事が分かると思います。

アフトクラトルの国旗のデザインが単行本収録時に少し変わっていた…というただそれだけの話と思うかもしれませんが、新旧二つのデザインが揃う事で初めて分かる情報もあるのです。

デザインが変わってもなお変わらない要素、見比べることで相互に補完される情報、そしてそれらとの関連性を無視できない本編中の数々の描写、はたまたワールドトリガーという作品の垣根を超えた伏線…等々数えきれないほどの考察の余地がそこにはありました。


今回の記事では、それらの考察から導かれる今後の展開予想や、アフトクラトルのトリガー技術・国土・社会・軍事の情報、そして角・通信・マント・伝承・国宝・四大領主・野球少年・技術顧問・家・文化・政略結婚・序列・歴史・王家・後頭部…etc……について、色々な視点から好き放題に語っていきますので、よろしければお付き合いください。

国旗に描かれた四体の生物

まずは本誌掲載時の国旗と単行本掲載時の国旗にそれぞれ描かれた四体の生物は一体何なのか?について考えて行きたい。

本誌・単行本ともにアフトクラトルの国旗はコマの中にとても小さく描かれており、デザインの細かい部分が印刷でつぶれてしまっているため、そのまま普通に見ても何の生物が描かれているか特定する事ができない。

そこでワールドトリガーが掲載されているいくつかの媒体を見比べ、最も解像度が高く鮮明な画像を抽出する事から始めてみようと思う。

その様に検討した結果、本誌掲載時の国旗は紙版ジャンプSQ掲載時の物が、単行本収録時の国旗は英語版単行本電子書籍の解像度が最も高いという結論になった。

それでもやはり細かい部分は輪郭線がぼやけてしまい、ただの印刷染みなのかデザインの一部なのか判別がつかない有様だったが、自分なりにそれっぽく補完しながら解釈した物が以下の画像だ。


左:旧デザイン(本誌掲載時)右:新デザイン(単行本収録時)

結論を先に見せたが、その検討過程は非常に難航した。 高解像度の画像ですら非常に小さく曖昧で、描かれている生物がギリギリ判別できるか否かのレベルだった。

だが新旧共に『右上』に関しては、比較的はっきりと『鹿』だと認識する事ができた。

新旧デザインの『右上』の生物は鹿

次に、『右下』の生物を新旧で見比べると『ヤギ?orヒツジ?』の様に、こちらも比較的はっきりと認識する事ができた。 そしてヤギもヒツジも『ヤギ亜科』に属する近縁種、つまり実質同じような生物が同じ位置の紋章のモチーフになっていると言えるのだ。

新旧デザインの『右下』の生物はヤギ亜科

『鹿』と『ヤギ』の例を見るに、同じ位置の紋章には新旧デザイン共に同一の生物が用いられていると想像できる。

もしそうならば、生物が判別できなかった他のデザインも予想できるかもしれない。 欠けた情報を補完するためなら先入観は時に役立つこともある。

旧デザイン左上の生物は『蛇』に見えたため、新デザインの左上の生物についても「蛇かもしれない」という先入観をもって見ると、以下の特徴が見えるような気がする。

・鎌首をもたげたコブラのフードと、フード部が内側に丸まった時の凹みの様な影
・腹部に並んだ鱗の様な模様
・中央の蛇を取り囲むもう一匹の蛇?に、クサリヘビ科特有の網目っぽい模様
新旧デザインの『左上』は『蛇』

よって左上の紋章に関しても、新旧デザインにおいて同一のモチーフ『蛇』が描かれている事になる。

左下の生物は新デザインでははっきりと『竜』をモチーフにしていることが分かる。そのため旧デザインの左下もきっと『竜』を表しているのだろう。

新デザインの『左下』は『竜』

つまり国旗に描かれた四つの紋章は、単行本収録時にデザインこそ変化したものの、そのモチーフには(ほぼ)変更が無かったと言えるのではないだろうか?

この推測は本誌と単行本でデザインが異なる部分を見比べる事で初めて補完された情報と言えるだろう。


1章のポイント
  • アフトクラトルの国旗のデザインを為す四体の生物はそれぞれ『鹿』『ヤギ』『蛇』『竜』

アフトクラトルの国旗のモチーフに描かれた四体の生物にあたりを付けることができた。

そしてその中でもとりわけ『鹿』『ヤギ』『竜』は、ワールドトリガーという作品において複数の重要な示唆を与えている可能性がある。

キャラの何気ない発言や、本誌掲載時の扉絵、はたまた作品の垣根を超えた関連性など枚挙にいとまがない。 この章ではそれらの可能性について触れて行こうと思う。


巻頭カラーの『鹿』

まず一つめが、巻頭カラーイラストとアフトクラトルの関連性についてだ。 ワールドトリガーの連載当初から中期において、巻頭カラーの見開きイラストには、 『遊真、修、千佳、迅が四人並ぶ象徴的な構図』が描かれる事が度々ある。 そしてその中には『鹿』をモチーフに取り入れた巻頭カラーも存在するのだ
ワールドトリガー17巻P48-49(集英社葦原大介)】
話数 タイトル 背景の要素 暗示?
第1話 三雲 修 夜の暗黒とキューブ 惑星国家の在り方
第51話 木虎 藍 ④ 鳩と警戒区域 アレクトールの生物弾
第104話 玉狛支部 魚と地下鉄入口 アレクトールの生物弾
第145話 玉狛第2 ⑬ 鹿と改札口 アフトクラトルの国旗
第170話 玉狛第2 ㉓ 蝶と駅構内 ランビリス(蝶の盾)

元々巻頭カラーのイラストについては、徐々に電車(≒遠征艇の暗示?)に近づいている事から、遠征という目標に一歩ずつ前進する主人公たちの様子を表しているのでは?と方々で言われていた。また、登場する動物(鳩、魚、蝶)はアフトクラトルのトリガーを連想させるため、アフトクラトルへの遠征を強く暗示しているのかもしれない。

鹿の巻頭カラーが登場した時は「何の暗示だ?」とは思ったが、アフトの国旗に鹿が居る事を踏まえると、鹿のイラストもアフト遠征を暗示したイラストだったと言えるだろう。

1章のポイント
  • 『鹿』はアフトクラトルへの遠征を暗示した生物である可能性。


ベルティストン家と『竜』

そしてここからは国旗に描かれた紋章と、『領主:ハイレイン=ベルティストン』が治める領土『ベルティストン領』の関連性について話を進めて行きたい。

ここで言いたいのが『竜』の紋章はベルティストン家の家紋なのではないか?という事だ。

わくわく動物野郎 ハイレイン
出撃早々に鳩(?)を飛ばしまくった生粋のエンターテイナー。使える生物弾の種類は50を超える。お気に入りはカエルとゾウガメだが、敵に当たった例がない。彼の角はヒュースの角より横に張り出していないので、仰向けは無理だが横向きには寝ることが可能。なぜヒュースの角もそうしてやらなかった。デザインのイメージは「竜」
引用元: 【ワールドトリガー9巻 カバー裏】

単にハイレインの角のモチーフが『竜』だから…という事でもあるのだが、実は他にも理由がある。

『竜』のデザインが国旗の『左下』にある事がとても重要な意味を持つ可能性があるのだ。

この事を説明するためには、アフトクラトルにおけるベルティストン領の配置について語らなければならない。


エリン家の配置とベルティストン領の配置

ワールドトリガー14巻P82・87(集英社葦原大介)】

この2つの画像は、14巻においてエネドラがアフトクラトルの国家を構成する『家』について説明した時の描写だが、よく見ると両方のコマで同じ図が用いられている。

四大領主の縄張りを示す領境
この二つの画像を補完する事で、図で示された4つの領土の内、下側の領土がベルティストン領を表していたことが分かるのだ。 そしてこの図の中央に他の領土とは独立して存在する象徴的な建物があるが、この建物はアフトクラトルが紹介されるコマに登場するあのお馴染みの建物だ。
ワールドトリガー5巻P156(集英社葦原大介)】

この建物はアフトクラトルを紹介するコマで度々見かけるが、毎度同じアングルから描かれており、もはや『お馴染みのアングル』と言えるだろう。

その『お馴染みのアングル』を、領土の概略図に当てはめると、アフトクラトルの四つの領土を隔てる境界線が、アングルの視点から見て丁度水平垂直に交わる様になる。

そして『お馴染みのアングル』から見るとベルティストン領は『左下』に配置される事になる。

アフト中央の建物を見る時の『お馴染みのアングル』

アフトクラトルの国旗を思い返すと、四つの紋章がチェスの盤の様に格子状に並んでいる。 そしてその国旗のラインと領境を重ねると『竜』の配置はベルティストン領にピタリと一致している事になる。

つまりアフトクラトルの国旗はアフトクラトルの領土の在り方、四大領主の領土の配置そのものを表している可能性すらあるのだ。

この事を図に纏めると以下の様になる。

お馴染みのアングルから見たアフトクラトルの領土と国旗の位置の関係
この偶然を見過ごすことは出来ない。やはり国旗に描かれた『竜』とはベルティストン領を表しているのだろう。
1章のポイント

  • アフトクラトルの国旗の『竜』はベルティストン領を表している
  • 国旗の紋章と各領主の領土の位置関係が対応している可能性

『鹿のツノ』『ヤギのツノ』を持つ者

国旗に描かれた『竜』、そして『竜』をモチーフにした領主ハイレイン。

この対応関係を他の紋章に当てはめると、今後登場するであろう三人の領主のデザインにも、それぞれ『鹿』『ヤギ』『蛇』が組み込まれている事にならないだろうか?

とりわけ『鹿の角』と『ヤギの角』に関しては、キャラデザインに組み込まれている事を示唆するセリフが既に登場しているのだ。
レプリカ 『一言で言えば 頭に角があるのがアフトクラトルだ』
鬼怒田 『ツノ……?』『鹿やらヤギやらのツノか?』

引用元: 【ワールドトリガー7巻 P29】

このセリフは大規模侵攻対策会議の回想シーンにおける鬼怒田さんの発言だ。

このとき鬼怒田さんは『ツノ』と聞いて真っ先に鹿とヤギを連想していたが、つまり『鹿』と『ヤギ』のトリガーホーンを持つ近界民を想像していた事になる。

作中キャラの何気ない発言に、元々構想している設定を盛り込む事は漫画的表現としてよくある事だが、鬼怒田さんのこの発言は『鹿の角を持つキャラクター』『ヤギの角を持つキャラクター』がそれぞれ登場する前振りだったとも解釈できるだろう。

そしてその前振りは鬼怒田さんの発言だけにとどまらない。 『鹿の角』と『ヤギの角』を持つキャラは既に存在しているのだ。

その人物はワールドトリガーの前身となる読み切り『ROOM303』『トリガーキーパー』に登場する人物の事だ。


国旗の紋章に対応したキャラクター

①白屋敷係の人『ROOM303』

まず1人目が『白屋敷係の人』だ。 本名が明かされていないため仮称だが、彼女は読み切り作品『ROOM303』に登場し、ラストシーンで悪魔の様な角が生えた姿が描かれ、底知れない不気味さを放っていた。


②シュバイン『トリガーキーパー』

2人目が『シュバイン』、読切作品『トリガーキーパー』に登場する敵陣営のキャラクターだ。 後に掲載された『(連載版)賢い犬リリエンタール』にも同名キャラが登場している。

シュバインは両作品において、公正で冷静な判断力を持つ大人として描かれており、最終的には主人公と和解するキャラクターである点が共通している。


③桐島伊吹『トリガーキーパー』

そして最後に3人目が『トリガーキーパー』に登場する主人公桐島 伊吹きりしま いぶきだ。

『トリガーキーパー』は週刊少年ジャンプ2009年8・9号の2号に渡って掲載された読切作品だが、まだ単行本等に再録されていないため、現在読む方法は国立国会図書館東京本館の蔵書を閲覧するしかない。

なお週刊少年ジャンプは、ネットの電子複写サービスに対応しておらず、関西館への輸送も対象外のため、東京本館に足を運ぶしかない。遠かった。


この読み切りには宇宙人がもたらしたテクノロジー『トリガー』、トリガーオンの掛け声と共に頭部に現れる『ツノ』など、ワールドトリガーに引き継がれた要素が多く存在する。

伊吹の見た目や言動は遊真を彷彿させるが、その名前は旧ボーダーで命を落とした少年脇坂 イブキわきさか いぶきに引き継がれている。


読み切り版における伊吹は物語の終盤でトリガーの能力に覚醒し、頭にシカの様な角が生えた。

つまり前身読切において『シカの角』とはイブキの象徴なのだ。

だがワールドトリガー本編において、シカの角はアフト国旗のデザイン(右上:鹿)として描かれている。

なぜ前身読切の主人公のモチーフが、アフトクラトル領主(鹿家)のモチーフに引き継がれているのか…?


ここで話が少し飛んでしまうが、旧ボーダーの写真を見てもらいたい。
ワールドトリガー19巻P48(集英社葦原大介)】

この写真が単行本19巻に収録された時点で読者に開示されていた情報は以下の三つだ。

●旧ボーダーが10名死亡した事
●そのうち何人かが黒トリガーになった事
●写真中央のサングラスの人物が最上さんである事

これらの情報が開示された事で一部の読者は、最上さん以外にあと数人は居るであろう『黒トリガーになった人物』が誰なのかを予想したことだろう。

後にQ&Aにて天羽の黒トリガーは梅崎鉄弥が作ったものだと明かされた。

天羽くんの黒トリガーは誰から受け継いだものですか?
天羽が適合した黒トリガーは、旧ボーダーのメンバー・梅崎 鉄弥が遺したものです。天羽はふつうに玄界人(三門市民)です。
引用元: 【ワールドトリガー26巻 質問コーナー㉓】

そして旧ボーダーの数名には、単行本10巻に掲載された没ネームのキャラである甲斐、相馬、眞都(真都)の名前が一部引き継がれている。本編プロトタイプの没ネームに登場したキャラを、主人公の先輩集団にスライドさせる事はとても綺麗な対応関係だと感じる。

だからこそ唯一読切作品から名前が引き継がれた脇坂イブキの異質さが一層際立つ。

『何人かが黒トリガーになった』

最上さん、梅崎さん、あともう一人いるとすればその役割は脇坂イブキなのでは無いだろうか?



そして話をアフトクラトル鹿家領主の件に戻す。


前身読切では主人公でトリガー使いだった脇坂イブキ、そして元主人公の象徴である鹿の角を国旗に掲げるアフトクラトルの領主。

この二つの要素を結びつけるとどうなるか?

五年前にアリステラを襲撃したのは鹿家領主の関係者であり、鹿家領主は旧ボーダーから鹵獲した『イブキが作った黒トリガー』を現在所有しているのでは?という予想が生まれる。

もし鹿家領主がイブキの黒トリガーに適合しているなら、その能力は読切版の伊吹の能力に倣い『物体を任意に操作可能な”矢印”を身に纏う能力』になるのだろうか。

1章のポイント
  • 『鹿家』関係者と旧ボーダーの間に因縁がある可能性

生物学的観点から考える四大領主の『角』

『鹿の角やヤギの角がキャラ造詣として組み込まれる可能性がある』、このことを念頭に置いた時、ベルティストン家のキャラクターのある共通点に気が付いた。

それはモチーフとなった生物がいずれも空想上の生物であるという事だ。

彼らの角のモチーフは、ハイレインが『竜』、ランバネインが『赤鬼』、ミラが『悪魔』、エネドラが『般若』である事がそれぞれカバー裏で語られている。

ヒュースのみモチーフが明かされていないが、いずれも空想上の生物の角がモチーフになっているのだ。

角を持つ生物は現実世界にいくらでも居るが、なぜハイレイン達のモチーフとして採用されなかったのだろうか? その疑問を追求するべく、そもそも角を持つ生物とは何なのかを考えて行きたい。


現実世界におけるツノとは?

(一部参考:角 : 進化の造形 : 国立科学博物館・コラボミュージアムin奥州牛の博物館第23回企画展 (奥州市牛の博物館): 2014|書誌詳細|国立国会図書館サーチ

今回は哺乳類の角に限定して話を進めて行くため、しばらく『蛇』の話は置いておくものとする。

生物学的観点における角とは、『奇蹄目(ウマ目)』『偶蹄目(ウシ目)』に属する哺乳類に見られる角質・骨質突起の事を指しており、それに似た円錐状の突起もまとめて角と呼ばれる事もある。

哺乳類に属する生物の内、角を持つグループ(科)は『①サイ科』『②プロングホーン科』『③キリン科』『④シカ科』『⑤ウシ科』の5種類に分かれ、それぞれのグループ毎に異なる特徴の角を有している。

これらの5つの科に属する動物の多くは頭の左右に一対2本の角を持っており、サイだけが顔の中心ラインに角を持っている。

角を持つ哺乳類の5つの科
角の持つ5科の生物と国旗のモチーフ予想

『鹿家』の紋章は旧デザインが『ニホンジカ』、新デザインが『トナカイ』をモチーフにしている様に見えるが、どちらもシカ科に属する動物である事に変わりない。

一方『ヤギ家』の紋章はヤギ亜科(∈ウシ科)の範疇から出ておらず、ヤギ家も同様に紋章のモチーフは同じ科の範疇に収まっていると言える。

つまり、アフトの国旗のデザインは単行本収録にあたりデザインに一部変更があったが、生物が属する科には変更が無いと言えるのだ。

そしてベルティストン家のモチーフは、これら5つのグループ(科)のいずれにも属していないが、『空想上の生物』という6つ目のグループの中でキャラデザが統一されていると言う事もできるだろう。

ここから考えられる仮説だが、四大領主の家毎に角のデザインのモチーフとなる生物のグループ(科)は統一されているのではないだろうか?
ハイレインの「卵の冠」は、人の形の弾も作れますか?
「卵生」で増えない哺乳類系の弾はなさそうな気がしますが、プラヌラ幼生→ポリプ分裂で増えるミズクラゲっぽいやつとかも使ってるので、もしかしたら作れるのかもしれません。
引用元: 【ワールドトリガー20巻 質問コーナー⑭】

葦原先生はこのQ&Aを見る限り生物分野にも明るいと思われる。そのため、角をモチーフとするキャラを登場させる際、所属する派閥ごとにキャラ造詣に用いる生物のグループ(科)を統一する…みたいな事は十分に考えられるだろう。

つまり今後アフトクラトルで角を持つキャラクターが登場する場合、そのモチーフが鹿家の人間は『シカ科』、ヤギ家の人間は『ウシ科』、ベルティストン家は『空想上の生物』で統一されるのではないだろうか?

角のグループと各領主のデザインの対応関係

『サイ科』の角を持つキャラクター

角を持つ動物の5つの科の内、『サイ科』『プロングホーン科』『キリン科』の生物は、四大領主の紋章のモチーフとして現状確認されていない。

メタ的な個人の意見となるが、シカ科とウシ科のモチーフの豊富さに比べると、『プロングホーン科』と『キリン科』の生物は種が非常に少なくモチーフとして心許ないため、この2科はキャラ造詣に適していないと判断されてもおかしくないと思う。

そして『サイ科』だが、実はサイ科の角を持つキャラクターは本編に既に登場している可能性がある。


14巻でエネドラがアフトクラトルの神の寿命について言及した時に登場する人物だ。
ワールドトリガー14巻P84(集英社葦原大介)】

このイメージに登場する人物の角は、これまでに登場したツノとは明確に異なり、額に一本だけ角が生えている。 この様に顔の中央ラインに角が生えるのは『サイ科』に固有の特徴だ。

この事について先ほど提唱した仮説『家毎にデザインモチーフとなる生物の科が統一されている』に基づいて考えると、このイメージ図に登場する人物は四大領主のいずれの派閥にも属さない人物として描かれている事になる。

その様な派閥は1つしか存在しない。アフトクラトルの4つの領土の中央に存在する『お馴染みの建物』だ。

現政権の人物が住む領土

すなわちこのイメージ図の人物は『アフト中央の建物に住む一族』であり、四大領主とは異なる派閥である事を特に意識して描かれている可能性があるのだ。

1章のポイント

  • 同じ領主に所属するキャラデザインは、『ウシ科』の様なグループ毎で統一されている可能性あり。
  • 『サイ科』=アフトクラトルの現在の実権を握る一族に相当する可能性

アフト四大領主の分裂

『アフトクラトルの現政権の人間は四大領主と異なる派閥である』。 この考えを基にすると、アフトクラトルが四つの家に分裂したタイミングも分かるかもしれない。

ここで考えたいことが、現政権の人間は四大領主の出身なのか否かについてだ。

仮に四大領主の家の出身だとすると、アフトの内政において自身のルーツである家に対して贔屓している事も考えられる。

逆に言えば四大領主に対して完全に中立な立場を取っているならば、その人物は四大領主とは異なるルーツを持つ可能性が高い。

角のモチーフが四大領主とは明確に異なっている事を考えると、後者の様に思える。

つまり現政権の一族が神を献上する少し前までは、アフトクラトルには4つより多くの派閥が存在したことになるのかもしれない。

現神の献上をきっかけにした領土の分裂イメージ
エネドラッド 『トリガーと同化して何百年も 寿命が切れるまで星の面倒を見て生きるのさ』
引用元: 【ワールドトリガー12巻 P155】

その場合、アフトクラトルが四つの領土に分かれたのは、サイ?の角を持つ一族の先祖が神を献上した『数百年前』のタイミングである事になるだろう。

この事は今後エネドラッドの口からアフトの内政に関する情報が出てくれば分かる事なのだろうか?
1章のポイント

  • アフトクラトルが四つの家に分かれたのは、現在の神が献上されたタイミングの可能性
  • エネドラが語った角付きの人物は、現神を献上した一族の末裔の可能性

もう一人の『角』を持つ人物

ここで少し話が戻るが、読切に登場するキャラクターの事について少し触れたい。

実は葦原先生の読切作品にはもう一人ツノを持つキャラクターが存在する。 その人物とは『トリガーキーパー』に登場するヒロイン『プエラ』だ。

プエラがトリガーの才能を覚醒させた時、プエラの頭からはS字形状の角が生えてきた。 この角の形状に該当する動物が居ないか調べたところ、ブルーバック亜科やインパラ亜科に属するいくつかの動物に似た特徴がある事が分かった。

そしてそれらの動物はいずれも『ウシ科』に属している。

プエラのモチーフ予想


そのため、もしプエラが今後本編に登場するのであれば、ウシ科の角をモチーフにする『ヤギ家』所属の人物として描かれるのではないだろうか?

葦原作品の読み切りキャラはほぼ全員本編時空に転生済みのため、未登場のプエラも今後登場してもおかしくないと言えるだろう。

葦原先生の読切作品キャラの転生先一覧
1章のポイント
  • 読切ヒロイン『プエラ』が『ヤギ家』のキャラとして本編に登場する可能性

レプリカが持つアフトの情報源

ここまでアフトクラトルの角の描写を見返す中で、一つの違和感をずっと感じていた。

それはレプリカが持つ角の情報が不自然なまでに正確だったことだ。

レプリカ 『この技術はアフトクラトルの軍事機密であり 他の国に流出するとは考えにくい
引用元:【ワールドトリガー7巻 P30】

レプリカ曰く、角の技術は軍事機密であり他国に流出しにくいとの事だが、それならば何故旅人である有吾達がその詳細を知る事ができたのだろうか。

考えられる可能性は二つ。

①有吾さんはアフトに寄ったついでに基地をハッキングして情報を抜いた。
レプリカ 『基地はほとんどトリオンで造られているようだ 近界と同じ仕組みなら簡単に開けられる
引用元:【ワールドトリガー9巻 P91】

レプリカにとって近界のシステムは簡易であり、その気になれば機密情報を抜き出すことも簡単なのだろう。

だが無法なやり方はその惑星に滞在する有吾たちにとってリスクにもなる。 レプリカが追加した惑星配置図を数えてみると、有吾は十数年を旅する間に50~70ほどの惑星国家を渡り歩いている事になり、単純計算で一つの国に数か月以上は滞在している事になる。

長期間同じ国に滞在するなら、現地に協力者を作りながら旅をしていたと考えた方が自然だろう。つまりもう一つ考えられる可能性が、

②有吾さんはアフトの事情通と太いコネクションを持っていた。

そして②に関して、その人物との関連を示唆する描写が存在する。

ワールドトリガー7巻P31(集英社葦原大介)】

このコマはアフトクラトル対策会議の回想で、角の研究に関する詳細な情報を話しているところだ。

このコマが単なるイメージに留まらないのであれば、この角はレプリカが実際に出会った黒トリガー適合者の物であることになる。つまり有吾とレプリカは黒トリガーとの適合性を高める研究に立ち会っていた事になるだろう。

この事から、有吾たちはアフトクラトル滞在時に『トリガーホーンの研究者』、すなわち軍事機密にアクセス可能な地位を持つ協力者とコネクションを作っていたのではないだろうか。

この角は湾曲した一対2本の角であり、この特徴はインパラによく合致している様に思える。 つまり『ウシ科』の角であり、この角の持ち主は『ヤギ家』の人間なのかもしれない。

したがって、有吾さんがアフトクラトルにコネクションを持っているならば、それは『ヤギ家』の人間である可能性が高いと言えるだろう。

もしかすると遊真がアフトに遠征した時には、当時の縁で協力をこぎつける展開もあるかもしれない。

1章のポイント
  • 有吾達はアフトクラトルの『ヤギ家』領土に滞在していた可能性

1章まとめ

四大領主のまとめ
1章で行った考察を纏めると、遠征時のアフトクラトル四大領主とボーダーの構図が少し見えてきた気がする。

●旧ボーダーと浅からぬ因縁を持つ可能性がある『鹿家』
●読切キャラのプエラが今後味方として登場する可能性(ヤギ家?)
●有吾さんの情報源となる謎の人物が存在する可能性(ヤギ家?)

アフト遠征時には『ヤギ家』が現地味方枠となり、『鹿家』と対立する構図が生まれるのでは無いだろうか?

ここまで角を軸にして進めて来たため全く触れてこなかったが、『蛇家』とは物語の中でどのような役割を持っているのだろうか?

調べたところ蛇を含む爬虫類は、ごく一部の種を除いて角に相当する器官を持っていない。

これはつまり『蛇家』の領主は単に角を持っていないキャラ、もしくは角の技術を拒絶した保守的な立場として描かれるのではないだろうか。


しばしば創作において、科学技術は既存の文化的価値観や生命倫理に反する物として描かれる事がある。 創作でそのような対立構造が描かれる場合、科学技術を推し進めた派閥は倫理を無視した代償を支払わなければならない事がある。

角が脳の深くまで根を張り、余命僅かだったエネドラがその最たる例なのだろう。

だがミラはエネドラのデータがあれば、今後より簡単に黒トリガーの適合者が見つかると言っていた。つまりエネドラの死後も生命倫理を軽視する研究を推し進めると言っているのだ。

科学技術と倫理の対立構造が精算されないまま物語が進むのであれば、角を持つ人間には更なる悲劇が降りかかるのかもしれない。


1章で使用した動物の写真の引用元
引用 種族名 引用元ページ
wiki*1 ビックホーン ビッグホーン - Wikipedia
wiki*2 ヌビアアイベックス ヌビアアイベックス - Wikipedia
wiki*3 コーブ コーブ - Wikipedia
wiki*4 プークー プークー - Wikipedia



第2章 トリガーホーンの機能とデザイン

1章では国旗に描かれた生物の『角』に注目して考察を進めて来たが、この章では『角』そのもの、アフトクラトルの『トリガー ホーン に注目したい。

アフトクラトルの戦力、戦術、はたまたトリオン器官という生命機構にまで影響を及ぼす技術が『角』だ。

ツノ 「トリガーホーン」と呼ばれる頭部の突起物は、トリガーを加工したトリオン受容体。角を埋め込まれた者は、成長と共にトリオン量や性質を変化させ、移植されたトリガーを自在に操作できるようになるのだ。
引用元:【BBF-P234】

この章では角が持つ特徴の内、その機能形状デザインの意図に注目し、考察を進めて行こうと思う。


『角』が収集する生体情報とは

まず初めに角の機能の一つである、『生体情報の収集』について考えて行きたい。
鬼怒田 『やつらの角には 移植された者の生体情報を収集する機能があるようでな』
『しかもこいつの角は脳ミソと一部同化しとった 人格や記憶まで保存されとったのはそのせいかもしれん』

引用元:【ワールドトリガー12巻 P150】

角が脳にまで根を張っていた場合、角が収集する情報に『人格や記憶』が加わる、という考察を鬼怒田さんは行っている。つまり角が平常時に主に集める生体情報はそれら以外の物という事だろう。

まず考えられる候補としては『黒トリガーとの適合性』だ。
ミラ 『「泥の王」はもっと相応しい使い手が引き継ぐわ あなたの角から得たデータで適合者はすぐ見つかる
引用元:【ワールドトリガー9巻 P36】

このミラの発言から分かる様に、角が付いている当人の適合性だけでなく、調整時に得られた情報を収集し、積極的に後進に活かそうとする姿勢が見て取れる。研究に活かすならあらゆる観察対象が全てバックアップされているのだろう。

その他の候補としては『トリオンの量や質』の情報だろうか?

風間 『角があると具体的に何が変わる? トリオンの量か?』
レプリカ 量に加えて質も変化する 「角つき」が使うトリガーは 「武器」と言うよりは「身体の一部」と言った方がいい』
引用元:【ワールドトリガー7巻 P31】

『量』については分かりやすい、『トリオン』のパラメーターの事を指しているのだろう。 では『質』とは何だろうか?

前後の文脈から察するに、『トリオンの質』とは『トリガーを身体の一部の様に扱って戦う』事に関連する尺度の様に思える。

剣の達人やプロアスリートの道具の扱いが巧みな様子を『まるで体の一部の様に操る』と表現する時がある。 つまり『トリオンの質』とはトリガーを自由自在に操作する時に関係する尺度なのかもしれない。

例えるなら、ギトギトのトリオンよりもサラサラのトリオンの方がスムーズに操作しやすい…みたいな事があるのかもしれない(絶対違う)。トリオンの『操作性』特定のトリガーとの『親和性』に近い概念だろうか?。

また、トリオンの『量』には似た概念として『拡張性』という尺度も存在する様だ。

マグネティック若造 ヒュース
最新のトリガーを操り、若くして遠征部隊に入っている相当の実力者なのに、迅とマッチングしたせいで下っ端っぽく印象操作された不遇のエリート。
「角つき」で実戦配備された中では一番新しい世代で、安定性・トリオン拡張性も過去最高の逸材だが、うつ伏せにしか寝られないという重すぎる業を背負っている。生きろ。
引用元: 【ワールドトリガー8巻 カバー裏】

おそらく『拡張性』とは、角無しで成長した場合と比較してどれだけトリオン器官を成長させることができたかを表す尺度だろう。つまりトリオンの総量ではなく成長幅を指している。

そしてヒュースのプロフ欄にもう一つ『安定性』という尺度が存在している。『安定性』という言葉が他に用いられたのは、大規模侵攻で烏丸がガイストを使用した時のハイレインの独白だ。

ハイレイン トリオン体の安定性をわざと崩して 武器と脚にトリオンを流し込んでいるのか』
『武器も身体の一部と見做して変形させるのは アフトクラトルのトリガー技術と発想が似ている』
『しかし角の補助がない分トリオン体の負担が大きいな 不安定なトリオンが漏れ出している』
引用元:【ワールドトリガー9巻 P79】

ハイレインの独白とガイストの性能を基に、『安定性』が何を指す尺度なのか類推してみる。

安定性とは…… 武器やトリオン体そのものにトリオンを流すと、その性能を向上させたり変形させることができるが、その状態のトリオン体には大きな負担がかかり、ひび割れが発生しトリオンが漏れ出ることもある。 だがツノの補助があれば、武器やトリオン体に流し込むトリオンの安定性を向上させることができる。

つまり『安定性』とは、トリオンに起因するトリオン体への負担を軽減し、戦闘を補助するための制御データの性能を表した尺度だと考えられる。


ここまでの検討を基に、角が収集する生体情報を纏めると以下の様になる

分類 収集の項目
①トリオン器官の成長 トリオンの量
トリオンの質
拡張性
②戦闘時のデータ 安定性
③人格のデータ 黒トリガーとの適合性
人格や記憶
レプリカ 『黒トリガーには作った人間の人格や感性が強く反映されるため 使用者と相性が合わなければ起動できないという難点があるが その性能は通常のトリガーとは桁違いだ』

引用元:【ワールドトリガー2巻 P177】

黒トリガーとの適合には使用者の人格や感性が重要な事から、『黒トリガーとの適合性』に関する情報も『人格のデータ』として纏めることができると考えた。

また、上記の表に分類として定義した『トリオン器官の成長』は、その成長が止まる20歳までは最優先で収集するべき最も重要な情報だと考えられる。

2章のポイント
  • 『角』が収集する生体情報は、大きく分けて『トリオン器官の成長』『戦闘時のデータ』『人格のデータ』の3つに分類する事が出来る。

『角』の成長とデータ収集期間

そしてレプリカが説明した角のイメージ図を見ると、角は身体の成長と共に大きくなっている。 どちらかと言うとトリオン器官の成長に合わせて角も成長していると言った方が適切だろうか。

ワールドトリガー7巻P30(集英社葦原大介)】
レプリカ 『アフトクラトルでは以前より トリガーを加工したトリオン受容体を幼児の頭部に埋め込み 後天的にトリオン能力の高い人間を作り出す研究が進められていた』

引用元:【ワールドトリガー7巻 P30】

文部科学省の定義によると、幼児とは『小学校就学前の者』を意味する。 つまりアフトクラトルでは、遅くとも7歳の誕生日を迎えるまでにトリオン受容体が頭に埋め込まれるのだろう。

角を埋め込んでからトリオン器官が成長を終えるまでの生体情報収集サイクルについて、その時期ごとに用語を定義しようと思う。

『角』が行う生体情報データ収集のサイクル
ステップ 対象年齢 定義など
幼児期 7歳まで ツノを埋め込むまでの期間
成長期 7~20歳まで トリオン器官の成長が終わるまでの期間
成人期 20歳~ トリオン器官の成長が終わり、生体情報の収集がひと段落

トリオン器官の成長は20歳で止まるため、成人期以降は収集される生体情報の項目が減少すると思われる。

例えばエネドラの様に20歳を迎えトリオン器官の成長が止まった者に対しては、戦闘データ等の収集が主になるのだろう。

もしかするとこの事は本編でエネドラ殺害計画が浮上した事と関係しているのかもしれない。

No.1萌えキャラ候補 エネドラ
ラッド、鬼怒田さんと並ぶ、「ワールドトリガー三大萌えキャラ」の一角。液体化のトリガーで四六時中ぷるぷるしており、同じ色のエネドラを4つ以上並べるとはじけて消える。角を移植する前はマジメないい子だったという設定があるが、たぶんもう描くタイミングがない。イメージは「般若」
引用元: 【ワールドトリガー7巻 カバー裏】

エネドラが真面目でいい子だったのは、『黒トリガーに適合する前』でも『角が脳に根を張る前』でもなく、『角を移植する前』と書かれている。

その事を先程の定義に当てはめると、エネドラは6歳までは真面目でいい子だったが、7歳以降は角の悪影響で問題行動が目立つ様になった…という事になる。

つまり10年以上様子見された上で、本編の玄界侵攻のタイミングでようやくエネドラ殺害計画が浮上した事になる。

エネドラは既に黒トリガーに適合済みで、戦闘スタイルもやや大味な印象を受ける。つまり成人を迎えてトリオン器官の成長が止まった後のエネドラからは、有益なデータが得られないと判断され、角の被検体としてこれ以上生かす必要がないと判断された可能性がある。

きっと本編の大規模侵攻はエネドラが20歳を超えてから初の大きな戦闘だったのだろう。


そして最も重要なポイントなのだが……ミラは聡明で優秀だった時期のエネドラを知っていた、つまり最低でもエネドラ6歳&ミラ9歳の頃から深い交流があった事になる。

2章のポイント

  • エネドラは成人済みだったから殺害計画が浮上した可能性
  • ミラとエネドラは年季の入ったガチ幼馴染

『角』の世代交代

ツノの技術に関して気になる事がある。 それは『世代』という概念がある事だ。

マグネティック若造 ヒュース
(中略) 「角つき」で実戦配備された中では一番新しい世代で、安定性・トリオン拡張性も過去最高の逸材だが、うつ伏せにしか寝られないという重すぎる業を背負っている。生きろ。
引用元: 【ワールドトリガー8巻 カバー裏】

ヒュースは実戦配備された中で一番新しい世代。 つまりエネドラ~ヒュース間で世代交代が生じている事、まだ実践投入されていない年齢層に真の最新世代がいる事が分かる。

そして『世代』を考えたとき、もう一つ気になるレプリカのセリフがある。

レプリカ 『アフトクラトルでは以前より トリガーを加工したトリオン受容体を幼児の頭部に埋め込み 後天的にトリオン能力の高い人間を作り出す研究が進められていた』(中略)
レプリカ 我々が滞在していた時期にはすでに その技術は実用レベルにあった

引用元:【ワールドトリガー7巻 P30】

レプリカがアフトクラトルとキオンの2国に滞在していたのは7年以上前

当時のヒュースはどれだけ高く見積もっても9歳だし、もっと若いかもしれない。

そんなヒュース世代を指して角の機能が実用化に至っているかを判断するのは時期尚早に思える。 最低でも当時13歳のエネドラ~22歳のハイレインあたりの世代が、レプリカの言う『実用レベルにあった』世代だろう。

そしてレプリカは角の研究が『以前より進められていた』とも言っていた。 つまり実用レベルのハイレイン世代より前には、プロトタイプとでも言うべき『第一世代』が存在した事が示唆されている様に感じる。

ハイレインよりも上の世代の『角つき』というと、エネドラの説明時に登場した現政権?の人物だろうか…?今回の考察では仮にその人物を『第一世代』である事にしようと思う。


科学技術や工業の文脈で『世代』というと、大きな技術革新を伴う改良が行われた時に『世代交代』と言う事が多い。

これは個人的な意見だが、角の技術の場合、抜本的な改良を行うためには、最低でも角を移植してからトリオン器官の成長が終わるまでのデータが欲しい所だ。

つまり角に技術革新が起きるためには、先ほど定義した『成長期』に相当する約13年のスパンが必要だと感じる。

ここで一度ハイレイン達に『角』が埋め込まれた時期について、時系列で整理しようと思う。

『角』の世代

もし世代があったとしても、その境界線はもっと曖昧なグラデーションで、日々細かい調整や改良が行われているだろうが、世代交代が生じるようなマクロな改良スパンは約13年だと考えた。

そしてこの図を眺めていると、ヒュースに角が埋め込まれる時期にちょうど『成長期』が終わり、ヒュースの角にデータをフィードバックできそうな人が一人いるではないか。

『角』の生体情報フィードバック

もしかするとヒュースの角はハイレインの角をベースに改良が加えられた後継モデルなのかもしれない。

2章のポイント
  • ヒュースの角はハイレインからのフィードバックを受けて作られた可能性

ヒュースが背負う『角』の業

カバー裏のキャラ紹介等でヒュースの角とハイレインの角は何かと比較される事がある。

わくわく動物野郎 ハイレイン
(中略)
彼の角はヒュースの角より横に張り出していないので、仰向けは無理だが横向きには寝ることが可能。なぜヒュースの角もそうしてやらなかった。
引用元: 【ワールドトリガー9巻 カバー裏】

ハイレインのプロフ欄の書きぶりを見ると、ハイレインの角とヒュースの角は比較対象になる程度には同系統の形としてカテゴライズされている。

もしヒュースの角がハイレインの後継モデルなら、横に張り出す形状は何らかの機能改善のために行われた結果という事になる。

角が横に張り出すことで有利になる事。 生物的に考えると放熱に有利、工業的に考えると電波の拡散だろうか…?

アンテナはその向きと垂直な面方向に電波が拡散するが、アンテナを複数本持つ無線LAN等の場合は、アンテナの角度によって電波拡散の性質が変化する。

(一部参考: 無線LANのアンテナ方向、電波の飛び方メモ - ぼくんちのTV 別館

例えばアンテナを2本持つ場合、平行な時はアンテナに垂直な面方向の電波がより強化されるが、その角度が90度に近い時は複数の面方向に電波が拡散する。

ここで2人の『角の角度』に注目すると、ハイレインの角はほぼ真後ろを向いている一方で、ヒュースの角はこれでもかと横に張り出している。

【上:ワールドトリガー6巻P171、下:ワールドトリガー16巻P9(集英社葦原大介)】

この2人の「2本の角」をアンテナに見立て、その角度の違いによって「電波の拡散性質」がどのように変わるかを示すイメージが以下の図だ。

アンテナを2本もつ場合の電波拡散イメージ

複数の外付けアンテナを搭載している無線LANを導入している場合、アンテナの角度の組み合わせによって電波を狙った方向に拡散させることができる。

話は逸れていない、これはちゃんと『角』の話だ。

『角』が電波の送受信に相当する機能を持っている事は本編で明かされている。その一つが音声の翻訳機能だ。

ワールドトリガー24巻P73(集英社葦原大介)】
ヒュース (……実際オレの場合は生身でも トリガー ホーン がトリオン体と同じ役目を果たしてくれるがな……)

引用元:【ワールドトリガー24巻 P74】

片方が生身でも翻訳機能が使用可能という事は、トリオン体には『相手が生身でも直接受信可能な形式でのトリオン情報の発信』や、『相手の生身から発せられる無加工のトリオン情報の受信』の機能が備わっているという事だろう。

『角付き』が生身の場合は角がアンテナの様な役割を果たし、トリオン情報送受信の起点になるのだろうか。


情報通信とは近代の情報戦において最も重要な要素の一つだ。その機能拡張のためならば、うつ伏せにしか寝られないという重すぎる業をヒュースが背負っても仕方ない…仕方ない?

2章のポイント

  • 音声の翻訳機能を使用する際、角はトリオン情報を送受信する。
  • ヒュースの角はトリオン情報の送受信機能を改善したモデルの可能性。

『角』の形状とデザインの変遷

ヒュースとハイレインの角を比較した時に感じたのだが、角には世代毎にその見た目技術的なコンセプトに差異がある様に思う。 ここで角の形状やデザインについて世代毎の相違点に注目してみようと思う。


①角の本数と埋め込み位置

第一世代は角が1本だが、第二世代以降は角が2本になっている。角の機能を二本に分散したおかげか少し小ぶりになり、第一世代に感じた無骨さが軽減されている様にも思える。

また、角が1本の場合、重心バランスためにその配置が頭の中央ラインに限定されるが、第二世代以降の様に角が2本の場合は左右のバランスが良くなり、角の埋込レイアウトの自由度が向上する。

そして角の埋め込み位置により、その系統を側頭部系統(2α)額系統(2β)に分類する事も可能だ。 角が2本になったおかげで脳の特定部位を狙って角を埋め込む事ができ、感性や人格に効率よく影響を与え、黒トリガーの適合性向上に寄与できるかもしれない。

角の世代毎のデザインコンセプト

②角のヒダ(角輪)とデザイン

第二世代以前は角のヒダ(角輪)が根元から先端まで複数本あり、生物の角らしいデザインとなっている。

一方でヒュースの角は角輪が少なく全体的になめらかで、生物らしさよりも機能美やスマートさを感じさせるデザインとなっている。 *1

ミラのみ例外的に角輪が無く、刀の峰の様になっている部分に謎の線が一本入っているだけだ。

角輪のデザインの世代差

敢えて法則性を見出すなら、角輪のデザインには性差があり、女性の角には角輪が無いという事だろうか。

第一世代 第二世代 第三世代
額に角が1本 は側頭部に角が2本
は額に角が2本
側頭部に角が2本
根元から先端まで角輪が複数
無骨な印象
根元から先端まで角輪が複数
(例外:ミラ)
根元にのみ角輪が2筋
スマートな印象
2章のポイント

  • 角の世代ごとにデザインコンセプトがある可能性。
  • 性差による角のデザイン差が存在する可能性

2章まとめ

この章では角の機能やそのデザインについて考察を進めてきた。

ここで得られた仮説を基に、本編に登場したもう一人の「角付き」について、その人物の『角』にどの様な特徴があったか確認してみたい。

ワールドトリガー16巻P30】

ガロプラ遠征の最後尾に後頭部だけ映った人物が居るが、先程の理屈を当てはめてみると、 この後頭部の人物は角が側頭部に2本あるため、第二世代の側頭部系統(2α)の特徴によく合致していると言えるだろう。

もし2αと2βの『リリースされた時期』に差があるなら、この人物の年齢はハイレイン寄りだという事になる。その場合少なくともランバネイン(24歳)よりも年上という事になるだろう。

後頭部の人物の『角』世代予想

そしてこの人物の角にはミラと同様に角輪が無いため、先程提唱した基準に基づくと女性という事になるかもしれない。

また、この後頭部の人物はミラと同じ奥行きに配置されていて、なおかつミラとほぼ同じ身長に描かれている。 BBF時点のミラ(23歳)の身長は162㎝のため、この後頭部の人物の性別と当時の年齢が分かれば、現在の身長もある程度割り出せるかもしれない。




第3章 アフトクラトルが所持する黒トリガーの歴史

1章、2章ではそれぞれ、国旗に描かれた生物の『角』や、トリガー ホーン の機能やデザインなど、『角』を軸にしてアフトクラトルの歴史やトリガー技術について考察を進めて来た。

3章では少し視点を変えて、アフトクラトルが所持する黒トリガーに注目して考察を進めて行こうと思う。


アフトクラトルには現在4つの黒トリガーが確認されている。

卵の冠アレクトール窓の影スピラスキア泥の王ボルボロス、そして星の杖オルガノンの4つだ。

アフトクラトルの黒トリガー

使い手にまつわるエピソードやその歴史には未だ謎が多いが、いくつかの推論を組み合わせれば、それらが作成された順番やその時期、それに付随するアフトクラトルの歴史について考察する事ができるかもしれない。

よってこの章では、アフトクラトルの黒トリガー、及びその比較対象としてボーダーが所持する黒トリガーについて検討していこうと思う。


黒トリガーのサブ装備に関する制約

黒トリガーの作成時期を考えるにあたり、最も軸となる考えはサブ機能を後付けできないという要素だろう。

作中で具体的に『後付けできない』とは明言されていないが、黒トリガーに関する複数の描写がその設定を示唆している。

黒トリガーに通信機能やシールドは付いてないんですか?
それぞれの黒トリガーによって違います。例えば風刃は、シールドは無さそうで、通信機能はあるっぽいです(レシーバーがあったりなかったりするのは葦原のミスです)。 遊真の黒トリガーには通信機能はありませんが、レプリカがその役割を担当していたりします。
引用元: 【ワールドトリガー19巻 質問コーナー⑫】
嵐山 『違うな 黒トリガーに緊急脱出機能ベイルアウトは付いていない

引用元:【ワールドトリガー4巻 P51】
古寺 『……「風刃はたしかに強力な武器だが」「性能が攻撃に特化しすぎて対応力にかける」
『「だから基本は今まで通り部隊で戦って」「戦況に応じて風刃を投入したほうがいい」……三輪先輩は上層部にそう進言したんだよ』

引用元:【ワールドトリガー11巻 P77】

風刃には通信機能がついているため、サブ機能の搭載が出来ない訳では無い。 だが本部預かりになった風刃にシールドや緊急脱出機能ベイルアウトが追加される様子もない。

三輪は対応能力の低さを理由に風刃を返上したため、開発室をもってしても機能の後付けは出来ないのだろう。

これらの事から、『黒トリガーに装備を後付けする事は出来ないが、黒トリガー作成者が生きていた時代に存在した機能は使用可能である』と考えるのが最も自然だろう。

レプリカ 『ユーマは 有吾がすべてを注ぎこんだ黒トリガーから 父親を蘇らせることができないかと考えていた』
『しかし 先程の最上宗一の件で ボーダーでもそれは無理だということがわかってしまった
引用元:【ワールドトリガー3巻 P88】

ブラックトリガーとはまさしくブラックボックス。 それがもたらす『結果』は解析できたとしても、黒トリガーの中に何が存在しどのような『過程』を経ているかは、ボーダーの技術力をもってしても知る由が無いという事だろう。

『過程』を分析できなければ、機能を追加することなどできはしない。 例外と言えば、解析したトリガーを学習し、『印』として能力を追加可能な所までが標準機能である遊真の黒トリガーぐらいだろう。

3章のポイント
  • 黒トリガーには基本的にサブ機能を後付け装備できない

トリオン体の『標準機能』と『装備』

トリオン体で使用できる機能は、元から備わっている『標準機能』と、後から追加した『装備』に分類する事ができる。 例えば『内部通話』はトリオン体の『標準機能』である一方、『通信機能』『標準装備』であり、その二つは異なるものだと明言されている。

トリオン体の「内部通話」は通信回線ですか?トリオン体の機能ですか?
トリオン体の標準機能です。普通に話し声が届く範囲の人間と、相手を限定して通話ができます。飲み物を飲んでる相手にギャグをささやくことも可能。
引用元: 【BBF-P306-Q161】

このQ&Aからは、『内部通話』がトリオン体そのものに備わった機能である事、『内部通話』は話し声が届く範囲でのみ使用可能である事が分かる。

戦闘体にヘッドホン(通信機?)があるのとないのとでは、どういう違いがあるんですか?
通信機能はトリオン体に標準装備ですが、通信機をつけていないと独り言を言ってるみたいになるので、それが気になる隊はヘッドホンやインカムを戦闘体に設定しています。見た目だけの違いです。
引用元: 【BBF-P303-Q140】

このQ&Aからは、『通信機能』を用いた通信は『標準装備』による機能だと分かる。

そして似たような言い回しに『基本装備』と言う用語も登場している。栞ちゃんのクッキー生地によるトリガーのコスト解説時に登場した用語だ。

宇佐美 『アステロイド レイガスト スラスター バッグワーム スパイダー シールド トリオン体本体と基本装備
『そして 緊急脱出ベイルアウトシステム これだけのトリオンを消費して残った分が弾丸とかシールドのエネルギーになるの』

引用元:【ワールドトリガー19巻 P82】

トリオン体本体とは別途装備コストを支払う事で、トリオン体に『基本装備』を追加する事が出来る様だ。 特にベイルアウトが消費するトリオンはすさまじく、一般職員用の護身用トリガーには搭載されていない程だ。

そして緊急脱出ベイルアウト『レーダー』『基本トリガー』とも呼ばれているようだ。

第30話で「レーダーの精度を10だけ上げてくれ」という嵐山さんの指示があるのですが、これは佐鳥が何かしらのオプショントリガーを装備しているという事でしょうか?
精度の調節は、レーダーの標準機能です。レーダーは緊急脱出などと同じ「基本トリガー」で、誰でもいつでも使えますが、使っている間は少しずつトリオンを消費する(精度を上げれば消費も増える)ので、トリオンに余裕のある隊員が使うことになります。この場合は、佐鳥がレーダー担当だったということです。
引用元: 【BBF-P303-Q140】

標準装備』『基本装備』『基本トリガー(の装備)』、言い方こそ違うがこの三つは文脈的に同じ事柄を表している。そしてこれらはトリオン体に後付けされたものだと言うニュアンスを強く感じる。

だが唯一『内部通話』はトリオン体そのものに付随する標準的な機能として扱われている。

そして若村隊のヒュース曰く『内部通話』と『音声の翻訳』は同一機能の範疇であるほか、全てのトリオン体に共通の機能であるかの様に語られている。

ヒュース お互いがトリオン体の時は声を使わずに意思で会話ができるだろう あれの不完全版だと思えばいい

引用元:【ワールドトリガー24巻 P73】

内部通話等のトリオン体に備わる『標準機能』、トリオン体に後付けで機能を付与する『基本装備(基本トリガー)』、そして隊員が自由に付け替えが可能な『トリガーチップ』。 これら三つの要素を整理すると以下の図の様になる。

トリオン体の標準機能・基本トリガー・トリガーチップ
3章のポイント

  • 内部通話は全トリガーが備えている標準的な機能で、話し声が届く範囲で使用可能
  • 通信機能は『基本トリガー』として後付けで装備され、遠く離れた相手とも会話が可能

風刃を起点にしたトリガー開発順の推定

『黒トリガーに装備を後付けできない』この考えを軸にすれば、サブ機能として装備されたトリガーの開発時期を絞り込む事ができる。

例えば風刃は『5年と少し前』のアリステラ同盟戦争で作成された黒トリガーなので、風刃に搭載されている『通信機能』は、旧ボーダー時代から存在する装備である事が言える。

逆に言えば風刃に搭載されていない『シールド』『ベイルアウトは、現ボーダーの開発室が作成した物という事が推定できる。

そして『レーダー』についても、風刃が『レーダー』を使ったと確実に言えそうな描写は見つからなかったため、恐らくこちらも現ボーダー開発室の作成だろう。

風刃を時系列の起点としたトリガー開発順

だがここで注意したいのが、黒トリガーのサブ装備の有無を根拠に、何でもかんでも開発順を確定させることは出来ないという事だ。

例えば風刃には『エスクード』の機能が搭載されていないが、その理屈だけでエスクードの開発時期を絞る事は出来ない。 なぜならエスクードは全隊員が標準的に使用する様な性能ではないため、黒トリガーの素体となった人物が使用してなかったとしても違和感は無いからだ。

同じ様に弾トリガーも刃トリガーも、装備コストが発生する以上、全員にとって必須とは言えない。 つまりこの理屈を用いる時は、『戦略的に考えて標準的に装備されるべき機能』に限るべきだろう。

その他ボーダーのトリガーでこの理屈を適用できそうなのは『バッグワーム』くらいだろうか?

3章のポイント
  • 黒トリガーの作成時期が分かれば、サブ機能のトリガーの開発時期を絞り込む事が可能。

アフトの黒トリガーが持つサブ機能

風刃の時とは逆に、複数の黒トリガーが共通で持っているサブ機能に注目すれば、それらの黒トリガーの作成順を絞り込むことが可能だ。

どれか一つのサブ機能に注目し、それが装備されていない黒トリガーはそのサブ機能が開発される前に作成されたことになる。つまり4本の黒トリガーの中で最も古いのでは?という推測が可能になる。

ここで注目するサブ機能は『マント』『通信機能』だ。


アフトクラトルが装備するマントトリガー

生身では着用していない事、戦闘中に再生する事、地味に硬い強度など、 あのマントはただの衣装(トリオン体の一部)では無く、何かしらのトリガーで有ることが示唆されている。

そのマントを唯一着用していないのがミラであり『窓の影スピラスキア』だ。

だがミラの戦闘服のカラーリングはマントと酷似しているため、服に『マント機能』が搭載されている可能性をまずは検討した方が良さそうだ。

ここで注目したい描写は、三輪のバイパーがハイレインとミラを貫通したシーンだ。

ワールドトリガー9巻P183(集英社葦原大介)】

まずはハイレインのマントに注目してもらいたい。

マント含むハイレインに命中した弾は9発あるが、ハイレインの背中側に貫通している弾は全てマントの内側に命中した弾なのだ。

ワールドトリガー10巻P9(集英社葦原大介)】

その後のコマを見ると、ハイレインの背中側マント部分からもトリオンが漏れ出ているため、マントに弾痕が残っている事が確定する。つまり三輪のバイパーはマントを貫通できる威力を持っている事が分かる。

一方ハイレインの左肩(マントの外側)には弾が2発命中しているが、どちらも背中側に貫通していない。
ハイレインVS三輪のバイパー

つまり三輪のバイパーはマント1枚分の厚みは貫通できるが、2枚目には阻まれる様な力関係だと考えられるのだ。


【トリガーの強度】
マント2枚 > 三輪のバイパー > マント1枚


一方でミラに着弾した弾は5発全弾ミラを貫通しているが、もしミラの衣装にマント機能があるなら、弾は背中の内側で止まっていたはずだ。

したがって、ミラの衣装にはマントに相当する機能がない事が分かる。

よって『マント』を起点に黒トリガーの作成順を考えた場合、窓の影スピラスキア』が最も古いトリガーという事になるだろう。


アフトクラトルの遠距離通信技術

数百m以上離れた距離でも通信を行うミラとハイレイン、遠征艇からエネドラの独断専行を咎めるハイレインなど、アフトクラトル組も遠距離通信の手段を持っている様だ。

だがヴィザが参加する遠距離通信でのみ、スピラスキアの補助を必要としている。

ワールドトリガー9巻P126・127(集英社葦原大介)】

つまりヴィザの戦闘体には通信機能が搭載されておらず、外付けのトリガー(窓の影)でその機能を代替する必要がある様だ。

この事は通信機能が搭載されていない遊真の黒トリガーにとっても同様で、レプリカを外付けの通信機器として使用している。

黒トリガーに通信機能やシールドは付いてないんですか?
それぞれの黒トリガーによって違います。例えば風刃は、シールドは無さそうで、通信機能はあるっぽいです(レシーバーがあったりなかったりするのは葦原のミスです)。 遊真の黒トリガーには通信機能はありませんが、レプリカがその役割を担当していたりします。
引用元: 【ワールドトリガー19巻 質問コーナー⑫】
黒トリガーの通信状況と外付けの通信機能

よって『通信機能』を起点に考えた場合、今度は星の杖オルガノン』が最も古い黒トリガーである事になってしまう。

この様に『マント』を起点にした場合と『通信機能』を起点にした場合で、『窓の影スピラスキア』と『星の杖オルガノン』の時系列に矛盾が生じてしまうのだ。

『マント』と『通信機能』を起点とした黒トリガーの作成順

一見妥当そうな推論を重ねた上で矛盾が生じるなら、基準となる仮定に誤りがあるか、もしくは何か見落としている要素がある。

ここに至るまでにアフトクラトルの『通信機能』に関する本編の描写を一通り確認したのだが、一つ違和感が残っている描写がある。

ハイレインの独白に不自然な部分があるのだ。

ハイレイン 『対策に迷いがない「 卵の冠アレクトール」の特性をさっきの誰かが伝えたか』
玄界のトリガーの厄介なところだな

引用元: 【ワールドトリガー9巻 P94】

このセリフは金の雛鳥を抱えた修が、民家を盾にして逃げたシーンのハイレインの独白だ。

直前まで戦っていた烏丸・米屋達から遠距離通信で修に情報が伝わったせいで、ハイレインは修を仕留めそこなっている。

だがこのセリフはおかしい、アフトクラトルにも遠距離通信の手段はあるはずだ。 自分たちでも難無くできる事を指して、わざわざ『玄界のトリガー』と強調する必要性は無い。 *2

ここで疑問が芽生える。本当にアフトクラトルのトリガーには『通信機能』が付いているのだろうか? 遊真の黒トリガーにすら通信機能が搭載されていないと言うのにだ。

もしかするとアフトクラトルの『通信機能』も、トリガーとは別の外付けの何かに依存しているのでは無いだろうか。

ヴィザに無くて他の隊員にはあるもの…そう、例えば角が遠距離通信を担っているのでは無いだろうか?


角はそれ自体がトリオン情報の送受信を行っており、まさしくアンテナの様な機能を備えている。 トリオン体になった時には、トリオン体が本来備えている内部通話の機能を拡張し、通話可能範囲を拡大する事が出来るのでは無いだろうか?

ちょうど、アンテナを伸ばしたトランシーバーの通信可能範囲が拡大する様に。

角を用いた遠距離通信
ワールドトリガー8巻P13(集英社葦原大介)】

遠征艇のハイレインに話しかけられた瞬間、エネドラは自分の角に意識を向けている様に見えなくもない…かもしれない。

もし通信機能が角に依存するのであれば、ハイレインの独白の違和感も自然に解釈する事が可能になる。


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ハイレイン『対策に迷いがない 「 卵の冠アレクトール」の特性をさっきの誰かが伝えたか』

ハイレイン(我々にとって遠距離の通信機能は「角付き」の特権であり、角が無い下級の一般兵士やヴィザの様な老兵とは戦場での情報共有も一苦労だ。だが玄界のトリガーには通信機能が標準装備されているため、あのような一般兵士(修)にも容易に情報が伝わってしまう事が)

ハイレイン『玄界のトリガーの厄介なところだな
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先程は『通信機能』と『マント』をどちらも黒トリガーに装備された機能だと仮定したせいで矛盾が生じてしまった。だが、通信機能が角による機能だとすれば、黒トリガー作成順の制約条件から『通信機能』を除外する事ができる。

よって、黒トリガーのサブ装備の有無に関する時系列は、以下の図の様に矛盾なく整理できる。
『マント』と『通信機能(角)』を起点とした時系列

したがってサブ装備の有無に注目した場合、アフトクラトルで最古の黒トリガーは『窓の影スピラスキア』という事になるだろう。


ガロプラの遠距離通信技術

その後の本編でガロプラが当然の様に遠距離通信を行っているため、通信機能に関しては軍事大国のアフトより、小国のガロプラの方が発展しているという事なのだろうか?

ラタリコフ 『それはうちの技術者に作ってもらった 通信機兼発信機のトリガーです』
『対になるトリガーは私が持っています』
『これがあればどれだけ離れていてもお互いの位置が常にわかります ある程度星が近付けば通信ができてほかのトリガーに傍受される事はありません

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P137-138】

ヨミが作成した腕輪型通信機は、単なる通信機能にとどまらず大概な便利機能が搭載されている。

アフトクラトルがヨミをスカウトしたのは、高度な通信技術を自国に取り入れ、弱点である通信連携の脆弱さを克服するためだったのかもしれない。 *3
ヨミ(近界民) ガロプラの便利枠担当。若くしてガロプラの技術開発室のチーフの地位を占める、遠征団の最重要戦力。独自のトリガー改造技術はアフトクラトルからも誘いがかかったほど。 鬼怒田さんとかと会わせたら開発話が弾みそう。MVPはレギーに譲るものの、かなり展開を助けてくれました。便利枠様々です。

引用元: 【ワールドトリガー16巻 P68】

だがこの解釈の場合でも、ヨミが凄いと言う事が分かるだけで、アフトクラトルの遠距離通信技術が玄界と比べて制約がある事の直接的な説明にはならない。

何故玄界人が当たり前の様に実装できている『通信機能』が、近界では高度な技術の様に扱われているのか。それには恐らく『電気工学の未熟さ』が関わっている。

レギー あの明かり トリオンじゃねーんだろ? ラタリコフ 『そうらしい どういう仕組みなんだろう』

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P102】
遊真 磁力ジリョクとやらはようわからん

引用元: 【ワールドトリガー8巻 P58】

レギーと遊真の発言は、それぞれ『電気』『磁力』が近界にとって馴染みの無い概念である事を示している。

『電気』と『磁力』は、電気工学的に密接に関わる要素であるため、2つ纏めて『よくわからない現象』として扱われているのは、世界観が一貫していると感じる。

『電気』を扱う技術が未熟ならば『磁力』を応用し生活基盤に組み込む事は到底不可能だろう。ならば同様に、電気によって生み出される『電波』の技術も、近界全体の傾向として未熟という事にならないだろうか?

トリオンのエネルギーでバイクや車を動かすことはできますか?
「トリオンで動く車型トリガー」を開発すれば可能だと思います。トリオンを電気エネルギーに変換する機構はすでにあるので、電気自動車などはふつうに動かせると思いますが、それだとエネルギーに消耗があって効率が良くないので。
引用元: 【ワールドトリガー19巻 質問コーナー⑫】

トリオンという万能生体エネルギーがある中で、わざわざ消耗ロスのある『電気』エネルギーに変換する必要性は薄い。そのため、『電気』を用いた技術が発展しなかったのが近界なのだろう。

逆に言えば『電波』をまともに扱えない状況下で、トリガー工学の範疇で遠距離通信を実装した『ヨミの腕輪』『角』『レプリカ』は、とても高度な技術の産物だったと言えるのかもしれない。

3章のポイント

  • アフトクラトルの遠距離通信は『角』の機能である可能性
  • アフトクラトル最古の黒トリガーが『窓の影スピラスキア』である可能性
  • トリガー工学において、遠距離通信はとても高度な技術である可能性

実体を伴う恐怖の伝承『窓の影』

『アフトで最古の黒トリガーは「窓の影スピラスキア」』、この考えに至った時、かねてより思っていたことが脳裏に過った。

ミラとは『なまはげ』なのでは無いか?

サディスティックワープ女 ミラ嬢
敵に回すとやばいタイプのワープ系女子。ワープ、微笑からの「釘っぽいやつ」で、アフト全土を震え上がらせており、「ワープ女が来るぞ」と言えば子供がわがままを言わなくなることを本人は若干気にしている。政略的にハイレインもしくはランバネインと結婚する予定だが、たぶん二人とも内心ビビっている。デザインのイメージは「悪魔」。
引用元: 【ワールドトリガー9巻 カバー裏】

この紹介文においてアフト全土を恐怖に陥れているのは、『ベルティストン領のミラ』では無く『ワープ女』なのだ。

ミラ個人を知らない初見の米屋がそう呼ぶならともかく、 アフトクラトル人の中ですら抽象的な呼び名だけが広まっており、 まるで『なまはげ』や『雪男』の様な扱いだ。

ひょっとすると『ワープ女』とはミラ個人を指す呼称ではなく、 代々スピラスキアを継承した適合者を総称する呼び名なのでは無いだろうか。


民族に伝わる口伝の継承は親から子へ、子から孫へ代々伝わっていく物であり、 その性質は『似た伝承が伝わる民族は共通の先祖・ルーツを持つだろう』という民族移動の歴史の検証に用いられる事すらある。

そんな中でワープ女は、『子供の躾に用いられるほど』根強く、 『アフトクラトル全土』に伝わっているというのだ。

そこから考えると、アフトクラトル全土を恐怖に陥れた『初代ワープ女』の登場は、 アフトクラトルがまだ一つの集団だったころ、すなわち四大領主の家に分裂する以前の時代まで遡る可能性があるのだ。

卵が先か鶏が先か…窓の影を解析しゲートが生まれたのか、それとも『ゲート』を生み出すトリガーを素体にして窓の影が生じたのか… もしかすると窓の影の登場は近界創生期における、惑星間大航海時代開幕の引き金だったのかもしれない。

3章のポイント
  • 窓の影スピラスキア』はアフトの領土が4つに分裂する以前に作成された可能性

角を拒絶する国宝『星の杖』

窓の影スピラスキア』はアフトクラトルで最古の黒トリガーである可能性を示したが、その場合あの国宝『 星の杖オルガノン』より歴史が古い事になる。

だが『窓の影』は国宝ではない、つまりただ歴史を重ねただけでは国宝足り得ない。 ならば星の杖を国宝たらしめている要素とはいったい何なのだろうか?


そもそも国宝とは国が指定した『有形文化財(建造物・美術工芸品など)』の内、特に歴史的価値や学術的価値の高い物を『重要文化財』と呼称し、その重要文化財の中でも極めて優秀で、かつ、文化史的意義に特に深い物を国宝と言うのだそうだ。 (参考HP: 登録有形文化財登録基準 | 文化庁

日本だと法隆寺等の寺社仏閣、刀剣や甲冑などの工芸品も多く登録されており、中には1000年以上の歴史を持つ物も珍しくない。きっと『星の杖』も同程度の歴史はあるのだろう。

国宝がどの様な基準で選定されるかを調査するため、文化庁が発表している国宝等の選定基準を眺めていた所、気になる文言を見かけた。 (文化庁HP:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/r02/03/

登録有形文化財登録基準』の建造物の部において、有形文化財として登録される基準に『再現する事が容易でないもの』という記述を見つけた。

黒トリガーの事を語る時に建造物の基準を持ち出すのは適切でないかもしれない。だが『機能の再現』という尺度で考えたとき、星の杖はアフトの黒トリガーで唯一その機能の再現や劣化コピーが実現していないのだ。

卵の冠はラービットのキューブ化機能、窓の影は遠征艇のゲートや改造ラッド、泥の王はモッド体ラービットの機能として、限定的だがそれぞれ黒トリガーの機能を再現する事が出来ている。

ではなぜ星の杖は機能を再現する事が出来ないのか?その答えは恐らく単行本おまけページに書かれている。

近界民の手下 トリオン兵

トリガー使い捕獲用トリオン兵 ラービット(モッド体)
プレーン体ラービットに能力を付加したもの。角付きアフトクラトル勢のトリガー能力を限定的に使える様子。
ランバネイン型
高威力の砲撃がメイン武器。ランバネインの性格が影響してるのか、やることが派手。はっきりいって捕獲任務に向いてない。
エネドラ型
目の前なのに液体化奇襲してくる性格の悪さ。人をバカにしたようなポーズをとってるような気もする。
ヒュース型
ほかのモッド体に比べると動きが消極的。磁力の能力が複雑すぎて使いこなせてないのかも。

引用元:【ワールドトリガー7巻 P148】

恐らく『トリオン兵の卵生成器』の様な装置にトリオンを流し込むのだと思うが、モッド体に関する説明文は、まるでトリオンを供給した人間の人格まで一緒に流し込んでいるかの様な文章だ。人格のバックアップ機能を持つ角が作用しているのだろうか?

そして『角付きアフトクラトル勢のトリガー能力を限定的に使える』という説明は、 モッド体へのトリガー機能の付与は、角の機能により実現可能とも読みとれる。

角によって実現する『黒トリガーの解析と機能の搭載』

もしかすると、単なる隠密偵察用のラッドにゲート発生装置を搭載できたのも、ミラの角の機能に依るものだったのかもしれない。

だとすれば角には驚くべき機能が搭載されている事になる。 『角』は機能再現や解析という形で黒トリガーのブラックボックスに干渉し得るのだ。 他に似た様な機能があるのは遊真の黒トリガーを使用可能なレプリカくらいだろう。


もし星の杖の機能をラービットに継承できるならば、遠征に投入しない手は無い。 オリジナルの性能があれだけ凶悪ならば、たとえ劣化コピーでも十分な戦果を挙げられるだろう。

だが実際には星の杖を継承したラービットは居なかった、つまりアフト本国に「角付き」の星の杖の適合者はおらず、 角の適合性向上の機能をもってしても、『星の杖』の適合は出来ないという事になる。

『ヴィザ以上の使い手が居ないからヴィザが遠征に投入される』とかそう言う次元の話ではなく、ヴィザ以外にそもそも適合者が現存しない可能性まであるだろう。


風刃は適合者の好き嫌いが激しくないが、その本体性能はやや控えめな印象を受ける。 その一方で、角による疑似適合すら許さない星の杖は選り好みの極致とも言えるだろう。

もし『適合の難易度』と『黒トリガーの出力』に相関があるならば、 『星の杖』は『卵の冠』や『窓の影』をはるかに凌ぐ、 国宝と呼ぶに相応しい出力を持っている事になるだろう。
3章のポイント
  • 星の杖オルガノン』が国宝認定されているのは、その機能再現や適合の難易度が関係する可能性

神が生み出した『卵の冠』

卵の冠アレクトール』はその名に冠を宿しており、アフトクラトルのクラウントリガーとの関係性が強く示唆されている。

卵の冠は冠トリガーなのだろうか? もしそうだと仮定した場合、冠トリガーがどのタイミングで生まれるのかが分かれば、『卵の冠』の作成時期を絞り込むことができるかもしれない。

ここからは、『卵の冠がアフトクラトルの冠トリガーである』、と仮定し話を暫く進めたい。

参考として、ボーダーの母トリガーから生み出された雷神丸について考えてみようと思う。


ラタリコフと林藤支部長の問答

第201話ではアリステラ王女がボーダーに逃げ延びた経緯や、ボーダーが保有する冠トリガー雷神丸の正体について語られた。

そこではラタリコフの疑問に林藤支部長が答える形で話が展開されたが、ラタはマザートリガー運用の一般的な事例』を想像しながら喋っていたはずだ。

なので、ラタリコフが疑問に感じた部分、支部長が開示した情報、そこから生まれる新たな感想や疑問を手繰っていけば、ラタが想像していた『一般的な事例』を導き出せると思う。

ラタと支部長の会話を少しずつ確認しながら、母トリガーと冠トリガーにまつわるルールを検討していきたい。


①母トリガー起動の条件

ラタリコフ 『しかし……母トリガーを「手に入れる」なんてことが 現実に可能なのか? そこに疑問というか 個人的な興味があります』
林藤支部 (中略)『アリステラ王家が代々管理する母トリガーもそこで失われるはずだったが アリステラ王家は混乱の中密かに母トリガーを…… 当時まだ子供だった王女と生まれたばかりの王子に継承させ 滅びゆく星からこちらの世界へ逃がした 「ボーダー」はその脱出を助けたってわけだ』
ラタリコフ つまり今の「ボーダー」はアリステラ王家が亡命した姿とも言えるわけですね だから母トリガーを動かすことができると……

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P120】

この会話から分かる様に、王家は母トリガーを『管理』する役割を担っている様だ。

また、ラタリコフが発言した 『アリステラ王家が亡命した姿 ➡ だから母トリガーを動かすことができる』 という文の繋がりからは、母トリガーを『動かす』には王族の存在が不可欠という条件が読み取れる。

母トリガーの『権限』の継承

もしそうなら、ラタリコフが感じた『母トリガーを「手に入れる」事が出来るのか』という疑問も解釈できる。

他所の国から母トリガーを奪ったとしても、対応した王族が居なければ起動する事が出来ない筈なのに、 余所者である玄界民が何故運用できているのか?という疑問だったのだろう。

ガロプラは現在母トリガーをアフトに抑えられており、唯一?生存したオルカーンは身分を偽りアフトの目を欺いている。

もし王族でしか母トリガーを動かす事が出来ないのであれば、ラタリコフはアフトに対する切り札であり、正体がばれない限りガロプラの母トリガーが真にアフトの手に落ちるわけでは無い。

だがもし王族不在でも余所者が母トリガーを動かす事が可能な条件があるなら、その切り札は効力を無くしてしまう。 そのため、ボーダーが母トリガーを利用できている経緯は何としても知りたかった…という事だろうか?


②冠トリガーが生じるタイミング

もう一つ分かるルールは、冠トリガーの作成と母トリガーの継承のタイミングは無関係という事だ。

瑠花と陽太郎が母トリガーを継承したのは『5年と少し前』のアリステラ同盟戦争の時だが、一方でBBFのボーダー入隊時期グラフを確認すると、雷神丸が生まれたのは『現ボーダー設立時(4年前)』のタイミングとなっている。

つまり冠トリガーが生み出されるのは『継承』のタイミングではなく、母トリガーを初回起動し運用を開始した時なのだろう。

冠トリガー(雷神丸)が生まれたタイミング

そして母トリガーを起動した後、実際に運用するのは通常『神』になった者だという事がラタリコフのセリフから分かる。

林藤支部 『この陽太郎の姉…… つまりアリステラの「王女」だな 今はその子が母トリガーを動かしている』(中略)
ラタリコフ 『それは……その「王女」が新しい「神」になったということですか?

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P124】

ラタは『アリステラの「王女」が母トリガーを動かしている』と聞いて、「王女」が神になったと思い込んでいた。

つまりラタリコフの認識だと、母トリガーを動かす者=神という事になる。

本来母トリガーを起動する目的は星を運営する事であるため、母トリガーの起動後は、『神』に母トリガーの運用を引き継いでもらわなければならない。そのために『神』の同化は、母トリガー初回起動時点で完了している必要があるだろう。

これらを纏めると、『神の同化』『冠トリガーの誕生』『母トリガーの初回起動』の三つは、ほぼ同時期に生じるイベントである事が分かる。

母トリガー初回起動時に起こる事

アフトクラトルの冠トリガーが生まれたタイミングもこれと同じなら、卵の冠アレクトール』は神の同化時に生まれた事になるだろう。


③母トリガーの『制御』と『操作』

これまでのラタリコフと林藤支部長の会話の中に、とても重要な示唆が一つある。恐らくこれまでの会話の中で登場した『母トリガーを動かす』というワードには、二つの意味が混在している。

ラタリコフ 『つまり今の「ボーダー」はアリステラ王家が亡命した姿とも言えるわけですね だから母トリガーを動かすことができると……

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P120】
林藤支部 『この陽太郎の姉…… つまりアリステラの「王女」だな 今はその子が母トリガーを動かしている』(中略)
ラタリコフ 『それは……その「王女」が新しい「神」になったということですか?

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P124】

一回目に『母トリガーを動かす』というワードが登場したのはラタの発言だが、この時点でラタに『瑠花=神』という認識はない。

そして続く林藤支部長の『母トリガーを動かしている』という発言にラタリコフは反応し、『瑠花=神』という誤認が生じていた。

つまり前者の『動かす』と、後者の『動かしている』が意味する内容は、それぞれ異なる事柄を表しているハズなのだ。

前後の文脈から察するに、恐らく前者は『王族』が母トリガーを動かす時の事を指しており、後者は『神』が母トリガーを動かす時の事を指している。つまり母トリガーを『動かす』際、『王族』『神』はそれぞれ異なる役割を担っていると考えられるのだ。

ここで一応、英語版ではどの様なニュアンスで『動かす』が翻訳されているのか確認してみようと思う。 英語版単行本を確認すると、『王族が動かす』という文脈の時には【control (制御)】が、『神が動かす』という文脈では【operate (操作)】がそれぞれ用いられ、異なる単語が使い分けられている事が分かる。

どちらも機械を動かすという文脈で用いられる事がある単語だが、【control】の場合は対象を管理・制御してシステムの全体的な動作を望ましい状態に保つニュアンスを含む事がある一方、【operate】の場合は、機械を単に実行・操作する時に用いられる事が多い様だ。


これを踏まえた予想だが…

神が『母トリガーを動かす』言う時は、母トリガーを操作してトリオンを出力させる事を指している。【operate (操作)】

王族が『母トリガーを動かす』と言う時は、得られたトリオンを目的のために制御する事を指している。【control (制御)】

この様な解釈であれば、『王族が代々管理する母トリガー』というニュアンスに合致する王族の役割を見出すこともできるだろう。*4

母トリガーの『制御』と『操作』

林藤支部長が発言した時の『母トリガーを動かす』は、本来『神』の役割における『母トリガーの操作 (operate)』を指していたのだろう。

そして、母トリガーは星を維持する出力を得るために、神が同化するのは当然だ…という先入観がラタリコフにあったため、『瑠花=神』という誤認が生じたのだろう。

また、この解釈の場合だと、エネドラが発言した『神が星の面倒を見る』とは、神が母トリガーを『操作』して得られたトリオンを、星を運営する各装置にエネルギーとして供給する事を意味していた事になる。


④冠トリガーの操作権

ラタリコフ 『「神」はいない……となると 冠トリガーは「ボーダー」の手にあるという事でしょうか?』

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P125】

ラタリコフのセリフは、『神が居ない事』『冠トリガーがボーダーの管理下にある事』が結びついている。

このセリフからは、本来冠トリガーを操作できるのは神だけだが、神が不在の場合は外部の人間も操作可能になる、というニュアンスを読み取れる。

『冠トリガーの操作権』には優先度があり、神が命令を出している間は、たとえ王族であっても冠トリガーに命令する事が出来ないイメージだろうか?

ワールドトリガー23巻P127(集英社葦原大介)】

ツチガミを思い出す遊真の反応を見る限り、冠トリガーには特定の使い手が居ない様に思える。 ツチガミの国では『神』が半自動的に冠トリガーを運用する様な状態なのだろうか?

冠トリガーの操作権

冠トリガーが『母トリガー直属』である事を踏まえると、『母トリガーの操作』に『冠トリガーの操作権』が紐づいているイメージなのだろうか?


⑤アフト冠トリガーの現状を説明する1つの仮説

ここまで検討した内容を踏まえて、『一般的な事例』と『ボーダーの現状』、そして『卵の冠』が冠トリガーであると仮定した時の『アフトクラトルの現状』を表した3つの事例を図で纏めてみようと思う。

母トリガーと冠トリガーの操作のモデル

アフトクラトルの現状については、『神が母トリガーを運用している』という共通点から、一般的な事例におおよそ従うと仮定してモデルを作成した。

その結果を見比べてみると、アフトクラトルの現状は『一般的な事例』と『ボーダー』のモデルのどちらにも該当せず、ちょうど中間の性質を持っている。

『神』が母トリガーを操作している点では一般的なモデルに該当するが、『冠トリガーアレクトール』をハイレインが自由に操作できる点ではむしろボーダーのモデルに近い。


3つのモデルを見比べた時に浮かび上がった、アフトの現状における『特異な点』は以下の2つ

①本来は王族が居るはずの位置にハイレインが居る事
②本来は神が運用している筈の冠トリガーを、神の管理下から切り離している所

矛盾が発生する場合、『卵の冠アレクトール』が冠トリガーという前提条件が間違っているか、もしくは検討過程の解釈が誤っている。

前提条件が間違っていると考えた場合、『卵の冠』はただの黒トリガーだと考える方が自然という事だ。


だがここで、ある1つの仮説を持ち出せば、全ての要素を説明する事が可能になるかもしれない。 要はアフトの現状を説明しようとする場合、冠トリガーの操作権が神から喪失する様な状況について考えれば良い。

ここで提案したい仮説とは、『神の死亡をキッカケに、その神によって作られた冠トリガーは黒トリガーに変化するのではないか?』という説だ。 つまり、黒トリガーが生じる条件には、作中で明かされている方法以外に、『神』に由来する別の方法が存在するのでは?という仮説だ。

アフトクラトルの現状を示す仮説

この仮説を採用すると、この章で浮き彫りになったいくつかの違和感を説明する事が出来るようになる。

例えば、『卵の冠アレクトール』が神の管理下から離れている状況、いかにも冠トリガーっぽい名前の『卵の冠アレクトール』が黒トリガーとして扱われている事、冠トリガーと黒トリガーが異なる定義で扱われている事、そして王族の位置にハイレインがいる事、……等々これらの要素をある程度説明できるようなる。


先程挙げたアフトの特異な点の一つである、『①本来は王族が居るはずの位置にハイレインが居る事』については、次のように解釈することで説明が可能になる。

ベルティストン家は過去に神を献上し、王族に迎え入れられた歴史があり、その結果ハイレインは当時の王族と血縁関係にあるのでは?という解釈だ。

アフトクラトルの王族直系と傍系のイメージ

つまり、「神を献上し実権を握る」という表現は、王族に迎え入れられる事を意味している…というのが今回の考えだ。 この解釈であれば、『神Aを献上した当時の実権者』とハイレインの間に血縁関係がある事になる。


そしてもう一つの特異な点として挙げた 『②本来は神が運用している筈の冠トリガーを、神の管理下から切り離している所』については、先程提唱した『神の寿命をキッカケに冠トリガーが黒トリガーに変化する仮説』を絡めて、以下の図を用いて説明しようと思う。

冠トリガーが黒トリガー化するまでの時系列イメージ

①かつて『卵の冠』を生み出した『神A』が存在し、その当時『卵の冠』は冠トリガーだった。
②だが神Aの寿命が尽きそうになり、新たに神Bを母トリガーに同化させ、神を世代交代させる必要が出てきた。
③神Aが不在になった事で『卵の冠』を操作する物が居なくなり、それにより『卵の冠』は外部の適合者が使用可能な黒トリガーに変化した。
④現在アフトクラトルの母トリガーは神Bによって運用され、星を豊かにする役目は現在『冠トリガーB』が担っている。


この仮説を採用した場合、神の世代交代を繰り返すほどに、その国が所有する黒トリガーが増えることになる。 もしかするとアフトクラトルに存在する13本の黒トリガーには、かつて冠トリガーだったものが何本か含まれているのかもしれない。


アフトクラトルにおけるクラウントリガーの役割

最後に『卵の冠アレクトール』が冠トリガーたる機能を持っているのか?という側面から考えたい。
『冠トリガーってのは簡単に言うと 母トリガー直属のその星で一番強力なトリガーだ』
三雲 『母トリガー直属ってことは…… 星を「守る」ためのトリガーってことですか?』
『それは星によって違う 母トリガーを守護するために使われることもあれば 星を豊かにするために使われたり いろんな形がある』

引用元: 【ワールドトリガー23巻 P126】

冠トリガーとは星を豊かにするたり、星を守るための機能を持つことがある。

もし『卵の冠』が冠トリガーならば、その本質は戦闘では無く星の維持、生命の循環に相当する役割を与えられているのでは無いだろうか?

アフトクラトルにとって戦争や内紛は日常であり、時には広大な平野や森の奥深く、深い水底に武器の破片やトリオン兵の残骸が散乱している事もあるだろう。

だが卵の冠の生物弾があれば、あらゆるトリオン生成物を無害なトリオンキューブに変換し還元する事が出来る。

星を環境を維持するための『分解者』としての役割を与えられたのが『卵の冠』の本質なのでは無いだろうか。


結局『卵の冠アレクトール』が冠トリガーなのか、それともただの黒トリガーなのか、現状の情報ではおそらく確定させることができない。 だが、『卵の冠』のルーツに冠トリガーが関わる場合、『卵の冠』は神が同化した時に生じた事になる、とは言えるだろう。

3章のポイント
  • 過去の神の献上時に『卵の冠アレクトール』が生じた可能性

ガロプラ侵攻と『泥の王』

泥の王ボルボロス』が作成された時期はある程度までなら絞り込む事は可能だ。

ガロプラ侵攻時にエネドラの角が黒く染まっていたため、『泥の王』が作成された時期はその遠征より前である、という所までは確実なはずだ。

泥の王作成時期に関する条件確認のため、まずはガロプラ侵攻が行われた時期について考えて行こうと思う。


①第二次大規模侵攻におけるレプリカの誤算

ガロプラ遠征の時期を推測するための手掛かりとして注目したい事がある。それは レプリカが行ったアフトクラトルの戦力予想が実際と大きく異なっていた事についてだ。

レプリカ 『しかし黒トリガーはどの国でも希少なため 通常は本国の守りに使われる』
『遠征に複数投入される事は考えづらい多くても一人までだろう
引用元:【ワールドトリガー5巻 P160】

だが実際は、まさかの黒トリガー四本投入に加え、うち一つは国宝の使い手ヴィザまで参戦する始末だった。

レプリカ 『「星の杖」……⁉ ユーゴの残した記録によればあれはアフトクラトルの国宝の一つだ!』
(その使い手を遠征に投入するとは……一体アフトクラトルに何が起こっている……?
引用元:【ワールドトリガー8巻 P25】

確かにアフトクラトルでは現在進行形で神の寿命が尽きようとしており、国家存続の一大事が起こっている。

そんな異常事態をレプリカ達が知らないという事は、『神の寿命問題』が本格化したのは、レプリカ達がアフトクラトルに滞在していた時期より後だという事だろう。

レプリカ 我々がその2国に滞在したのは7年以上前なので 現在の状況とは異なるかもしれないが 私の記録では 当時キオンには6本 アフトクラトルには13本の黒トリガーが存在した』
引用元:【ワールドトリガー5巻 P159】

逆に言えば『神の寿命問題』ぐらいの異常事態が無ければ、星の杖が遠征に投入される事は通常あり得ない筈なのだ。

つまりヴィザが参加したガロプラ遠征も『神の寿命問題』に関わる何かの一環という事になる。

時系列を整理すると、『レプリカ達のアフト滞在期(7年以上前)』➡『神の寿命問題の顕在化』➡『ガロプラ遠征』という順番になるだろう。


②ガロプラ高校甲子園出場

ボーズの正体 オルカーン
ジャパニーズ野球少年に擬態していたロイヤルボーズ。ガロプラ高校7年ぶり2度目の甲子園出場を目標に掲げることで、アフトの目を欺くことに成功している切れ者迅と交渉してたはずがいつの間にか疑りメガネにすり替わっており、微妙に納得いってないはずだが顔には出さないあたりに器の大きさを感じさせる。今後の活躍にご期待ください。
引用元: 【ワールドトリガー23巻 カバー裏】

オルカーンが王族から野球少年に擬態する原因になったのはアフトクラトルから受けた侵攻が原因だ…つまり『野球』とは戦場、『野球少年』とは兵隊、『甲子園出場』とは遠征の暗示であり、『2度目の甲子園出場』とはハイレインの指示で行った足止め遠征を表す事になるだろう。

ならば『7年前』に出場した甲子園とは、アフトに助っ人メジャーリーガー4人をねじ込まれ、ホームの戦術的有利を活かせず涙ながらに母トリガーを奪われたあの屈辱の侵攻の事を指しているのだろう。



ここまでの検討により、ガロプラ遠征が行われた時期を推測する手がかりが2つ得られた。

レプリカの発言から導かれる『7年以上前より後』、オルカーンの甲子園出場が暗示する『7年前』。 これら2つの要素はギリギリだが両立する。

矛盾が無いのであれば、今回の考察ではこの『7年前』を、ガロプラ遠征が行われたタイミングとしてぜひ採用したい。

『7年前』にガロプラ遠征が行われ、その時期に既にエネドラの角は黒くなっていた。 したがって、『泥の王作成』➡『ガロプラ遠征(7年前)』という条件を設定できる。


③ベルティストン家の領土と所有する黒トリガーの本数の関連性

泥の王が作成された時期についてもう一つ考えたい要素がある。 レプリカのアフト滞在時点で13本の黒トリガー存在していた、という発言についてだ。

13本の黒トリガーの所在を1領主辺りで考えると『13÷4=3あまり1』であるため、 黒トリガーを4本持つ場合かなり優位な立場になる事が想像できる。

ここまでの考察を振り返ると、『窓の影スピラスキア』『星の杖オルガノン』『卵の冠アレクトール』にはそれぞれ数百年以上の歴史がある事になってしまう。 そのため、『泥の王ボルボロス』まで歴史の古いトリガーだと仮定すると、 ベルティストン家は長年に渡って黒トリガーを4本持っている事になり、近年のアフトはベルティストン家1強の時代だった事になりかねない。

しかし四大領主の領土のバランスに注目すると、むしろベルティストン領は狭い方だ。

ベルティストン領の狭さ
エネドラッド 『そういうでかいグループが四つあって それぞれ縄張りを主張してんのさ』
(中略)
トリガー使いが多いほど広い範囲を支配できて ザコ市民もたくさん飼えるからな』
引用元:【ワールドトリガー14巻 P82-83】

ベルティストン領だけ狭いのは単なる地形の問題か、それともコマ内の台詞枠を避けて説明するためのレイアウトの問題か。

仮に領土の狭さがトリガー使いの少なさに依るものならば、長年黒トリガーの本数で1強だった領主だとは到底思えない。

従って、泥の王が作成された時期は『黒トリガー13本時代』より後だと考えた方が自然に思える。

すなわち『レプリカ達のアフト滞在期=黒トリガー13本時代』の後に『泥の王』は作成されたのではないか?…という意見だ。


そしてこれまでの要素を一つの時系列に纏めたのが以下の図だ。

ガロプラ侵攻と『泥の王』作成の時系列

この考えを基にすると、泥の王が作成されたのは、『7年以上前』~『7年前』のわずかな期間である事になり、ガロプラ遠征の直前という事になる。 もしかしたらエネドラの『泥の王ボルボロス』使用の初陣がガロプラへの遠征だったのかもしれない。

ただしレプリカ達が、キオン➡アフトではなく、アフト➡キオンの順に訪れていた場合は、もう少しスケジュールに余裕が出る。

3章のポイント
  • 泥の王ボルボロス』が作成されたのは、『レプリカ達のアフト滞在終了後』~『ガロプラ遠征』の間である可能性

アフトクラトル開発室技術顧問

角の技術はアフトクラトルの戦略を支える重要な機能をいくつも備えている。

恐らくトリガー工学では高度な技術である『通信機能』。ハイレインをして玄界のトリガーは厄介だと言わしめる要素だ。

遊真の黒トリガーも『通信機能』を外付けのレプリカに頼らざるを得なかったくらいだ。


そして『黒トリガーの解析と機能の再現』。「角つき」が黒トリガーに適合した場合、角を介して黒トリガーの機能を解析し、モッド体ラービットとして限定的に機能を再現する事すら可能だった。

似た様にレプリカは解析したラービットに、遊真の黒トリガーの能力を付与するだけでなく、トリオンに余裕があればキューブ化の能力すら再現可能という口ぶりだった。

『通信機能』『黒トリガーの解析・再現』、『角』と『レプリカ』にはトリガー工学的にとても高度な機能が共通して備わっている。

両者の共通点はそれだけではない、『角』と『レプリカ』には互換性すらあるのだ。

エネドラの角は脳ごと移し替えたのですか?
角にバックアップされていた人格・記憶情報をラッドに接続しているだけなので、脳みそはもうありません。 エネドラッドが考えたりしゃべったりできるのは、レプリカ(ちびレプリカ)の解析データを流用した新技術で、割と実験的な試みです。  4/7
引用元: 【ワールドトリガー公式X(旧twitter) お盆企画Q&A 20230817_17:01】

レプリカの機能の一つに、角に保存されたデータを読込み、再生するための機能が備わっている事が分かる。 この機能は、レプリカが持つ『情報記憶・開示機能』の機能を応用した物だろう。

レプリカの5大高性能機能 INFORMATIONインフォメーション 情報記憶・開示機能
豊富なデータベースの中に、空閑有吾と共に歩んだ軌跡を蓄積した。その情報を活用して、息子の遊真と戦闘の復習と戦術を学んでいた。
引用元:【BBF-P153】

データの読み書きは、基本的に特定のルール(拡張子など)の元に行われる必要がある。 『角』と『レプリカ』には共通のOSが搭載されているからこそ、開発室はあのスピードでエネドラッド生成が実現したのだと思う。

この様に『レプリカ』と『角』が持つ機能には共通点が多く、図でまとめると以下の様に比較できるだろう。

『レプリカの機能』と『角の機能』の共通点

トロポイにルーツを持つ自律思考型トリオン兵レプリカ。そしてレプリカの機能と互換性を持つ『角』。 もしかすると『角』のルーツにもトロポイが関わっているのでは無いだろうか?

ここで1章で考察した有吾さんのアフト滞在時の協力者の事について思い出してほしい。 そのとき有吾さんには『軍事機密にアクセス可能な協力者がいたのでは?』と考察した。

だが角のルーツにトロポイの技術が関わっているなら話は別だ。

『有吾さんはどうやってアフトクラトルに滞在していたのか?どのような役割を持っていたのか?』


考えられる可能性の一つ、有吾さんはトロポイの技術を用いて角の研究に協力していたのではないか?

軍事機密にアクセス可能な協力者が居たどころの話ではない、有吾さん自身がアフトの軍事機密の中核たる開発室の技術顧問だった可能性すらあるのだ。

レプリカはアフト滞在時の事を自分の体験として語っているため、有吾さんはアフト滞在前にトロポイと関わりがあった事が示唆されている。 トロポイの技術は珍しいため、アフトに訪れた際はその腕を開発室にスカウトされ、現地に長期滞在できたのだろう。

その場合、有吾さんのアフトでの功績は以下の2パターン考えられる。


①角の技術のコンセプトは前々からアフトで構想があり研究されていたが、有吾さんがもたらしたトロポイの技術体系を組み込むことで、その性能が飛躍的に向上した。


②かつてトロポイからもたらされた『角』の技術がアフトにはあったが、その技術を解析できるエンジニアがおらず、実質オーパーツと化していた。そんな折にトロポイの技術を解析可能な有吾さんが訪れ、行き詰っていた角の研究にブレイクスルーが生じた。


いずれにせよ、有吾さんはトリガー ホーン の改良にとても大きな貢献をした事だろう。

だがそれも良い事ばかりではない。角の技術とレプリカに互換性があるなら、角の技術を研究しているアフトには、レプリカを解析するための下地が十分すぎるほどに構築されている事になる。

ボーダーがエネドラの死体の角から情報を引き出したように、アフトもまたレプリカを改造し情報を引き出す事は容易いのかもしれない。

3章のポイント
  • 有吾さんはアフトクラトル滞在時に、トリガー ホーン の改良に協力していた可能性。

3章まとめ

3章で考察した結果を元に黒トリガーの開発順、及びそれに付随するアフトクラトルの歴史についても纏めようと思う。

まずは最も古いトリガーだと考察した窓の影スピラスキア。これはアフトクラトルがまだ一つの集団だった頃のアフトクラトル黎明期まで遡るかもしれない。

次に国宝星の杖オルガノン。日本における国宝は古いもので飛鳥~平安時代、新しいもので明治時代の物まで登録されている様だ。この事を参考にするなら、星の杖は100~1000年ほどの歴史を持つと見込めるだろう。

そして卵の冠アレクトール。このトリガーが冠トリガーに由来があると仮定するなら、その出現は恐らく神が誕生した瞬間、すなわち数百年以上前に遡るだろう。今回の考察では、ベルティストン家の先祖がN代目の神を献上したタイミングに『卵の冠』が誕生したと考える。 また、1章で考察した案を採用すると、現在の神の献上時にアフトは4つの領土に分かれている。

そしてアフトクラトルの現在の神と初代の神の間には、国力をねちねちと厳選した世代が存在するはずだ。 『ねちねちと厳選』というワードからは、最低でも2~3回以上の世代交代が発生してそうなニュアンスを感じるため、神の寿命を数百年とすると、おそらく1000年ぐらいは厳選が行われてきたのだろう。

これらの歴史を図に纏めると以下の様になる。

アフトクラトルの歴史予想図

この図を纏めてみた感想が一つある。『マントトリガー、ロングセラー過ぎないか?』

黒トリガーへのサブ装備の制約を考えると、『マント』は『星の杖』作成よりも前に開発されている必要があり、その場合『マント』は数百年以上現役で使われているトリガーである事になってしまう。

傑作トリガーは長く使われるだろうが、それにしても長い。流石に機能の改良はあってしかるべきだろう。

そう思いながら本編を見返すと気付いたのだが、ランバネインとヒュースが纏うマントはハイレインの物に比べ耐久力が格段に高い描写があるのだ。

ワールドトリガー7巻P36・112(集英社葦原大介)】

この2コマはそれぞれ、ランバネインが茶野隊のアステロイドに被弾するシーンと、ヒュースが烏丸のバイパーに被弾するシーンだが、両者共にトリオン体は無傷だ。

ここでマントの強度についておさらいすると… ハイレインのマントは三輪のバイパーを被弾し、1枚分の厚みでは貫通されてしまう強度だった。 つまり『トリオン6・拳銃・バイパー』よりも弱いという事だ。

一方でランバネインが茶野隊のアステロイドに被弾した時、マントの端がちょっと欠けたがトリオン体は無傷だった。 そして茶野、藤沢は両者共にトリオン6のため、ランバネインのマントは『トリオン6・拳銃・アステロイド』をほぼ相殺できる強度を持つ事になる。

偶然にも弾丸使用者のトリオンと銃型が共通なため、両者の強度は明確な比較が可能だ。

【トリガーの強度】
ランバネインのマント ≧ 茶野隊のアステロイド > 三輪のバイパー > ハイレインのマント

なおヒュースに関しては銃型と射程が異なるため厳密な強度の比較はできないが、それでも烏丸の『トリオン7・突撃銃・バイパー』を被弾して無傷な程度に強度が高いと言えるだろう。

つまりアフトが近年開発したトリガーには、改良された『高性能なマント』が搭載されている可能性があるのだ。

マント改良の時系列の予想

アフトクラトルの衣装を見比べた時、ミラだけマントを装備していなかったため、『後方支援担当だからオペレーターみたいに隊服が異なるのかな?』とか『香取隊みたいに男女でデザインが異なるのかな?』という感想を抱いていた。

3章の考察を基にすると、アフトの戦闘体において、性別・ポジションとマントの有無に直接的な関係は無いという事なのだろう。




第4章 アフトクラトルの指揮系統

ここまでの章では国旗トリガーに注目する事で、アフトクラトルのトリガー技術と国土に関する考察を行った。

今回の記事では最後にアフトクラトルの『社会』『軍事の情報』に関する考察を進めて行きたい。

ここで注目したいのが、アフト遠征部隊の衣装に描かれた特徴的な模様についてだ。

ワールドトリガー6巻P66-67(集英社葦原大介)】

あの大小の円を組み合わせた謎の模様が一体何を表しているのだろうか?この章ではアフトの文化的側面について、現実世界の制度も参考にしながら考察を進めて行きたい。


衣装の円が示す部隊の序列

アフトクラトルの遠征メンバーの衣装には大小の円を組み合わせた模様があしらわれているが、模様の違いで1~6が表されている様に見える。

あの数字が何を表しているのか?真っ先に思いつくのはやはり部隊の序列だろう。

隊員一人一人の序列が明確であれば平時の指揮系統はもとより、数人単位の小隊で別行動する時や、上官が死亡した際の指揮系統の再構築をスムーズに行う事が出来るだろう。

そしてそのシステムは恐らくガロプラでも採用されており、隊服のタグに1~6を表す円が刻まれている。

ワールドトリガー14巻P106・107(集英社葦原大介)】
ガロプラの序列タグ
序列 キャラ名 役職 年齢
ガトリン 隊長 35
コスケロ 副隊長 28
ウェン・ソー 24
レギンデッツ 17(先輩)
ラタリコフ 17(後輩)
ヨミ 支援? 14

ガロプラの序列はとても分かりやすく、タグの円の数と年齢順が対応しており、兵役年数順に序列が決まる事が推察できる。

同い年のレギーとラタリコフについても、同様に兵役年数順に序列が決まっている事が言える。 ラタが兵士になったキッカケはアフトの侵攻だったが、その時点でレギーは既に兵士だったため、レギーが先輩である事が分かるからだ。

4章のポイント
  • ガロプラの指揮系統は年齢or兵役年数順で決まる

アフトクラトル遠征部隊の序列

では次にアフトクラトルの大小の円の模様がどうなっていたか確認したい。

アフト遠征部隊の衣装の円には2パターンあり、一つは本編の第二次大規模侵攻、もう一つは回想時のガロプラ侵攻が行われた時だ。

アフトクラトルの序列の時期毎比較

ガロプラの序列は年齢順に綺麗に並んでいたがアフトクラトルの序列には法則を見出す事が出来ない。

そればかりか二回の遠征でヴィザ等の序列が変化している事もその謎を深めるばかりだ。

一見無秩序にも思えるこの2つの序列に、何か一定の法則を見出せないか検討していきたい。


アフトクラトルの二度の遠征の序列を見比べたとき、注目するべき要素が4つある

①黒トリガー所持は序列に直接関係しない
②年齢・兵役年数順ではない
③[指揮]のパラメーターは直接関係しない
④支援役の人間が序列最下位になるとは限らない事

これらの事について順を追って整理する事で考慮するべきポイントが絞られるだろう。


①黒トリガー所持は序列に直接関係しない

まず①について、二度の遠征においてランバネインの序列はどちらも『3』だが、それより下位の序列『4』に黒トリガーを使うエネドラが居たりヴィザが居たりする。そのため、単純なトリガーの性能や腕っぷしでは序列が決まらないことが分かる。

この事について、ヴィザとエネドラの序列が入れ替わった…と言うよりも、『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』の二つについて考えるべきだろう。


②年齢・兵役順ではない

次に②について、大規模侵攻において20歳のエネドラが序列『2』である事、16歳のヒュースがミラより高い序列である事からも、年齢と序列に直接的な関係が無い事は明白だ。

つまりアフトクラトルの部隊において、単純な年齢よりも優先するべき重要な序列が存在するという事だろう。


③[指揮]のパラメーターは直接関係しない

やはり指揮系統を分析するからには、ハイレイン達の[指揮]のパラメーターを一度整理しておきたい。

現在の時間軸で比較するために、大規模侵攻時の序列とBBFの指揮で比較する。

序列 キャラ名 [指揮]BBF
ハイレイン [10]
エネドラ [5]
ランバネイン [7]
ヴィザ [8]
ヒュース [6]
ミラ [5]

この表を見て分かる通り、序列と[指揮]のパラメーターは対応していない。

今回の考察では『序列=指揮系統』だと扱っているが、その場合序列『2』に[指揮]が[5]のエネドラが居る事に大きな違和感が残ってしまう。

指揮[5] と言えば、『優秀な隊員』or『B級中位~下位部隊の隊長レベル』に相当し、指揮と戦闘の両立に負担が生じる事もある値、という印象だ。

つまり『さほど[指揮]が秀でていないエネドラが遠征部隊で序列「2」である事』に対して、それ相応の理由を示す必要があるだろう。


④支援役の人間が序列最下位になるとは限らない事

そして④について、この事は二度の遠征におけるミラの序列の変化から伺う事が出来る。

第二次大規模侵攻においてミラの序列が最下位の『6』である理由の候補として、『後方支援役だから』という理由がまず最初に思いつく。

だがガロプラ侵攻時のミラの序列は『5』であり最下位ではないのだ。

その当時のミラの役職は不明なため断言はできないが、後方支援の人間だから序列が最下位になるとは言い難い状況だ。

つまりミラの序列がヒュースよりも低い『6』になっている事には、何か別の理由が必要なのだ。



腕っぷし、年齢、兵役、[指揮]のパラメーター、ポジション、あらゆる可能性が排除される。

だがその中でもたった一つ、ほぼ確実に言えることがある。

ハイレインが隊長なのは、彼がベルティストン家当主、すなわち領主だからだ。

そもそもの話、ガロプラとアフトの遠征部隊のメンバーには決定的に異なる点がある。

ガロプラのメンバーはラタという例外を除いて全員軍所属の専業軍人である事に対し、アフトクラトルは高貴な身分の人間が複数人紛れ込んでいるのだ。

4章のポイント
  • アフト遠征部隊には年齢よりも重要な序列が存在する可能性

アフトの貴族における『角』の役割

アフトの遠征メンバーには領主やその親族が選抜されており、いくら黒トリガーの適合者とは言え、指導者が最前線で戦うという本来なら避けるべき異常事態が起きている。

恐らくこの特殊な状況には、近界特有の事情『トリオン』が関係している。

トリオン量は遺伝しますか?
ある程度の確率で遺伝するようですが、必ずしも親の能力が子に引き継がれるわけではありません。例えば、千佳の両親のトリオン能力は、特に高くありません。
引用元: 【ワールドトリガー7巻 質問コーナー④】

『ある程度の確率で遺伝する』、つまり高い素質を持つ家系の子孫もまたトリオンの才能に恵まれる確率が高いという事だ。

この事はエネドラの発言からも伺う事が出来る。

エネドラッド 『家柄がショボい雑魚市民の中にもたまにそこそこトリオンを持ったやつが生まれる。』
『上の連中はそういうガキを探して買ってツノ付けて 将来の兵隊候補として育てるんだ』

引用元: 【ワールドトリガー14巻 P89】

エネドラの発言は裏を返せば、アフトクラトルでトリオン能力が高い人間の大多数が高貴な家柄出身という事になる。 遠征部隊のメンバーすなわちアフトの精鋭に、やんごとなき身分の者が多かったのはこのせいだろう。

だがトリオン能力は『ある程度の確率で遺伝する』、つまり必ず遺伝するとは限らない。

トリオンが文化の中心であり、とりわけ身分階級にまで影響するアフトクラトルにおいて、跡継ぎのトリオンがもし低ければ、武勲を上げることも難しく家の立場を危ぶめてしまうかもしれない。

だがアフトには角がある。角さえあれば後天的に才能を伸ばすことができるのだ。 なら角を移植しない手はない、貴族にとって角は地位を保証するための命綱にもなり得るだろう。

そして角の移植時に被験者を『厳選する』という行為は、角のリソースには限りがあり、そのコストが高い事を示唆している。 その結果、金持ちばかりが角の技術にアクセスでき、角が金持ちの身分を盤石にする循環が生まれてもおかしくないだろう。

その様なサイクルが数世代も繰り返せば『トリオン貧富の格差』は世代を追うごとに更に開いていく。

本来棲み分けされるべき『個の武力』と『貴族の地位』が、『角とトリオン』により深く結びついてしまった歪な社会構造がアフトクラトルの現状を形作っているのだろう。

そう、つまり『家』だ。アフトクラトルの軍の序列には『家』の事情が複雑に絡み合い成り立っているはずなのだ。

『家』というアフトクラトルの社会構造に注目する事が、遠征部隊の序列の法則を解き明かすカギになるだろう。

4章のポイント
  • 軍の内情には『家』の事情が深く関わっている可能性

ベルティストン家配下の御三家

ここからはアフトの『家』の階層構造に注目しようと思う。 アフトクラトルでは四人の領主が土地を治めており、その下にも配下の『家』がある。

それを表した図がこのコマだ。

ワールドトリガー14巻P82(集英社葦原大介)】

葦原先生が描く概略図でハッキリと個数が描かれている場合、既に決まっている設定から引用している事がとても多いと感じる。

これはメタ読みでしかないのだが、この図に意味を見出すならベルティストン家には直属配下の家が3つある。

もちろんそのままの意味ではない、このコマの前後に描かれた領土概略図にはそれ以上の『直属配下の家』の凡例があるからだ。

つまりこのコマが表しているのは、ベルティストン家配下に武闘派の『家』が3つあるという事ではないだろうか?


ベルティストン家、すなわち『領主の家』には領主ハイレイン、弟のランバネイン、そして恐らくハイレイン直属の兵士ヴィザが所属している。

そして配下の家には大きな戦力が三つある。

一つ、『泥の王ボルボロス』を所持するエネドラの家。
二つ、『窓の影スピラスキア』を所持するミラの家。
三つ、『配下の中で一番トリオンがでかいやつ』、当主エリンが率いるエリン家だ。

この三つの巨大な戦力がベルティストン家を支えているのだろう。

ここで1つ提唱しておきたい仮説がある。アフトクラトルの遠征メンバーはその御三家から均等に選抜されているのではないか?という考えだ。

遠征で得られる戦果はとても大きく、遠征が成功すれば功績に応じて報酬を貰い、参加した『家』は土地や名誉を得ることができるだろう。

その分代表を選ぶときには注意が必要だ。もし特定の家から何人も選抜すれば、手柄が集中し各家のパワーバランスが崩れる事態にもなりえる。手柄の均等化のため、各家から均等にメンバーを選抜する事は、組織のガバナンスとして重要な視点だと思う。

特に国家の四大領主が内政で争う様な体質が根付くアフトクラトルでは。

つまり何が言いたいかというと、遠征部隊には『エリン家枠』があり、ガロプラ遠征で後頭部だけ見えていたあの人物はエリン家の人間、『当主エリン』その人なのでは無いか?という事だ。

エリンは神候補になる程のトリオン能力を持っており、もし居なくなれば『家』全体の戦力がガタ落ちになると言われるほど、高い『個の武力』も備えている。

したがって『当主エリン』が遠征部隊に選ばれる実力を持っていてもおかしくないだろう。

ベルティストン家と武闘派御三家
4章のポイント

  • ベルティストン家配下には戦闘を生業にする直属配下が3つある可能性
  • ガロプラ遠征に参加していた『後頭部』の人は、エリン家当主『エリン』である可能性

アフトクラトルの封建制度的側面

ふとした拍子にコマの背景に映るアフトクラトルの街並みは、中世ヨーロッパを思わせる雰囲気があり、また、王家や領主という概念が存在する事も、その印象をより強く表している様に感じる。

王族や武士を題材として用いる創作において、その時代の世界観を表現する一つの手段として、当時の身分制度や社会構造の一部側面を作中に落とし込む手法は一般的な事だろう。

ここからは現実世界における中世~近代の歴史や制度を参考にしながらアフトクラトルの文化的背景を考えて行きたい。

封建制度:参考WEBサイト
封建領主 - Wikipedia
https://academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/primogeniture
長子相続 - Wikipedia

領主ベルティストン家の主従関係

現実世界での中世ヨーロッパでは封建制度という社会構造が存在しており、 この制度の下、主君は恩賞として家臣に土地を与え、家臣は軍事的な奉仕や忠誠をもってこれに報いていた。この様に土地を介在した契約は封建的主従関係と呼ばれていた。この契約は双方が義務を果たす必要があり、一方が義務を履行しない場合はその契約が解消されることもあった。

また、主君から土地を与えられた家臣は『領主』と呼ばれ、領主はその領土を荘園として経営し、農民を支配・保護する社会構造が成り立っていた。

この構造はアフトクラトルにもよく当て嵌まっている様に感じる。

エネドラッド トリガー使いが多い程広い範囲を支配できて ザコ市民もたくさん飼えるからな

引用元:【ワールドトリガー14巻 P83】

アフトクラトルにおいても、トリガー使いの数に応じて、王家から四大領主へ土地の支配権が与えられるのかもしれない。

アフトの封建的主従関係のイメージ

騎士階級とエリン家

中世ヨーロッパの封建制度では「騎士」と呼ばれる戦士階級が存在していた。彼らは領主と主従関係にある『小領主』である事が多く、領主から与えられる土地(恩賞)に報いるため、軍事的奉仕を提供する軍事担当者としての役割を担っていた。

このように、領主は自身の主君(国王など)から与えられた土地を家臣(小領主)に再分配する事があり、その結果として、主君から見れば下級の家臣へと連なる階層構造を持つことになる。

この構造をベルティストン家に当てはめるならば、『主君』とはアフトクラトル王家であり、『領主』とはベルティストン家、領主と主従関係を持つ『騎士(小領主)』とはエリン家当主の事になる。

主従関係の階層構造

なお、この様な階層構造を持つ場合、ヒュースはエリン家の人間であるため、ハイレインとヒュースの間に直接的な主従関係や命令権は無い事になる。そのため、ハイレインがヒュースに命令するならエリン家当主に話を通す必要があるだろう。

また、騎士階級の家において騎士になるためには、幼い頃から戦闘訓練に励むことになる。 7歳頃から小姓ページとなり、主君に仕えて騎士として必要な技術を学び、14歳頃には元服儀礼的成人)し従士スクェアとなり、一人前の騎士として実際の戦闘に参加する事になる。

ヒュース 8つの頃から14で「蝶の盾ランビリス」を手にするまでずっと……誰に剣を習ったと思っている……!

引用元:【ワールドトリガー18巻 P173】

ヒュースが8歳頃から剣を習い、14歳で実戦を踏まえた最新鋭のトリガーを手にした事は、ヒュースもといエリン家が騎士の階級に相当する身分であり、軍事をつかさどる『家』である事を表しているのだろう。


長子相続とミラの政略結婚

ここからは家督の相続に注目した封建制度の社会構造に注目して行きたい。

中世ヨーロッパの封建的社会においては、家の権力や社会的地位を維持するために、所有する領地をできるだけ大きく保ち、それらを維持統合する事が求められていた。

その様に土地を単なる生活基盤ではなく、権力を保つ手段として考えたとき、その相続は分割されるべきでなく、一人の跡継ぎに集中して継がせるべきだという視点から、長子相続が行われる様になった。

そして中世の、特にフランス等の地域における長子相続では、長男が優先的に土地を受け継ぎ『当主』になる事が認められていた。

また、『家』同士の結び付きを強める目的で、当主の娘が別の当主の後継者と政略結婚をすることもあった。

つまり政略結婚を予定しているミラは、自家当主の縁者に相当する上流階級のご令嬢だと考えられるのだ。

そして第2章の考察に基づくと、エネドラとミラは幼少期から旧知の仲であると推測される。2人の馴れ初めが上流階級の社交界での親同士の関係に由来すると考えれば、その関係性は自然だと思える。

したがって、ミラがご令嬢であるならば、エネドラも同様に自家当主の縁者に相当する高貴な身分だと考えられるのだ。


エネドラの軍における身分

今回の考察ではガロプラ侵攻を7年前の出来事だと扱っている。 つまりエネドラは当時13歳であり、若くして遠征部隊に選ばれるエリート軍人だった事になる。

エネドラッド 『教えたくても詳しくは知らねーんだよ 外回りは雑魚の役目だ オレの仕事じゃねえ

引用元:【ワールドトリガー14巻 P51】

エネドラはヒュースを『外回りをする雑魚』と見下しており、7年以上に及ぶ軍人キャリアで雑務等?を経験せず今の地位に居る事になる。

この待遇は相当なものだ。当主の縁者は兵役に従事する際、上級職からスタートする様な制度がアフトクラトルにあるのだろうか?

ここで一度ガロプラ遠征時点でのハイレインの身分に注目してみようと思う。

ガロプラ遠征時のハイレインの序列は『1』であり、これはハイレインが当時22歳にして既にヴィザの上官として遠征を指揮する立場にあったことを意味している。

この事から、ハイレインは20歳を過ぎる頃には領主の座を既に引き継いでいたと考えられる。

ボーダー隊員がみんな若いのはなぜですか?
一番大きな理由は、「若いほどトリオン器官が成長しやすいから」です。20歳を過ぎてトリオン器官の成長が止まった隊員は、防衛隊から本部運営に回ることが多いです。(沢村さんとか)
引用元: 【ワールドトリガー5巻 質問コーナー①】

長子相続が行われる文化圏おいて跡継ぎが家督を継ぐ条件は様々あるが、跡継ぎが成人を迎えた時に、当主が隠居(生前に当主を退く事)し家督を譲るパターンも当然存在する。

20歳になりトリオン器官の成長が打ち止めになった際は、前線に立つよりも祖国の運営(領主や当主)に回るのが近界の文化なのではないのだろうか?

ならば当主の縁者は自身が家督を継ぐその時のために、兵役時も上級職としての責任を持ち経験を積む構造になっているのかもしれない。

4章のポイント

  • 階層構造を持つ主従関係において、領主は『配下の配下』に対して直接命令できる様な関係性を持たない
  • エネドラとミラはそれぞれ当主の縁者である可能性
  • ハイレインは20歳(トリオン的成人)を機に領主になった可能性

遠征部隊の序列変化①:近衛部隊

ここまでアフトクラトルの封建制度を示唆する描写に注目し、アフトの文化や軍の制度に焦点を当てて考察を進めて来た。ここまでの考察を踏まえ、アフトクラトルの遠征部隊における序列の変化を一貫して説明できるモデルを提唱したい。

だがその仮説を提唱する前に、もう一つ参考にしたい序列のモデルがある。 それはボーダーの指揮系統についてだ。


ボーダーの指揮系統の序列整理

ワールドトリガー3巻P19(集英社葦原大介)】

ボーダーの指揮系統において、本部指令支部直属の隊員に対して直接命令する事ができる。

一方、支部の隊員は本部指令との間に支部が挟まる分、指揮系統が『遠い』

つまり『本部指令』をトップに据える作戦行動においては、本部指令の命令を直接受ける『本部指令直属の隊員』の方が『各支部の隊員』よりも指揮系統において上位であると言えるだろう。

これらの指揮系統について、『本部指令』『各支部長』に注目した序列を整理すると以下の様になるだろう。

【ボーダーの指揮系統】
①本部指令
②各支部
③本部指令直属の隊員
④各支部の隊員

ボーダーの指揮系統の一例イメージ

ボーダーを参考にしたアフト遠征部隊の序列整理

それではボーダーの序列をアフトクラトルに置き換えて話をしたい。

本部指令とは組織の長、つまり領主が該当する。同様にアフトクラトルにとっての支部とは、配下の当主が該当するだろう。

そして本部指令直属の隊員をアフトクラトル風に置き換えると、領主の勅命に従って行動する兵士、つまり領主直属の近衛部隊とでも言うべき部隊になる。そしてその部隊に所属する兵士とは、ヴィザとランバネインであると考えられる。

そして最後に支部の隊員とは、配下当主に仕えるヒュースの様な兵士が該当するだろう。


これらを踏まえ、アフトクラトルにおける軍のルールを3つ提唱したい。

【ルール①】
序列は下記の優先順位で決まる
①領主(領主家の当主)
②配下の当主
③領主直属の近衛部隊
④配下当主の所属部隊

【ルール②】
当主の縁者が自家の所属部隊に入隊した時は上級職に就く。(上級職は外回り等の雑用を行わない。)

【ルール③】
次期当主は20歳を機に、相応しい立場に昇進する


アフトクラトルにおける軍の3つのルール

このモデルをまずはガロプラ侵攻時に当てはめる。

ガロプラ侵攻時の遠征部隊の序列

当時ヴィザが序列『2』だったのは、恐らく兵士の中で最も位が高い領主所属の近衛部隊に所属していたからだ。 歴戦の猛者であるヴィザは、普段は領主所属兵を率いる隊長の立場だったのだろう。

そしてこのモデルであれば、その後の第二次大規模侵攻において『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』をそれぞれ説明することも可能だ。

ランバネインとエネドラに共通する変化。それは二人が成人を迎えた事だ。

つまりランバネインは近衛部隊の隊長に、エネドラは自家の当主にそれぞれ昇進した可能性が考えられるのだ。

第二次大規模侵攻時の序列

エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由は、近衛部隊よりも序列上位の当主に昇進したからだろう。

また、ランバネインとヴィザの序列の逆転に関しては、ヴィザをたたき上げの一般職、ランバネインを将来の幹部候補たる総合職と考えれば分かりやすいと思う。

ランバネインはヴィザの部下として経験を積み、20を超える頃には隊長に昇進したという考えだ。

ハイレインが死亡した場合、次に当主の座を継ぐのは恐らく次男のランバネインだ。ハイレインの側近たる近衛部隊隊長としてランバネインを重用する事は、当主死亡のリスク分散の観点から非常に重要だろう。


ただし政略結婚する予定のミラにとって、成人後に家督を継ぎ当主になる事は状況的に考えにくい。

もしミラに兄弟や姉がいた場合、彼らが優先して家督を継ぐ事になるためミラが当主の座に就くことはない。 もしミラに妹がいる場合は、相続権の順位が低い妹が政略結婚の対象となる筈だ。よって恐らくミラに妹はいない。

したがって、ミラが政略結婚する予定があるという事実は、ミラが当主の地位に就くことがない事を意味している。

4章のポイント

  • 『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』は、ランバネインが成人を機に隊長になったから
  • 『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』は、エネドラが成人を機に当主になったから

遠征部隊の序列変化②:家柄ランク

ボーダーの指揮系統を参考にして、アフトの指揮系統に『領主直属の近衛部隊』というモデルを組み込むと、ヴィザ、ランバネイン、エネドラ廻りの序列の変化を説明する事が出来るようになった。

だが序列下位の『配下当主の所属部隊』に位置する兵士は、先程の枠組みでは差が生じないため、序列の仕組みを説明する事が出来ない。

具体的に言うと、ガロプラ遠征におけるエネドラ、ミラ、エリンの3人と、第二次大規模侵攻におけるヒュース、ミラの2人の事だ。

迷った時は基本に立ち返って考えるべきだ。指揮系統の大枠にボーダーのモデルを採用したなら、詳細の部分もボーダーの指揮系統を参考にしたい。

そもそも遠征部隊とは、異なる部隊出身の隊員を選抜して、一つの指揮系統の中で再編成している状態だ。つまり遠征部隊は実質混成部隊とも言えるだろう。

そして、混成部隊の指揮系統がどの様に構築されるかは、作中本編で既に描かれている。

来馬 ふつうだとリーダーはランク順か年齢順だよね

引用元: 【ワールドトリガー15巻 P54】

このセリフはガロプラのトリオン兵団VSボーダーの地上戦において、地上で追撃する部隊の指揮系統が決定されるまでの中で、来馬さんから発せられたセリフだ。

普通だと混成部隊のリーダーはランク順か年齢順で決まるらしく、実際にVSトリオン兵団に対しては年齢順に従い指揮系統が組まれていた。

具体的に言うと、狙撃班Aでは木崎が、狙撃班Bでは当真が、地上追撃混成部隊では 諏訪が指揮を執っており、それぞれ最年長が指揮する形に収まっていた。


『混成部隊において指揮系統は年齢順又はランク順で決定する』、この考えに基づきアフトクラトルの序列を再検討したい。

これまでの検討を踏まえるとアフトクラトルの序列に年齢はほぼ関係しない、ならば注目するべきは『ランク順』だ。

ここからはアフトクラトルにおける『ランク順』に相当する何かを考えて行きたい。そして現状分かっている情報の中で、『ランク順』に相当する物を説明できるとしたら、それはおそらく『家柄のランク』になるだろう。


①ガロプラ侵攻時:エネドラ>ミラの理由

この2人の家柄の序列に関してハッキリとした根拠を示す事は難しい。 だが強いて挙げるとすれば、ミラの政略結婚が関係しているかもしれない。

政略結婚とは家の結びつきを血縁によって強め、互いの家が繫栄する為にしばしば行われてきた。 そしてその目的の一つに自家の立場を向上させる事も含まれていた。

つまり領主家に嫁ぎ結びつきを強めようと画策するのは、ミラの家の家柄が相対的に低いから…とも考えられる。


②第二次大規模侵攻時:ヒュース>ミラの理由

ここで一度基本的な考えに立ち返って、ミラとヒュースの[指揮]のパラメーターに注目したい。

ミラの指揮は[5]、そしてヒュースの指揮は[6]。 たった1の差だがこの差はとても大きいと考えている。

ボーダーの正隊員(戦闘員)を参考にすると、指揮[5]と指揮[6]の間には、隊長か否かを隔てる絶妙な分水嶺が存在するっぽい雰囲気があるのだ。

[指揮] アフト部隊 役職:隊長 役職:隊員
[10] ハイレイン -
[9] - 風間 -
[8] ヴィザ 嵐山 木崎 -
[7] ランバネイン 太刀川 二宮 
[6] ヒュース 加古 三輪
来馬 三雲
柿崎 吉里
木虎 古寺
烏丸
[5] ミラ
エネドラ
冬島 弓場
香取 荒船
諏訪 那須
犬飼 辻
村上 空閑
照屋

指揮[5]の隊員は優秀な隊員であり、指揮[5]の隊長は指揮と戦闘の両立に負担があるという印象だ。 個人的な感覚だが、ミラは『指揮[5]の隊員』に当て嵌まる気がする。

対して指揮[6]の隊員は極めて頭脳明晰な隊員であり、指揮[6]の隊長は普通に指揮が上手い隊長という印象だ。 個人的な感覚だが、ヒュースは『指揮[6]の隊長』に当て嵌まる気がする。

ヒュースは修の作戦や指揮に対して、的確ではあるが厳しい態度で臨んできた。これはヒュースが祖国で積み重ねた隊長としての経験と、それに裏打ちされた確固たる実力とプライドに起因するものと解釈できるだろう。

つまりヒュースとミラの序列を決定している要素とは、『家柄ランク』そのものでは無く、ヒュースが隊長経験者だからと考えられる。


ボーダーの地上追撃混成部隊では、正式な指揮系統が決定するまでの間、指揮の整理は隊長たちだけで行われていた。これは混成部隊においても、隊長経験者が指揮系統で上位に位置し、その経験と能力が尊重される事を意味しているのだろう。


③ガロプラ侵攻時:エネドラ&ミラ>エリンの理由

最後にガロプラ侵攻時において、エリンの序列が最下位の『6』だった理由について考えて行きたい。

カギとなるのはアフト国土におけるエリン家の位置だ。

1章で示したアフト国土の概略図を参照すると、ベルティストン家周囲に直属配下の家が4つ、 そこから郊外に少し離れた場所にエリン家がぽつんと存在している。

郊外に位置するエリン家

『家の場所が国土の中央から近いか遠いか』、この事はアフトクラトルの国家の事情を踏まえると致命的な条件になり得る。

ワールドトリガー12巻P156(葦原大介集英社)】

アフトクラトルは神を厳選する事で広大な国土を維持しているが、その大きさは神になる生贄のトリオン能力に左右される。

もし先代の神よりもトリオン能力で劣る者が次世代の神になれば、星が小さくなり土地が失われ『今いる雑魚市民どもを飼う余裕がなくなる』。つまり王都から遠い地域に住む人間は、神の世代交代に伴い土地を失う可能性が高く、安全や財産が保障されない立場なのだ。

進撃の巨人』における壁内人類の様に、家柄が良い『家』ほど王都近くの安全な土地に居を構え、その一方で身分の低い『家』はより郊外の土地を割り当てられる可能性が高くなるのではないか?

この事から、郊外に土地を持つエリン家の地位は直属配下の中でも相対的に低い可能性があり、それが遠征の序列に影響を及ぼしていたのかもしれない。

つまりエリン家は僻地で『家柄ランク』が低く、エネドラの家とミラの家が実は内地のため『家柄ランク』が高い…という状況が起こっているのかもしれない。

現在の四大領主の家が位置する土地の範囲が、初代アフトクラトルの国土と一致していると仮定した場合、国土の中央に近い『家』ほど、古くからの由緒正しい家柄である……と考える事もできるかもしれない。

4章のポイント

  • 『家柄ランク』が存在する場合、その序列が『エネドラの家』>『ミラの家』>『エリン家』である可能性
  • ヒュースはエリン家所属部隊の隊長である可能性


ここで話が逸れるが、封建制度を踏まえたアフトクラトルの今後の予想について少し語ろうと思う。

鎌倉時代の日本にも「御恩と奉公」という形で封建制度が存在したが、モンゴル帝国の2度の元寇を契機に政権は崩壊へと向かった。その戦いは外国からの侵攻を防ぐのみで新たな領地獲得がなく、家臣への報酬(土地)が不足し、信頼と忠誠心が失われた事が、その政権崩壊の一因だった。 【鎌倉幕府の滅亡の理由】わかりやすく解説!!原因や滅亡させた人物・滅亡後など | 日本史事典.com|受験生のための日本史ポータルサイト

この事は星の大きさが有限である惑星国家もいずれ直面する問題だ。 そのような条件下で封建制度的な政権を維持する手段は二つ

●他の惑星国家を侵略し『御恩』のための土地を新たに確保する事。
●神を厳選し国土を徐々に広げる事

アフトクラトルは封建制度に似たその政権を維持するためか、神をねちねちと厳選し国土を徐々に広げてきた。

その国土の広さがトリオン能力という『一個人の身体機能の才能』に依存しているとしても、 時間をかければ必ず前回の神を凌ぐトリオンの才能を持つ者が現れる。

これは確立の問題だ。

生物の身体的特徴に基づく『才能の高さ』毎の出現確率は、おおよそ正規分布に従う事が多い。

数年に一人の逸材、数十年に一度の逸材、数百年に一度の逸材、そして数千年に一度の逸材。 どれだけ確率が低くとも、必ず前神のトリオン能力を凌ぐ逸材は見つかるのだ。

そして求める才能が出現する期待値が神の平均寿命を超えた時、国土の広がりは限界を迎え、アフトクラトルの政権は終焉に向かうのだろう。


4章まとめ

この章では、アフトクラトルの指揮系統のモデルとして『領主直属の近衛部隊』『家柄ランク』を採用し、2度の遠征における序列の変化を説明できそうな理屈を考えてみた。

それではここで7年前当時のハイレイン達の役職と、現在の役職を予想しそれぞれ纏めてみようと思う。

ガロプラ侵攻時の序列
ガロプラ侵攻当時の役職
第二次大規模侵攻時の序列
第二次大規模侵攻時の役職

4章の考察の起点となった『アフトの家と配下を示した概略図』があったが、今回はあの図の構成要素がそのままの意味を持っている前提で話を進めている。

あの図には1領主あたり『3配下当主』×『4部隊』×『3人』=36人が描かれており、+αで近衛部隊が存在するならば、ベルティストン家には最低でも40人程の兵士が所属している事になる。

その規模の所帯がアフトには4つあり、それぞれ領土で覇権争いをしていて、そこにボーダーの遠征部隊が突入した場合…………

今後200人規模の戦いが描かれる事もあり得るだろう。




考察記事総括

『アフトクラトルの国旗』『トリガーホーン』『アフトクラトルの黒トリガー』『アフトクラトルの指揮系統』

今回の考察記事ではこれらに注目し、様々な事柄について好き放題に仮説等を展開してきた。そしてそれらの中には、本編にたった一度しか出て来なかった『後頭部の人物』の詳細なプロフィールを絞り込むための要素がいくつか存在する。

今回の考察記事ではその後頭部の人物を『当主エリン』だと扱ってきた。それではこれまで考察した内容を基にその詳細なプロフィールを推察したい。


①年齢

まずは年齢からだ。2章の『トリガー角』に注目した考察の中で、『角のデザインには側頭部系統額系統が存在し、それぞれリリースされた時期に差がある』という話を持ち出した。

エリンの角は側頭部に2本、すなわちランバネインとは異なる角だ。 そのため、ランバネインの年齢24歳よりも年上では?と言う事ができる。 (エリン≧25歳)

次に4章で考察したアフトクラトルの序列の変化についてだ。4章の考察結果を元にすると、エリンは『7年前』のガロプラ遠征時点で当主では無かった事になる。この事について、『20歳を機に当主になる』条件と合わせて考えると、エリンは7年前時点で未成年かつ、現在成人済みという事になる。(27歳>エリン≧20歳)

これら2つの要素を併せると、エリンの現在の年齢は25歳~26歳という事になる。


②性別・身長

次に性別と身長だ。2章考察では、『角のデザインの内、角輪の有無は性別と対応しているのでは?』という話を持ち出したが、その事を参考にすると、エリンは女性という事になる。

そして身長に関してはミラの身長から割り出すことができる。 今回の考察では、ガロプラ遠征を7年前の事だと扱っているため、当時のミラの年齢は16歳という事になる。

ここで今回参考にするのが、日本人の身長の偏差値を年齢毎・性別毎に統計から割り出してくれるこのサイトだ。 身長偏差値チェッカー(2023年10月に使用)

ここにBBFミラの23歳・162㎝を入力すると、ミラの身長偏差値は57.0だった。これを7年前当時に当てはめると…16歳女性における身長偏差値57.0に当て嵌まるのは、161.3cmだった。

すなわち、当時ミラと同じくらいの身長だったエリンも161.3cmだった事になる。7年前当時のエリンの年齢を18歳と仮定すると、18歳・161.3㎝・女性に該当する身長偏差値は56.6、そして25歳・女性・偏差値56.6に該当する身長は162cmだった。

なんだか回り道をしてしまったが、結局は現在のミラと現在のエリンの身長は同じくらいという事だろう。


③身分・家族

4章の考察において、アフトの『家』で当主になる条件は、婚姻では無く年齢だと結論付けた。つまりエリン家当主は現時点で独身の可能性も大いにあり得る。

また、エリンの現在年齢を25歳~26歳だとした場合、作中ネームドキャラで比較すると、その年齢で結婚しお子さんが居た事が確定するキャラは香澄さんとライモンドのたった二人だけだ。

つまりエリン家には現在、血縁関係に基づく次期当主が不在の可能性が高い事になる。



つまり何が言いたいかと言うと……

もしその様な状態でエリンが『神』となり、エリン家当主が不在になった場合、次期当主の候補筆頭はおそらくヒュースなのだ。

三雲 『その……「主君」っていうのは……? 「雇い主」みたいな感じなのか?』
エネドラッド 『どっちかって言や 「育て主」って感じだな』(中略)
『ヒュースのやつが拾われた「エリン家」はお人好しで有名だから 兵隊ってよりか家族みたいに育てられたんだろうよ
三雲 家族……

引用元: 【ワールドトリガー14巻 P89-90】

エリンとヒュースの関係を表した『家族』。この言葉が単なる比喩でなく『養子』として迎え入れられたことを表しているならば、適当な跡継ぎが居ないエリン家で、次に当主を継ぐ権利があるのはヒュースだ。

もしヒュースをアフトに連れ帰った状態でエリンを生贄に強行すれば、『次期エリン家当主:ヒュース』との間に大きな禍根を残すことになる。

ヒュースは若くして『角付きで過去最高の逸材』と呼ばれるほどの優秀な兵士だ。『家族』を失った禍根は癒える事なく残り続け、直属配下の中で最も強大な戦力の一角を敵に回すことになる。

ボーダーで例えるなら、鬼怒田さん、根付さん、唐沢さんの三人の内、誰か一人が城戸司令の敵に回るようなものだろう。

エネドラッド 『だから一番噛み付きそうな犬っころを ハイレインは置き去りにしたのさ』

引用元: 【ワールドトリガー14巻 P86】

エネドラを殺害しヒュースを捨て、配下で最も強大なトリオンを持つエリンすらも生贄に捧げてまで、アフトクラトルの実権を得ようとするハイレイン。その真意とは一体なんなのだろうか?



あとがき

ここまで読んでいただきありがとうございました。

今回の記事はアフトの国旗だけに注目してあっさり終わらせるつもりだったのですが、記事の着地点を見定めている内にどんどん書きたい事が増えてしまい、結局いつも以上のボリュームになってしまいました。

文章が長くなりすぎて、途中自分でも何を言っているのか訳が分からなくなりかけましたが、フォロワーさんに意見をいただき何とか完成させることができました。 記事の校正にご協力してくださったあきしまzさん、本当にお世話になりました…!

本当はまだ書きたい項目が8個ぐらいあったのですが、全4章の本筋と絡めづらい内容だったので、記事のボリュームを抑えるために泣く泣く削除しました。またどこかのタイミングで発信出来たらいいなと思っています。


今回の考察では好き放題に仮説を提唱していましたが、あくまで一個人の解釈であり、少し視点を変えただけで全く異なる解釈が生まれる事があります。

例えば1章の考察で『サイ科』の角を引き合いに出し、エネドラッドのイメージ中の人物を王族関係者に仕立て上げましたが、あの角を『麒麟の角』だと考えるとどうなるでしょうか?

『ベルティストン家=空想上の生物』という仮説に乗っけると、現在政権を握っているのはベルティストン家である事になり、今回の考察記事で取り上げたいくつかの前提や結論が大きく変わります。

ですが今回の記事では『サイ科』という解釈にした方が、続く王族の話題に切り替えやすく、3章の『卵の冠アレクトール』周りの話題にも繋げやすかったので、『麒麟の角』の可能性を敢えて無視して論点を絞りました。

他にも総括で語った時期当主ヒュースの件ですが、厳密に言うと現実の中世ヨーロッパの封建制時代には養子縁組の制度がそもそもなく、当主の死亡かつ跡継ぎ不在の際は、血縁に基づき傍系縁者から次期当主を選んでいたようです。

ですが、あくまで現実の制度は時代の雰囲気作りのための参考であって、なんでもかんでも厳密に再現されてる必要は無いな?と思い、面白そうな結論に着地できそうだったので、養子の話をアリにして総括の結論にしました。

この様に自分が面白いと思った論点に誘導する為に、恣意的に伏せている重要な視点がいくつもあります。結びつける情報の取捨選択や、その解釈次第で全く別の結論が導かれるかもしれません。

そのため、今回の記事についても、単にそれっぽく仕上げた一個人の解釈以上の意味は持っていないと思います。

ですが、まだ確定していない情報だからこそ、好き放題に書き連ねることができる『それっぽさ』を楽しんでもらえたなら幸いです。

それでは最後に、考察の結果自分が1番面白いと感じた解釈の結論を載せて今回の記事を締めくくろうと思います。 改めまして、今回の記事を読んでいただきありがとうございました。



ーendー

*1:角輪は現実世界においてはウシ科の洞角に見られる特徴で、加齢に伴いその数は増えていく。そのため、ヒュースの角だけ角輪が少ない理由として、『ヒュースが若いから』という可能性も考えられる。しかし18巻P173のヒュースの回想を見ると、当時8歳のヒュースの角と現在の角輪に変化が無いため、加齢に伴う角輪の増減は可能性から除外される。やはり角輪の少なさはヒュース世代のデザインコンセプトなのだろう。

*2:玄界のトリガーの厄介な所として、『ベイルアウトがあるせいで倒しても殺せず生きたまま情報を持ち替えられる事』、『遠距離通信で瞬く間に情報が拡散されてしまう事』の2つが挙げられる。だが米屋を取り逃がしている以上、ハイレイン視点ではベイルアウトの有無に関わらず『卵の冠』の情報が持ち帰られる事が確定している。そのため、敵に情報を持ち帰られる事自体は厄介の本質ではなく、リアルタイムに修に情報を伝えた『通信機能』を指して厄介だと考えた事になるだろう。

*3:歴史の古い先進地域がインフラ関係で後れを取るのはままある事だ。 なまじ先んじて発展したばかりにインフラに取り入れた技術が時代遅れになった時、改修に掛かる膨大なコストに二の足を踏んでしまう一方で、その時期にゼロからインフラを整備した後進地域は当時の最新技術を取り入れることが容易だ。 その結果、後に発展した地域の方がインフラの機能が良いという逆転現象が生じる。 例えばアフリカの一部地域では、固定回線普及のスキームを飛び越えて、一足跳びにモバイル通信が通信インフラとして整備されている事例もある。

*4:【control】が用いられたのは2回。一回目は英語版P122の『アリステラ王家が亡命した姿 だから母トリガーを動かす(control)ことができると』。
二回目は英語版P126の支部長の『そこから生まれるトリオンをコンピューター……えーとつまり機械で調整(control)して「ボーダー」はあれこれやってるわけだ』。
厳密に言うと、二回目の【control】の動作の主体は『王族』で無く『コンピューター』だが、ラタリコフはこの発言を聞いて『王女=神』と誤認した。つまりラタリコフは、本来王族が行うべき【control】の役割を『コンピューター』なる物で代替していると解釈し、王女が神になったと誤認したのだろう。よって、後者のcontrolも『王族』に対して用いる訳語である事が分かる。

【operate】が用いられたのも二回。二回とも英語版P126で【operate】が用いられている。どちらも動作の主体は『瑠花』だが、『動かす(operate)』と表現した結果、ラタリコフに『王女=神』という誤認が生じているので、【operate】とは本来神が操作する時の『動かす』を表している事になるだろう。
また他にも、P126で【opetate】が『規模(operation)が小さすぎるように思えますが……』の様に規模の訳語として用いられている。普通『規模』という単語に【operation】が訳語として当てられる事は無い、つまりこの【operation】は意訳的に用いられている。この【operation】を【作用、稼働】という意味で捉えるなら、先程の訳は『母トリガーの稼働が小さすぎる様に見えますが……』と意訳する事が可能になる。つまり【operation】とは母トリガーを神が操作(operate)する事によってもたらされるトリオン出力の事を指しているのでは無いか?………という連想から、【operate】が指す事柄は、【母トリガーを操作してトリオンを出力させる事】と言う解釈を今回の考察では行った。

シミュレーション演習マップ分析『水上がホワイトボードに記した図の戦略的意図の解明』

※単行本未収録の情報を記事内で用いていますので、単行本派の方はご注意ください。

※考察を円滑に進めるため、単行本・本誌掲載のページを記事内で引用しています。

※本編で描写された断片的な情報を元に推測しているため、実際のデータと異なる可能性があります。

はじめに

ブログを閲覧いただきありがとうございます。



今回の記事の目標は、水上が4日目朝に残したホワイトボードの図の戦略的意図の解明です。



ジャンプSQ.2023年2月号第229話「遠征選抜試験㉖」(集英社葦原大介)】

この図を見ると敵陣『L字』に狙撃手がいる事や、自陣『東ルート』から攻め上がろうとしている事は何となく読み取れますが、セリフの無いコマだったためそれ以上の意図を汲み取ることはできませんでした。


しかしマップのデータを再現し、シミュレーション演習における地形戦の解像度を上げれば、水上が言わんとしていた事に対して推測を立てる事ができるのではないか?


そう思い記事を執筆しました。


今回の記事ではシミュレーション演習における『トリガーの射程』『マップの構成』『シミュレーションマップ特有の地形戦』について分析を進め、シミュレーション演習への理解を深めようと思いますのでどうぞよろしくお願いします。


(20230303追記)
ジャンプSQ2023年3月号の掲載に合わせて、シミュ③の第3試合(VS村上隊)以降の戦闘範囲特定の記載を追記しました。
こちらの記事を既に読んだ方は以下のリンクから追加コンテンツに飛ぶことができます。

シミュレーション演習③第3試合以降


【1章】ユニット・武器毎の射程に関する分析


まず押さえておきたいのが銃手用トリガーの仕様についてだ。

25巻P43の表を元に作成・補完した銃手用トリガーの仕様説明書

諏訪隊のチュートリアル時に銃手用トリガーの仕様が一部開示されたのでその表に注目してみる。

(セリフ等で隠れてしまった部分については、予想で補完した内容を赤字で記載している。)

上5つの『射線の影響を受ける』という簡素な共通テキストを持ったトリガーは、おそらくアステロイドの事を指している。

BBFで公開済みのアステロイドもちょうど5種類存在するため有力と考えて良いだろう。
(射手、拳銃、散弾銃、突撃銃、機関砲)



そしてそれらの射程に注目すると、射程『8』のアステロイドが3つ、射程『5』のアステロイドが2つある事になる。


ここで射程早見表を振り返ってみる。

25巻P52の内容を元に作成


射程早見表では香取と諏訪の射程が『5』だったため、5種のアステロイドを以下の様に分別できるだろう。


【射程5のアステロイド2種】
拳銃、散弾銃

【射程8のアステロイド3種】
射手、突撃銃、機関砲


次に表の下の方に見える『着弾点の周囲3マスに射撃ダメージを与える。』というテキストを持つトリガーだが、これは明らかにメテオラの説明だ。

ジャンプSQ.2023年2月号第230話「遠征選抜試験㉗」(集英社葦原大介)】

シミュ③のVS北添隊で示されたシミュメテオラのイメージ図とも合致している。


そしてメテオラの射程を見るとこちらも『8』になっており、3種のアステロイドの射程『8』と一致している。

おそらくシミュ演習における弾トリガーの射程はハウンド・バイパーも同じ数値に設定されており、射手タイプなら射程『8』、拳銃なら射程『5』の様に、弾を撃ちだす形式毎で統一されているのだろう。


しかし射手タイプの弾トリガーを使っている三雲、水上、樫尾の射程は『8』でも『5』でもなく、射程『7』となっている。


これには古寺が推測した「ユニットパラメータの影響」が関係しているのだろう。


古寺は武器の威力が『基礎威力×ユニットのパラメータ』という計算式で決定していると予想していたが、同様に弾トリガーの射程にもユニットのパラメータがいくらか影響しているのではないだろうか?


三雲、水上、樫尾はいずれもトリオンが2・5・5と低い上、射手タイプの弾を使っているためトリオン能力の低さが弾トリガーの射程に与える影響は顕著なはずだ。


つまりこの3人のシミュ射程が『7』である理由について以下の推測が成り立つ。


●射手タイプの弾トリガーの『基礎射程』は『8』だが、ユニットのトリオンが一定以下の場合に射程をマイナス補正する仕様がある



次にBBFパラメータにおける射程と、シミュ演習における射程の関係について考えたい。

以降は射程早見表で確認できるシミュ演習における射程の事を『シミュ射程』。BBFのキャラクターパラメータに記載された射程の事を『BBF射程』と呼称する。


弾トリガーを使うキャラに関して射程を整理すると以下の通りになる。


●シミュ射程がBBF射程のちょうど倍になっているのが照屋、荒船
●シミュ射程がBBF射程の2倍マイナス1となっているのが三雲、諏訪、香取

ここから考えられる射程の法則は以下の通り

【基本】
シミュ射程=BBF射程×2
(該当者:照屋、荒船)


【トリオンの低さや銃の構造等、射程にマイナス補正がかかる要因がある場合】
シミュ射程=BBF射程×2-1
(該当者:三雲、諏訪、香取)


だがこの法則を樫尾太刀川に当てはめた場合に違和感が生じてしまう。



【①樫尾の射程の違和感について】

アタッカー寄りの弾トリガー使いはBBFで基本的に射程が『3』のため、樫尾のBBF射程も『3』が有力だろう。

だがその場合樫尾のシミュ射程が『7』である事と、『シミュ射程=BBF射程×2-1』という法則に矛盾が生じてしまう。


この矛盾については、『シミュレーション上では弾トリガーのチューニングが出来ない仕様になっている』と考えれば辻褄は合う。


弾トリガー使いのBBF射程の値は、その人が好んで用いるチューニングの結果を反映していると自分は考えている。

例えば歌川や小南、熊谷等はBBF射程が3だが、チューニング次第でBBF射程4の弾を使う事もできるだろう。
だが彼らにとって中距離は得意な距離ではないため、弾を使う時は中距離の隙を補う程度の射程に留めているのだろう。


もしシミュ演習に弾のチューニングが無い場合、それらの隊員毎の好みや意図が反映されない事になる。


その場合シミュ射程は『弾を打ち出す方法(≒銃の形)』と『ユニットのトリオン値』だけで一様に決定される事になるだろう。


つまりアステロイド(射手)を使うユニットのシミュ射程は、BBF射程とは無関係に『8』が基本となると思われる。

そこにトリオンの低さによる射程のマイナス補正を加えた結果が、三雲・樫尾・水上のシミュ射程『7』なのだ。

その様に考えれば、先ほど示した射程の法則と樫尾のシミュ射程7の間にある違和感を説明できるだろう。




【②太刀川の射程の違和感について】

太刀川のBBF射程は『2』である一方、射程早見表でもシミュ射程が『2』であるため、太刀川のユニットは『シミュ射程=BBF射程×2』という法則から外れている。


しかし以下の様な仮定を立てれば太刀川も法則に組み込むことが可能だ。



①射程早見表のシミュ射程は、その武器の通常攻撃時の射程を元に設定されている。

②弧月の通常攻撃時の射程をBBFで表現する場合その値は『1』となる。

③『旋空弧月』は上記で言う所の『通常攻撃』には含まれないため、射程早見表に反映されない。

④『弧月』と『旋空』を装備したユニットのみ、固有コマンドの選択肢に『旋空弧月』が追加され、そのコマンドを選択した時のみ旋空弧月に対応した射程範囲(4マス程度?)になる。


つまり太刀川のシミュ射程『2』とは旋空弧月の射程を反映した結果ではなく、弧月の通常攻撃時のBBF射程『1』を2倍にした値なのだ。

この様に考えれば『シミュ射程=BBF射程×2』の法則に太刀川を組み込むことができる。


そして『何故旋空弧月を射程早見表から除外し特別扱いするのか』という理由については仮定④が関係してくる。


④について、なぜこのような仮定を立てたか説明する。

シミュ演習のチュートリアルでは『行動設定』の項目一覧が表示されたが、シミュ演習で用いられた全ての『コマンド』が網羅されているわけでは無い。

その一覧に表示されなかった『コマンド』の具体例を挙げると以下の四つだ


・フルガード(25巻P55)
・全周シールド(230話)
・隠密行動(25巻P89)
・幻踊弧月(229話)


これらのコマンドが存在するのは恐らく『固有コマンド』の中だろう。

その様に考えた場合、『固有コマンド』の中に表示される行動にはある共通点が存在する。

それは『特定のトリガーを装備した時のみ選択可能になる』という特徴だ。

『固有コマンド』内の行動選択肢の予想(三雲・米屋の場合)

例えばシールドを2枚装備した時のみ『フルガード』のコマンドが使用できる様になり、バッグワームを装備した時のみ『隠密行動』のコマンドが解放される、という具合にだ。


これらの『コマンド』はユニットが装備しているトリガーによって選択肢が増減するため、全ユニット共通の『行動設定』一覧の階層に表示されないのは理に適っている。


この様な仕様がシミュ演習の『行動設定』にあるならば、『隠密行動』等が行動設定一覧に表示されなかった理由になるだろう。



よって特定トリガー装備により実現可能な行動の多くは『固有コマンド』という形で整理される可能性が高く、『旋空弧月』も『コマンド』になっていると考えられる。


そして『何故旋空弧月を射程早見表から除外し特別扱いするのか』という理由がここにある。


基本的にシミュ演習の戦闘は射程範囲に敵が入ると自動的に行われ、その射程範囲は装備している武器によって固有の値であり、その固有値が射程早見表に反映されているのだろう。


しかし『旋空弧月』が『コマンド』であるならば、コマンドを選択していないターンには発動しない事になる。


つまり弧月の射程は『旋空弧月』を使用するターンとそうでないターンで異なる値になる筈なのだ。


ゲーム開発者の視点に立つなら『射程早見表』の様なプレイヤーが参照する表には、その武器のデフォルト値を格納しておきたい。
よって弧月で通常攻撃するときの射程が射程早見表に反映されるべきだと思う。


太刀川の射程早見表におけるシミュ射程『2』が弧月の通常攻撃に対応した数値だと考えた理由は以上だ。


ここから想定されるアタッカーの射程は次の通りだ。

●刃トリガーのシミュ射程は2(BBF射程に換算すると1)
ただし『旋空弧月』を使用した場合、2より大きくなる可能性あり。





ここまでの分析で各トリガーのシミュ射程の傾向がある程度わかったので、銃手用トリガーの性能を改めて振り返ろうと思う。

25巻P43の表に更なる予想を追記


射程『5』の拳銃・散弾銃の内、本編でコマンドっぽい要素があったのは散弾銃の『先読み散弾銃』だけなので3行目が散弾銃だろう。


射程『8』のアステロイドには消費行動力『2』で威力が低いものと、消費行動力『3』で威力の高い物がある。

両手がフリーで取り回しが軽く、消費行動力が『2』と低く設定されている1行目のアステロイドが射手タイプ。
実体化しているため取り回しが重いが、射程ボーナスがある分威力重視のチューニングも可能な4行目のアステロイドが突撃銃。
基礎威力が『15』と最も高いのが機関砲ではないだろうか。


表から確認できる要素だけでトリガーの性能を比較すると、『散弾銃≧拳銃』『機関砲≧突撃銃』の様に完全上位互換の関係が生じてしまっている。

トリガーセットを変更可能な関係上、完全上位のトリガーを作ってしまうと演習の試合内容から多様性が失われてしまう。
それを防ぐためにユニット毎に『適正スキル』を設定し、完全上位のトリガーが生まれない様にバランス調整がされているのだろう。





最後に確認しておきたいのが、『シミュ射程がシミュレーション上でどの様に反映されているか』についてだ。

シミュ射程とマスの関係については、シミュ①のVS水上9番隊にヒントがあるのでそこに注目してみたい。

ワールドトリガー25巻P56(集英社葦原大介)】
25巻P56の内容をマップ上で再現

この図から分かる様に、敵陣『L字』から隠岐を狙撃したスナイパーの扇の範囲は、マスで表現するとおよそ14マスの距離をカバーしている。

そして当真(水上隊)はマップ奥深くに鎮座していたため、見張りの役割を果たしていたのは十中八九荒船ユニットだろう。

図で示した扇の範囲はおよそ14マスであり荒船のシミュ射程14と一致している。

つまりシミュ射程は攻撃できるマスの範囲をそのまま表した値だと考えられる。




以上の分析から読み取れるトリガーの射程に関する仕様は以下の通りだ。


【トリガーの射程に関する仕様】
 
①トリガーのシミュ射程はBBF射程の2倍が基本
(狙撃手も恐らくこれに当て嵌まる)
 
②刃トリガーのシミュ射程は『2』
(旋空弧月やその他スキルを伴う場合それ以上になる可能性あり)
 
③拳銃・散弾銃のシミュ射程は『5』
 
④弾トリガーのシミュ射程は基本『8』
(射手タイプかつトリオンが低い場合に7が有力)
 
⑤シミュ射程の数値は演習マップにおけるマス数に対応している。

以降ユニットのシミュ射程の検討が必要になった場合は、上記の推測を元に仮定していこうと思う。


ここまでの分析に基づきトリガーの射程の傾向を分類すると、シミュ演習における『射程範囲(レンジ)』は以下の4種類に分類する事ができる。

シミュ演習におけるトリガー毎の射程の分類

今回の記事では便宜上武器トリガーの射程を以下の4種類に分類する。
(各レンジの警戒範囲は諏訪隊のチュートリアルの描写から測定した。)


【ショートレンジ】:刃トリガーの射程。警戒範囲が最も広い。
【クロスレンジ】 :近距離で用いる銃の射程。
【ミドルレンジ】 :中距離から射撃可能な銃の射程。
【ロングレンジ】 :狙撃手の射程。警戒範囲がかなり狭い。

ロングレンジに関して『シミュ射程=BBF射程×2』を踏まえると、上限は奈良坂の24マスだろうか?


最後に武器のレンジが分類できた所で、『部隊毎に得意なレンジはどこなのか?』という事を定量化しておきたい。

部隊毎に特定のレンジに戦闘参加可能な隊員の数を計上

上記の表は部隊毎に特定のレンジに戦闘参加可能な隊員の数を集計した表だ。
数値に関しては以下のルールで集計している


●そのレンジの武器を持っている隊員1人につき1を計上
●複数のレンジの武器を所持している隊員はそれぞれのレンジに0.5ずつ分割して計上
●各部隊で最も得意なレンジを赤字で記載(数値が同じ場合に隊員の強さを考慮)

(武器毎の習熟度や隊員の強さを考慮せず数値を集計したため多少違和感があるかもしれないが、部隊毎の得意レンジの傾向を確認する事はできるだろう。)


この部隊編成のバランスを見て『編成的にアタッカーが欲しいな』という意見を持った東さんは、編成にバランス志向を持った指揮官と言える。


また、この表を見て改めて感じることは、諏訪7番隊がクロスレンジにおいて最も秀でた部隊だという事だ
つまり諏訪7番隊が部隊の強みを押し付けるためには、『敵アタッカーの火力を殺しつつ』『ある程度まとまった距離でクロスレンジの火力を集中させる』事が重要になるだろう。

シミュ演習③で諏訪7番隊は、隊長経験を持つ3人がそれぞれ分隊を指揮する事で複雑な連携ができる陣形を組んでいた。

その陣形では『前衛がレイガスト4枚で敵アタッカーを抑えつつ』『後衛の香取・諏訪がまとまった配置で射撃可能』になっている。

つまり諏訪7番隊の強みを最大限生かすことができる状態になっているのだ。

三雲が提案した『分隊で陣形を組む作戦』は諏訪7番隊における最適解の一つだったと言えるだろう。


【2章】シミュレーション演習におけるマップの分析

この章では『マップの大きさ』『マップ内の建物の高さ』『各試合が行われた範囲の特定』に焦点を当て話を進めて行こうと思う。

マップの大きさの分析

左:初期マップ【ワールドトリガー25巻P13(集英社葦原大介)】右上:シミュ②のマップ【ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』(集英社葦原大介)】右下:シミュ③のマップ【ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】

シミュ①~シミュ③のマップの大きさが分かる描写をそれぞれ抜粋し、追加されたタイミング毎に色分けすると以下の様なマップになった。

戦闘シミュレーション演習に用いられているマップの再現

シミュ演習① 縦32マス×横32マス
シミュ演習② 縦34マス×横34マス
シミュ演習③ 縦35マス×横36マス

マップの形はやや縦長に感じていたが、実際は縦にも横にもほぼ同じ数のマスが並んでいる事が分かった。
(六角形を敷き詰めた時、マスの中心間距離の縦横の比は√3:1.5であるため縦長に見えたのだろう。)

そしてシミュ演習のマップにおいて最も重要な要素が、建物の配置が点対称である事だ。

建物の大きさや配置、画面に表示された屋根の模様や屋上のオブジェクトまで、マップ中央を中心に全ての要素が点対称になっている。

マップが対称で自陣敵陣の差が無くなる事で、シミュ演習は純粋なユニットの性能やプレイヤーの戦術眼の勝負になり、ある意味公平に設定されていると言えるだろう。

マップの用語定義と分類について

マップの大きさが分かった所で次に進めたいのが、マップ内の建物や場所の用語整理だ。

特徴的な建物群の名称は修発案のホワイトボードマップに記載があるのでそれを元に用語を定義する。

ワールドトリガー25巻P84(集英社葦原大介)】

この図は25巻P84にて隊員間のコミュニケーションを統一するために諏訪7番隊で導入されたマップだ。

この図にひと手間加え、マップの内容を補完した図が以下の通りだ。

諏訪7番隊のホワイトボードマップの補完

先程示した通りシミュ演習のマップが点対称である事を踏まえると、自陣側にも『L字』や『タワー』が存在する。

更にもう一つ、今回の記事内に何度も出てくる『三連民家』と言うオリジナルの建物名称を追加した。


後ほど詳細に説明するが、この『三連民家』は特徴的な建物の並び方をしているため、シミュレーションの戦闘描写を分析する上で非常に役に立つのだ。

マップ内建物の高さの分析


次に整理したい用語が建物の屋根形状についてだ。

シミュレーションの画面上に表示されている屋根形状と、実際の戦闘描写に出てくる建物の屋根形状は一致しているため、戦闘が行われている地点を特定するのに非常に有益な情報となる。

シミュ演習のマップ内に存在する建物を屋根形状で比較すると大まかに三パターンに分類する事が出来る。

屋根形状の分類とその具体例【ワールドトリガー25巻P58(集英社葦原大介)】

大まかな傾向として勾配屋根は高さが低く、陸屋根は3階建て以上の建物が多い。

MAP上の建物にはそれぞれ『高さ』が設定されており、高い場所に上るとユニットの視界が広がり偵察や狙撃に有利になるため、シミュ演習マップにおける『建物の高さ』という要素は地形戦を理解するために非常に重要だ。


初日の第1試合ではグラスホッパーの仕様解説に絡めて『高い建物に上る事のメリット』や『その行動力コスト』、『建物毎に「高さ」が設定されている事』が紹介されていた。


建物の『高さ』が具体的な数値として明示されたのは一部の建物のみだが、それらの建物群を観察するとその数値には明確な根拠が存在している。

左:建物の高さ設定の説明【ワールドトリガー25巻P51(集英社葦原大介)】右上:対応する建物群の見た目【ワールドトリガー25巻P54(集英社葦原大介)】

『高さ』の数値が描写されたコマとそれに対応した実際の建物を比較してみると、『高さ』の数値と『建物の階数』は全て一致している。

先程紹介した『三連民家』がちょうど隠岐の左側に見えているが、3軒の民家に挟まれた2つのガレージと、『高さ』の数値『2➡1➡2➡1➡2』はしっかり対応している。
ガレージの屋根は1階建て相当の高さにあるため『高さ』の数値が『1』に設定されたのだろう。

つまりシミュレーション演習における『建物の高さN』とは『N階建て建物に相当する高さ』を表しているのだ。



建物の見た目から『高さ』を特定できるという事は、戦闘描写の背景建物を観察すれば他の建物の『高さ』も分かるという事だ。


よって次はシミュレーション演習で戦闘が行われた場所と背景に写る建物の観察を行う。


シミュレーション演習における戦闘描写の場所特定

これからは『戦闘描写のコマの背景に写った建物の高さの特定』と、『戦闘が行われた範囲の特定』を同時に進めて行く。

シミュレーション演習①

まずはシミュレーション演習①のVS水上隊の描写からだ。


シミュレーション演習① 第1試合
諏訪7番隊 VS 水上9番隊

ワールドトリガー25巻P54(集英社葦原大介)】
ワールドトリガー25巻P54(集英社葦原大介)】
ワールドトリガー25巻P64(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習① 第1試合 諏訪7番隊 VS 水上9番隊

コマの背景には様々な建物が映りこんでおり、窓の数から建物の階数を特定する事が可能だ。
各コマに写っているおおよその範囲を色枠で囲い、『高さ』が特定できる建物には数値を落とし込んだ。


中には建物の一部だけしか写っていない所もあるが、アイレベルとパースから逆算して建物の高さを特定する。


そして照屋がフルガードしたコマの足元をよく見てみると中央分離帯を思わせる白線が存在している。
『大通りには中央分離帯がある』という情報は今後特定を進めて行くにあたって貴重な情報なので頭の片隅に留めておく。



シミュレーション演習① 第2試合
諏訪7番隊 VS 村上10番隊

ワールドトリガー25巻P78(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習① 第2試合 諏訪7番隊 VS 村上10番隊


ユニットの配置を行う時はマップの下側を自陣、上側を敵陣で統一する。
(ただしマップは点対称であるため、敵陣自陣の位置関係がまるっきり反対になっている場合がある。)


コマに写ったユニットの位置関係や隊員のポジションを元に、『スナイパーが居るのは自陣寄りの建物だろう』『陣形をしっかり組めるのは自陣寄りの時だろう』といった判断基準で敵陣自陣を予想していく。




シミュレーション演習① 第3試合
諏訪7番隊 VS 歌川1番隊

ワールドトリガー25巻P78(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習① 第3試合 諏訪7番隊 VS 歌川1番隊

高さ4のL字型の建物は『L字』と『うらL字』の2種類存在するが、風間が隠れている建物は3階建て以上の高さであり、この位置関係に該当するのは『L字』と『タワー』に挟まれたこのエリアだろう。




シミュレーション演習① 第4試合
諏訪7番隊 VS 古寺6番隊

ワールドトリガー25巻P79(集英社葦原大介)】
ワールドトリガー25巻P81(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習① 第4試合 諏訪7番隊 VS 古寺6番隊

古寺6番隊との戦闘位置は諏訪隊が『休み』の時の回想シーンからある程度絞る事ができる。
画面奥に向かって勾配屋根➡陸屋根➡陸屋根の配置になっている事から、ダイジェストのコマは図中青枠だろう。


この2つのコマのユニットの配置を見比べると、ある程度試合展開を予想することができる。


近接連携を持つ木虎奥寺のセットを2つ組み、狙われやすい大通り沿いのルートには護衛の三浦を先頭に置き三雲2体の挟み撃ちを狙っていた。
しかし大通り沿いのルートで弾の足止めを食らい挟み撃ちは失敗に終わったため、西ルートを南下する木虎奥寺はもう1ブロック南の通りから三雲を狙う作戦に変更した。
バッグワームで潜伏させていた風間を用いて西ルート沿いを警戒していた隠岐を落とし、味方の援護が薄くなった三雲2体を木虎奥寺の近接連携で撃破。

おそらくこの様な試合展開だったのだろう。




シミュレーション演習① 第5試合
諏訪7番隊 VS 二宮8番隊

ワールドトリガー25巻P79(集英社葦原大介)】

このコマは情報が少なく該当する建物配置が多かったため、候補を3つ用意してどれが一番違和感が少ないか検討を行った。

シミュレーション演習① 第5試合 諏訪7番隊 VS 二宮8番隊

候補①~③にはそれぞれ違和感があるものの、狙撃の方向に狙撃に適した『タワー』がある事から『候補②』が最も有力だと判断した。





シミュレーション演習① 第6試合
王子2番隊 VS 歌川1番隊

ワールドトリガー25巻P89(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習① 第6試合 王子2番隊 VS 歌川1番隊

続くP90のコマで決着時の画面が表示されていたが、自陣東ルート周りのコマが明るくなっていたため、試合は王子2番隊自陣の東ルート周囲で行われていたと予想する。




シミュレーション演習②


シミュレーション演習② 第1試合
諏訪7番隊 VS 北添4番隊

【現在検証中】
建物周囲の塀の模様を分類できれば、戦闘が行われた場所の特定はおそらく可能。




シミュレーション演習② 第2試合
諏訪7番隊 VS 来馬5番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』 (集英社葦原大介)】
シミュレーション演習② 第2試合 諏訪7番隊 VS 来馬5番隊


シミュレーション演習② 第3試合
諏訪7番隊 VS 水上9番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習② 第2試合 諏訪7番隊 VS 水上9番隊

4階建てのL字型の建物の内、正面に勾配屋根が存在するのは『うらL字』のみ。


【20230507訂正】

【20230507訂正】シミュレーション演習②第2試合 諏訪7番隊VS水上9番隊

(20230507訂正) 224話『遠征選抜試験㉒』(ジャンプSQ.2022年9月号)の描写により、『うらL字』は高さ4の建物でなく、高さ3である事が判明。前回作成したVS水上隊の戦闘範囲の推測に誤りがあったため修正を行った。



シミュレーション演習② 第4試合
諏訪7番隊 VS 村上10番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】
シミュレーション演習② 第4試合 諏訪7番隊 VS 村上10番隊

中央分離帯と思しき白線が画面奥の方に見えるため、背景奥に見える4階建ての建物は『L字』で間違いない。
正面に『L字』がありつつ香取が奇襲できる横道があるのはこの配置のみだ。


そしてこのコマで最も気になるのが、香取のすぐ後ろの建物の屋根形状と『高さ』に違和感がある事だ。


他のコマの描写と見比べるとこの建物は『高さ2』の筈だが、このコマでは建物越しに向こうの景色が見えるため2階が存在しない建物だ。


よく見ると屋根が真四角の形状で、まるで2階部分が綺麗に消え去ったような形状だ。


そうなると考えられる可能性は一つ、メテオラにより建物高さが『1』減少した可能性だ。


村上・熊谷、援護の蔵内?の3人掛かりで三雲2体を追い詰める村上隊だったが、『8屋根』の北にはちょうど死角になる脇道が存在する。
奇襲される可能性を察知しメテオラで更地にして視界を広げようとしたものの、高さ『2』の建物を破壊するためにはメテオラを二発撃ち込む必要がある。
既に一発打ち込み建物高さを『1』減らしたものの一手遅く、既に香取が回り込んでおり村上を仕留めた。

そういう試合展開だったことが予想される。
(生存ユニットを見ると村上は三体とも生き残っているがただの誤植だろう。)




シミュレーション演習② 第5試合
諏訪7番隊 VS 二宮8番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】

このコマにはあまりにもヒントが少ないため、シミュ②とシミュ①の生存ユニットから予想できる試合展開の差に注目したメタ的な視点で位置を予想してみる。


シミュ①のVS二宮隊での諏訪隊生存ユニットは隠岐×2。

一方シミュ②の生存ユニットは香取×2と隠岐×2、宇野の五体だ。


この試合結果の差について狙撃手に注目すると、シミュ①は狙撃手が全員生存しているが、シミュ②は狙撃手すらメテオラの餌食になっているとも言える。

つまりシミュ②では、諏訪隊の狙撃手がいる自陣深くまでチカオラに攻め込まれたのではないだろうか。


シミュ②終了後二宮は雨取に『昨日よりはいい動きだった』と褒めていたが、初日よりも積極的に爆撃に勤しんだ様子を見てそう言ったのかもしれない。


よってシミュ②の戦闘はシミュ①の時よりも自陣寄りで行われていたと考え、その条件に当てはまる範囲を検討する。


画面上では2階建て勾配屋根が二軒と、狙撃手の足元に陸屋根っぽい形状の瓦礫が確認できる。


勾配屋根を『三連民家』、陸屋根を『L字』とすると、シミュ②が行われたのはこの範囲では無いだろうか。
『L字』は高さが『4』であり狙撃手が潜伏するにはちょうどいい建物であるため、隠岐と佐鳥が居てもおかしくないだろう。

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】



シミュレーション演習② 第6試合
諏訪7番隊 VS 古寺6番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】
ジャンプSQ.2022年11月号 226話『遠征選抜試験㉓』】
シミュレーション演習② 第6試合 諏訪7番隊 VS 古寺6番隊



シミュレーション演習② 第7試合
諏訪7番隊 VS 歌川1番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】
シミュレーション演習② 第7試合 諏訪7番隊 VS 歌川1番隊



シミュレーション演習② 第9試合
諏訪7番隊 VS 若村11番隊

ジャンプSQ.2022年9月号 224話『遠征選抜試験㉒』】
シミュレーション演習② 第9試合 諏訪7番隊 VS 若村11番隊

笹森はかなり高い角度から射撃を3発受けているが、この高低差で弾が飛んでくるのは角度的に『うらL字』からしかありえない。
また、笹森から『うらL字』まで10マス程度以上離れているため、銃手用トリガーの射程範囲外だ。


よって笹森は狙撃を複数回受けていたことになるが、諏訪隊の生存ユニットを見るに可能性としては以下のいずれかだろう。

隠岐×3にイーグレットの集中砲火を食らった
隠岐×1にライトニングの連射を食らった
隠岐×1と佐鳥のツインスナイプを食らった


試合結果を見ると笹森は1体落とされているので、この狙撃×3を受けた笹森が落とされた可能性が高いと思う。
つまり威力の高いイーグレットを複数回受けたせいでシールドを割られ、笹森は落とされてしまったと考えた方が自然だろう。


この試合で香取は3体がかりでヒュースを落とすという思い切った行動をとっており、もしかすると隠岐3人がかりで笹森を落とす作戦もあったかもしれない。


3日目朝にヒュースは諏訪7番隊の事を『動きが読めず余裕勝ちか大負けのどちらかになる相手』と言っていたが、その予想通り諏訪7番隊の思い切った作戦に嵌められ若村11番隊は大敗する結果となった。

シミュレーション演習③

そしていよいよシミュレーション演習③の戦闘描写の検証に移る。
この日は隊員のユニットが5体ずつ、ヘルプユニットが+4体の計24体がかりの戦闘となり、シミュ②までの戦闘に比べマップ内のユニットの密度が高いため、これまで以上に数の力が重要となる。

つまり多くのユニットが火力を集中させやすい弾トリガーの重要度が増すと考えられる。


ヒュースも言っていた通り、ユニットが増えるほど合計トリオンの差も大きくなるため、撃ち合いが得意な部隊はより一層弾トリガーでの削り合いを選択すると思われる。

よってシミュ③ではこれまで以上に射撃戦が激化するだろう。


現時点でVS柿崎隊、VS北添隊の戦いが本編で描かれているが、特にVS柿崎隊の試合内容はシミュ演習③の戦闘の傾向を如実に表しているのでないか?と個人的に感じている。


そう感じる理由について、今後の試合で繰り広げられるだろう地形戦を予想を交えて語っていこうと思う。


シミュレーション演習③ 第1試合
諏訪7番隊 VS 柿崎3番隊

ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】
ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】
ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習③ 第1試合 諏訪7番隊 VS 柿崎3番隊

各コマにはヘルプユニットが戦いに参加している描写が含まれているため、どの分隊が戦っているシーンなのか確定させることができる。


そしてVS柿崎隊の描写で特に注目したいのが『試合開始から3ターン目までの戦闘』のコマだ。

ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】


VS柿崎隊との戦闘は1~3ターン目までは中央の通りを挟んでの射撃・狙撃の応酬となっていた様だ。



『何故中央の通りで射撃戦が繰り広げられたのか』『両部隊のユニットがこの範囲に密集していたのは何故か』

理由はおそらくミドルレンジの射程が『8』だからだ。


この事を図で表すと以下の様になる。

シミュ演習③で顕在化すると思われる南北8マスの『射撃戦線』

弾トリガーの射程は多くが7~8マス、つまり射撃戦を重視する場合は多くの部隊にとって中通りを中心とした南北8マスのエリアが主戦場となるだろう。


都合よく三連民家ラインの建物が塹壕の役割を果たす位置にあるため、射撃戦での連携を重視するならやはりこの範囲にユニットを配置するのが適当だろう。


シミュ演習③の戦いにおいて、この『射撃戦線』をどう利用し攻略するかが勝敗を分ける分水嶺になると思われる。


ミドル・ロングレンジに長けた部隊は如何にしてこの『射撃戦線』で敵を迎え撃つか、ショート・クロスレンジに長けた部隊は如何にしてこの『射撃戦線』を突破して相手の懐に潜り込むかが重要になるだろう。


VS柿崎3番隊の試合を振り返ると1~3ターン目まではミドルレンジ以上の戦い、4~6ターン目はクロスレンジ以下の戦いだったと言い換えることもできる。
諏訪7番隊が柿崎3番隊に勝利まであと一歩の所に迫る事ができたのは、諏訪7番隊の得意なクロスレンジに持ち込むことができたのも大きかったのだろう。




シミュレーション演習③ 第1試合
諏訪7番隊 VS 北添4番隊

ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】
ジャンプSQ.2023年2月号 230話『遠征選抜試験㉗』(集英社葦原大介)】
シミュレーション演習③ 第2試合 諏訪7番隊 VS 北添4番隊


香取分隊の先頭の修が大通り沿いの建物残骸を通過した時に背後から爆発を受けているので、香取分隊への着弾地点は青枠の通り。
香取のシールドが粉砕しているので香取に直撃したのだろう。


三雲分隊の背後に高さ『1』の勾配屋根が見えるので三雲分隊の配置は恐らく緑枠の周囲。


それぞれのコマの背景に写っている建物の配置と、各分隊が進行したルートを比較するとこのような位置関係・進行方向になった。


諏訪分隊に関して気になるのが、『諏訪分隊が西ルートを進行していた事』と『背景に見える建物との位置関係』を考慮すると、諏訪分隊が敵陣から南下している様に見えるのだ。


画面に写る建物は右手に2つあり、
『直角の角が面取りされた高さ2の陸屋根』➡『高さ3の陸屋根』
という順番に並んでいるが、諏訪分隊は西ルートを進行していたため、該当する建物の並びは赤枠で囲った範囲のものしかない。

諏訪分隊が走っている方向が画面奥に向かってでなく画面手前だったら矛盾は無かっただろう。





次に検討したいのが『擲弾銃メテオラの射程は何マスなのか』という事だ。


各コマの爆発エフェクトや射撃放物線に注目すると、香取分隊に5発、三雲分隊に2発、諏訪分隊に3発のメテオラが撃ち込まれている。

3分隊それぞれに5発ずつ撃ち込めなかった理由は、全ての北添の射程範囲に入ったのが香取分隊だけだったからだろう。

逆に言えば、三雲分隊の位置は3体の北添にとって射程範囲外だったと考えられる。
この条件を用いれば擲弾銃メテオラの射程の範囲を絞る事ができる。

各北添から各分隊へのメテオラ着弾地点までのマス数

各北添から各分隊への着弾地点までのマス数を数えてみるとこの表の通りとなった。


より近くに居る北添を発射候補として、各分隊の被弾数に応じて着弾地点が近い順に赤字で表記した。

すると擲弾銃メテオラの射程がちょうど『13』マスの場合にコマの描写と一致する事が分かった。

ただしこの分析は各分隊への着弾地点が完全一致している場合のマス数になっているため、着弾地点の誤差を1マスまで許容するなら、擲弾銃メテオラの射程は『12』でもいい事になる。

諏訪分隊のメテオラ着弾シーンを見ると、建物に直撃している物と道路に直撃している物があるため、着弾地点に誤差が生じていてもおかしくない。

1章で考察した『シミュ射程=BBF射程×2』の法則を考慮すると、北添のBBF射程は『6』のため、擲弾銃メテオラのシミュ射程を『12』マスと考えた方が結論が綺麗になる。

よって今回の記事では、擲弾銃メテオラのシミュ射程を『12』だと結論付ける。




マップ内建物の『高さ』の分析結果

背景に写っていた建物の高さ情報を一つのマップに集約すると下記の通りとなった。

マップ内建物の『高さ』の一覧

自陣敵陣は点対称のため、片方の建物高さが分かれば反対側の建物高さも確定する。

その結果四隅の建物以外建物の高さを確定する事ができたため、次の章ではこのマップを用いてシミュレーション演習における地形戦の分析を進めて行こう。

【3章】水上のホワイトボード図の解明とシミュレーション演習における地形戦の分析

ここからは今回の記事の本題『水上がホワイトボード記した図の戦略的意図の解明』を進めて行く。

まずは水上が描いた図を、先程作成したマップに落とし込んでいこう。

水上がホワイトボードに記した図の再現


水上が記した図や記号のいくつかは、修が発案した諏訪7番隊のホワイトボードマップと共通している。

例えば図の縦横に引かれた二重線はそれぞれ『大通り』と『中通り』の範囲を恐らく示しており、右下の大きな半円は『タワーうら』の範囲を想起させる。

また、特徴的な建物である『L字』と『タワー』が敵陣に記され、それぞれの建物の上に敵ユニットと思しき『点』があり、そこからロングレンジの扇が伸びているため、この図では敵から狙撃を受ける事を説明しているのだろう。

ここで一旦図の中で記されているユニットを整理したい。


●敵ユニット
【ユニットA】 敵陣『L字』からロングレンジの扇を左右に展開する敵ユニット
【ユニットB】 敵陣『タワー』にいる敵ユニット


●味方ユニット
【ユニットC】 自陣西ルート沿いの孤立した味方ユニット
【ユニットD】 自陣『L字』に居る味方ユニット
【ユニットE】 自陣『中通り』以南からミドルレンジを展開する味方ユニット。扇が敵陣『8屋根』をかすめているため射程範囲は『7』マス?
【ユニットF】 『タワーうら』を思わせる円の端から、敵陣『8屋根』あたりまで矢印が伸びた味方ユニット。矢印はおよそ『15』マス程度。
【ユニットG】 自陣『東ルート』から敵陣『8屋根』まで矢印が伸びたユニット。矢印はおよそ『10』マス程度



敵陣には狙撃手が2体、自陣には味方が5体描かれている。

内味方ユニットの4体は東ルートに固まり『東ルート』を進行している。

西方向からの狙撃を警戒してそれを避けながら東ルートを攻めあがる、そんな作戦を示している様にも見える。



『何故狙撃手は敵陣西側に居るのか』『何故東ルートから味方は攻めあがっているのか』


この理由にはこれまでに分析したマップの地形戦の要素が深く関わっている可能性がある。


シミュレーションマップはマップ中央を中心に点対称であるため、『敵陣/自陣』の尺度で差が生じる事はない。


だがしかしマップは東西対称ではない、つまり『東ルート』から攻めあがる場合と『西ルート』から攻めあがる場合で戦略的に大きな差が生じる可能性があるのだ。


水上は西ルート沿いの建物に潜む狙撃手について図を用いながら何かを説明していた。
よってマップの地形戦における『狙撃』という要素に焦点を当てて議論を進めて行こうと思う。


シミュレーションマップにおけるおススメ狙撃スポット


狙撃手にとって重要な事は主に2つ

『なるべく広い範囲を射程の扇に捉える事』『寄られにくい事』

この2つを同時に満たす行動が『高い建物に上る事』だ。


建物や視界に関連する仕様は以下の通りだと解釈している。


●建物に上る時には高さ『1』につき行動力を『1』消費する。
●『一度』に上る事ができるのは、高さ『2』ずつ
グラスホッパーを持つ場合、『一度』に上る事ができるのは高さ『4』ずつ
●高い建物に上ると視界が広がる。(レーダーに映る『?』ユニットが誰か特定できる範囲が広がる)
●高い建物に上ると足元が死角になる。
●視界の外にいても射程範囲の扇に敵ユニットが入った場合自動攻撃を開始する
●自分より低い建物に斜線を遮られないため、射程範囲が実質広がる。

建物の『高さ』に関連した仕様について(個人的解釈含む)

つまり高い建物に上る時は『行動力』と『時間』を消費するため、敵ユニットはもたつきやすく、その隙に逃げたり仲間の援護を期待する事もできるだろう。

以上の事から、狙撃ポイントとしておススメの条件は『高さ3以上』『周りに視界を遮る建物が無い』であることだと考えた。

以上の2点を踏まえて独断と偏見で選ぶおススメ狙撃スポットは以下の通りとなった。

狙撃のおすすめスポット

【優評価】
●『タワー』

「マップ上で最も高いため視界を遮られない」「グラスホッパーでも一度に上る事ができない」「周囲を高い建物に囲まれているため、攻め入るルートも限られる」
狙撃にとって最高の条件が整っているため文句なしの優評価だろう


【良評価】


●『L字』

射撃戦線に面しているものの高さ『4』で攻められにくく、広い範囲を射程範囲に収めることも可能で、偵察や牽制にもってこいの配置だ。
戦線に平行して狙撃手を配置できるマスが6マスも存在するため、複数の狙撃手を並べる事も可能だ。

●『うらL字』
こちらも高さ『4』でありマップ中央に向けて視界が開けているため、広い範囲を射程範囲に収めることができる。
また、自陣の奥まったところに配置されてるため狙われにくさでもトップクラスだろう。
だたし注意したいのが、この建物は誰でも使える狙撃スポットではないという事だ。

『うらL字』を用いる際の注意点

見ての通りシミュ射程14マスのユニットは、『うらL字』の一番前のマスに配置しても射撃戦線の敵ユニットに絶妙に届かない。
『シミュ射程14』とは『BBF射程7』に相当すると考えられるため、隠岐・荒船・別役はこの建物を利用して戦線に戦闘参加する事ができない。(射程16マスなら真正面にいる敵のみ射程範囲内)

よって『射撃戦線』での戦いを重視する場合、『うらL字』は使いづらい


【可評価】
●『3-乙』『3-戊』
射撃戦線よりも奥にあるため、ミドルレンジの敵から狙われにくく、前線の味方の援護がしやすい

●『3-丙』
正面に『3-乙』があるため射線が制限されるものの、『8屋根』越しに広い範囲を射程に収めることができる。

【不可評価】
●『3-甲』『3-己』
どちらも前線に近すぎて狙われやすい

●『3-丁』『3-庚』
周囲を高い建物に覆われているため、射線がほとんど通らない。


以上おススメの狙撃スポットを纏めたが、これを『マップ東西』の視点で分類するとどうなるだろうか?

マップ東西ともにおススメの狙撃スポットは3か所ずつ存在するが、その質で言うと『自陣東』の方が圧倒的に狙撃しやすいと言えるだろう。


水上がホワイトボードに記したユニットは誰を表しているのか。


先程示した『おススメ狙撃スポット』だが、これを敵陣に当てはめると『敵陣西』沿いに狙撃手が配置されやすい事になる。


つまり水上がホワイトボードに記した敵ユニットの狙撃手A・Bは、マップの地形を踏まえた上で要警戒するべき敵陣狙撃手の配置について解説していたのだ。


そして『西』に厄介な狙撃手が配置されるならば、必然的に『東ルート』沿いの方が敵からの狙撃援護が薄く戦線を突破しやすいはずだ。


『東ルート』を攻めあがろうとしている味方ユニットD・E・F・Gの4体は、敵陣形の火力が低い部分に戦力を集中させて一気に突破する様子を表しているのだろう。


しかし敵狙撃手Aは射程範囲の扇を巡回させており、広い範囲を自動攻撃して複数の戦場に手を出せるようにしている。


ちょうど水上が諏訪7番隊に対して行っていた様に。

ワールドトリガー25巻P56(集英社葦原大介)】

『L字から扇ぐるぐる戦法』は、扇の角度が狭い狙撃手が敵ユニットを射程範囲に収めるためのセオリーの1つなのだろう。


せっかく西の狙撃の隙をついて『東ルート』から攻めあがったとしても、『タワー』や『L字』から巡回してきた扇が『東ルート』沿いに重なるおそれもある。

『東ルート』から攻めあがる味方ユニットF・Gと、敵狙撃手A・B

『東ルート』にコマを集中させ『西』の味方を少なくした場合、敵狙撃手の『扇ぐるぐる』が西の戦場をスルーして『東ルート』の味方F・Gが攻撃されてしまい、敵陣形の火力がカバーされてしまう場合もあるだろう。


それをさせないために存在するのが、狙撃のターゲットを誘引するために自陣西ルート沿いで孤立している味方ユニットCだ。

狙撃のターゲットを誘引して味方の隙を作る囮役の味方ユニットC

宇井「お互いユニット動かして 『射程範囲』に敵が入ると そのトリガーで自動的に攻撃するみたい」
(25巻P21)


『タワー』は優れた狙撃ポイントのため、優秀な狙撃手を配置したくなるが、その選択は敵にタンク役の囮が居る場合に危険な選択になってしまう。

なぜなら強力な狙撃手は射程も長く、意図しない敵に自動攻撃のターゲットを吸われやすいからだ。


そしてシミュレーション演習③の中で、囮役に最も適したヘルプユニットが都合よく存在する。


それが両手レイガストの雪丸だ。


レイガストの防御はかなり高く、パラメータが貧弱な修でも狙撃を最低一発は防ぐ事ができている。(230話)

修のパラメータはトリオンが『2』、防御が『4』。
雪丸の各パラメータは修の2~3倍程度だと思われるため、レイガスト2枚を使えば狙撃の5・6発は余裕で引き受けることができるだろう。

水上がホワイトボードで講義を始めたのはシミュ演習③のデータが運営から送られてきた『後』だ。

つまりヘルプユニットの雪丸を考慮に入れて作戦を立てていた可能性は十分あり得る。



味方5体の内1体がヘルプユニットなら、残りのD~Gは水上9番隊のメンバーだと思われる。


【ユニットD】 自陣『L字』に居る味方ユニット
➡『L字』の上に配置するなら狙撃可能な荒船だろうか?



【ユニットE】 自陣『中通り』以南からミドルレンジを展開する味方ユニット。扇が敵陣『8屋根』をかすめているため射程範囲は『7』マス?

➡射程が『7』マスなのは水上か樫尾。その場にとどまり射撃する様子は水上を思わせる。



【ユニットF】 『タワーうら』を思わせる円の円周から、敵陣『8屋根』あたりまで矢印が伸びた味方ユニット。矢印はおよそ『15』マス程度。
➡この矢印が進行するマスを表しているなら、行動力が『17』と最も多い樫尾が当てはまるだろう。
残行動力は『2』のため、弧月1~2回?、ハウンド1回分?くらいの余力は残っていると思われる。



【ユニットG】 自陣『東ルート』から敵陣『8屋根』まで矢印が伸びたユニット。矢印はおよそ『10』マス程度
➡残りは照屋。照屋の行動力は『16』のため、10マス進行したら残行動力『6』。射撃連携を実行するために十分な行動力が残っている。

またユニットGは射撃戦線に位置しているため、ミドルレンジに秀でた照屋が機を見て敵陣に突っ込む様子に見えなくもない。



よってこれまでの予想を纏めると、水上がホワイトボードに残していた図の戦略上の意図は次の様になる。

水上がホワイトボードに記した図の戦略的な意図の結論


以下今回の記事の結論、水上が講義した内容の予想について。



①戦闘序盤は照屋と水上のユニットで『中通り』を中心とした射撃戦を行う。

②敵陣『タワー』『L字』からの狙撃巡回を、ヘルプユニットを囮にして引き受けてもらう。

③東ルートは狙撃手の援護が薄いはずなので、②の隙をついて照屋と樫尾が『射撃戦線』を一気に突破する。

④自陣『L字』に配置した荒船の狙撃と絡めて、敵陣『8屋根』周囲に一気に火力を集中させる。


VS柿崎隊を見るに『8屋根』等にも東西満遍なく狙撃手が配置されている事もある様だが、それでも『東ルート』の攻めは続行するべきだ。
なぜなら東ルートは全体的に建物が低く狙撃手がいても狙いやすいため、1体でもユニットが前線を突破できればそのまま狙撃手を狙いに行くこともできるからだ。

水上がホワイトボードに記した敵部隊の法則について

今回の記事の最後に『水上がホワイトボードに記した部隊はどこなのか』について考えたい。

ホワイトボードの記載内容の再現(サムネイル用画像)


水上の頭に隠れている部隊を含めると、ホワイトボードに記載のある部隊は6部隊で、内4部隊が○で囲われている。


特に要警戒のチームには○を付けているのだろうが、その場合村上隊と来馬隊に○がついているのに、それより成績が良い二宮隊と歌川隊に○が付く組み合わせにならないのは違和感がある。


更に言うなら戦闘シミュで順位が低い諏訪隊の名前があるのも疑問が残る。


感覚論で述べるなら、この6部隊は単純に強そうな部隊を上から順に並べている訳ではないのだ。



ここでヒントになりそうなのが横に並べて記載されているホワイトボードマップの内容だ。
隊員に講義するなら記載されている図と部隊名は関連していると考えた方が自然だろう。


水上がホワイトボードに記載した戦略は、互いの前線を構築する射撃・近接のユニットと、『L字』『タワー』から狙撃をする敵ユニットを含む、近中遠バランスよく編成された部隊によく当てはまる内容だ。


しかし今度はホワイトボードに村上隊の記載がある事と、村上隊に狙撃手が居ない事の間に矛盾が生じてしまう。


だが待って欲しい、本当に村上隊には狙撃手が居ないのだろうか?


ヘルプユニットを含めて考えて良いなら、村上隊はシミュ①シミュ②共にヘルプユニットに狙撃手を採用している。


『ヘルプユニットを含めた部隊編成の傾向』に、水上が選ぶ6部隊に関するヒントがあるのではないか?


よって次はヘルプユニットに焦点を当てて分析を進めて行く。

各部隊がシミュ①②で選択したヘルプユニット


シミュ①~シミュ②で各部隊が選択したヘルプユニットについてわかる範囲で整理した表だ。

()内の数値は確認できたヘルプ枠の内、そのレンジに割いた枠の割合を示している。


例えばシミュ②で里見を選択した場合、里見は拳銃と突撃銃を装備しているため、クロスレンジに0.5、ミドルレンジに0.5が()内の分子に計上されている。


この表を踏まえて各部隊の編制傾向について調べて行こうと思う。


臨時部隊の中には編成のバランスに囚われず、部隊の尖った強みを発展させた部隊がいくつかある。


それが二宮隊、歌川隊、王子隊だ。


この三部隊はポジションの偏りが激しく、特に二宮隊、歌川隊に関してはヘルプユニットの選択からもその傾向を伺い知る事ができる。


歌川隊は確認できる全てのヘルプ枠をアタッカーに割いており、機動力を重視した部隊コンセプトを一貫して守っている。

二宮隊に関しては初日こそ東さんの助言に従いバランス重視で攻撃手を選択したが、二日目は狙撃手二枚と思い切った編成を実現している。


その2部隊とは逆に編成のバランスを求め、自分の部隊の弱点を補う様にヘルプ枠を選択しているのが村上隊だ


村上隊は自分の隊に狙撃手がいないからか、シミュ①②共にヘルプユニットに狙撃手を選択している。
この選択は明らかに編成のバランスを意識しており、理屈の通った選択をしていると言えるだろう。

鈴鳴第一は近中遠バランスの取れた部隊のため、普段の戦闘の感覚に近づけたい気持ちもあったのかもしれない。


他にも諏訪隊、若村隊、古寺隊にも似た傾向があり、編成のバランスを意識したヘルプ枠の選択が見られる。

具体的に言うと、この3部隊は自隊に狙撃手がいるためか、ヘルプ枠にほとんど狙撃手を選択していないのだ。


この『追加の狙撃手は不要』というバランス感覚については、ドラフト時諏訪さんの『狙撃手は2人いらねえな』というモノローグが端的に表しており、狙撃手というポジションは「居ると助かるが多すぎると扱いづらいポジション」だと言う共通認識がある様に思われる。


諏訪隊や若村隊に関しては元の部隊に狙撃手がおらず、狙撃手が多くなりすぎると普段の感覚に合わないため、ヘルプ枠に狙撃手を採用しづらいという事情もあるのだろう。


また諏訪隊に関して言うと、確認できるヘルプユニットのほとんどが中距離に秀でた駒であり、部隊の弱みであるミドルレンジの克服を意識している様に見える。


逆にシミュ②においてクロスレンジに秀でた諏訪隊は、クロスレンジ持ちの里見を一度も選択していない。


これらの選択をみるに、諏訪隊は強みを伸ばすよりも弱点を補う事を優先するバランス編成志向だと言えるだろう。



サンプルが少ないが柿崎隊、来馬隊についても、ヘルプ枠に狙撃手を一人も採用しておらず、狙撃手過多にならない様に編成のバランスを重視した同様の傾向がみられる。(柿崎隊はシミュ③で加古、黒江、米屋、片桐を選択。片桐を除き狙撃手要素はほぼない。)


北添隊に関しては近中遠が部隊に揃っており元々の編成バランスは整っているが、採用している戦術が独特のため、どちらかと言うと部隊の尖った強みを生かす戦い方をしている部隊に分類できるだろう。



ここまでの議論を纏めると、臨時部隊の中には編成にバランスを重視する隊とそうでない部隊に分けることができる。

ヘルプ枠を含めた部隊編成の傾向


この分割をどこかで見たことはないだろうか?


左の青枠で囲った6部隊は水上がホワイトボードに記載していた部隊の数に合致する。



そう、つまり水上はホワイトボードを使い、近中遠バランスの取れた部隊が取る戦術を予測し、その陣形を攻略するための連携について隊員に講義していたのだ。



水上が名前を挙げている部隊は丸で囲った部隊が4つ、そうでない部隊が2つ。


丸で囲われた部隊は古寺隊、村上隊、来間隊とシミュレーション演習で上位の成績を収めた要警戒の部隊ばかりだ。


つまり水上隊にとって脅威となりうる部隊について丸で囲っているのではないだろうか。


ここで以前Twitterで見かけた『シミュレーション演習の対戦順&勝敗予想』のすごい考察表を引用し、各部隊と水上隊の戦績を整理してみようと思う。


(あきしまz(@akishima221z)さま、快い掲載許可ありがとうございました。)

水上が挙げた6部隊と水上隊との戦績まとめ


若村隊と柿崎隊の内、水上が警戒しているのはどちらか?


水上隊は柿崎隊に対しては2勝、若村隊に対しては1勝1分けであり、ヒュースが指揮した試合で引き分けに持ちこまれている。


つまり水上視点では若村隊の方が脅威に写っているはずなのだ。

水上「注意すんのは射程が長すぎる二宮さんとこと カメレオンが2人いる歌川んとこ あとはヘルプの風間さんか」(25巻P71)


水上は自分の取る戦法がカメレオンと相性が悪い事を意識しており、若村隊にも笹森・若村というカメレオン使いが2人いるため、そういう意味でも警戒を深めたのだろうか。


水上がホワイトボードに名前を挙げた6部隊の予想

強力な敵ユニットを囮が引き付け、敵ユニットの火力が薄い所に味方の火力を集中させ意図的に人数差を作り出す


修が気づいた『最初の戦闘でついた人数差がそのまま勝敗に直結する』というシミュ演習の神髄に水上はとっくに気が付いていたのだろうか?

三浦『でも…… 自力で戦況を動かせるような『強い人』ほど こういうことは意識しにくそうだよね……』(227話)


水上は単体では決して強い駒でないからこそ『陣形の重要性』『人数の有利不利』の要素に意識を向けるという事なのだろうか。



あとがき


ここまで記事を読んでいただきありがとうございました。


これを読んでくださった皆様が、今後本誌で本格的に展開されるシミュレーション演習の戦闘描写を理解する手助けになれば幸いです。



この記事を執筆中に公式から次回予告があり、そこにとても気になる描写があったためあとがきに追記していきます。



まずは今回の記事で定義した『射撃戦線』について、それがターンを経る毎にどのように変遷していくのか予想を語っていきます。


水上のホワイトボード解明の際に言ったように、自陣東側には狙撃スポットが多く存在するため、東ルート沿いに味方の援護が集中しやすく、味方の戦線は東の方が押し上げやすい事になります。

敵陣にとっても同じことなので、敵の戦線は西の方から南下しやすい事になります。


その様に戦線が推移した場合、マップ中央で均衡していた戦線は徐々に形を変え、互いのユニットがぶつかる位置が少しずつずれていくのでないでしょうか。

戦線の推移の予想


このように戦線は自陣から見て右肩上がりの形状に変化していくと考えます。


そしてこの戦線の形はワールドトリガー公式が予告した231話の冒頭ページの描写に非常に似ています。


シミュ③はユニットが多いせいか回り込みや奇襲の要素が少なく、南西から北東まで切れ目がほとんどない戦線が形成されるのでしょう。



今後更に激しく展開されるであろうシミュレーション演習③に期待が高まります。






(20230303追記)追加記事

【追加記事】231話以降のシミュレーション演習③の戦闘描写の場所特定

シミュレーション演習③ 第3試合
諏訪7番隊 VS 村上10番隊

シミュレーション演習③ 第3試合 諏訪7番隊 VS 村上10番隊

231話冒頭の諏訪7番隊の配置を見ると、マップ右上に香取分隊、マップ中央に諏訪分隊、恐らく『自陣8屋根』あたりに見切れているのが三雲分隊だろう。


試合終了時点で村上隊のユニット24体の内15体が倒されているが、試合終了までの分隊の移動距離を見るに、そのほとんどが香取分隊によって引き起こされた可能性があるのだ。

分隊の配置に注目したユニット配置

諏訪隊と村上隊のユニットの初期配置を見るとマップ南西から北東に向かって右肩上がりの『戦線』が構築されている。


一方香取分隊の位置が始めはマップ北東だが、加古が堤にハウンドを撃つコマ(赤枠)では西の三連民家に移動しており香取分隊が大きく南西に移動している。

香取分隊は進行方向的に北東から南西に向かって移動しており、ちょうど諏訪・村上両部隊のユニットが形成する『戦線』に沿って移動している事になる。


香取分隊は抜群の連携を発揮し堤のユニットをなんなく処理し、最後には三雲分隊を援護する形で熊谷蔵内のユニットに迫る勢いだった。


マップ右肩上がりに形成された『戦線』沿いの敵をもりもり倒しながら香取分隊は南下して行ったのでは無いだろうか。




シミュレーション演習③ 第4試合
諏訪7番隊 VS 古寺6番隊


シミュレーション演習③ 第4試合 諏訪7番隊 VS 古寺6番隊

先日アップした考察記事にて戦闘描写で『高さ』を確定できていなかった『8屋根』の一部の高さを誤って入力していた事が判明した。
図中青枠のコマでは『8屋根』の北列の建物を確認できるが『高さ』は『2』だったため訂正する。


また、図中緑枠紫枠のワイヤー陣に注目すると、本誌でのぱっと見の位置関係はあっている様に見えるが、建物の位置関係を整理すると三雲分隊の位置関係が東西逆になっている。

試合終了後にワイヤー陣の解説が行われたコマはトリガーの仕様を説明するための概略図だったとすれば辻褄は合う。



シミュレーション演習③ 第5試合
諏訪7番隊 VS 来馬5番隊

シミュレーション演習③ 第5試合 諏訪7番隊 VS 来馬5番隊

(20230507追記)追加記事

シミュレーション演習③ 第6試合
諏訪7番隊 VS 二宮8番隊

シミュレーション演習③ 第6試合 諏訪7番隊 VS 二宮8番隊

今回は本格的な戦闘描写が多く、建物の高さを広範囲に判別コマできるコマがいくつもあり、特に東ルート沿いの建物の高さをより正確な値に修正する事ができた。

建物の高さを修正したところ、東ルート沿いの建物が当初の想定よりも低い事が判明した。
つまり当初想定していたよりも、狙撃手は自陣東(又は敵陣西)に集中しやすい事になる。


当初作成した記事では、『高い建物は自陣東と敵陣西に集中しているため、自陣の戦線は東ルート沿いに押し上げられる』という戦術予想を行っていたが、このVS二宮隊ではその傾向が特に顕著に表れていたと言えるだろう。

【20230507改定】シミュレーション演習マップの建物高さ

以降もシミュレーション演習が進行する毎に追記していこうと思います。

ソロ総合ランク考察『影浦は本当にアタッカー20位なのか?』

はじめに

この考察記事には単行本未収録の情報が含まれています。
考察を円滑に進めるため、本編のコマを引用する場合があります。


Round3の戦いを終え、次なる戦いに向けて個々の研鑽と情報収集を進める玉狛第二だったが、遊真と訓練していた村上から次の対戦相手である影浦の強さが言及される。

ワールドトリガー13巻P40(集英社葦原大介)】

影浦はアタッカーランク4位の村上より強いのに何故20位なのか?

その謎は単行本のおまけページで明かされ、以前影浦は根付さんにアッパーカットを見舞うという暴力沙汰を起こした結果、個人ポイント8000点没収されアタッカーランクが落ちていた事が判明した。(13巻カバー裏より)

だがワートリ読者なら遊真とは別の視点で疑問を持つだろう。
『影浦は本当にアタッカー20位なのか?』と。

かくいう自分も早速BBFを開き、強そうな攻撃手やソロポイントが開示されている攻撃手を上から順にそれっぽく並べてみると次の図のようになった。

その結果影浦は大体20位に収まっているため、『20位とかそのあたり』という村上の発言には何の問題も無い様に思える。

しかし香取が行った発言により、話はそう単純に決まらない可能性が出てきた。

ワールドトリガー16巻P79(集英社葦原大介)】

この場面は、一つのポジションに絞って上達を目指さない事を説教をする若村に対し、売り言葉に買い言葉で香取が嫌味を言うシーンである。

単純に香取のアステロイド(仮)のソロポイントが若村より高いだけなら、『アタシよりソロポイント下の人に~』となっても良いところだが、ここではハッキリと『ガンナーランクが低い』と言っている。
つまりオールラウンダーである香取にはガンナーランクが付与されているのである。

オールラウンダーの隊員がガンナーランクに振り分けられているなら、当然アタッカーランクにもオールラウンダーは混ざっているはずであり、そうだとすればさっきまとめた表が振り出しに戻る。


荒船はポジションこそスナイパーであるものの、弧月のソロポイントは8266であり無視するわけにはいかない。

よって剣トリガーを装備している中距離手等も仮に含めると、アタッカーランクには最大48名が在籍している可能性があり、村上の発言当時ソロポイント6780の影浦がアタッカー20位かそこらに入れるとは到底思えない。


なお問題はこれで終わらない。
問題を更に複雑にするQ&Aが公式から発表されたのだ。


このQ&Aでは長らく不明だった『オールラウンダーの序列』が遂に発表されたのだ。

そしてオールラウンダーのトップ3を示す事が出来るという事は、オールラウンダーだけを集計可能な明確な基準がある、つまりオールラウンダーランクなるものが存在するのだ。

ならば香取に付与されているガンナーランクとは何なのか?
それとも香取にはガンナーランクもオールラウンダーランクも両方付与されているという事だろうか?


『村上が行った影浦のアタッカー20位発言』
『香取に付与されているガンナーランク』
『オールラウンダーランクなるものの存在』

一見矛盾している様にも思えるこの3つの要素の最大公約数は一体どこにあるのか?
それとも誰かの発言に言外のニュアンスが存在するのか?

それでもなお村上の発言を信じ、『影浦は本当にアタッカー20位なのか?』という疑問を追求するべく考察を進めていくので、よろしければお付き合いください。



※※※本編で開示されていないルールや、解釈に幅がある情報については、『影浦を20位に押し込むために都合が良い物』を優先して選択することを予め宣言します。



1章. アタッカーランクから除外できる隊員は居るのか?


今回の考察では『村上の影浦20位発言』に軸を置いて議論を進めていこうと思う。


総勢48名いる剣トリガー使いの中で影浦をアタッカーランク20位に押し上げるためにまず議論すべきは、
『アタッカーランクから除外できる隊員は居るのか?』という事だろう。

ボーダーのランク戦のルールはQ&Aや単行本のオマケで記されている事が多いが、本編のさり気ない描写で示されている場合もある。

それらのルールの行間を読み取り、総勢48名いる剣トリガー使いをアタッカーランクから除外できるルールをこの章では模索していく。
(特に強そうな隊員を除外できるルールほど望ましい。)


1-1. ランク戦から除外される隊員について


まずは先ほど作成した剣トリガー使いの図から、『ランク戦そのものから除外できる隊員』が何人かいるので、その隊員について話を進めていこう。

【上:ワールドトリガー3巻P114(集英社葦原大介)】【下:ワールドトリガー7巻P60(集英社葦原大介)】

この2つのコマの発言から、本部が運営するA級~C級ランク戦には、黒トリガーを使う隊員と本部未承認のトリガーを使う隊員は参加できないという事が分かる。

つまり、S級隊員である天羽や迅(風刃)、小南(双月)はアタッカーランクから除外する事が出来るのだ。

ただし、小南に関しては以下のQ&Aによりアタッカーランクに在籍している事が確定している。

【質問コーナー⑮】
■小南先輩は攻撃手ランク3位とのことですが、個人ランク戦には顔を出しているということですか?またその場合はトリガーは何を使っていますか?


小南は中学時代までは習い事を優先していたので個人ランク戦は行っておらず、中学卒業間近~高校1年途中までの間だけ参戦してました。
その頃は、迅が黒トリガー使いになって、太刀川が微妙にやる気を失っていた時期で、小南は風間さんらと鎬を削って攻撃手ランク1位に到達。その後、玉狛の独立にともなってランク戦を離れましたが、太刀川と風間さん以外にはまだ個人ポイントを抜かれていないので、現在も攻撃手3位に位置しています。当時のトリガーは弧月(短め)二刀流でした。

つまり規格外のトリガーを現在使っている場合でも、その他に規格内のトリガーで個人ポイントを持っている場合は、ランク戦から完全には除外されずポジション別ランクにも登録されたままになるという事だ。

規格外のトリガーホルダーを使っているレイジが、近中遠のトリガーで8000ポイント付与されパーフェクトオールラウンダーを名乗れているのも、同じ理屈が適用されているからだろう。

以上の事から、3年前に迅が風刃を手にしてS級になって以降も、元々迅が使っていたスコーピオンの個人ポイントはアタッカーランクに登録されたままだと考えるのが妥当ではないだろうか。
*1



【1-1のポイント】
S級の天羽はランク戦から除外できる。
ただし迅は規格内のスコーピオンを元々使っていたため、アタッカーランクに組み込まれている可能性が高い。

1-2. 7人目の1万越えアタッカーは誰なのか

アタッカーランクを考察する上で外せないのが、『7人目の1万越えのアタッカーは誰なのか?』という議論である。

18巻P170の笹森の発言から端を発するこの議論は、7人中6人がほぼ確定している。(太刀川、風間、小南、村上、生駒、一条)

7人目として考えられる可能性は以下の3パターンだろう。


①まだ見ぬB級下位のアタッカーに1万越えの実力者が潜んでいる
②上位アタッカーの緑川や米屋が1万越えを達成した
③迅のスコーピオンの個人ポイントが1万を超えている

まず①についてだが、まだ見ぬ実力者がアタッカー上位に食い込んでしまうと、影浦を20位に押し込むに当たり非常に厄介なため、出来れば可能性から除外したい。

②について詳しくは別の章で解説を行うが、緑川や米屋、その他A級の実力者が1万越えアタッカーだと仮定した場合にとても不都合なことが起こるため、こちらの可能性も除外したい。*2

そのため今回は、③の迅が1万越えアタッカーであるという前提の元話を進めていこうと思う。


次に考えたいのが迅が1万越えアタッカーだった場合、その順位は5位なのか7位なのかという事だ。

これを論じるにあたりとても気になるコマがある。

ワールドトリガー18巻P181(集英社葦原大介)】

このコマは2月22日のRound6終了後、玉狛での会話の一部だ。

烏丸は何故わざわざ二人の名前を挙げたのか?

笹森はボーダーに1万越えのアタッカーが7人いることに対して象徴的な扱いをしており、ボーダー内でその7人の知名度は高くきっと順位まで広く知れ渡っている事だろう。

例えばワートリ読者に『No.6アタッカーは誰?』と聞いたら生駒だと即答するだろう。
だがもし香取隊って今B級何位?と聞かれたら即答することは難しいのではないか?

つまり2月22日の直前に生駒~雪丸の順位が変動する何かが発生した可能性が高いのだ。

1位~3位、及び村上の4位は最低でも2月10日~3月5日まで不動の順位であるため、あり得るとしたら5位以下の生駒、雪丸の順位が変動した場合だろう。

だが雪丸は2月22日時点でまだスカウト旅に出ているため、雪丸の個人ポイントが上昇して順位入れ替えが発生した可能性は無い。つまり順位入れ替えが発生するとしたら7位以下のアタッカーが生駒と雪丸ごぼう抜きした場合しかありえないのだ。


そして都合の良い事に1万越えのアタッカーを二人纏めてごぼう抜きできる様な個人ポイントの大きな変動が起こった出来事が一つある。

それは迅に付与されたガロプラ戦での特級戦功だ。
ガロプラ戦が行われたのは2月19日であり、特級戦功のポイントが付与されるとしたら翌日だろうか?


仮にガロプラの特級戦功もアフト戦と同じく1500だとすると、2月22日の直前にアタッカーランク元5位の生駒と元6位の雪丸の順位がまとめて抜かされる可能性は十分にあり得るポイントなのだ。


12042ポイントの村上の順位には影響を与えず、11177ポイントの生駒を丁度抜かすような迅の個人ポイントはどの様な範囲になるのか確認してみようと思う。


この図は迅の特級戦功の推移をまとめた物である。(話を単純にするため迅以外の隊員のポイント変動は考えない。)

よって迅のスコーピオンのポイントが大規模侵攻前に9200程度だった場合に、先程に挙げたような順位変動が起こる事が分かった。
(村上の順位を越さない迅のポイントの上限は9700程度)

そして迅のポイントがこの様な推移だと仮定すると、迅が1万越えアタッカーになったのは比較的最近だった事になるが、笹森発言時点で迅が1万越えになってから1ヶ月程度は経過しているため、笹森がさも一般認識かの様に1万越えアタッカーが7人居る事を語っていてもさほど違和感は無いだろう。

*3

よって迅が1万越えのアタッカーだと仮定した場合でも順位の推移や笹森の発言に矛盾が生じないどころか、烏丸の発言に意味を見出せるようにすらなるのだ。


【1-2のポイント】
迅は大規模侵攻戦の1級戦功で1万越えのアタッカーとなり、ガロプラ戦の特級戦功でアタッカー5位になった可能性が高い。


1-3. オールラウンダーの定義とは

ここからはオールラウンダーがソロ総合ランクでどの様に順位付けされているかを検討するべく、まずはその定義について振り返ってみようと思う。

【質問コーナー⑪】
■オールラウンダーの定義はなんですか?

「ガンナー用・アタッカー用のトリガーそれぞれで6000ポイント以上の個人ポイントを獲得した隊員」がオールラウンダーと呼ばれます。現在はボーダー全体のレベルが上がってきているので、8000ポイント以上にするべきという声もあります。

【質問コーナー⑭(抜粋)】
■加古さんはメイントリガーに銃手用のトリガーが入っていませんが、なぜ射手なのですか?

ポジションの呼ばれ方は、装備したトリガーの中で一番個人ポイントが高いもの、を基準に決まります(万能手は例外)。
加古さんはサブに装備しているハウンド(改)の個人ポイントが一番高く、メインに装備しているスコーピオンがまだ6000点に達していないので、射手です。
スコーピオンを6000点以上にして、万能手になりたい模様。

これらの定義について個人ポイントが7009の巴隊員を例に解釈すると、巴のポジションはガンナーである事から『ハウンドorアステロイド(拳銃)』のポイントが最も高く、そこに7009点が付与されている事になる。
また、呼称がオールラウンダーでない事から、巴の弧月の個人ポイントは6000未満である事が確定する。

つまり剣トリガーを装備しているのにポジションの呼称が射手・銃手である隊員は、剣トリガーの個人ポイントが6000未満であることが確定するのだ。


よって、巴、三雲、犬飼、加古が仮にアタッカーランクに入っていた場合でも、影浦のポイント6780を超すことは無いため、先ほどの表からこの4名を除外して良いだろう。

ただし荒船は狙撃トリガーと剣トリガーの組み合わせであるため、この理屈で除外することは出来ない

【質問コーナー⑥】
■オールラウンダーはスナイパーもできるんですか??

基本的にできません。近・中距離に対応するのがオールラウンダーです。
狙撃もできるパーフェクトオールラウンダーはレイジさんだけです。

つまり狙撃手の場合は、剣または銃手用トリガーの個人ポイントを上げたとしても『オールラウンダー』の定義から外れるためオールラウンダーと呼ばれる事は無い。

荒船の個人ポイントは弧月:8266、イーグレット:8349。

荒船は弧月が6000ポイント以下だから狙撃手と呼ばれている訳ではなく、近・遠の組み合わせの場合、個人ポイントが高い方の武器を元にポジションが決まるのでスナイパーで登録されているだけなのだ。



【1-3のポイント】
ポジションは持っている武器の内、最も個人ポイントが高い武器を基準に決定される。
ポジションが銃手・射手の場合は剣トリガーの個人ポイントが6000未満であることが確定する。


1-4. 『オールラウンダーランク』は存在するのか


今回の考察で最も重要な論点は『オールラウンダーのランクがどのように順位付けされているか』という事だ。

そしてオールラウンダーの順位集計方法を推測するにあたり重要なQ&AがBBFに掲載されている。

【BBF-Q240】
■ポジション別ランク、個人総合ランクは、具体的にどの数値で決まっているのでしょうか?個人ポイントのいちばん高いものですか?それとも全武器のポイントの合算ですか?


個人ポイントのうち一番高いもの、です。個人ランクは、全隊員の全武器のポイントのうち、だれが一番高いかで決まります。全射手の中で、二宮のアステロイドのポイントが一番高い→射手ランク1位。全隊員の全武器の中で、太刀川の弧月のポイントが一番高い→個人ランク1位、という感じです。合算ランクがあったらたぶんレイジが1位です。

とても重要な事がいくつも書いてあるため、要素を少しずつ抜き出しソロ総合ランクのルールを読み解いていこうと思う。


このQ&Aを元にまず考えたいことが、全射手の中で、二宮のアステロイドのポイントが一番高い→射手ランク1位。』という内容だ。

この文章からは、射手ランクに加わるのは射手だけというニュアンスが読み取れる。

当たり前のことでは?と思うかもしれないが、この文章は「荒船がどのポジション別ランクに割り振られているか?」を考えるために重要な解釈になる。
『射手ランクには射手しかいない』という事は、同様に狙撃手ランクには『ポジション:狙撃手』の隊員しかいない事になる。

つまりポジションが狙撃手である荒船は、攻撃手ランクには登録されず、狙撃手ランクにのみ登録されている事になるはずだ。

よって、荒船の様に複数の武器のポイントが高い隊員であっても、割り振られるポジション別ランクはポジション(=最も個人ポイントが高い武器)のみに由来するという事だろう。



次に考えたいのが、もし仮にアタッカーランクやガンナーランクとは別に、『万能手だけを個別に抜き出してランク付けしたオールラウンダーランクなるものが存在する場合、それはどのようなランク付けであるべきだろうか?』という事だ。


パッと思いつくオールラウンダーランクの集計方法は以下の2つだ。


①攻撃手トリガーと銃手用トリガーの内、ポイントが高い方をランキングの順位に反映する。
②攻撃手トリガーと銃手用トリガーの個人ポイントを合算したポイントをランキングに反映する。

まず①について考えてみるが、攻撃手トリガーと銃手用トリガーの内、個人ポイントの高い方を個別に抜き出して万能手のランキングを付けるのであれば、やっていることはアタッカー・ガンナーランクと変わらないため、『オールラウンダーランク』である必要性は薄い様に思える。


では次に②の集計方法についてはどうだろうか。
オールラウンダーとは近中2つの武器を極めた隊員に与えられる言わば称号の様な物であり、近中2つの武器をどれだけ使いこなせるかを示す指標として2つの武器を合算するランク付けは十分あり得るだろう。
*4

しかし②の集計方法には一つ欠陥がある。


【質問コーナー⑪】

■オールラウンダーの定義はなんですか?

「ガンナー用・アタッカー用のトリガーそれぞれで6000ポイント以上の個人ポイントを獲得した隊員」がオールラウンダーと呼ばれます。現在はボーダー全体のレベルが上がってきているので、8000ポイント以上にするべきという声もあります。

現在ボーダー内にはオールラウンダーの定義を見直す動きがあることがこのQ&Aから分かる。

もし定義が見直され8000ポイントがオールラウンダーの基準になった場合、片方の武器の個人ポイントが6000~8000未満の隊員はオールラウンダーの定義から外れ、アタッカー又はガンナーになってしまう。

つまり②の集計方法だと定義を変えた瞬間に、元オールラウンダーがアタッカーランク・ガンナーランクに一気に流れ込むことになるため、順位付けそのものが形骸化してしまう恐れがある。

そのためオールラウンダーをランク付けする場合、オールラウンダーの定義が変わったとしても、ポジション別ランクに影響が出ない仕組みがあることが望ましいと言えるだろう。





以上の論点をまとめると、オールラウンダーランクに求められる要件は以下の様になるだろう。


●オールラウンダーである香取にガンナーランクが付与されている事
●オールラウンダーの定義が変わってもポジション別ランクに影響が出ない仕組み
●複数の武器を持っていても割り振られるポジション別ランクは最も個人ポイントが高い武器に由来する。

これらの条件をすべて満たす『オールラウンダーのランク付け方法』がある。


オールラウンダーは所持している剣トリガーと銃手用トリガーの内、個人ポイントが高い方のポジション別ランクに組み込まれた上で、近中の武器の個人ポイントを合算し順位付けした『オールラウンダーランク』が付与されるという方法だ。

ガンナーランクが付与されている香取を例に挙げて説明すると、香取の武器の中でアステロイド(仮)の個人ポイントが最も高いので、香取にはガンナーランクが付与されアタッカーランクは付与されない。

そして近中どちらも6000ポイントを超えているため、2つの武器のポイントを合算したオールラウンダーランクも付与されるという事だ。


なおこのランク付けの方法は、公式Q&Aの回答にあった『ガンナーTOP3』という回答とやや矛盾が生じる様に思える。
しかしガンナー『ランク』では無くガンナー『TOP3』という表現をしているため、ランクという用語を使う事をあえて避けたと捉えることもできる。
そのため今回の考察では、『ガンナーTOP3とはガンナーランクから純ガンナーのみを抜き出だした結果を言っており、実際のガンナーランク1~3位にはオールラウンダーも居る可能性がある』と解釈する。


そしてこのランキング集計方法を図に表すと下図の様になる。

オールラウンダーは作中でポジションの1つとして扱われているが、ソロ総合ランクに当てはめる場合は『一定の個人ポイント基準を満たした隊員に与えられる称号の様な物』と解釈すればよいのではないだろうか。

そしてこの集計方法はオールラウンダーというポジションをソロ総合ランクの枠組みから除外しているため、『(ソロ総合ランクは)全隊員の全武器のポイントのうち、だれが一番高いかで決まります』という『複数のトリガーを合算したポイントはソロ総合ランクに含まない』と言うニュアンスにも合致する。

今回の考察では便宜上『オールラウンダーランク』という言葉を用いたが、作中では一度も『オールラウンダーランク』という用語が使われていない。
他のポジション別ランクとはそもそもの性質が異なるため、正式なランクとしては集計されていない可能性も考えられるだろう。



【1-4のポイント】
オールラウンダーは近・中のトリガーの内、個人ポイントが高い方のポジション別ランクに振り分けられる。

1章まとめ

1章で考察した情報を纏めると、


●S級隊員の天羽
●ポジションがアタッカーで無い加古、犬飼、荒船、三雲、巴
●ガンナーランクに振り分けられた香取

以上の7名がアタッカーランクから除外できるという結論になったので、その途中経過を纏めてみた。

影浦を20位に押し込むためには、人数が多いオールラウンダーをアタッカーランクから除外できる可能性を模索しなければならない。

先程考察したように、オールラウンダーは装備している武器の内、個人ポイントが高い方のポジション別ランクに割り振られるとすると、銃手用トリガーのポイントの方が高いオールラウンダーを見つけることが出来れば、その隊員をアタッカーランクから除外して影浦の順位を底上げできる可能性がある。


よって次に議論するべきは、『オールラウンダーが所持する近・中武器の内、個人ポイントが高いのはどちらか?』という事だろう。

しかし作中でオールラウンダーの具体的な個人ポイントは全くと言って良いほど明かされていないため、香取以外のオールラウンダーをアタッカーランクから除外する確実な方法は無い。


だがBBFを開いてあらゆる情報を検討した結果、オールラウンダーの近・中の個人ポイントの内どちらが高いかを定量化できる一つの可能性が浮かんできた。

次の章ではBBFに隠された全隊員の個人ポイントを示唆する『ある法則』について議論を進めようと思う。


2章.チームパラーメータ考察『オールラウンダーはチームパラメータにどのような影響を与えるのか』

1章のまとめで述べた『オールラウンダーの近・中の個人ポイントの内どちらが高いかを定量化できる方法』とは『チームパラメータ』の事だ。

【BBF-P35】

❸チームパラメータ

近距離・中距離・遠距離それぞれにおける、各チームの対応力をグラフ化した。

BBFによるとチームパラメータとは各チームの『近・中・遠』距離毎の対応力の高さを示しており、例えば柿崎隊のチームパラメータは以下の様になっている。

この図は柿崎隊のチームパラメータを計測しグラフに落とし込んだ図だが、近距離と中距離の対応力にそれぞれ注目してほしい。

柿崎隊は3人とも似たようなトリガー構成になっているが、チームの対応力は近距離よりも中距離に秀でていることが分かる。
よって普段から銃手用トリガーで戦う機会が多いと考えられ、柿崎隊3人が相手にとどめを刺す時も自然と銃手用トリガーになる事が多いのではないだろうか?

つまり柿崎・照屋は共に、銃手用トリガーの個人ポイントの方が高いオールラウンダーである可能性が高いのだ。

この考えに基づくと、オールラウンダーが所属している部隊のチームパラメータを分析し、近・中どちらに比重があるのか確認する事が出来れば、オールラウンダーの個人ポイントの比重も定量化出来るのではないだろうか?

よってこの章ではチームパラーメータにスポットライトを当てて考察を進めていく。

2-1.チームパラーメータの計測方法

チームパラメータのレーダーグラフは少し癖のあるグラフだったため、数値を計測するにあたっていくつかルールを設けた。

以下に二宮隊のチームパラメータを例にして計測のルールを列挙してみたので確認してほしい。

図中にも記載したが、チームパラメータはすべて整数で構成されているという前提の元、計測・分割を行っていく。




そして上記のルールに基づいてBBFに記載されている全22部隊のチームパラメータを計測した結果が以下の表だ。

こうして並べてみると玉狛第一だけ頭一つ抜けた合計値になっているため、ボーダー最強部隊は玉狛第一だという例のQ&Aにも納得だろう。

【BBF-Q267】
玉狛第1は最強の部隊と言われていますが、ぶっちゃけ太刀川隊より強いの?


唯我尊というキーパーソンの存在により、確実に玉狛第1の方が強いと言い切れます。

2-2.チームパラーメータの分割

次に行いたいのが、『各部隊のチームパラメータを構成する数値を、どの隊員に何Ptずつ振り分ける事ができるか?』という操作だ。

例えば近中遠バランスよく編成されている影浦隊と鈴鳴第一を例に挙げてポイントを割り振ってみる。

この2部隊は隊員間でポジション被りが無く、ポジションと異なる武器も使っていないため、チームパラメータを構成する近Pt・中Pt・遠Ptは、その距離に対応した隊員に全て割り振ることが出来る。


※以降Ptという単語は『チームパラメータを分解・集計して得られた数値』に対して用いるものとする。



同じ要領を用いると、部隊内で『ポジション』と『武器の射程』が被っていない太刀川隊の太刀川(近8Pt)、草壁隊の宇野(遠4Pt)を始めとした狙撃手たち、諏訪隊の笹森(近3Pt)等もPtを確定させることが出来る。


ポイント①:『ポジション』と『射程』が被っていなければPtを振り分けることが出来る。


次にポイントが分割出来るパターンは、チーム内に同格として扱われている隊員がいる場合だ。

例えば東隊を例に挙げると、小荒井と奥寺の2名は作中で同格のキャラとして扱われることが多い。
よって東隊の近4Ptをこの二人に振り分けるとしたら2Ptずつが妥当ではないだろうか。

つまり部隊内でポジションが被っている場合でも、それが同格のキャラであればポイントを等分することでPtを確定出来るのだ。


ポイント②:同格の隊員であればPtを等分することができる。

そしてこの例にはおそらく茶野隊や間宮隊、甲田隊も当てはまるだろう。


だがここで問題が生じる。シューター3人編成の間宮隊の中Ptが中途半端な5Ptなのだ。

なるべく均等に割り振るとしたら2・2・1しか考えられないが、あの3人の中から誰か一人を選んで1Ptを付与しなければならない。
3人に何か差は無いものかとBBFを開いてみたところ、一つの可能性を見つけた。

秦稔のみアステロイドを装備していないのである。


【4巻P108】
通常弾アステロイド
特殊な性能のない通常弾。
威力が高く、集中砲火が非常に強力

ステロイドと言えば中距離手なら誰でも装備している中距離戦の要となるトリガーだが、そんな大事なトリガーをわざわざ外して秦稔はメテオラを選択しているのだ。

他二人が装備していないトリガーを選択することで部隊戦術に幅を持たせる目的があるのだろうが、その結果秦稔個人の突破力が乏しくなり中距離の対応力が他二人よりも低く評価されているのではないだろうか?

つまり銃手用トリガーを使っている場合でも、それがアステロイドでない隊員は中Ptが低くなる可能性があると言えるのだ



そしてこの傾向は秦稔に限った話ではない。

『何故王子はオールラウンダーで無くアタッカーなのか?』という話にも繋がるのだ。

この図はBBF掲載時点で剣トリガーと銃手用トリガーを両立している隊員を、『アステロイドを装備しているか否か』でポジション毎に整理した表だ。

かなり露骨な傾向が見て取れるが、この表をアタッカー目線で分析した場合、アステロイドを装備したアタッカーはオールラウンダーになれるといっても過言ではないのだ。

逆に言えば、本編であれだけ華麗にキューブを操作していた王子でも、ハウンドだと中距離戦での突破力は低く個人ポイントを6000まで上げるのが困難という事なのだろう。


そして話を間宮隊の秦稔に戻す。

ステロイドを装備していない秦稔は撃破数を稼ぐことが出来ず、間宮・鯉沼の2名と比べて個人ポイントが低いと思われる。
そしてその傾向はチームパラメータにも表れており、間宮隊3人の中で秦稔に割り振られる中Ptのみ低い結果となっているのだろう。


ポイント③:アステロイドを装備していない場合、中Ptが低くなる。


秦稔のみPtが低い事、アステロイド以外では個人ポイントを十分稼げずオールラウンダーになれない事は無関係だとは思えない。

ここで極めて重要な可能性を述べるが、チームパラメータと隊員の個人ポイントの間には、想像以上に深い関係があるのではないだろうか?

その可能性を頭に入れつつ、次はマスタークラス擁する三輪隊と二宮隊のチームパラメータの分解を行ってみる。

二宮隊はアタッカーが1人のため、近の4Ptは辻に割り振るのが妥当だろう。

そして三輪隊は近中合計8Ptあるが、三輪隊エンブレムの双蛇が示す通り三輪と米屋は同格扱いされている事(23巻P122)、銃手用トリガーを装備しているのは三輪だけである事から、ポイントを割り振るとすれば図の通りで確定できるだろう。

三輪の様に複数の距離のトリガーを使う隊員、つまりオールラウンダー等の場合、その隊員個人の強さの『格』は合計Ptにより表現されており、その後武器の射程に応じてPtが分割されるというルールが見えてくる。


ポイント④:オールラウンダーのPtは『近』と『中』に分割される。

Ptが個人ポイントに対応している可能性を踏まえると、それぞれ近中に割り振られるPtは、剣トリガーと銃手用トリガーの個人ポイントの大小関係に応じて分割されているのではないだろうか?


2つの武器の個人ポイントが明かされている隊員と言えば荒船だ。
荒船の個人ポイントは弧月が8266、イーグレットが8349であり、ほぼ1:1となるため近遠Ptもバランスよく分割されるのではないだろうか。

近遠のPtをバランスよくを荒船に配分するならば、図の様に近2Pt・遠2Ptと割り振るのが妥当だろう。
その結果隊長かつエースの荒船が4Pt、穂刈半崎はそれぞれ3Ptずつとなるため、部隊全体で自然なポイント配分になっているように感じる。

同様にオールラウンダーが居る吉里隊のパラメータも、各隊員が装備している武器に応じてバランスよくPtを配分することが出来るため、隊員に割り振られるPtは装備している武器に応じて分割されると考えて良いのだろう。


ポイント⑤:射程が異なる武器を複数装備している場合、隊員のPtは装備している武器の射程に応じて分割され、その割合は武器毎の個人ポイントの大小により決まる。


そして隊員個人のPtが装備したトリガーの性質に応じて近中遠に分割されるならば、トラッパーが在籍する冬島隊と加古隊のパラメータも分割出来る様になるのだ。

トラッパーが居る冬島隊と加古隊のチームパラメータを並べてみると、それぞれ中距離手が居ない冬島隊に中が2Pt、狙撃手が居ない加古隊に遠が2Pt割り振られている。

これはトラッパーというポジションはチームパラメータ上では『中』と『遠』にPtが割り振られ、その比率は1:1であるという事を示しているのだろう。


ポイント⑥:トラッパーには『中』と『遠』Ptが割り振られる。

チームパラメータを構成するルールがいくつか判明したが、一度ここで『Ptが個人ポイントに対応している可能性』について深堀りしてみようと思う。

現時点でPtの分割が確定した隊員の中で、個人ポイントが明かされている隊員を並べてみると下図の様になった。

この図は個人ポイント順になるように上から並べているが、各Pt帯における個人ポイントの基準値がおぼろげに見えてこないだろうか?

例えば4Ptになった隊員はいずれも個人ポイントが8000強から10000弱、つまりマスタークラス相当の隊員なのだ。

そして2Ptと3Ptの境界値は大体7300~7400ポイント位に見える。


よってチームパラメータを個人ポイントを基準に分割する場合、以下の方針を設定できそうだ。

●マスタークラス相当(8000強~10000弱?)の場合4Pt
●大体7300を超える場合に3Pt

この基準値を元にチームパラメータの分割を再開してみよう。


ポイント⑦:マスタークラス相当の隊員には4Ptが割り振られる。

次に分割する部隊は個人ポイントが開示されている緑川と三浦が在籍している草壁隊と香取隊だ。

これまでに示した基準に基づいてPtの分割を行ったが、ガンナーランク1位の里見が5Pt相当だという事は、今後チームパラメータを考察するにあたり重要な基準の1つとなるだろう。


ポイント⑧:ガンナーランク1位の里見は5Pt相当。

そしてこの章の最重要目的である『オールラウンダーの隊員がチームパラメータ上で近中どちらに比重が置かれているのか』という事を検証するべく、オールラウンダー擁する玉狛第一、風間隊、嵐山隊、柿崎隊のチームパラメータの分割を一気に行っていく。

なおパラメータを分割する際、オールラウンダーをガンナーランクに振り分ける余地を残すため、無理のない範囲で中Pt≧近Ptとなるようにしたい。



ここまでの操作でオールラウンダーが居る部隊のチームパラメータをすべて割り振る事が出来たので、一度その結果を振り返ってみよう。

以上の結果から、木崎、嵐山、時枝、柿崎、照屋の5名は中Ptが最も高いことが分かった。
つまり普段この5名が最も得意とする距離は中距離戦であり、個人ポイントも自然と銃手用トリガーが最も高くなるだろう。

よってこの5名はガンナーランクに振り分けられると考えて良いだろう。


なお、上記の5名以外は近Pt=中Ptとなってしまい、近中どちらのトリガーに比重があるか不明という結果になったが、香取にガンナーランクが付与されている以上、近Pt=中Ptの場合でも銃手用トリガーの個人ポイントが最も高くなる可能性は十分あり得るだろう。

そしてこの表で気になる点がもう一つある。それは中Ptの方が高くなったオールラウンダーには『アサルトライフルを装備している』という共通点がある事だ。

そもそもアサルトライフルは射程を使ってじっくり削るのに適したタイプの銃であり、もしアタッカー寄りの戦術を取りたいのであれば片手で扱えるハンドガンや射手スタイルの方が適しているのではないだろうか?

ここで玉狛第一の取る戦術についてBBFを振り返ってみる。

【BBF-P89】
FORMATION&TACTICS
オールラウンダーのコンビが援護して小南の強烈な一撃でとどめ‼

エース攻撃手である小南を主軸にした、玉狛第1の基本戦術。
万能手の二人は銃手用トリガーを使用し、中距離からの援護射撃に専念。小南による必殺の一撃を狙う

烏丸のエスクードを最大限に活用!
堅実な射撃戦で相手を封殺‼
FORMATION&TACTICS
オールラウンダーのコンビが援護して小南の強烈な一撃でとどめ‼

後退しながら戦う陣形。エスクードで攻撃を完全遮断し、強烈な弾幕で相手のトリオンを削る

BBFで紹介されていた玉狛第一の戦術を見ると、烏丸の戦術は銃手用トリガーに偏っていることが分かる。

また、北添秀高もアサルトライフルスコーピオンを装備しているが、遊真に瞬殺された際はアサルトライフルを構えているため、銃トリガーを普段使いしているように思える。

アサルトライフルを装備している烏丸、北添(秀)、佐伯、海老名の4名は、射程を使った戦術を使用するためにアサルトライフルを選んでいるのではないだろうか?

つまりはこの4名は部隊で戦う時は射撃に偏重した戦術を用いる可能性が高く、その結果銃手用トリガーにポイントの比重が偏ると考えられる。よってガンナーランクに振り分けるのが妥当ではないだろうか?*5


ポイント⑧:近Pt=中Ptでもアサルトライフルを装備している場合、戦術がガンナー寄りになるためガンナーランクに割り振られる可能性が高い。

オールラウンダーが所属するチームパラメータを分析したことで、中距離戦を得意とするオールラウンダーの共通点の様な物が見え、『銃手用トリガーの方が個人ポイントが高そうなオールラウンダーを見つける』という当初の目的は達成されたと思われるが、ここまで来たら最後まで分割を進めていこうと思う。

これまでの分析からオールラウンダーはいずれも装備した武器に応じて近中にPtが分割される様だが、同じように近中の武器を使っていてもポイントが分割されない例がある。

それが玉狛第二と那須隊だ。

この2部隊についてなるべく違和感が出ない様にPtを分割したが、使用している武器と近中のPtが必ずしも一致していないことが分かる。

三雲に近Ptが無い事と熊谷に中Ptが無い事には何か共通の理由があると思う。

ここで剣と銃手用トリガーを両立している隊員(オールラウンダー以外)を抜き出して比較してみようと思う。

メテオラ装備の小南と熊谷の中Ptが0になっているが、アステロイド未装備の秦稔の中Ptが低く査定されていた事と同じ理屈で、メテオラの威力が低いため中Ptが付与されないのだろう。

威力が低いメテオラを装備している小南達に中Ptが無いなら、威力の低いレイガストを装備している三雲も同じ理由で近Ptが0になっていると思われる。

BBF-P212,213によると、同じ剣トリガーでも弧月とスコーピオンの攻撃力がAである一方、レイガスト(剣)の攻撃力はBであり一歩劣った性能になっている。
その上三雲はレイガストを専らシールド代わりに運用している防御寄りのシューターであるため、近Ptが割り振られていなくても納得だろう。

では威力が高い剣トリガーを使っている加古、巴、犬飼の3人に差があるのは何故なのだろうか?


この3者の違いが何か考えたが、おそらく剣トリガーの運用方法に違いがある。

加古さんはオールラウンダーを目指している事から、自分の戦術にスコーピオンを取り入れようとする積極的な姿勢が伺える。
巴もポジションこそガンナーであるものの、Round5では積極的に弧月を運用していた。

しかし犬飼がスコーピオンを使用した場面は、自分の腕についた鉛弾を切り離す時のみであり、それ以外はガンナーとして離れた距離から戦況をコントロールする動きに終始している。

これらを踏まえ総合的に判断すると、近中武器を両立している隊員に近中Ptが両方付与されるためには、両方のトリガーに十分な攻撃力がありつつ、かつ積極的に得点に絡むような運用をしている必要があるのだろう。


ポイント⑨:威力の高い武器を積極的に使う場合に、その射程に応じたPtが割り振られる。


この考えにより玉狛第二のポイントが確定したが、次に気になるのは三雲と雨取が2Ptである事だ。

吉里隊が3人とも2Ptであった事を踏まえると、2Ptには平均的なB級下位から正隊員に上がりたての隊員まで含まれていることになる。

そこから考えると、三雲に勝ち越す実力を持ちながらも『B級と比べても結構見劣りする弱さ』と評される唯我も2Ptの範囲に入るのではないだろうか?

最後に諏訪隊のチームパラメータも分割してみたが、堤に割り振られるチームパラメータも2Ptという結果となった。

2Ptが付与された隊員を振り返ると、堤や小荒井・奥寺を始めとしたB級の中堅戦力や、吉里隊の様な平均的なB級下位、B級に上がりたての三雲や雨取など、とても広い範囲の隊員が当てはまっている。

以上の事から2Ptとは正隊員相当の実力を持つ隊員に広く割り振られるPt帯と考えて良いだろう。


ポイント⑩:2Ptとは正隊員以上の隊員に広く割り振られるPtである。

2章まとめ

2章でチームパラメータを分割・分析した事により、アタッカーランクから除外できると考えられるオールラウンダーは以下の様になった。

●チームパラメータ上で中Ptが最も高い木崎、嵐山、時枝、柿崎、照屋の5名
アサルトライフルを装備し普段から銃手用トリガーを使う機会が多いと思われる烏丸、佐伯、北添(秀)、海老名の4名

以上の9名をアタッカーランクから除外できると考え、現時点の途中経過を再度まとめてみた。


中距離戦に秀でたオールラウンダーの割合がやけに高くなった気もするが、銃トリガーと剣トリガーの得点しやすさを考えるとある意味当然とも言える。

そもそもポジションとは入隊試験の結果を元に本人の適正に合った物からスタートするため、最初に使い始めた武器のポイントが最も高くなるのは自然な事だろう。(BBF-Q211)

重要なのはそこから先で、元々使っていた武器に加えて異なる射程の武器を追加しようとした時、銃手用トリガーを使っていた隊員が新たに剣トリガーを使い始める方がオールラウンダーになる難易度はその逆に比べて遥かに低い。

剣トリガーは威力が高いので、アタッカーとしての適正が低くても個人ポイントをある程度稼ぎやすいからだ。



現時点でアタッカーランクに入る可能性の方が高い隊員は総勢32名。

オールラウンダーを大勢アタッカーランクから除外することに成功したが、影浦をアタッカー20位に押し込むためにはあともう一歩何かが足りない様に感じる。

ここで一旦アタッカーについての考察からは離れ、チームパラメータ考察の中で結論を保留していた疑問をもう一度考えたい。

結局三輪隊の『遠』8Ptは奈良坂と古寺にどの様に振り分けるべきなのか?


2章で考察した全隊員のチームパラメータのPtを表にまとめてみた。


奈良坂と古寺には狙撃手としての実力に大きな差があるため、三輪隊の『遠』8Ptを等分する訳には行かず、分割するとすれば『6:2』か『5:3』になるだろうが、どちらの場合でも問題無い様に感じる。
逆に言えばPtの分割を確定することが出来ない。

この疑問は放置するべきではない、もしかするとチームパラメータにはまだ他にも影浦を20位に押し込むための手掛かりが眠っているかもしれない。

よって次の章では奈良坂と古寺のPtを確定させるべく、スナイパーの格付けについて考察を進めて行こうと思う。

3章.捕捉&掩蔽訓練考察『隠岐は捕捉・掩蔽訓練で何位だったのか』

スナイパーの強さについて議論をするなら最も参考となるのが、やはり捕捉&掩蔽訓練の順位だろう。
この章では訓練の順位に秘められたある法則について考察を進めて行きたい。


以前自分は隠岐のパラメーターが開示されていない時期に『隠岐のパラメーターはいくつなのか?』というテーマを考察するべく、捕捉・掩蔽訓練の分析を行った事があるのだが、その結果隠岐は捕捉&掩蔽訓練で6位であった可能性が極めて高いという結論になった。

以下に当時の考察ツイートのリンクを貼りつけたので、気になる方は確認してほしい。

*6

上記の考察から重要な要素を抜粋すると、


①捕捉&掩蔽訓練の順位は【攻撃・技術・機動・射程】のパラメーターの合計順になっている。
②合計が同率の場合は【射程】が大きい方が高順位
③荒船の【攻撃】は弧月込みのパラメーターのため同率の中で最も順位が低い
④佐鳥は考察できない。


①について何故そうなるのか今回の考察でも触れておこうと思う。

以前訓練の順位を考察していた時、『特定のパラメーターの合計が順位に影響してるのでは?』と思い検証を進めたところ、【攻撃・技術・機動・射程】の4つを合計した時に最もきれいに順位に対応する事が判明した。

当時の考察では大体隠岐のパラメーターはこのくらいかな?という値を代入して『隠岐は6位』という結論を出していたが、今となれば本誌で連載中の戦闘シミュレーション編で隠岐のパラメーターが開示されたので、①の検証を改めて正確に行う事が出来るようになった。


※1【攻撃】6
※1【機動(≒回避)】7 *7
※1【技術】8
※2【射程】7

(※1:ジャンプSQ2021年12月号P227より)
(※2:ジャンプSQ2022年1月号P438の<射程早見表>より、隠岐の【射程】は荒船と同値だった)

これらのパラメータを先ほど示した①の法則に基づき当てはめると、隠岐の順位は空席の6位にピタリと当てはまるのだ。

(この章では『TOTAL』という単語を【攻撃・機動・技術・射程】の4つのパラメーター合計という意味で用いる)

この表を見ると、考察不可能な佐鳥を除いた全ての隊員に法則①が当て嵌まっている。

①について何故訓練の順位が【攻撃・技術・機動・射程】の合計になるかを説明するためには、逆に何故それら以外のパラメーターが訓練の順位に影響を及ぼさないかを説明した方が分かりやすいだろう。

■【特殊戦術】

特殊戦術とは改造トリガーの装備や部隊戦術に依存する要素が大きいため、イーグレット1本で行うこの訓練において【特殊戦術】は結果に影響を及ぼさない。

■【指揮】【防御・援護】

「指揮」する部下も「援護」するべき味方も居ないため、これらのパラメーターは訓練結果に影響を及ぼさない。

【防御】の要素についてだが、この訓練ではシールドを使えない設定のため【防御】が介在する余地はない。
*8

よって、シールドが無い訓練において【防御・援護】も訓練結果に影響を与えないのだ。


■【トリオン】

【質問コーナー⑩】
■狙撃手用トリガーはどのくらいの距離まで正確に命中させることができますか?

的が動かないなら、精密射撃が得意な奈良坂や半崎がイーグレットを使えば、1km先の表的にも当てられると思います。アイビス、ライトニングは、もっと射程が短いです。

このQ&Aではイーグレットの射程について記載されているが、スナイパーの中で【トリオン】が5と最低値タイである半崎でも、イーグレットの射程ボーナス込みで1km先まで弾を届かせることができるのだ。

ワールドトリガー14巻P61(集英社葦原大介)】

このコマは千佳の予想外の距離から当真がヘッドショットを決めるシーンである。
トップレベルのスナイパーであれば実戦形式の訓練でも600m以上離れた的に弾を命中させられる事を表しているのだろう。

これら二つの描写から導かれる結論としては、イーグレットは弾を最低でも1km先まで届かせる性能を持っているが、的が動く実戦においてその射程を最大限活かすことが出来る隊員はほぼ居ないという事だ。

つまりイーグレットを用いた捕捉&掩蔽訓練では、トリオンの多寡が成績に及ぼす影響は無いに等しいのだ。


佐鳥はなぜ捕捉&掩蔽訓練で2位だったのか?

隠岐のパラメーターと法則①はとても綺麗に対応していたため、法則①はほぼ正解かの様に思えたが、実際にはその傾向に当てはまらない隊員が3名もいる。

その3名とは訓練で遊んでいる当真と絵馬、そして『考察の特異点』佐鳥だ。


スナイパーランク1位の当真は訓練の順位こそ低いものの、B級以上の実力者のみ狙いつつ自分は被弾0のまま訓練を終えるという離れ業を見せている。
さすがスナイパー1位と思いたくなる結果だが、先程述べた4つのパラメーターのTOTALを見ると、奈良坂が38である一方当真は36。
TOTALにおいて何故か当真の方が低いのだ。

そして一方の絵馬と言えばTOTALは半崎と同率の32だ。
半崎は優秀なスナイパーであるものの、元A級隊員である絵馬と比べると一歩劣る印象を受けるため、TOTAL値が同じである事に違和感を覚えてしまう。

当真と絵馬の二人は訓練で遊んでいるので、実際の実力がはっきりとは見えている訳ではない。
『もし真面目に訓練に取り組んだら実は①の法則通りの順位に当てはまるのでは?』という風に、2人が①の法則と合致しないことに対して最悪言い訳することもできる。

しかし当真、絵馬の二人を誤差と割り切って無視したとしても最後の壁が立ちふさがる。

佐鳥は真面目に訓練に取り組んでいるのだ。


真面目に訓練してるなら他の隊員と同じ様に①の法則に従っても良いはずだが何故か佐鳥だけが当てはまらない。
何故佐鳥だけ他の隊員と違う傾向を示すのか?もしかして①の法則は間違っていたのか?

考察の特異点たる佐鳥に長年苦しめられてきたが、遂に本誌でその理由が明かされた。









ジャンプSQ.2022年5月号第211話「遠征選抜試験」(集英社葦原大介)】

そう、佐鳥は感覚派スナイパーだったのだ

感覚派スナイパーという分類の初出は単行本7巻の巻末付録『ボーダーポジション診断チャート』だが、本編でここまではっきりと、しかも三人まとめて括られた描写はこのコマが初めてではないだろうか。
*9

奈良坂曰く感覚派スナイパーとは型にはまらない自由な才能を持っている。
つまり数値で測る事が出来ない『規格外の何か』を持っているのだ。

言い換えるならば、感覚派スナイパーたる当真、絵馬、佐鳥の三名に限っては、TOTALという規格内の数値にとらわれた考察と矛盾していても問題ない。

よって①の法則は感覚派の隊員という例外を除き『すべての狙撃手に当てはまる普遍的なルール』だと扱っても良い事になるのだ。


荒船はなぜ捕捉&掩蔽訓練で7位だったのか?

捕捉&掩蔽訓練は実戦形式で行われる訓練のため、この順位はそのままスナイパーの格付けとしても使用できるはずだ。
つまりスナイパーの強さ順は【攻撃・技術・射程・機動】の合計値で表す事が出来ると言い換えても良いだろう。

そうなると訓練に参加しなかった東さんも、パラメーターのTOTALを比較する事でスナイパーの格付け議論に挙げることが出来る様になる。

先ほど纏めた順位表に今度は東さんのパラメーターとチームパラメータ考察で整理した『遠』のPtを記入してどのような結果になるか見てみようと思う。
(ついでにB級16位海老名隊の乙川と、B級18位常盤隊の斎藤も表に組み込む)

*10
この表をまとめてまず気になるのが『何故4Pt相当の荒船がその位置になるのか』という事だ。

荒船の狙撃はマスタークラスであるため、その順位より高い狙撃手は全員マスタークラス相当なのか?という疑問が湧いてもおかしくないが自分は違うと考えている。

例えばRound2の穂刈と笹森が対峙した場面について思い返してほしい。

笹森に追いつかれそうになった穂刈は逃走を諦め捨て身の狙撃で荒船を援護していた。
あの場面は穂刈が渋い活躍を見せた名シーンだが、あれがもし荒船だったらどうなっていただろうか?

荒船なら味方に向けて『捨て身の援護射撃』をしても、そこから弧月に持ち替えて自分を狙ってきたアタッカーと撃ち合うこ事も可能なため、荒船にとって『寄られる事』は致命的でない。

つまり荒船は弧月を持つことでスナイパーとしてリスクある行動を選択する余地があり、結果的に狙撃手としての立ち回りに幅が生まれると言えるのだ。

荒船のイーグレット8349ポイントは、そういう異なる射程武器を両立する隊員の優位性込みの個人ポイントなのだろう。
*11

よって捕捉&掩蔽訓練の様にイーグレット一本で行う訓練ではその優位性が活きないので、狙撃一本で戦ってきた穂刈半崎らに軍配が上がるという結果になるのだろう。

奈良坂と古寺の実力にはどのくらい差があるのか?

ここからは今回の考察の目的である『三輪隊の遠8Ptを奈良坂と古寺にどう振り分けるべきか?』という話を進めて行こう。

パッと見の印象としては、6Ptの当真と東さんに挟まれているため奈良坂も6Ptではないだろうか?

一方古寺の順位はB級下位の乙川と斎藤に挟まれ9位になっている。

2章で行ったチームパラメータ考察を思い返すと、平均的なB級下位である吉里隊が全員2Ptだったため、乙川と斎藤も同様に2Pt程度になると思われる。

つまり2Pt帯に挟まれた古寺も2Pt相当であると考えるのが一番自然なのだ。

その上TOTAL値でも日浦(2Pt)と同じく27であり、古寺は2Ptであると結論付けて良いだろう。


よって、訓練順位を元に奈良坂と古寺に自然にPtを付与するとそれぞれ6Ptと2Ptとなり、結果三輪隊の『遠』8Ptと一致しているので、分割が確定したと考えて良いだろう。

3章まとめ

捕捉&掩蔽訓練をの順位を考察したことで三輪隊のチームパラメータを含め全ての部隊のチームパラメータの分割が完了した。

ここで改めてチームパラメータ分割結果の表を貼り付けてみる。

ここまで分割することが出来れば次に気になるのが、2章で可能性を示すだけで終わっていた『個人ポイントとPtの関係性について』だ。

次の章では個人ポイントとチームパラメータが示す法則について考察を進めて行こうと思う。


4章.個人ポイント考察『なぜ加古さんはシューター3位なのか』

2章・3章の考察でチームパラメータの分割が完了したので、その数値を今度はPt毎、ポジション毎に集計して表にまとめてみた。


ここから考えたいのが、『Ptは本当に個人ポイントに対応しているのか?』『その場合Ptを隔てる個人ポイントの境界は何点なのか?』という2点だ。

2章で考察した内容を再度整理すると。


●4Ptの場合対応する個人ポイントは8000~10000弱
●3Ptの場合対応する個人ポイントは大体7300以上
●2Ptの場合対応する個人ポイントの幅は広く、4000?~7200くらいまで

葦原先生の立場になって考えたとき、Pt毎に境界値に設定するとすれば『キリの良い数字』『ランク戦システム的に意味のある数字』『象徴的な数字』のいずれか、又は複数を満たす数字になるような気がする。

その様に考えた場合にあり得そうな数値を取り上げると、


●笹森が発言した『1万越えのアタッカー』の10000
●マスタークラス基準の8000
●オールラウンダー基準の6000
●正隊員昇格基準の4000
●マスタークラス未満の隊員が新しいトリガーを使い始めたときの3000
●C級降格基準の1500(BBF-Q241)
●C級スタート時の1000(4巻P159)

このあたりの数字が境界になるのでは無いだろうか?

今までの分析から見るに有力な候補は、
『2Ptの下限=4000』
『4Ptの下限=8000』
『5ptの下限=10000』の3つだ。

この基準が正しいと仮定した場合、笹森が発言した1万越えのアタッカーとは5Pt以上のアタッカーを意味していた事になる。

6Pt以上のキャラは個人ポイントがほとんど明かされていないため境界値を推測するのが難しいが、ここでは仮に村上の個人ポイント12042を6Ptの基準の参考とし、
『6Ptの下限=12000』であるとしよう。


ある程度前提条件を設定することが出来たので、次にやるべきことは『その前提条件が致命的な矛盾を生むのかどうか』の検証だろう。

先程設定した個人ポイント帯とPtの関係、及び判明している個人ポイント・ランクを先ほどの表に追記したので、その中に矛盾が発生していないか確認してみる。


(攻=攻撃手ランク、銃=銃手ランク、射=射手ランク、狙=狙撃手ランク、万=万能手ランク、総=ソロ総合ランク)

その結果、設定した個人ポイント帯に合致しない隊員、明かされているランク順とPtの大小に矛盾が発生している隊員がかなり多く見受けられる。

矛盾している隊員の名前を赤字にしたが、これらの矛盾が一体何を意味しているのか?それとも仮定自体が間違っていたのか?

その原因について1つずつ検証を行っていく。

CASE①:空閑・影浦・甲田隊

空閑と影浦の二人は個人ポイントが5000前後のため、先程の対応表に従うと2ptになるべきだがそうはなってない。
甲田隊の3人もC級隊員のため全員4000ポイント未満の筈なのに2Ptが付与されている。

これはつまりチームパラメータを分解して得られたPtとは、個人ポイントをそのまま反映しているのではなく、『個人ポイント〇〇相当の隊員である』という実力の方を優先して表している数値と解釈すれば良いのだろう。

ポイントを大量没収された影浦や傭兵経験有りの空閑は、個人ポイントが実力と対応しておらず、そのせいでPt帯との矛盾が発生しているだけなのだ。

そもそも個人ポイントは訓練やランク戦により日々増減するものであり、実力に伴って徐々に適正な値に収束していく。

甲田隊の3人を始めとした将来有望なC級隊員に初期ポイントを上乗せして、素早く正隊員に引き上げる措置が行われているのも、実力(≒Pt)に見合った訓練環境に押し上げるためなのだろう。

つまるところ十分な訓練期間を経ている隊員ならば、特別な事情がない限り実力と個人ポイントは比例して然るべき物であり、空閑達が例外なだけなのだ。



ポイント①:特別な事情があり個人ポイントとその人の実力に大きな差がある場合、Ptの値は実力の方を優先して反映する。

CASE②:小南桐絵

空閑たちの例により特別な事情がある場合は個人ポイントとPtが対応してなくても良いことが分かった。

では次にアタッカー2位の風間(6Pt)より高いPtを持つアタッカー3位の小南(7Pt)の場合はどうだろうか?

小南は2年前の玉狛独立に伴って個人ランク戦から身を引いて以来、弧月(短め)の個人ポイントの変動が無かったため、太刀川風間両名の個人ポイントのインフレについて行けず3位になった。

つまりランク戦から長期間離れている場合も、個人ポイントと実力(≒Pt)がかけ離れてしまう要因になってしまうのだ。



ポイント②:長期間ランク戦から離れている隊員は個人ポイントと実力(≒Pt)が一致しなくなる。

CASE③:木崎レイジ


なぜ木崎が矛盾しているかを説明するためには、里見と木崎が取りうる個人ポイントの範囲について説明しなければならない。


まず里見が取り得る範囲について、迅は『No.1銃手里見一馬、ガンナートリガーを使う全隊員のトップだ』と発言している。(21巻P50-51)

迅はかなり強い言い回しを使っており、その言葉を素直に解釈すると、

『銃トリガー単体で見たとき、オールラウンダー含めた銃トリガー使いの中に、里見を超える個人ポイントの隊員は居ない』という事になる。

そして里見には2章で5ptを付与したため、里見が取りうる個人ポイントは最大でも12000弱となり、この個人ポイントを超える銃トリガー使いは居ないということだ。


次に木崎が取り得る個人ポイントの範囲についてだが、今回自分の考察では、


●オールラウンダーは個人ポイントが最も高い武器のポジション別ランクに入る
●木崎は中距離の対応力(中Pt)が最も高いため、銃手用トリガーの個人ポイントが最も高い

と仮定したため、木崎はガンナーランクに在籍している事になる。



ガンナーランク1位が里見であるという事実は動かせない。

つまり里見の個人ポイントを12000未満と仮定した場合、木崎の個人ポイントは凡そ11000程度である必要があり、木崎が7ptである事と矛盾が生じでいるのだ。

ただ個人ポイントの大小の矛盾に関しては、装備している武器の種類が多すぎてポイントが低くなっている場合や、木崎も小南と同様に玉狛支部独立と同時に個人ランク戦から長期間離れていたと考えれば辻褄を合わせる事が可能だ。


だが木崎の個人ポイントをあまり低く見積もってしまうと別の所で矛盾の可能性が出てくる。

『全武器の合算ランクがあった場合、太刀川より木崎の方がポイントが高くなる(BBF-Q240)』というQ&Aについて検証しなくてはならなくなるのだ。


●木崎が装備している武器の内、ガトリング砲(仮)の個人ポイントが最も高い
●木崎が装備している武器で最も高いポイントは11000程度
]

木崎は里見よりガンナーランクで下位である以上、この2つの条件を満たした上で全武器合算ポイントが太刀川以上である必要がある。

このQ&Aについて検証するべく、木崎が装備している各トリガーの個人ポイントをそれっぽく代入し、合算ポイントを集計比較したところ以下の図の様になった。

その結果太刀川のポイントは45961、木崎の合算ポイントは46000となり、銃トリガー以外のポイントを低めに見積もった事を踏まえると、かなり現実的な範囲で木崎の全武器合算ポイントが太刀川を超えていると言えるのだ。


なお『アステロイド機関砲とアステロイド突撃銃のポイントは共通じゃなくて良いのか?』という論点は残るものの、その場合でも特に問題ない。


なぜなら木崎にはここから更に弧月のポイントも合算することが出来るからだ。

どういう事か説明すると、木崎は元弧月使いである事を示す動かぬ証拠があるのだ。


ワールドトリガー1巻P11(集英社葦原大介)】

1巻冒頭のページだが、迅の肩に隠れた黒髪短髪の隊員に注目してほしい。


旧ボーダー生き残りの中でこの特徴に合致するのは支部長を除くと木崎だけだ。


それを踏まえてこのコマの左上に再度注目してほしい。

ワールドトリガー1巻P11(集英社葦原大介)】

先程確認した黒髪短髪の隊員がいるが、明らかに左手に弧月を持っている。

つまり木崎は現ボーダーが始まってからレイガストが開発されるまでのおよそ一年間、弧月を使ってランク戦に参加していた可能性が極めて高いのだ(BBF-Q155)

3年前と言えば同時期に迅が風刃を得てS級になり個人ランク戦を引退したが、1章で考察した当時の迅(スコーピオン)の個人ポイントは9200~9700程度。

よって当時トップ争いをしていただろう木崎の弧月のポイントが3年前時点で8000点くらいあっても全然おかしくない。


つまり木崎が現在装備している2種類のアステロイドが別々にポイントを合算できなかった場合でも、そのポイントを弧月で十分肩代わりできる範囲なのだ。



ポイント③:ガンナーランク1位の里見の個人ポイントが12000弱である事と、木崎がガンナーランクに居る可能性は両立できる。






CASE④:那須

他のマスタークラスの隊員にはいずれも4Ptが付与されている中、何故か那須だけが唯一5Pt付与されている。

確かに那須は他のB級マスタークラスに比べ射撃戦の制圧力が抜きんでている様に見えるが、何故那須だけ特別扱いされているのだろうか。

那須は病弱のため部隊ランク戦以外で戦う機会が少なく、実力に比べてポイントが低くなっている可能性も考えたがおそらくそれだけではない。

那須が5Ptである謎を解く手掛かりは既に本編に提示されているのだ。

ワールドトリガー19巻P159(集英社葦原大介)】

これは鈴鳴第一が新しい陣形を習得した事でチームパラメータが再評価されたシーンであり、本編で唯一チームパラメータが描写されたシーンでもある。

このチームパラメータを測定したところ、来馬の中Ptは2➡5Ptに大幅に上昇している。
つまり那須に匹敵する中距離対応力だと評価されているのだ。


この大幅な中Ptの上昇を理解するためには、まず通常の中距離手同士の撃ち合いがどのように行われているかを理解する必要がある。

ワールドトリガー13巻P109(集英社葦原大介)】

この場面はROUND4で修と犬飼が障害物を挟んで撃ち合っていたシーンだ。

このシーンでは両者ともに相手の弾を防ぐためシールドを構えながら撃ち合っている。
つまり通常の中距離手同士の撃ち合いでは片手に弾トリガー、片手に盾を構えるのが鉄則なのだ。


ではROUND7の鈴鳴第一の陣形はどうなっていただろうか?

村上は防御に専念するため陣形の前に出て来馬の盾となり、北添の射撃にはレイガストで、影浦のスコーピオンには弧月で、ヒュースの直線バイパーにはシールドを展開して両手で防御を行っていた。

そして村上が防御に専念している間に来馬はフルアタックを行っていた。


つまり鈴鳴の陣形は2人で2つの盾と2つの弾トリガーを使用しているため、通常の中距離手2人分の射撃に匹敵すると言えるのだ。

そしてその制圧力には『単独で点が取れる優秀なヘビーガンナーの北添』ですら遅れをとる。
マスタークラス(4Pt)の北添を上回る、つまり鈴鳴第一の陣形には5Pt相当の中距離対応力があると言えるのだ。


だがこのルールは、フルアタックが出来る中距離手と守りに入るアタッカーがいればどの部隊でも適用できるわけでは無い。

一歩間違えれば味方を撃ってしまいそうな難しい陣形を、【防御・援護】に優れた前衛がガードに専念した鍛錬を普段から重ねる事で初めて実現可能なルールだろう。


そしてこれらの特徴は那須隊にもそのまま当てはまるルールなのだ。


【BBF-P173】
近・中・遠のそれぞれを3者が担うバランス型。攻撃全体の要となる那須を熊谷が守りつつ戦うスタイルが基本だ。

ROUND3では川で分断され披露する機会が無かったが、ガロプラ戦やROUND8では熊谷がガードに入る事で那須は思う存分フルアタックに臨むことが出来ており、ROUND7の来馬隊の状況と非常に似ていると言える。

よって那須と来馬に個人ポイント以上の中Ptが付与されている理由は、射撃戦の瞬間火力をUPさせる特別な戦法を持っているからと言えるだろう。



ポイント④:射撃戦の瞬間火力をUPさせる戦法があれば、個人ポイント以上の中Ptとなる場合がある。



CASE⑤: 加古望

先日公式Twitterから発表されたQ&Aにより、『シューター2位は出水か加古か?』という長年にわたる論争についに決着が着き、加古さんがシューター3位であることが判明した。
BBFのキャラクターパラメーターのTOTALでも、出水が56である一方加古は54であり、出水の方が射手ランクで上位であることに特に違和感は感じない。

だが今回の考察の結果を見ると出水には6Pt、加古には7Ptが付与されているため、実力的には加古の方が上回っている様にも思える。

つまり公式のQ&Aと今回の考察で得られた加古のPtには矛盾が生じているのだ。


この矛盾を解消するためには『加古が出水より強い事を示す可能性』、『加古が出水よりも個人ポイントが低い理由』最低でもこの2つを同時に説明出来なければならない。



そしてこの矛盾を説明できる可能性は3つある。

まず一つ目の可能性は加古さんが感覚派である事だ。


【11巻カバー裏】
羽ばたく感覚派レディ 加古さん

マイウェイをマイペースでモデルウォークするほくろ射手。普通の家、普通の両親から突然変異的に生まれたセレブオーラ持ちの自由人。6歳から続けている趣味の炒飯作りが同年代に多数の犠牲者を出しており、「チョコミント炒飯」で堤が、「いくらカスタード炒飯」で太刀川が、「蜂蜜ししゃも炒飯」でもう一度堤が死んだ。堤大地は2度死ぬ。

3章の佐鳥の考察で示した通り、感覚派の隊員はキャラクターパラメーターで推し量る事が出来ない規格外の何かを持っている。

つまりTOTALの値で出水の方が高くても、それだけで出水が加古さんより強いと結論付けることは出来ないのだ。



そして2つ目の可能性とは、那須や来馬と同じく加古さんにも射撃戦の瞬間火力をUPさせる何かしらのギミックがあるため中Ptが高くなっているという可能性だ。


だが加古さんの場合その可能性を示すのは容易ではない。

加古さんはガロプラ戦で両手にハウンド(改)を装備していたが、普段はメインにスコーピオンを装備している。(質問コーナー⑭)
つまり普段の加古さんはフルアタックする事が出来ないのだ。

その上加古・黒江は共に【防御・援護】の数値が5であるため、鈴鳴第一の様な陣形を期待することも出来ない。

つまり射撃戦の瞬間火力UPにより中Ptが高く評価されている可能性を示すためには、加古さん個人でそのギミックが完結する必要があるのだ。
(なおかつギミック成功により実現する火力は、出水のフルアタックを超える要素があることが望ましい。)


片手で行う事ができる射撃戦の火力UP、そしていかにも『時間』に関係がありそうな試作トリガー『タイマー』。

これら2つの要素から導き出される加古さんの戦法とは『時間差で自動発射される置き弾との十字砲火だ』


加古さんの戦法予想は考察界隈の華だと思うが、かくいう自分も『タイマー』の仕様について妄想したことがあり、『置き弾戦法』を拡張するためのものだと予想している。

ここで一度置き弾の仕様について、ROUND8の二宮の描写等を参考に整理してみようと思う。


●弾トリガーを発射した後、弾が着弾する前に新しいキューブを出せる(22巻P113)
●置き弾を設置したまま新しいキューブを出すことが出来る(22巻P112)
●弾トリガーが発射された後なら続いて置き弾の操作が可能。(22巻P116)
●置き弾は使用者から離れてしまうと操作や発射が出来なくなる(23巻P32)

*12


これらを整理すると、弾トリガーの使用には以下の様な制約がある事が分かる。

①手元に弾を出した瞬間にトリガー操作権の枠が一つ埋まる
②置き弾として放置した弾、又は使用者から離れた距離にある弾は一時的に操作権が無くなる
③近くにある置き弾を再び操作するためには操作権を一つ消費する必要がある


そして自分の予想では②の制約の一部を『タイマー』により緩和できると考えている。

【試作トリガー:タイマーの仕様(予想)】
主に弾トリガーと組み合わせて使用する汎用オプショントリガー。

タイマーを置き弾と組み合わせて使用した場合、使用者が離れたところに居ても時間差で置き弾の操作権を行使し、自動で置き弾を発射する事ができる。
使用者のトリオン体の映像を投影する事もできる。(ファントム要素)



これを図に表すと以下の様になる。


この図の様に①~④ステップまでトリガーを使用すれば、あらゆる制約を満たした上で加古さんは”片手二重射撃”を行う事が可能になる。

そしてこのギミックが成功すれば、通常の射手が弾丸発射前のコントロールで実現できる発射角を大きく超えた『十字砲火(クロスファイア)』が可能になるはずだ。

つまり加古さん1人で2人分の射撃に匹敵する連携火力を出すことが出来るため、中Ptが上乗せされてもおかしくないと言えるだろう。



ここまで2つの可能性を示したが、これらは『加古さんは出水より強い可能性があるので合計Ptで上回っても問題ない』という説明であり、『加古さんがシューターランクで出水を下回って3位である事』の直接的な説明にはなっていない。


『なぜ加古さんのシューターランクが出水より低いのか?』、この疑問に向き合った場合にのみ生まれる新しい可能性がある。

それは『改造トリガーを使い始める時も個人ポイントがリセットされる』という可能性だ。


【BBF-Q242】
B級昇格後、新しいトリガーを使い始める場合は何点からのスタートになりますか?

基本的には3000点からのスタートになります。すでに何かの武器でマスタークラス(8000ポイント)を取っている場合は4000ポイントからになります。

このQ&Aは恐らく改造トリガーにも適用される。

なぜ恐らくなのか?というと、先程のQ&Aだけでは『同名の改造トリガーの場合もポイントがリセットされるのか?』という事をイマイチ確定させることが出来なかったからだ。

例えば加古さんがもしハウンド➡ハウンド(改)の様に装備を変更していた場合、同名トリガーのポイントを引き継ぐことが出来た可能性まで考え出すと、以前までは『シューター2位は加古と出水どちらか論争』において、加古さんが改造トリガーを装備している事を理由に個人ポイントが低い事を結論付けることが出来なかった。

『加古さんの合計Pt(≒実力)が出水を上回っている事』、『シューターランクでは出水が加古さんを上回っている事』、この2つの矛盾が発生して初めて、改造トリガー装備によるポイントのリセットを確定させることが出来る様になるのだ。



これらを踏まえると加古さんが改造トリガーを装備したタイミングを絞ることも可能になる。

ここで『加古さんがハウンド(改)を装備したのは初代東隊時代か加古隊時代か?』という疑問について考えてみようと思う。

太刀川隊の結成直後に東隊が解散したため、加古さんがA級東隊だった期間は加古さん入隊直後~出水の入隊後しばらくの期間に限られる。(質問コーナー⑳)

もしその時期に加古さんがハウンド(改)を既に装備していたとすると、ハウンド(改)で個人ポイントを稼いだ期間は、出水がアステロイドで個人ポイントを稼いだ期間より長くなってしまう可能性が高い。

その場合、加古さんのPt(≒実力)が出水より高い事を踏まえると、加古さんの順位が出水より低いのは違和感が大きくなってしまう。

よって加古さんがハウンド(改)を装備して個人ポイントがリセットされたのは比較的最近、つまり加古隊結成後A級に上がったタイミングに限られるのだ。
*13




●加古さんは感覚派のため、キャラクターパラメーター以上の規格外の強さを持っている可能性が高い事。
●試作トリガー込みで、射撃戦の瞬間火力をUPさせるギミックを持っている可能性が高い事。
●加古さんが改造トリガーを装備した時に個人ポイントがリセットされた可能性が高い事。

以上の事から、『加古さんの合計Ptが出水を上回っている事』と『加古さんがシューターランクで出水を下回っている事』は矛盾せずに両立できると今回の考察では結論付ける。
*14


そしてこの『改造トリガーも個人ポイントがリセットされる』という説は影浦をアタッカーランク上位に押し上げるためにとても都合が良い。

何故ならスコーピオン(改)を使っている木虎の場合も、剣トリガー側のポイントを低く見積もっても良いことになり、木虎をガンナーランクに振り分けても良い事になるからだ。


ポイント⑤:改造トリガーを装備した場合も個人ポイントはリセットされ3000or4000からスタートする。


CASE⑥:熊谷友子

一見すると見過ごしてしまいそうな矛盾なのだが、熊谷の個人ポイントと熊谷に付与したPtは微妙に嚙み合っていない。

2章で各隊のチームパラメータを分割した際、個人ポイントが大体7300以上の場合3Pt、7300以下で2Ptを付与するという方針があったのだが、最終的に熊谷に付与したPtは3Ptであり熊谷の個人ポイントが7119である事と矛盾しているのだ。

7119点なら本来2Ptが付与されるべきだが何故か熊谷には3Ptが付与されている。
この矛盾が意味している物は何なのだろうか?


ここでとある疑問が浮かんだ。

『何故2Ptと3Ptを隔てる境界値が7300と中途半端な数字なのだろうか?』

4章のはじめでも言及したが、境界値を設定するならキリの良い数字や意味のある数字にすべきなのだが、7300という数字がそうであるとは思えない。

そこで7300ポイントを境界値とした経緯を確認するべく、境界値の参考にした隊員をもう一度並べてみる。

熊谷にあってその他の隊員に無い物、いや逆だ。

熊谷に無くてその他の隊員にあった物、それは大規模侵攻での論功行賞の授与だ。

【BBF-Q245】
正隊員の個人ポイントは、ランク戦と論功行賞以外でしか手に入らないのでしょうか?また、チーム単位で送られた論功行賞のポイントはメンバー各自に与えられるのですか?

個人ポイントは、ランク戦と論功行賞のほか、防衛任務や、ボーダー職員が企画するイベント(1対1の1dayトーナメントなど)に参加することで得ることができます。チーム単位で送られた論功行賞のポイント・報奨金は、メンバー各自に与えられます。個人でももらった場合は、重複してもらえます。

大規模侵攻で授与された個人ポイントをまとめると下図のようになった。


*15

B級合同という括りで授与された論功行賞のポイントは各隊員にそれぞれ与えられる、つまり来馬、奥寺、小荒井、笹森、巴にもそれぞれ350ポイントがプラスされているのだ。

そしてこのボーナスポイントを各隊員から差し引いたら一体どうなるだろうか?

この表を見れば明らかだろう。2Ptと3Ptを隔てる真の境界値とは7000ポイントだったのだ。


矛盾していたのは熊谷ではない、大規模侵攻でボーナスポイントをもらって一時的に本来の実力以上の個人ポイントを有していた来馬、小荒井、奥寺、巴の4人の方が矛盾していたのだ。


この仮説は影浦をアタッカー20位に押し込むにあたりとてつもなく重要な要素となる。

2章で考察した通り、平均的なB級下位の面々が2Pt相当であることは吉里隊の例を見ても間違いない。

2章時点では2Ptの上限ラインを7300と見積もっていたため、2Ptの隊員が影浦の6780ポイントを下回っている事を証明するのは困難だったが、2Ptの上限ラインが7000まで下がった今であれば、B級下位であるという理由だけで影浦より下位だと主張する事が十分可能になるのだ。

つまりB級最終17位だった早川隊隊長のオールラウンダー早川、B級下位常連アタッカーの土崎、茂木、常盤、計良、月見の6名は、影浦より下位のアタッカーである可能性が非常に高いのだ。
よって今回の考察ではこの6名の個人ポイントが6780未満であると結論付けようと思う。

*16


話はそれだけでは終わらない。巴隊員の実質ポイントが6659という事が新しい基準を生むことになるのだ。


先日Twitter上で『B級中学生3人組の内誰が一番強そうか?』という質問を行ったところ、極端に表が割れることがなく優劣つけがたいと答えている人もかなり多いという結果になった。


帯島、樫尾、巴は中学生ながらにB級正隊員として日々戦っている将来有望な3人だ。

巴は部隊順位こそ低いものの、小学生当時に正隊員にまで上り詰める非常に見どころのある隊員だ。
帯島、樫尾の2人もキャリア1年そこそこでB級上位で渡り合う実力を持っているため、アンケートが示す通りB級中学生3人組が優劣つけがたい強さを持っている事は確かだろう。*17

3人とも優劣をつけがたい、そこまでは良い。ではこの3人と小荒井奥寺の2人と比べた場合はどうだろうか?
おそらくだが小荒井達の方が格上だという感覚を共感してもらえるのではないか?

奥寺から論功行賞の補正を差し引くと6838ポイントになる。つまり帯島、樫尾の個人ポイントが凡そ6650~6800程度であっても感覚的にはおかしくない。

よって帯島と樫尾も6780ポイントの影浦より下位の順位に押し込むことが十分可能な範囲と言えるのだ。


ポイント⑥:2Ptの場合、個人ポイントの上限値は7000ポイント。(ただし論功行賞等でオーバーする場合あり)


個人ポイントの範囲とPtに矛盾が発生していた10人を6パターンに分けて説明してきたが、最低でも矛盾していない可能性を示す事は出来た様に思う。

よって個人ポイントとPtは特別な事情が無い限り矛盾せず隊員のランクをよく表している指標なのだ、という結論で4章の考察を締めくくろうと思う。


4章まとめ

チームパラメータを分割して得られたPtと個人ポイントの関係について考察を進めた事で、2Pt相当の隊員の個人ポイントが影浦を下回る可能性が十分ある事が分かった。

その結果を踏まえ影浦のアタッカー順位は現在どのようになっているかを纏めてみようと思う。


スコーピオン(改)の個人ポイントが4000スタート確定のため、銃トリガーの方が個人ポイントが高くガンナーランクに振り分けられてそうな木虎
●2Pt相当(個人ポイント7000以下)と思われるB級下位の早川、土崎、茂木、常盤、計良、月見の6人
●実質の個人ポイントが6659である巴と個人ポイントが競っていそうな樫尾と帯島

以上の9人をアタッカーランクから除外、又は影浦より下位に位置付ける。

これまでに様々な理屈を総動員して影浦を20位に押し込むべく考察を進めてきた。


●今回の考察の大前提となったガンナーランク持ちの香取。
●黒トリガーを使っているためランク戦から除外した天羽。
●ポジションがガンナー、シューター、スナイパーであるためアタッカーランクから除外した5名。
●中Ptが最も高く、ガンナーランクに振り分けた5名。
アサルトライフルを持っており中距離戦闘に比重を置いてそうな4名。
スコーピオン(改)の個人ポイントがリセットされた木虎
●2Ptであるため個人ポイントが影浦よりも低そうな8名
●元々影浦より個人ポイントが低い空閑


ありとあらゆる考察を進めてきたが、

『チーム戦術が近距離戦闘に特化している歌川』
『元々弧月使いであり、近接戦闘に長けている三輪』(質問コーナー⑬)

この2人の万能手だけはどんな理屈をつけようともアタッカーランクから除外する事も、影浦より下位に位置付ける事もできない。
よってこの2人はアタッカーランク上位に位置付ける。


ここが今回の考察の着地点。

アタッカーランクに所属している隊員は総勢31名、うち6780ポイントを下回るのは9名。

村上の言う『カゲは20位とかそのあたりだな』が意味する順位とは、アタッカーランク22位の事だったのだ。


村上の発言を信じ考察を進めてきたが、ある程度納得のいく着地点を見つけることができた。

だがここで考察を終えてしまうのは勿体ない。影浦を20位に押し込むべく考察してきた要素の中にはワールドトリガー世界を理解するための何かがまだまだ眠っている。


ここから先は考察の延長戦。

BBF未掲載キャラを巻き込みワールドトリガーへの理解を深めるべく更に考察を進めて行こう。

5章.個人ランク戦考察 『村上VS影浦の勝率は何故40.5%:59.5%なのか』

ワールドトリガーの各章の戦闘の幕間には、主人公の訓練と新キャラ紹介を兼ねた個人ランク戦ブースでの掛け合いがあり、各章の戦闘のテンポを整える重要な役割を担っている。

戦う相手によっては楽勝で勝ち越せたり、同格以上の相手には勝ったり負けたり、時には遥か高みの格上キャラに完封されることもしばしばあるため、組み合わせごとにどんな勝敗結果になるかは終わってからでないと分からない。

だが今回ここまで考察を進めた今でははっきりと分かるのだが、この勝敗にはある法則が存在する。
この章では勝敗の勝ち星の数に込められた葦原先生の意図を追求するべく考察を進めて行きたい。

笹森がまぐれで4本取った事に込められた意味とは?


この表はこれまでの考察でPtが既に判明している隊員同士の個人ランク戦の勝率についてまとめたものだ。

一見バラバラに見える勝率だが何か法則の様な物が見えてこないだろうか?


まずは同格の組み合わせの場合を抜き出してみる。


まずは米屋と緑川の組み合わせについて、当然と言えば当然だが同格(Ptが同じ)同士の戦いの場合は勝率50%が基準となっている。厳密には勝ったり負けたりと曖昧な言い回しがされているが、勝率がかなり競っている事は間違いないだろう。

そして村上と影浦の組み合わせの場合、村上側の勝率は40.5%となっており、同格(6Pt同士)の場合は勝率が±10%の範囲で変動し得ることが分かる。

一方三雲と唯我の場合だと2人とも2Ptで同格のはずだが勝率がかなり偏っている。
2章でも考察した通り、2Pt帯はB級の中堅~正隊員上がりたての隊員までかなり広い範囲の強さを含んでいるため、同じ2Ptだったとしても実力差が生じる事を示しているのだろう。



今度はPtの差が1となっている組み合わせを抜き出してみよう。

まず笹森と緑川の組み合わせだが、笹森は「まぐれで4本」とれるようなので普段の勝率は3:7がメインなのだろう。

次に緑川と空閑の組み合わせでは、30戦して9勝21敗であり緑川の勝率が丁度30%になっている。
遊真と緑川は、まともに試合数を重ねると3:7に収束するのが本来の実力差の様だが、1回目の勝負の時は『緑川が遊真を舐めていた』ため、勝率にマイナスの補正がかかり2:8という結果になったのだと思われる。

そして遊真と村上の組み合わせを見ると、1回目と2回目は勝率が綺麗に40%になっているが、結束のデータによると厳密には38.8%となっていた事がわかった。

これらの結果を見ると差が1Ptの場合は、3:7の勝率を基準に±10%の範囲内に収まる様に調整されている。

お互いのコンディション次第で格下側が上振れを引くことがあっても、笹森や空閑の例を見る限り勝率が40%を超えることが無い様に調整されているのだろう。

なお空閑と影浦の組み合わせのみその勝率の範囲を超えてしまっているが、この2人は『空閑には影浦のSEが効かない』という他の組み合わせに無いかなり特殊な相性関係により実力差が埋まっているため、今回の考察では例外的に扱った方が良いだろう。

最後に出水と二宮との勝敗だが、公式TwitterのQ&Aによるとこの2人は1対1の場合二宮が6割ほど勝つらしい。(20220704公式TwitterQ&Aより)

この2人のPtは出水が6Pt、二宮が7Ptで、Ptに差があり実力に明確な優劣が存在すると思われる中、出水はかなり良い線を行っていると思われる。

出水VS二宮と遊真VS村上の勝率はどちらも格下側の勝率が40%まで引き上げられている。

おそらくだが明確な優劣(Pt差)が存在する組み合わせでも、格下側がかなり良い線行っている場合『勝率40%』になるのではないだろうか?

そう考えるとROUND2開始前に笹森が最近『緑川にまぐれで4:6取れた』のは、笹森と緑川には明確な実力差があるものの、笹森が3Pt勢の中では有望株である事を示唆する表現だったと思われる。



最後に2Pt差の組み合わせだ。

三雲の例を見て分かる通り2Pt以上差が開いている場合、完封されるパターンも出てきている。
菊地原(4Pt)が言う通り、実力に大きな差(2Pt以上)があるなら100回戦って100回勝つくらいの意気込みが求められるのだろう。

一方遊真と小南の勝敗結果を見ると、2Pt差がある場合でも完封されるとは限らないようだが、遊真と小南の勝敗には『4勝の壁』が存在するため、遊真の勝率が30%を超えることは今の所無い様だ。


今までの推測をまとめるとPt差毎の個人ランク戦の勝敗結果は以下の様になる。

●同じPt同士の戦いの場合、勝率は50%±10%
●Ptの差が1Ptの場合、勝率は30%±10%
●Ptの差が2Pt以上開いている場合、勝率は30%未満になり完封される事もあり得る。

改めてこの結果を振り返ってみると、村上と影浦の勝率が40.5%:59.5%になっていたのもおそらく深い意味が込められている。

この2人は1対1で勝負した場合影浦の方が勝ち越す様な力関係だが、この2人の実力はあくまで同格の範囲内(Ptが2人とも6Ptで同じ)

よって実力差(Pt差)がある場合とは逆に、同格同士の戦いでは勝率が40%を下回らない様に調整されたのだろう。

つまり村上の勝率40.5%の『0.5%』には『村上と影浦は同格の範囲内なのだ』という葦原先生のメッセージが込められていると思われるのだ。


ヒュースはどの位強いのか?

対戦相手とPt差がある場合に勝率がどれくらいの範囲に収まるか、という情報をある程度推測する事ができた。

これだけ情報が集まれば、通算7人のアタッカーと戦い勝率が判明しているヒュースについて、『一体ヒュースは何Pt相当なのか?』という議論を進めることができる。

玉狛ヒュースはBBFにチームパラメータが存在しないため今まで議論に上げる事が出来なかったが、対戦相手のPtと勝率が判明しているため、そこからヒュースが何Pt相当の強さを持っているのか逆算できるはずだ。

以上の結果からヒュースが取り得るPtの範囲を考えてみようと思う。
●空閑(5Pt)には4:6で負け越している。ヒュース≦5Pt
●巴(2Pt)と三浦(3Pt)を完封している。(ヒュース≧3Pt+2Pt)
●笹森(3Pt)からは一本取られるが結果として圧勝している(ヒュース≧3Pt+2Pt)
●辻(4Pt)にも安定して勝ち越しその勝率はおよそ70%となっている(ヒュース≒4Pt+1Pt)
●ヒュースは5Pt相当の生駒とほぼ同格である。(ヒュース≒5Pt)
●太刀川には圧倒されたものの何とか一本取った(ヒュース≦8Pt-2Pt)

これらすべての条件を満たすヒュースのPtは5Ptしかない。

つまり空閑(5Pt)と戦った時に負け惜しみの様に言い放った『現時点ではな』というヒュースの発言は、ボーダーのトリガーにまだ慣れていないため勝率に-10%の補正がかかっただけであり、空閑とヒュースは同格の範囲内という事を示す描写だったのだ。

5章まとめ

この章ではチームパラメータを分割して得られたPtと個人ランク戦の勝率について考察を行ってきた。

その結果アタッカー達との勝敗結果からヒュースが5Pt相当だという事が分かり、個人ポイント的に5Ptと仮定した生駒についてもヒュースと五分の戦いをしていた事から改めて5Ptで確定して良いだろう。

そして勝率がPtと密接に関わっているならもう一人Ptが確定できる隊員が居る。
それはスコーピオンを使い始めてから太刀川と互角の勝負が出来る様になった迅だ。(4巻P38)

以上の3名を新たにPtの表に組み込んでみようと思う。

*18

BBFにチームパラメータが未掲載だった隊員についても個人ランクの勝率を参考にすることで、新たに表に組み込むことが出来るようになった。

だけどこれだけではまだ足りない、どうせならBBFにパラメータが記載されていない隊員も全部表に組み込みたい。

ここから先はチームパラメータの傾向についてもう一歩踏み込んだ考察を行っていこうと思う。


6章.チームパラメータ予想『何故弓場隊にはエンブレムが存在しないのか?』

ここまでの考察により、以下の情報が判明している隊員にはPtを付与できる事が分かった。

●BBFに記載のチームパラメータ
●個人ポイント
●個人ランク戦の具体的な勝率

だがこれらの情報が全く描写されていない隊員も多く、このままでは本編で未活躍のキャラの考察を進めることが出来ない。
そのためこの章では隊員にPtを付与するためのアプローチをもう一つ増やそうと思う。

それはチームの総合力から部隊に所属する隊員のPtを逆算する方法だ。


この表は2章で紹介したBBF掲載のチームパラメータの合計だが、この表にBBF未掲載の部隊を加えつつ部隊順位と部隊の強さがおおよそ一致する様に少しアレンジを加えてみようと思う。

何故二宮隊と影浦隊は不動のB級2TOPなのか、何故旧二宮隊はA級4位まで上がることが出来たのか?
葦原先生はチーム単位でキャラ造詣を行っているため、部隊毎のランクには必ずそれなりの理由が存在するはずだ。(BBF-P330)
そのため、隊員毎に付与したPtのとその結果出来上がったチームパラメータの合計値を見比べ、そこに大きな違和感が無ければそれなりの精度を持った考察になるだろう。


『ランクが高いほど総合力が高い』というざっくりとした傾向の他にも、この表を見て感じた事がいくつかあるため、それらを今回の考察の指標にしたい。


まず一つ目が、似たような編成の部隊は総合力(合計Pt)が高い順にランクが高くなっているという事だ

例えば近中遠バランスよく編成されている玉狛第一、草壁隊、嵐山隊、三輪隊、影浦隊、鈴鳴第一改を見てみると、その合計Ptの大小関係がきちんと部隊ランク順になっている。
旧二宮隊や片桐隊、生駒隊や旧弓場隊なども近中遠バランスよく揃った部隊であり、この傾向に従うのでは無いだろうか?


方針①:似た編成の部隊の場合は、合計Ptが高い部隊が高ランクとなる。


そして二つ目が、草壁隊と嵐山隊の部隊ランクの差を決定づけるものは何なのか?という事だ。
この二部隊の総合力は同じであり、近距離戦は草壁隊が、中距離戦は嵐山隊が互いに勝るという絶妙な力関係になっている。

つまりこの二部隊の戦いにおいては、『どちらが先に有利な陣形を展開できるか』が勝負の分かれ目となるだろう。

そのために必要となる要素については他でもない草壁が作中で語っている。

ワールドトリガー24巻P30(集英社葦原大介)】

24巻のA級説明会で草壁は機動力の重要性について繰り返し説明しており、自分の部隊の強みを押し付けるためには、足並みを揃えて素早く陣形を組む必要がある事が分かった。

つまり『機動力が揃っている部隊』もしくは『機動力が高い部隊』の場合は、部隊の総合力が同じ部隊に対して有利を取れる可能性が高いと言えるだろう。


方針②:隊員の機動力が高い、又は揃っている場合に高ランクとなる可能性がある。



そして3つ目の方針が、『方針①②が正しいと思うな』という事だ。

そもそもA級TOPの三部隊は、部隊の総合力がA級の中でずば抜けて高い訳ではなく、尖った強みを押し付けることでA級トップの座に君臨している様に見えるため、相手部隊に対して何か一つでも有利を取れる距離があれば上位に行ける可能性は十分にあるのだ。

だが尖った強みがあれば何でもいいわけではない。それだけで勝つことが出来るなら荒船隊はもっと上位にいてもおかしくないが実際にはそうなってない。

尖った強みを持つという事は、逆に言えば自分の部隊の勝ち筋を相手に読まれやすいという事でもあり、その最たる例がROUND2の荒船隊なのだ。

部隊を上位に押し上げるためには部隊の総合力や尖った強みだけでは不十分であり、部隊戦術を通すためのマップ選択や新しいトリガーを取り入れた初見殺し、難攻不落の特殊戦術など数値で表すことが困難な要素がいくつも複雑に絡まっている。

そのため、方針①②は絶対だとは思わずあくまで参考程度に留めるべきだろう。


方針③:いざという時は方針①②を全て無視する。

予想①:旧二宮隊

【鳩原未来】
鳩原は絵馬曰く誰よりも巧い狙撃手の様だが、人が撃てないためランク戦で相手を撃破してポイントを稼ぐことは出来ない。
訓練で遊んでいる当真が奈良坂に勝ち越してスナイパーランク1位である事から、ランク戦の個人ポイント増減の比重はとても大きい事が分かるが、鳩原はランク戦で落とされる事はあっても、相手を落とすことが無いため鳩原の個人ポイントが劇的に増えることは無いだろう。
*19

よって鳩原のPtは正隊員最低保証の2Ptである事とする。

【旧二宮隊】

二宮隊の3人に鳩原を加えた部隊を旧二宮隊と呼称し、チームパラメータを纏めた結果以下の様になった。

その結果旧二宮隊は草壁隊と嵐山隊に並ぶ総合力を持つ、近中遠揃ったバランスタイプの部隊であることが分かった。

部隊の総合力でこの3部隊に差は無いはずだが、なぜ旧二宮隊がA級4位に上がる事が出来たのだろうか?
その疑問の答えについては嵐山が作中で語っている。

【19巻P154】
嵐山『そうですね エースの勝率6対4くらいなら 部隊の連携ひとつで勝ちを引けます

エース同士の勝率が4:6ぐらいなら部隊の連携次第で勝つことが出来る。
逆に言えばエースの勝率が3:7以上に開くなら、部隊の連携力(≒総合力)ではその差を覆すことが出来ないとも解釈できる。

旧二宮隊、草壁隊、嵐山隊の総合力は共に17Ptだが、部隊の最高戦力はそれぞれ二宮の7Pt、里見の5Pt、嵐山の5Ptである。

5章で考察した通り、2Pt差の戦いの場合に格下側の勝率が3割を超えることはない。
つまり部隊の総合力が同じこの3部隊が戦う場合、7Ptのエース有する旧二宮隊が一人勝ちする事になるのだ。

よって旧二宮隊が草壁隊・嵐山隊を抑えてA級4位だった事は自然な事だったと言えるだろう。

予想②:片桐隊

【一条雪丸
雪丸は烏丸の発言により1万越えアタッカーの可能性が高く、4章で設定した基準に則ると5Pt以上を付与するのが妥当だろう。
だが24巻のA級説明会では、データ重視の結束が『玉狛の前衛は たぶんあんたたちより強いよ』と言い切っている。
空閑とヒュースには5Ptを付与しているため、雪丸のPtは5Pt以下の必要がある。

よって雪丸は5Ptだという結論になった。

(同様に片桐と桃園も5Pt以下にする必要があるだろう。)

【片桐隆明】

片桐はガンナーの中で里見と弓場についでTOP3に入る実力者であることが公式TwitterのQ&Aにより判明した。

ただし今回の考察ではオールラウンダーもガンナーランクに含まれる事にしているため、公式のQ&Aの解釈については、
片桐は『ガンナーランク3位』では無く、『純ガンナーの中で上から3番目』として扱う事とする。

里見が5Ptである事を踏まえると片桐が取り得る値は4Ptか5Ptになりそうだが、A級7位隊長の三輪が4Ptである事から片桐も4Ptである事にした方が違和感が少ないだろう。

また、4Ptのオールラウンダー及び荒船は、時枝を除いてPtの分割の比率が1:1となっているため、片桐の合計Ptも中と遠に2Ptずつ付与する事にする。


【桃園藤一郎】
A級隊員は未熟枠の唯我と戦術タイプの古寺を除いて全員4Pt以上で統一されているため、桃園も4Ptだと考えて良いだろう。


【尼倉亜澄】
尼倉のPtについて考える前にトラッパーのPtについてもう少し掘り下げて考えたい。

2章のチームパラメータ考察で冬島と喜多川には『中』と『遠』にそれぞれ2Ptずつ付与したが、その理由については特に触れてこなかった。

そして冬島さんのキャラクターパラメーターをよく見てみると、【攻撃】と【射程】にそれぞれ4が付与されている。
つまりスイッチボックスが持つ攻撃性能は、あの吉里隊オールラウンダー北添秀高に匹敵すると言えるのだ。

つまりトラッパーに付与される中Ptとは、自らが中距離戦に参加可能な攻撃力を持っているからこそ付与されるPtだと考えられる。
ではトラッパーに遠Ptが付与される理由とは何なのだろうか?
冬島の【射程】4を見る限りトラッパーは遠距離攻撃手段を持っていないはずだ。

トラッパーに遠Ptが付与される理由については加古隊の部隊戦術をおさらいしたい。

【BBF-P71】
狙撃手がいない分、遠距離は不得手な印象。しかし特殊工作兵・喜多川の存在により、その弱点を補い、A級ランクに君臨している。

この説明を見る限り、狙撃手のいない加古隊の遠距離戦闘を支えているのは喜多川であり、加古隊に付与された遠Ptもトラッパーによるものだと考えて間違いない。

つまり遠距離戦闘を支援する行為そのものに遠Ptが付与されるという事なのだろう。


ここでスポッターの尼倉に話を戻す。

現実世界における観測手とは狙撃手とペアで行動し、狙撃手が狙撃にのみ集中できるようにあらゆるサポートを行う役割だ。

例えば標的までの距離や風向き、天候・温湿度等のあらゆる情報を狙撃手の代わりに計測し、時には周囲の警戒や見張りを行うのも観測手の仕事だ。

つまり観測手とは遠距離戦闘を支援する事に特化した役割であり、遠Ptが付与されるべきポジションと言えるのだ。

だが尼倉のトリガー構成を見る限り自ら攻撃する手段を持っていない様に見えるため、尼倉自身にあまり大きなPtを付与するのは違和感がある。

そのため尼倉には正隊員最低ラインの2Ptを『遠』に付与するのが妥当だろう。


【片桐隊】

片桐隊のチームパラメータを予想した結果その総合力は15Ptとなり、似た編成の三輪隊(16Pt)に一歩劣る総合力であるため三輪隊より下位である事も納得だろう。

そして片桐隊のチームパラメータを纏めた事で、ある疑問に納得がいくようになった。

それは『なぜ比較的総合力が低い影浦隊がA級6位まで上り詰める事が出来たのか?』という事だ。
旧二宮隊、影浦隊を含め当時のA級ランク戦に参加していたと思われる全10部隊の総合力を纏めてみると分かったのだが、A級ランク戦の環境はB級と比べてかなり隠密戦術に偏っているのだ。

A級10部隊中3部隊が『遠』のパラメータが最も高く狙撃に偏重したチームだと言えるが、影浦の前ではチームの最も強い部分を活かすことができない。
風間隊のステルス戦術も『知覚情報の8割を視覚に頼る部隊』に有利を取れたとしても、影浦のSEの前ではその真価が発揮される事はない。

つまり影浦隊はこの4部隊相手に勝ち越すことが出来る可能性が高いのだ。

隠密した敵の位置を影浦のSEであたりを付け、北添の適当メテオラで隠れ場所からあぶり出し、絵馬の狙撃で始末する。10部隊で戦ってその内4部隊に勝ち越せるなら影浦隊がA級6位だったのは納得の順位だろう。

予想③:新生玉狛第二

【ヒュース】

ヒュースには5章の考察で5Ptを付与したが、そのPtを近中に振り分けるべきかを考えたい。

2章の考察では『アステロイド以外の弾トリガー装備の場合はその威力が低いため中Ptを低く評価、又は付与しない』という方針を示していたが、トリオン強者のヒュースに限っては例外的に扱った方が良さそうに思える。

ヒュースの直線バイパーは来馬先輩の両手アステロイドといい勝負が出来る程度の威力があるため、ヒュースのみ例外的に中Ptを付与しようと思う。(20巻P46)

新生玉狛第2の総合力は14Ptになり、二宮隊の15Ptと影浦隊の14Ptの間に綺麗に収まる総合力であることが分かった。
そのため新生玉狛第2はB級最終2位になるべくしてなった部隊だと言えそうだ。

予想④:生駒隊


【生駒達人】
4章、5章でも考察した通り、生駒の個人ポイントは11177であり5Ptが付与される事はほぼ間違いない。
次に考えたいのがその5Ptを中Ptに分割するべきか否かという事だ。

生駒が使う射程40mの旋空弧月は、射程22mの弓場に対抗するために編み出された技であり、弓場の【射程】が2.5である事を踏まえると、生駒の【射程】は3以上あっても全然おかしくない。(22巻P87)

つまり生駒の攻撃は中距離戦でも十分運用できるため、中Ptが付与される余地があると言えるのだ。


だが近Ptと中Ptの付与が『武器の射程距離』に依存する事にしてしまうと、今度は巴に付与されているPtに矛盾が生じてしまう。

巴の【射程】はガンナーでは珍しく2であり、これは旋空を装備しているアタッカーの【射程】と同等の数値だ。

もし『武器の射程距離』により『近』と『中』のPtの分割が決まる事にしてしまうと、巴のハンドガンはアタッカー程度の射程しかないため、巴には近Ptしか付与されない事になってしまうが、実際には中Ptと近Ptに分割されているのだ。

この事よりPtの分割先は『武器の射程距離』そのものではなく、攻撃手用トリガーを装備しているなら近Pt、銃手用トリガーを装備しているなら中Ptが付与されるという『武器の種類』より決定されると考えた方が自然になるのだ。

よって生駒の射程が中距離手に匹敵していたとしても、付与されるPtは弧月に対する近Ptのみであると今回の考察では結論付ける。
*20


【水上敏志】
シューターとして得点を挙げるためには【トリオン】が必須と思われるが、水上の【トリオン】は5であり、お世辞にも高い数値だとは言えない。(第220話 ジャンプSQ2022年4月号)
水上は場を整えるタイプの射手であるため、付与するならマスタークラス未満の3Ptが妥当だろう。

隠岐孝二】
3章の考察より隠岐の捕捉&掩蔽訓練での順位は6位であり、穂刈(3Pt)や半崎(3Pt)よりも低いため、隠岐も3Ptだと考えるのが自然だろう。

【南沢海】
南沢のPt付与は今回の考察でとても大きな意味を持つ。

【18巻カバー裏】
キューピー3分ベイルアウト カイ

遊真の動画を2万回見たのに違うやつに速攻落とされたてへぺろ攻撃手。こう見えて一時は8000点にも上がったことがある腕利きで、B級16歳の中では結構有望株。ノリで動く癖さえなくなればチーム戦でも伸びる可能性は高い。趣味はカラオケで歌はかなりうまく、文化祭シーズンは軽音部から引っ張りだこになった。チーム唯一の三門出身。

このカバー裏おまけの紹介を見る限り、一時調子がいい時期に上振れを引いて8000点を超えたものの、南沢の本来の実力は8000点未満、つまり3Ptだと考えて良いだろう。

そしてマスタークラスにギリ及んでいない南沢が有望株という事は、B級16歳の中にマスタークラスを超えている隊員は数えるほどしかいないという事になる。

『有望株』というニュアンス的に、南沢以上の個人ポイントを持つB級16歳の隊員は最低1人、多くて2人と言ったところだろう。

B級で16歳だと確定している隊員は外岡、別役、小荒井、奥寺、香取、笹森、半崎、照屋、漆間の9人。
つまりこの中に南沢以上(≒マスタークラス=4Pt)は多くて2人であり、その枠の1つは既に香取で埋まっている事になるのだ。

よって今後B級16歳組に新たにPtを付与する場合、マスタークラスである可能性を考慮しなくてはならない。

【生駒隊】
生駒隊のメンバーにPtを付与した結果以下の様なチームパラメータになった

生駒隊の総合力を見ると14Ptであり、影浦隊の14Ptと並ぶチームの総合力であることが分かった。

同じくらいのチーム総合力なら順位入れ替えがたまに発生しても良さそうだが、実際は影浦隊が不動のB級トップ2の座に君臨し続けている。

『4人部隊の生駒隊が何故影浦隊に勝ち越せないのか?』という疑問についても、おそらく旧二宮隊がA級4位まで上り詰めた理由と同じだろう。


エース単体の戦力で比べると生駒(5Pt)よりも影浦(6Pt)の方が高く、エース同士が衝突した場合その勝率は恐らく3:7になる。

つまり生駒隊は影浦隊と同じ総合力を持つものの、エースの実力差により勝ち越す事が出来ない力関係を持った部隊だと言えるのだ。


そしてここまで分析した事で、南沢のキャラ紹介の文章が大きな意味を持っていたことに気が付く。

南沢は『ノリで動く癖さえなくなればチーム戦でも伸びる可能性は高い』と言われているので、考えて動くことさえ出来る様になれば、マスタークラスの戦力(4Pt)になり得るという事だ。

もし南沢が4Ptになれば生駒隊の総合力は15Ptとなり、影浦隊の14Ptを上回るチーム総合力になるため勝ちの目が見えてくる。

生駒隊が今後チーム戦で伸びるかどうかは南沢の成長にかかっているのだ。


予想⑤:王子隊

【王子一彰】

B級上位グループの隊員の強さを議論するにあたり、小南が発言した『どの隊にもA級レベルのエースがいるわ』という条件は重要になる。(10巻P154)
*21

小南の言葉を素直に解釈するとB級上位経験がある部隊にはどこにも最低一人はマスタークラス(4Pt)以上のエースが居ることになるのだ。

王子隊のエースは王子だが、王子は1万越えのアタッカーではないため4Ptのマスタークラスの強さに収まるだろう。

また2章で考察した通り王子が装備している弾トリガーはハウンドであるため中Ptは付与しない。

【樫尾由多嘉】
樫尾はおそらく巴~奥寺位の強さの範囲に収まると思われるため4章では2Ptを付与したが、カバー裏のキャラ紹介について掘り下げたい。

こいつも生徒会長 カシオ
進学校(中学)で生徒会長を務めるナチュラルな真ん中分け(新3バカの先輩)。親に対しても敬語という特殊な家庭環境で育ったせいか、年上に対してのしゃべりがカタい。ボーダー入隊までは挫折を知らない才能系男子だったが、同い年の木虎にこてんぱんにされて上には上がいることを知った。そこから恋に発展?どうでしょうねえ~

木虎(4Pt)にこてんぱんにされたので個人ランク戦での勝率は恐らく30%を大きく下回っていると思われる。
5章で考察した通り、勝敗が大きく偏る場合は2Pt以上差が開いているはずだ。

よって樫尾には2Ptを付与しようと思う。

そして王子と同じ理由で中Ptは付与しない。


【蔵内和紀】

蔵内がマスタークラスかそれ未満か?という疑問については、いくら考えても結論を出すことが出来なかった。
那須より個人ポイントは低そうだが、かと言ってマスタークラス未満である確証も無い。

そこである画期的な方法を思いついた。

個人的な感想で言えば、葦原先生はキャラの強さについてかなり丁寧に描写を重ねているため、読者が想像する蔵内の強さと作中の設定上の強さが大きく乖離する事は無いだろう。

つまり多くの読者が思う蔵内の強さが、そのまま蔵内の強さの指標として使える可能性は十分あるのだ。

そこでTwitter上で蔵内がマスタークラスかどうか読者がどう思っているのかアンケートを取ってみる事にした。

その結果が以下のツイートだ。

蔵内がマスタークラス未満である事に自分も異論はない。

よって蔵内は3Ptであると今回の考察では結論付ける。



【王子隊】

以上の結果をもとに王子隊のチームパラメータを予想してみた。

その結果王子隊の総合力は9とやや控えめな数字になってしまったが、B級上位に2期連続残留した香取隊の総合力も9であるため、B級上位で十分通じるチーム総合力だと言えるだろう。
また、王子隊と香取隊は似た編成になっているが、王子隊の方が常にランクが上である。
やはり部隊全体の機動力が高い事は自隊の強みを押し付けるために重要な要素であるのだろう。

予想⑥:弓場隊・旧弓場隊・初代弓場隊

【弓場琢磨】

ガンナーTOP1の里見は5Pt、ガンナーTOP3の片桐は4Ptであると考察したが、ガンナーTOP2の弓場のPtはどうするべきか考える。

弓場のPtを考える際、ガンナーランク1位の里見の発言が恐らくヒントになるだろう。


迅曰く里見は自分がガンナーランク1位である事を知らないらしいが、これには非常に違和感がある。

里見はランクに興味が無いわけではなく、二宮や弓場が高ランクである事を意気揚々と語っていたため、むしろ個人ランク戦の順位には興味津々であるはずなのだ。

『里見が個人ランクに興味津々な事』、『里見は自分がガンナーランク1位だと知らない事』。

この二つを矛盾なく解釈できるとしたら、里見が自分のランクを大したことない順位だと思っている必要がある。

つまり、
『里見が興味深々なのはソロ総合ランクの方であり、里見自身はソロ総合ランクだと大した順位じゃない』
かつ
『里見がスカウト旅行に行っている間に、勝手に里見の順位が繰り上がって1位になった』

という二つを状況を満たす場合なら里見が自分の順位を知らなくても違和感は少なくなるだろう。


まず、『里見の順位がソロ総合ランクの中では大した順位じゃない』という話だが、そもそも『大した順位』とはどのくらいの順位の事を言うのだろうか?

作中で個人ランクの順位が『すごい順位』というニュアンスで紹介された例で最も低い順位は、風間隊の回想で出てきた『個人総合9位 風間蒼也(19)』だ。(7巻P70)

つまり作中ですごい順位として認識されるためには、最低でもTOP10入りしている必要があると予想できる。

ここで4章・5章でまとめた個人ポイントとPtの対応表を振り返ってみる。

ガンナーランク1位の里見が5Ptである事を踏まえると、ソロ総合ランクで里見より上位には6Pt以上の太刀川、風間、小南、村上、二宮、加古、出水、当真、奈良坂、東の最低でも10人が存在するはずだ。*22

つまり里見のソロ総合ランクはどれだけ高く見積もっても11位以下になる。

よって『里見自身はソロ総合ランクだと大した順位じゃない』ため、里見が自分のランクを気にしていないという話は十分あり得る事なのだ。


次に『里見がスカウト旅行に行っている間に、勝手に里見の順位が繰り上がって1位になった』という話だが、スカウト組が帰還する直前のROUND5以降、弓場隊はB級中位に部隊ランクが落ちている。

その前から弓場隊の順位はじわじわと下降していたため、部隊負け越しに伴い個人ポイントが落ちてガンナーランク1位から転落した事は十分あり得るだろう。

だが5・6試合程度の弓場隊の不調に伴いガンナーランクの順位入れ替わりが発生するためには、元々弓場と里見の個人ポイントは相当僅差だった必要がある。

よって今回の考察では弓場は里見と同じく5Ptであると結論付けようと思う。

なお弓場は銃で戦うアタッカーと評されているが、生駒と同じ理由でPtは全て中Ptに割り振られるものとする。


【帯島ユカリ】
4章で考察した通り、帯島の強さは巴~奥寺の範囲であると思われるため2Ptを付与し、オールラウンダーである事から近中に1Ptずつ分割するのが妥当だろう。

【外岡一斗】
先程南沢の考察でも触れたが、外岡はマスタークラス(4Pt)の可能性がある。
捕捉&掩蔽訓練では奈良坂・佐鳥に次ぐ3位と非常に高い順位だったため十分あり得る話だ。

だが外岡が4Ptだと考えた場合、23巻のドラフト指名のあるシーンで違和感が生じてしまう。

ワールドトリガー23巻P179(集英社葦原大介)】

北添は1巡目時点では部隊コンセプトが特になかったので、強い隊員が残っていれば即決で選択する事が出来たはずだ。
この時残っていた隊員は外岡と半崎(3Pt)であり、もし外岡が4Pt相当だった場合『うーん』と言いながら迷っているのは違和感がある。
つまり外岡と半崎の間には明確な実力差が無いので北添は迷ったと考えるほかないのだ。

よって外岡は3Ptとするのが妥当だろう。


【神田忠臣】

弓場隊には12月まで神田が在籍していたため、B級ランク戦開始順位である4位は『旧弓場隊』に依るものだとし、神田の戦力込みのチームパラメータで考えようと思う。
先程王子隊の考察で蔵内に3Pt付与したので神田にも同様に3Ptを付与する。

そして里見のジェスチャーを見る限り神田がアサルトライフル使いだったことはほぼ確実のため、2章で考察した通り神田は中距離手寄りのオールラウンダーであるとする。
よって中Ptに比重を置いて、『中』に2Pt、『近』に1Ptの割合で分割を行う。

ワールドトリガー21巻P38(集英社葦原大介)】

【弓場隊・旧弓場隊・初代弓場隊】
歴代弓場隊のメンバーのPtを全員分付与する事ができたため、チームパラメータを3部隊分作成してみた。

この結果、弓場隊の総合力は10Pt、旧弓場隊の総合力は13Pt、初代弓場隊の総合力は15Ptになった。

B級ランク戦を終え弓場隊はB級中位に落ちてしまったものの、部隊の総合力を考えると仕方がない結果だと思える。
また旧弓場隊の総合力は13Ptであり、生駒隊の14Ptにわずかに届いておらずシーズン開始順位がB級4位だったのも納得だ。

最後に初代弓場隊の総合力だが、A級8位片桐隊に並ぶ15PtとB級の中ではかなり高いチーム総合力になった。
このチーム総合力ならA級に上がってもおかしくないが、かと言って余裕でA級に上がれる訳でもなく、かなり絶妙なチーム総合力だと言えるだろう。

とは言うものの二宮隊がB級に降格する前ならB級1位であってもおかしくない総合力だ。

ここから先は想像になるが、初代弓場隊は完成されたチーム総合力でB級ランク戦を駆け上がった末、遂にB級1位になりA級挑戦権に王手をかけたものの、A級に上がってからだと独立してチームを作る事が難しくなると考えた王子が、蔵内を引き抜き独立を宣言したせいで結局弓場隊はA級に上がれなかった、という物語があったのかもしれない。

いずれにせよ初代弓場隊にエンブレムが無い(≒A級に上がった経験がない)としても違和感がないチーム総合力だと言えるだろう。

予想⑦:漆間隊

【漆間恒】

南沢の考察の時に言っていた『B級16歳の中で南沢を超える個人ポイントを持つ隊員』はやはり漆間だろう。
よって漆間にはマスタークラス相当の4Ptを付与する。

【漆間隊】

漆間隊はB級ランク戦開始時はB級9位だったが、総合力を見ると4Ptとかなり低くB級下位に落ちてしまったのも当然と言えるだろう。
B級ランク戦8試合の中でも勝利が確定しているのはROUND8くらいであり、その他の試合は中位でも下位でもほぼ負け続けている。
ROUND1➡9位から11位に落ちているため敗北
ROUND2➡鈴鳴第一に敗北
ROUND3➡荒船隊に敗北
ROUND4➡14位になっているので恐らく敗北している
ROUND5➡15位以下に落ちているため敗北
ROUND6・7➡不明
ROUND8➡勝利して14位に浮上



予想⑧:B級下位

2章の考察で平均的なB級下位は全員2Ptだとしたが、B級下位でも比較的上位に居たことがある海老名隊、早川隊、松代隊の隊長には3Ptを付与したほうが良いかもしれない。

感覚論になってしまうが、B級中位~下位にかけての部隊のロールモデルは隊長が3Pt、他の隊員は2Ptという構成に見えるからだ。

そして柿崎隊や諏訪隊の様に、隊長(3Pt)以外にも有望株(3Pt)が居る場合に安定してB級中位に留まる事が出来ている様に感じる。

よって海老名貴大、早川悟、松代仁には3Ptを付与しようと思う。


だが4章の考察で早川はアタッカーランクにいる事にしてしまったため、早川に3Ptを付与すると個人ポイント7000以上、つまり影浦より上位になってしまうため出来れば避けたい。

そのため4章での結論を撤回し、消去法で早川は3Pt相当の射手寄りのオールラウンダーである事に変更する。

早川はメインに弧月を装備しているため射手寄りだと考えるのはやや違和感が残るものの、射手寄りのオールラウンダーは今の所一人も居ないため一人くらい居ても良いだろう。

影浦の順位を守るためかなり恣意的に結論を歪めてしまったが、この考えを元にB級下位のチームパラメータを予想してみようと思う。


B級下位のチームパラメータを整理できたため、次に部隊の総合力と部隊のランクが対応しているか検証してみようと思う。


だが、部隊ランクの参考として『ランク戦開始時(10巻P127)』と『BBF掲載時点』の順位を使うのは不適切な可能性がある。

『ランク戦開始時の順位』はあくまで前シーズンの結果であり、弓場隊の様に隊員の増減があった可能性が否めず、また『BBF掲載時点の順位』についてもROUND1で吉里隊と間宮隊が完封された影響がまだ残っているため、部隊の総合力とうまく対応していない可能性が高いからだ。

一方ランク戦終了時点の順位であれば、間宮隊と吉里隊もマップ選択権を得る等で有利な試合運びが出来た試合もあったと思われるので、部隊の順位が実力相応な位置に収束している可能性が比較的高い。

よってB級ランク戦終了時点の順位を元にB級下位のチーム総合力について検討しようと思う。


ランク戦終了時点の順位については23巻P59、又は遠征選抜試験裏で行われている防衛任務のシフト表から割り出す。
(防衛任務のシフト表からランク戦順位を割り出す過程については以下のツイートを参照いただきたい)

B級15位以下は海老名隊、常盤隊、早川隊まで確定しており、残りの4部隊についても防衛任務のシフト表から『吉里隊>茶野隊』『吉里隊>羽鳥隊』『間宮隊>茶野隊』である可能性が極めて高い。

これらの結果を元にB級下位の順位とチームの総合力について予想し以下の表に纏めてみた。

このB級下位の順位がどんな意味を持つのか一つずつ考えてみる。


海老名隊(7Pt)と常盤隊(8Pt)はチームの総合力だと、常盤隊(8Pt)の方が高いが、主力のPtだと海老名(3Pt)の方が常盤(2Pt)より高い。
チームの総合力が1Pt差程度なら主力の強さ次第で勝ち越すことが出来ることを表しているのではないか?

おそらく太刀川隊(16Pt)が草壁隊(17Pt)や嵐山隊(17Pt)を抑えてA級1位に君臨しているのも、1Pt差程度なら太刀川(8Pt)が『圧倒的戦力でカバー』出来るからだろう。(BBF-P37)


次に常盤隊(8Pt)と早川隊(6Pt)だが、主力の強さだと早川(3Pt)の方が高いが早川隊が下位に位置している。
これはつまりチームの総合力の差が2Pt以上開くと、主力が強かったとしても数の力で押されてしまう事を表しているのではないか?

主力の強さで勝る太刀川隊(16Pt)が、玉狛第一(18Pt)より弱い扱いを受けているのも恐らく同じ理由だろう(BBF-Q267)


早川隊(6Pt)と吉里隊(6Pt)は両部隊の総合力に差は無いが、主力の強さは早川(3Pt)の方が吉里(2Pt)よりも高いので、主力の強さで勝ち越していると思われる。


吉里隊(6Pt)、間宮隊(5Pt)、茶野隊(4Pt)については順当にチーム総合力の差が順位に反映されていると思われる。


茶野隊(4Pt)と羽鳥隊(4Pt)についてだが、羽鳥隊は松代が抜けた後の連携がまだ未熟であり順位を落としたか、単純に新設チームのため最下位からスタートしたかのどちらかだと考えられる。



ここまでで全部隊のチームパラメータ予想が完了したので改めて部隊の総合力について纏めてみようと思う。

このランクはBBF掲載時点の部隊ランクを元に作成されているので、今度はB級ランク戦終了後の順位をB級部隊のみを抜き出して再度整理してみる。

その結果おおむね部隊の総合力と一致する様に順位が並んでいる様にも見える。



終戦で香取隊が敗北し上位残留を逃してしまった後、『これが今の香取隊(うち)の実力ってこと』『自分たちのいる位置を自覚しないと』という会話があったが、この表を見た後だと二人が言いたかった事が腑に落ちる様な気がする。

言葉の通り香取隊は実力通りの順位に落ちてしまったが、自分たちの現状を理解した事できっと再スタートする事が出来るだろう。



今回は戦闘員の合計Ptだけで部隊順位とチームの総合力について語ってきたが、実際にはここにオペレーターの強さも上乗せされるべきだろう。

例えば部隊の総合力に比べて王子隊はかなり順位が高いが、もしかすると橘高の与える影響力が大きいのかもしれない。
B級TOPクラスのオペである宇佐美、人見と共に、遠征選抜試験編で裏方として引き抜かれた事は果たして偶然だったのだろうか?

6章まとめ

6章の考察によりBBF未掲載のキャラを含めた98人のPtの付与が完了したため、改めてPtの対応表を整理しようと思う。

赤字はBBFにチームパラメータの記載が無いキャラだ。

これまでの様々な角度から考察を進めてきたが、一部の例外を除いてPtと個人ポイントが対応している事はほぼ確実だと言って良いだろう。


だったらやる事は一つしかない、ソロ総合ランク考察だ。



『主人公と戦ったあの強敵はソロ総合ランクだと何位なのか?』『かつて個人戦ブースで競い合ったライバルはポジション別ランクだと何位なのか?』

ワートリ読者ならだれでも一度は考えたことがある疑問について、本編・BBFに登場する戦闘員98名+αのランク付けを行っていこうと思う。



ソロ総合ランク考察『影浦は本当にアタッカー20位なのか?』


この章では100名近くいるワールドトリガーの全戦闘員のランクについて考察していく。


まずはランク付けする際の基本的なルールについてだ。

【ランク付けの基本ルール】
●個人ポイントを参照する日付は『村上の影浦20位発言』が行われた2月10日時点とする。作中で複数回個人ポイントが開示されたキャラは2月10日に近い方のポイントを参照する。


●以下の隊員はランク付けから除外して考える。
・2月10日時点で除隊済みの神田と鳩原
・本部職員に移った寺島と沢村
・野良B級とC級隊員
・S級の天羽




次にランク付けを行っていく際の方針について検討してみようと思う。

これまでの考察により、Ptを付与した隊員のおおよその個人ポイント帯は推測できるようになったものの、同じPt同士の隊員のランクの大小関係は不明瞭な部分が多い。

よって順位付けを行う際の方針を予め立ててから考察を進めた方が良いだろう。



方針①:作中で個人ポイントやランク順が明かされている場合はそれに従う。


当然だが作中で開示されている設定と矛盾しない様に順位付けを行っていく。

ただし1章で考察した通り、生駒がNo.6アタッカーになったのは2月20日以降であるとしているため、生駒の順位のみ例外的に本編とは異なりアタッカー5位として扱う事になる。


②特別な事情によりPtと個人ポイントが対応していないキャラは、①と矛盾が生じない範囲でなるべく高順位に置く

例えば小南は実力的には7Ptだが、ランクだと6Ptの風間さんを下回っている。
判明しているランクに矛盾が生じない範囲での小南のソロ総合最高順位は、ソロ総合ランク4位の当真の次の5位である。

その様な場合は小南を5位に配置する、といった方針で順位を決めて行こうと思う。


③論功行賞で個人ポイントが増えたキャラはやや高めの順位に置く

言っている事は単純だがこの③の方針はかなりややこしい。なぜなら論功行賞で得たポイントをそのまま加算して良いキャラとそうでないキャラが混在しているからだ


例えば米屋は5巻P40時点で個人ポイントが9443のため、1級戦功+800点を得た時点で10200程度あったはずだが、11巻P93時点ではいつの間にか9825まで減少している。

のちに『10000ポイント越え』は象徴的な強さ(5Pt相当)の指標であった事が明かされたため、今にして思えば米屋(4Pt)がその個人ポイントの壁を突破しない様に意図的に調整されたように見える。

一方2Ptと3Ptの境界値である7000ポイントの壁は、論功行賞によるポイント増加で容易く突破されているので、その『ポイント調整』が全キャラに対して行われている訳ではないのだ。


この差が何なのか考えてみたが、おそらく作中のパワーバランスを守るためでは無いだろうか?


例えば作中でキャラの強さを示す象徴的な数値として、『マスタークラスの8000』、『笹森が発言した10000越え』等が使用されている。

これらの数字は作中でキャラの強さを表す明確な指標として使用されているため、短期間のポイント増減で気軽に突破してはならない印象がある。

一方7000という境界値は強さの指標として扱われたことが無いので、その境界値を気軽に突破しても作中のパワーバランスに与える影響は少ないだろう。

よって今回の考察では、『論功行賞によるポイント増加で、象徴的な境界値を突破する事は出来ない』という方針を立てよう思う。

具体的に言うと『3Pt(4Pt)のキャラが論功行賞を得ても、8000(10000)ポイントを超えていない事にする』という事だ。

つまり今回の考察では、特急戦功で1500点得た三輪(4Pt)であっても個人ポイント10000未満として扱う事になる。


方針④:ポジション武器の反対側に武器を装備している場合は個人ポイントをやや低めに見積もる


装備している武器の種類が多いほど様々な状況に対応できるため戦闘では基本有利に働くが、ソロ総合ランクにおいては個人ポイントが分散してしまうというデメリットも存在する。

【BBF-Q243】
メイン・サブ両方で攻撃用トリガーを使う場合、ランク戦での個人ポイントはどう振り分けられるんですか?
とどめを刺した(より大きいダメージを与えた)方のトリガーが7割、反対側のトリガーが3割です。

このQ&Aについてまず考えたいのが『反対側』のさす範囲がどこまでなのかという事だ。
*23

素直に解釈すると『メイン1段目の武器』で取ったポイントは『サブ1段目の武器』に割り振られるのだと思われる。


そしてその様に仮定した場合、『何故王子はオールラウンダーで無くアタッカーなのか?』と言う疑問について新たな視点が加わる事になる。


剣トリガーと銃手用トリガーを両立している隊員(万能手を除く)について、今度はトリガーセットの順番に注目してみよう。

ポジションと対応した武器の内、「ポイントが最も高いトリガー」又は「威力が十分高いトリガー」を『ポジション武器』と呼ぶことにする。

これらの隊員のトリガーセットの順番には明確な共通点がある。

『オールラウンダーを目指している加古さん』を除いて、ポジション武器の逆側同じ段に『射程の異なる武器』がセットされていないのだ。

巴を例に挙げて説明すると、ガンナーである巴はアステロイドによる得点機会が最も多いと思われるが、その反対側には武器がセットされていない。

つまりポジション武器で獲得したポイントが弧月に分散しないため、弧月にポイントが溜まりづらい状況が生まれているのだ。

王子も樫尾も熊谷もわざわざ弧月と段をずらして弾トリガーをセットしている。

一方オールラウンダーのトリガーセットを見てみるとほぼ全ての隊員が近中武器を同じ段にそろえている。
例外と言えば両手に剣トリガーを装備している香取・歌川・木崎と、片手に武器を集めている烏丸くらいだ。*24


ソロ総合ランクの順位は装備している武器の中で最もポイントが高い武器を基準にランク付けされるため、個人ポイントの分散を嫌う場合は武器の段をずらして装備するのがセオリーなのかもしれない。
*25


よってポジション武器の逆側同じ段に別の武器を装備している場合は、同格っぽい別の隊員よりも個人ポイントを相対的に低く見積もる事にしようと思う。


方針⑤:ポジション毎の適正が高い隊員を高順位に置く

千佳が入隊を決めたときに行われた宇佐美のポジション適性診断を元に、ポジション毎に求められる要素について考えて行こうと思う。(3巻P115~)


攻撃手適正
・運動神経の良さ
・足の速さ

中距離手適正
・数学の成績(処理能力?)
ボードゲームの経験

万能手適正
・チームスポーツの経験(運動神経と処理能力の複合?)

狙撃手適正
・持久力
・根気
・集中力
・柔軟性

これらの要素の内、運動神経の良さや処理能力の高さについてはBBFのグラフからある程度定量化する事が可能だ。


まずは『生身の運動能力』のグラフから、ポジション毎に必要な要素について分析しようと思う。


ボーダー入隊試験には基礎体力テストが導入されている事や、木崎が生身のトレーニングを推奨している事からも、生身の運動能力の高さが隊員の素質に関わる事は間違いない。

このグラフの大まかな傾向を見ると


●攻撃手は瞬発力が特に重要
●射手・銃手は体力が高いに越したことは無い
●狙撃手は持久力が重要

という事が読み取れる。


次に隊員の処理能力や学習能力の高さについて分析しようと思う。

このグラフの大まかな傾向を見ると


●攻撃手にとって成績の良さはあまり重要ではない
●射手・銃手は考えて動くポジションのため、処理能力の高さが重要
●狙撃手は成績が良い事に越したことは無い

という事が読み取れる。


隊員の処理能力の高さについては24巻の巻末おまけの遠征選抜試験のスコアを用いることで、BBF未掲載のキャラもグラフに組み込むことが可能だ。


まずは成績グラフの『成績の良さ』と試験のスコアがどのように対応しているか確認するため、BBFの成績グラフと試験のスコアが両方開示されている隊員を抜き出してその傾向を見てみようと思う。

その結果ややばらつきはあるものの、成績の良さと試験のスコアには相関関係があると言って良いだろう。

この結果を元にすれば、BBF未掲載の生駒隊、王子隊、漆間隊を試験のスコアから逆算して成績グラフに組み込むことが出来る様になる。

細井の導出過程➡https://twitter.com/wanotamishirasu/status/1556293851274702850?t=1LyH6BMO2O3mekMX7DWBKQ&s=19


以上の結果を見るに『成績グラフ』『生身の運動能力グラフ』のどちらでも、ポジション毎に隊員がまとまって配置されているように見えるため、ポジション別ランクを決定する際ある程度参考になるだろう。

しかしポジション毎の適正が高くなる方向は見えたものの、ランク順通りになっている訳ではないため手放しに参考にすることは出来ない。

よって方針⑤は、方針①~④でどうしても結論を出せなかったときの最終手段として用いようと思う。


例えばアタッカーランクを考察する際、方針①~④を用いても辻と黒江のどちらを上位に置くかの結論が恐らく出せそうにない。
そんな時は方針⑤を用いて、グラフ上でアタッカー適正が高い黒江を辻より上位に置くことがあるという事だ。



方針⑥:ランク付けに関連しそうな特筆すべき事情があれば、方針①~⑤よりも優先する場合あり

個人ランク戦の結果や新人王、その他訓練順位や入隊時の個人ポイントなど、隊員のランクに関係しそうな要素は作中に多数存在する。
その中で気になるものがあれば方針①~⑤よりも優先したり優先しなかったりする。




方針①:作中で個人ポイントやランク順が明かされている場合はそれに従う。
方針②:特別な事情によりPtと個人ポイントが対応していないキャラは、①と矛盾が生じない範囲でなるべく高順位に置く
方針③:論功行賞で個人ポイントが増えたキャラはやや高めの順位に置く
方針④:ポジション武器の反対側に武器を装備している場合は個人ポイントをやや低めに見積もる
方針⑤:ポジション毎の適正が高い隊員を高順位に置く
方針⑥:ランク付けに関連しそうな特筆すべき事情があれば、方針①~⑤よりも優先する場合あり


オールラウンダーランク編

まずはオールラウンダーランクについて順位付けを行っていく。



今回の考察で定義したオールラウンダーのランク付け方法についておさらいすると、


●オールラウンダーは最も個人ポイントが高い武器のポジション別ランク(攻撃手or射手or銃手ランク)に振り分けられる
●ポジション別ランクとは別に、近中武器の個人ポイントを1つずつ合算したポイントで順位付けした『オールラウンダーランク』が付与される

まずは万能手ランクを付けるために、万能手が装備している近中武器の個人ポイントをわかる範囲で整理していこうと思う


【木崎レイジ(7Pt)】
4章の考察でレイガスト:8000、アステロイド:11000と見積もったが、その時はかなり低めに見積もったため、矛盾しない範囲でもう少し高めのポイントに設定したい。

木崎のアステロイドのポイントは5Ptの里見の個人ポイントを下回ればいいため、木崎は11500点くらいまでならポイントを高く見積もってよいだろう。

また、合計点数を切りよくしたいのでレイガストを8500点である事にしたい。

よって木崎の万能手ランクは8500+11500=20000である事にする


【嵐山准(5Pt)】

嵐山の近中武器のポイントを考える際に質問コーナー⑪で取り上げられていたオールラウンダーの定義についておさらいしたい。

現在ボーダー全体のレベルが上がっているので、オールラウンダーの定義を8000ポイントにするべきだという声がある様だが、この意見は定義が変更されても万能手のままでいられる隊員が相当数いなければ出て来ない意見だろう。

最低でも万能手TOP3で挙げられていた木崎、嵐山、三輪の3人は定義が変更されてもおそらく万能手のままだろう。

嵐山は5Ptであること、中Pt>近Ptである事から、アステロイド:11000、スコーピオン:8000の合計19000点である事にしようと思う。


【三輪秀次(4Pt)】

4章の結論にて三輪はアタッカー寄りの万能手だと考察したので弧月のポイントの方が高いと考える。

三輪は論功行賞で1500点獲得したが方針③に従い三輪の個人ポイントは10000未満であるとする。

また、三輪と米屋は同格の様に扱われていると考えているが、ポジション武器である弧月と同じ段にアステロイドが装備されているので、方針④に従い米屋よりやや低めの個人ポイントであると考えたい。

そして感覚論だが三輪の方が片桐よりも個人ポイントが高くあってほしい気持ちがある。
片桐はガンナーTOP3のため北添よりも個人ポイントが高いはずだ。



以上を纏めると、三輪の弧月のポイントは、

米屋(9825)>三輪>片桐>北添(9728)であると考えたい。


よって片桐=9750、三輪(弧月)=9800であると考える。

4Ptのオールラウンダーもよほどの事が無い限り万能手の定義が変わっても万能手のままでいられると考えたい。
三輪は万能手のままでいて欲しいため、アステロイドは8000であるとする。

9800+8000=17800

【時枝充(4Pt)】

時枝充のPtの分割は4Ptの万能手の中で唯一中3Pt・近1Ptと偏りがある分割になっている。

メタ的な視点で言えば、もし時枝のPtを中2Pt・近2Ptにしてしまうと、嵐山隊の近中遠のチームパラメータが草壁隊とまったく同じになってしまうので、部隊毎の差別化を図るために時枝のPtに偏りを出したのだろう。

どんな意図があるにせよ、Pt分割に偏りがあるなら時枝の近中武器の個人ポイントにも大きな偏りがあるはずだ。

例えばアステロイド:9000、スコーピオン:6000の様に、極端に差があるポイント配分なら中3Pt・近1Ptとなっていても感覚的にはおかしくない。
また、生身の運動能力と成績グラフのどちらを見ても時枝はアタッカー適正の範囲から大きく外れている。


よって時枝の合算ポイントは9000+6000=15000である事にし、この配分を一つの基準にしようと思う。

以降2Pt・2Pt配分になっている4Pt万能手については、近中武器の個人ポイントの差が時枝より小さく(2000程度)なる様に配分を行う。


【木虎藍(4Pt)】
木虎の個人ポイントを図る時に注目したいのが、『入隊時初期ポイント』と『隊近界民戦闘訓練』の描写だ。

【4巻P165】
堤『いやー 一時期の新人が凄すぎただけでしょ 黒江が11秒 木虎が9秒 緑川なんか4秒ですよ?』

【5巻P78-79】
風間『戦闘用トリガーを使えばおそらくマスターレベル…… 8000点以上の実力はあるでしょう』
(中略)
忍田『初めから3000点くらいにして早めにB級に上げるべきだった たしか木虎は3600点スタートだったろう?』

木虎、緑川、黒江の入隊時期はそれぞれ異なっているが、堤の発言を元にすると3人の素質は緑川>木虎>黒江となり、3人の個人ポイントの大小関係も同じ推移になっているはずだ。

また、入隊時初期ポイントの大きさで見ると、風間から『空閑は8000点以上』と報告を受けた忍田さんが『空閑の初期ポイントを3000点に設定すべきだった』と判断しているため、入隊時初期ポイントが3600点の木虎の実力は8000点を大きく上回っているはずだ。

よって、大規模侵攻前のポイントで比較すると木虎の個人ポイントの範囲は以下の様になると考えられる。

緑川(9110)>>木虎>>空閑(8000相当?)

『8000相当』の空閑の初期ポイントが3000であり、木虎の初期ポイントはそれより600高い。
よって8000に+600して8600。

緑川の4秒に対して『5』秒遅い事から緑川の9110から-500して8610。

2つの要素の間を取って木虎の個人ポイントは当時8600程度と仮定しようと思う。

そして木虎は大規模侵攻で1級戦功を得ているのでそのポイントに+800し、2/10時点でアステロイドに9400程度ポイントがある事にしようと思う。

また、スコーピオン(改)には8000点付与する。
何故なら香取の例を見る限り、素質ある人間が半年も訓練を重ねればマスタークラスになる事が十分可能だからだ。(16巻P80)


【香取葉子(4Pt)】
香取の近中武器のポイントは、香取の入隊時期、回想時の髪の長さと服装、ROUND5開始前の若村との口論の内容からある程度推測する事が可能だ。

若村との口論の中で香取がポジションを転向した時期の回想の絵があったが、その時の香取の服装と髪型を纏めると以下の様になる。


入隊後しばらく:香取はアタッカー➡ガンナーに転向(服装は長袖、髪は短い)
入隊後1年くらい:香取はガンナー➡オールラウンダーに転向(服装は半そで、髪はまだ短いので本編時間軸から1年以上前と思われる)

つまり若村が言っていた『半年でマスターに上がった香取』とは、香取がスコーピオンでマスタークラスになった事を示している。


次にガンナーからオールラウンダーに転向した時には服装が長袖から半そでに変わっているため、入隊後1年くらいの時期にオールラウンダーになったのだろう。

これらを踏まえると香取の入隊時期とポジションの推移は以下の様に考えられる。


入隊時期:2013年5月入隊
入隊後~6か月:香取はアタッカーでマスタークラス達成。その後ガンナーに転向した時期は11月頃。
7か月~1年後:香取はガンナーで最低でも6000ポイント獲得。その後ガンナーランクで伸び悩みオールラウンダーに転向した時期は5~7月頃。
1年後~2年半後(現在):現在ガンナーランクが付与されている事から、アステロイドの方のポイントが高くなっている。

*26


よって香取のスコーピオンは8000点以上、また現在ガンナーランクに在籍している事からアステロイドのポイントはそれ以上高い必要がある。

香取は木虎に対してコンプレックスを抱いている描写が多いので、長い間木虎よりガンナーランクで下回っていたと思われる。
よって香取のポイントは木虎の大規模侵攻前の8600を下回ると考えた方が自然だろう。


同じく4Ptの隊長兼エースである荒船のポイントが8349である事から、それよりも高いポイントであってほしい。
よって香取のポイントは、アステロイド:8400、スコーピオン:8000である事にする。


香取や村上の例を見る限り、素質が高い隊員は半年もあればマスタークラスに到達する事が出来る。
しかしキャリアを積んだ隊員でも5Ptに到達できている隊員は一握りであり、香取の言う『上級者の壁』というものが確かに存在する。

4Pt勢の多くは『上級者の壁』に阻まれポイントの増加が鈍化し、入隊時の素質の高い隊員に後から追い抜かされることもしばしばあるのだろう。


【歌川遼(4Pt)】

公式にアタッカーと間違えられるくらいであるため、万能手の定義が変わった時に万能手でなくなってしまう隊員の一人と扱っても良いだろう。(質問コーナー⑤)

ポジション武器であるスコーピオンを同じ段に装備しているので、アステロイドにポイントが分散せず、アタッカー寄りの戦いをする限りアステロイドのポイントはそれなりに低いと思われる。

ただし歌川のPtは中2Pt、近2Ptであるため近中武器のポイント差は2000程度までに抑えたい。

また、入隊時の個人ポイントは木虎よりも低く2950であるため、素質の高い木虎に個人ポイントが抜かされている可能性が高い。
だが歌川は入隊後2年くらい経っているため、入隊時の素質の差はある程度埋まっているはずだ。

よって歌川の個人ポイントは木虎よりも若干低くスコーピオン9300、アステロイド7300の16600である事にしようと思う。


【佐伯竜司(4Pt)】

草壁隊と王子隊はどちらも機動力に秀でた部隊であり、部隊コンセプト的に草壁隊が上位互換となる様な関係になっていると思われる。
後述する理由により王子の個人ポイントは8600だと考えているため、佐伯のポイントを王子より少し高く見積もり、アステロイド:8700、弧月:8000である事にする。


【烏丸京介(4Pt)】
烏丸は一年ちょっと前に玉狛支部に異動になって以来本部にはたまにしか来ておらず、個人ランク戦も最近行っていないため他の隊員よりポイントをやや低く見積もっても良いだろう。(4巻P175・5巻P96)

ガンナー寄りであるため、アステロイド側に2級戦功+350を加算し、アステロイド:8350、弧月:8000である事にする。


【柿崎・照屋(3Pt)】

キャラクターパラメーターだけ見ると柿崎はTOTAL47、照屋は45であるため、柿崎をランク上位においても良さそうだが、他でもない柿崎がその数字を否定している(16巻P184)

そのためこの2人の順位を考えるためにはもっと別の視点からのアプローチが必要だろう。

よってこの2人は方針⑤のグラフから読み取れるポジション適正で検討してみようと思う。

柿崎と照屋の二人は中Ptの方が高いので『成績グラフ』から読み取れる中距離手としての適性の高さが最も重要になるだろう。
2人を比較すると照屋の成績の方が圧倒的に良いため、アステロイドのポイントは照屋の方が大きく上回っている様に思える。

よってガンナーランクでは照屋の方が高いと考えて良いのでは無いだろうか。

一方柿崎は『生身の運動能力』だとトップクラスに高く、スポーツ全般を好きな物に挙げているので万能手適正は高い様に思える。

つまりガンナーランクだと照屋が上だが、オールラウンダーランクだと柿崎の方が上という相互互換の持ちつ持たれつの美しい関係性になっているのでは無いだろうか。

よってこの2人のランク順は、オールラウンダーランクでは柿崎>照屋、ガンナーランクでは照屋>柿崎である事にする。


【海老名・早川(3Pt)】

B級最終順位を参考に海老名>早川であるとする。
また、照屋と柿崎は論功行賞を得ているため、この2人より高い順位である事にする。


【帯島ユカリ(2Pt)】

4章の考察で、巴(6559)≦帯島・樫尾<影浦(6780)と考えたのでそれを元に帯島のポイント付けを行う。

帯島はポジション武器である弧月の反対側にアステロイドを装備しているため、樫尾よりポイントを低く見積もる。

よって、樫尾は6750、帯島の弧月は6700であるとする。
また、帯島のアステロイドはオールラウンダーとして最低限の6000であるとする。

【北添秀高(2Pt)】

近中武器ともにオールラウンダーとして最低限の6000である事とする。
なおガンナーランクに居ることにしているため、アステロイドのポイントは6100を付与する。


以上の考察を元に作成したオールラウンダーランクはこうなった。



アタッカーランク編


1章の考察において、2月10日時点のアタッカーランクは、5位生駒、6位一条、7位迅であると結論付けている。

よって8位以下の順位をつけて行く。

なおヒュースはまだ入隊していない時期のため除外して考える。


【米屋陽介(4Pt)】
弧月(槍):9825
アタッカーランク8位

【三輪秀次(4Pt)】
弧月:9800
アタッカーランク9位

【緑川駿(4Pt)】
スコーピオン:9721
アタッカーランク10位

【歌川遼(4Pt)】
スコーピオン:9300
アタッカーランク11位


【菊地原士郎(4Pt)】
歌川と菊地原の入隊時初期ポイントはそれぞれ2950と2800。
この差を参考にし、菊地原の現在のポイントは9150であるとする。


【王子一彰(4Pt)】

王子隊と香取隊は似た編成の部隊のため、恐らく王子は香取よりも個人ポイントが少し高いくらいに収まると思われる。
同じく香取よりも上位に位置付けた木虎と実力が拮抗しているのではと思い、王子の強さについてTwitterでアンケートを取ってみた。

あまりにも拮抗した結果になったため、王子の個人ポイントは1級戦功を得る前の木虎と同等と考え8600である事にする。


【黒江双葉(4Pt)】

木虎の時と同じく『隊近界民戦闘訓練』の撃破秒数から個人ポイントをこじつける。

緑川の4秒に対して『7』秒遅い事から緑川の9110から-700して8410。

キリよく整えて個人ポイント8400である事にする。


【辻新之助(4Pt)】
弧月:8232
アタッカーランク15位


【南沢・笹森・三浦・小荒井・奥寺・熊谷・影浦・樫尾・帯島】

元マスタークラスだった南沢の個人ポイントを7900に設定する。

そして笹森以下は個人ポイントがほとんど開示されているため、それに従い順位をつける。



【常盤・月見・土崎・茂手木・計良(2Pt)】

正直B級下位については情報がほとんどないため、基本的にはB級ランク戦終了時点の順位に従いランクを付けたいところだが、彼らのランクを付けるにあたり新しく提唱したい序列がある。

それはBBFでトリガーセットが公開されている掲載順だ。

各部隊の隊員の掲載順を見るとどの部隊にも共通している優先度がある。

【トリガーセット公開優先度】
優先度①:隊長が最初、OPが最後
優先度②:本編でビジュアルが解禁済みのキャラ(例:草壁隊)
優先度③:主要キャラ(表紙を飾る程度に主要なキャラ)(例:嵐山隊・影浦隊)

他にも年齢順やポジション順、部隊結成順等の条件を組み合わせる事が考えられるが、どのような優先順を組んでも二宮隊と弓場隊で矛盾が生じてしまうため、優先度④以降は部隊によってパターンが分岐すると考える。

優先度④-A:年齢順(例:二宮隊・生駒隊)
優先度④-B:部隊結成時から居る古株が優先➡新入りは下に(例:片桐隊)
優先度④-C:ポジション順(AR➡AT➡GU・SH➡SN➡TP・SP)(弓場隊)


例えば生駒隊の南沢はアタッカーのためポジション順で言うと戦闘に来るはずだが実際には最下位にトリガーセットが紹介されている。
よって生駒隊は年齢順に記載されている部隊という事になる。

次に王子隊だが、アタッカーである樫尾が最下位に掲載されている理由は年齢順だとも考えられるし、王子隊結成時の新入りだからとも考えられる。

つまりポジション順に反してアタッカーなのに掲載順が最下位になっている隊員は、新入りor部隊の末っ子である可能性が極めて高いのだ。
年下だからと言ってポイントが低いとは限らないが、今回は年齢に注目してランク付けを行いたい。


具体的に言うと松代隊の土崎、海老名隊の茂手木、常盤隊の計良はアタッカーだが最下位に掲載されているため、相対的に個人ポイントが低い隊員の可能性が高い。

よってB級下位の2Ptアタッカーの順位は、新入りの可能性が比較的低い常盤と月見を高ランクに配置し、そのほかはB級ランク戦終了時点の順位に従いランクを付けていく。
(土崎のみ松代隊時代の序列を優先し、海老名隊の茂手木よりも高い順位に置く)

よって常盤>月見>土崎>茂手木>計良の順にランクが高いことにする。


シューターランク編

シューターランクは二宮、出水、加古までは確定しているため、4位以下のランク付けをしていこう。

那須玲(5Pt)】
まずは残った射手の中で単独5Ptの那須を4位である事にする。

【蔵内・水上・早川(3Pt)】
蔵内は合成弾持ちのシューターのためトリオンが豊富で得点機会もそこそこあると思われる。
よってランクは蔵内>水上>早川である事にする。


【三雲修(2Pt)】
三雲のシューターランクを考える際にまず考えたいことがある。

それはパラメーターTOTALで勝っている唯我に1対1では負け越している事だ。


パラメーターTOTALで言うと三雲は32、唯我は26。
それにも関わらず唯我が勝ち越すという事は、『キャラの総合的な強さ』と『1対1で戦った時の強さ』には別の評価軸が用いられている。

例えば中距離手同士が1対1でぶつかる時には、【特殊戦術】と【指揮】が影響しないと考えるとどうだろうか。
(以下【トリオン、攻撃、防御・援護、機動、技術、射程】の6つのパラメーターのTOTAL値を【TOTAL6】と表現する)

個人ランク戦での勝敗が【TOTAL6】の値に依存すると考えた場合、三雲の【TOTAL6】は22、唯我の【TOTAL6】は24となり、唯我が勝ち越していてもおかしくないバランスになる。
つまり作中で出水が語っていた『単独の戦力なら(唯我は)メガネくんよりはまだ上』とは【TOTAL6】の値を踏まえての発言では無いだろうか。(13巻P67)

ただし【TOTAL6】の値はランク付けの指標として手放しに使用できる評価軸ではない。
実際【TOTAL6】の値を4Pt以上の隊員に適用してもランクとの相関性は薄く、ランク付けにはとても使用できそうになかった。

しかしB級下位であれば【TOTAL6】の値を活用できる可能性がある。

小南曰く『B級中位は下位グループと違って部隊毎に戦術があってちゃんと戦いになっている』(10巻P154)
つまりB級中位より上は部隊毎に連携が取れているので部隊単位で勝つことができ、パラメーター以上の結果(個人ランク)を伴う事もあるが、B級下位は部隊毎の連携が拙いため個人技に頼る事が多く、隊員の個人ポイントは『単独の戦力』に由来する【TOTAL6】の値次第で決まると解釈できなくもないからだ。

よってB級下位が大半を占める2Ptであれば、『単独の戦力』に由来する【TOTAL6】の値を用いてランク付けできると今回は判断する。


以上を踏まえた上で中距離手の【TOTAL6】の値を見てみようと思う。

よって2Pt以下の射手のランク順はC級の甲田と早乙女を除いて、間宮(2Pt)>鯉沼(2Pt)>三雲(2Pt)>秦(1Pt)であることにする。

ガンナーランク編

ガンナーのTOP3は里見、弓場、片桐までは確定しているが、今回の考察ではオールラウンダーも含めたガンナーランクで考えて行こうと思う。

既にオールラウンダーランクで示したポイントがある場合はそのままガンナーランクの序列に用いる。

【里見一馬(5Pt)】
里見のポイントは12000未満で設定する。
今回は11700であるとする。

【木崎レイジ(7Pt)】
方針②に従い、矛盾が無い範囲で高順位に置くために、木崎はガンナーランク2位のアステロイド11500点とする。

【弓場琢磨】
今回の考察ではB級ランク戦の不調に伴いガンナーランク一位から転落したことにしているため、出来るだけ高いポイントを想定し、アステロイド11400であるとする。
ガンナーランク3位

【嵐山准(5Pt)】
ステロイド:11000
ガンナーランク4位

【片桐隆明(4Pt)】
ステロイド:9750
ガンナーランク5位

【北添尋(4Pt)】
ステロイド:9721
ガンナーランク6位


【犬飼・漆間(4Pt)】

犬飼はポジション武器の逆側に射手ハウンドを装備しておりポイントが分散してしまうため、個人ポイントが他のガンナーに比べ相対的に低くなってしまう事が考えられる。

一方漆間はメテオラをサブ四段目に配置しているため、ポジション武器であるアステロイドのポイントが分散する事は無い。

よって方針④に従い犬飼の個人ポイントは漆間よりも若干低い事にする。(漆間のポイントを相対的にやや高く見積もる)

犬飼澄晴(4Pt)
ステロイド:8422

漆間恒(4Pt)
ステロイド:8450



【諏訪・松代・柿崎・照屋・海老名(3Pt)】

万能手ランクの時に宣言した通り、ガンナーランクでは照屋>柿崎である事にする。

また、諏訪と照屋のトリガー構成を見ると、諏訪は両手にアステロイド散弾銃を装備しているためポイントが分散しない。
よって方針④に従い諏訪>照屋である事にする。


柿崎は2級戦功を得ている事から、他のB級隊長である海老名と松代よりランク上位においても問題無いだろう。
また、B級ランク戦ROUND1~ROUND4において松代隊>海老名隊であるため、松代>海老名であるとする。

*27

以上の事を踏まえ、3Ptのガンナーランクの順位は、諏訪>照屋>柿崎>松代>海老名である事にする。



【来馬・巴・堤・茶野・藤沢・吉里(2Pt)】

三雲のシューターランクを考える際に用いた【TOTAL6】の考え方を出発点として、2Ptガンナーのランク付けについて考えて行こうと思う。

まずは論功行賞を得た来馬、巴、堤について考えてみる。
この内来馬と巴については2Ptの上限である7000点を超えてそれぞれ7222点と7009点となっている。

つまりこの2人は2Ptの若村よりランク上位に居ることが確定する。

また堤は2Ptの隊員の中ではぶっちぎりで【TOTAL6】の値が高い。
よって堤は来馬よりもポイントが高いと考え、2級戦功を得る前のポイントは2Ptの範囲内で上限いっぱいの6950とし、そこから+350点追加して7300であるとする。


巴と来馬は【TOTAL6】の値で若村に劣っているが、論功行賞によってランクが逆転した事が分かったので、この逆転現象を一つの基準として捉えたい。

【TOTAL6】の値を用いてランク付けを行う時、その差が『3』程度なら2級戦功による+350点増加でランクを逆転しても良いと考えよう。



次に論功行賞を得た茶野と藤沢について考える。

この2人は隊長である茶野の方がTOTAL6の値で低くなっているが、成績グラフと生身の運動能力グラフを見ると、体力でも成績でも藤沢>茶野となっている。
よって茶野の方がランクが低くても特に違和感は無いだろう。

それを踏まえた上で、論功行賞を得た茶野隊の2人のランクをどこまで押し上げて良いか検討する。

先程の例を見ると【TOTAL6】の値の差が3程度ならランクを上回ってよいと考えたため、その理屈を茶野と藤沢に当てはめると、藤沢は吉里をランクで上回ってよいが、茶野は吉里を上回ってはならない事になる。


よって2級戦功の+350点込みの茶野と藤沢のガンナーランクは、藤沢>吉里>茶野である事にする。


【唯我尊(2Pt)】

5章の考察では、Ptに差がある同士で戦う場合にその差が1Ptなら勝率が7:3になると考察した。
しかし唯我と修はどちらも2PtでありPtに差は無いが、200本勝負の結果は152:48と勝敗に偏りが生まれていた。(13巻P84)

つまり同じ2Ptの中でも勝率が7:3となってしまう強さの壁、すなわち個人ポイントの境界値は存在するはずなのだ。

2Ptの範囲内でその境界値がどこになるのか予測するため、勝率が7:3になる時のポイント差を確認してみた。

すると3Pt以上の戦いでは、個人ポイントが2000点差開く毎に勝率7:3の壁が生まれ、3Pt以下の戦いでは1000点差開くと勝率7:3の壁が生まれる事が分かった。

つまり2Pt同士で戦う場合も、その点差が1000点開く毎に勝率7:3の壁が生じるのでは無いだろうか?


この法則を唯我と三雲の勝敗結果に当てはめてみようと思う。

修の個人ポイントはROUND3開始前に4309(11巻94話)、ROUND4開始前に4282(13巻112話)だったため、唯我と修行した時点で修はおおよそ4300点相当の強さを持っていたと言える。

そして修と唯我の200本勝負の勝率を%で表すと、24%:76%になる。

勝率が3:7以上に開いているため、唯我のポイントは修よりも1000点以上は高いと予想できる。


修と唯我のポイント差についてもう少し厳密に考えたい。
このポイント差と勝率の関係が仮に線形で表すことが出来るとすると、500点差開く毎に勝率が10%上下すると言い換える事ができる。

つまり修の勝率は30%から更に6%低いので、個人ポイントの差は更に300点開いている事になる。

よって唯我の個人ポイントは修よりも1000+300=1300点高い5600相当であると結論付ける。


【北添(秀)・宇都宮・船橋(2Pt)】

B級ランク戦最終順位を参考にして、宇都宮>船橋>北添(秀)である事とする。


木虎被害者の会である草壁は恐らく木虎(4Pt)に大敗しているため2Pt相当の実力だと思われる。その上で若村より強いとなると、草壁は現時点でガンナーランク21~22位の間ぐらいの強さを持つのだろう。(24巻カバー裏)


スナイパーランク

スナイパーランクは一位の当真と二位の奈良坂まで確定している。
3章で考察した捕捉&掩蔽訓練の順位を活かしてスナイパーランクを考察していこうと思う。


【東春秋(6Pt)】
残った狙撃手の中で最もPtが高い東がスナイパー3位だろう。

【絵馬ユズル(4Pt)】

【13巻カバー裏】
青春狙い撃ち ユズル

うぶな風情とは裏腹に、女子と絡んでいるスキルを生来備え持っている思春期ブラックホール。当真、影浦、二宮といった高ランクキャラとの関係性も完備しており、あとはラグビーさえ始めれば今後の大活躍は間違いないと営業部長も太鼓判を押している。訓練の手を抜いている割に中学生組トップの個人ポイントを持つ、数少ない天才型。

中学生組トップの個人ポイントを持つということは、緑川よりも高いポイントを持つということだ。
このプロフィールが明かされた13巻発売時点では緑川のポイントは既に9985➡9721に減少しているため、絵馬の個人ポイントは最低でも9721よりも高ければ問題ない。(11巻P92)


4Pt勢の個人ポイント上限は10000であることから、絵馬の個人ポイントは9999~9730の範囲に収まると考えられる。
よって今回は間を取って9850である事にする。

この個人ポイントは4Ptが取り得る範囲の中でかなり高い数値であるため、絵馬は4PTスナイパーの中で最も高い順位、すなわちスナイパーランク4位であると考えて良いだろう。


【佐鳥・宇野・桃園・荒船(4Pt)】

佐鳥と宇野を比較した時、1級戦功の+800の補正を抜きにしても佐鳥の方が高順位であると考えている。

威力が比較的低いライトニングをポジション武器として使っている可能性が高いからだ。

【BBF-P219】
ライトニング

軽量の上に小ぶりなので、体の小さい隊員でも扱いやすい。撃ちながら移動する事も可能だ。

イーグレットの威力はBである一方ライトニングはCなので得点力で言えばイーグレットを使っている佐鳥の方が高くなるはずだ。
そもそも宇野は武器を2種類装備しているので、普段の使い分けによりポイントが分散してそうな事を踏まえると、個人ポイントは佐鳥>宇野となるだろう。

よって論功行賞の補正無しで考えたときの個人ポイントの大小関係はおそらく

佐鳥>宇野>桃園>荒船(8349-350=7999)となるだろう。

また、嵐山隊の中での嵐山以外の個人ポイントの大小は、エースの木虎を一番高いと考え、佐鳥と時枝は武器の攻撃力の高さから佐鳥>時枝となるだろう。
よって論功行賞の補正無しで考えたときの個人ポイントの大小関係は、木虎(8600)≧佐鳥>時枝(8200)であると考える。

以上より4Pt狙撃手の個人ポイントの大小関係を

佐鳥8550+800=9350、宇野8500、桃園8400である事にする。


隠岐・穂刈・半崎・外岡(3Pt)】


この四人は訓練順位で考えると、外岡>半崎>穂刈>隠岐の順になる。

次に2級戦功の+350ポイントの影響を考えたいが、狙撃手の訓練順位を決定づけた4つのパラメータのTOTAL値は半崎(32)、穂刈・隠岐(28)のため、+350程度でこの序列を覆すのはやや違和感が大きい様に感じる。
よって、TOTALを大きく逆転しない範囲で穂刈・半崎を高ランクであると考え、ランク上では半崎>外岡>穂刈>隠岐の順であるとする。

【古寺・別役・雨取・日浦・乙川・斎藤(2Pt)】


この五人は捕捉&掩蔽訓練の順位だと、乙川(27~28?)>古寺(27)>斎藤(27?)>日浦(27)>別役(25)>雨取(19)の順になっている。

2級戦功を得た古寺と別役はTOTALを逆転しない範囲で高順位であると仮定し、ランク上では古寺>乙川>斎藤>日浦>別役>雨取の順であるとする。



ソロ総合ランク編

4つのポジション別ランクを作成したのでその順位を元にソロ総合ランクを作成していく。

なおここまで個人ポイントが判明してない隊員に対して、目安のポイントを大体50刻みで付与してきたため同率の隊員が結構存在する。
その場合はポジション毎の得点しやすさを考慮して、攻撃手>狙撃手>射手・銃手の順でランク付けを行うものとする。


【1位~10位】

1位~4位までは作中で明かされているため、5位以降の隊員について予想していく。

方針②に従い、残った隊員の中で7Ptとなっている小南、加古、木崎を矛盾しない範囲で最も高順位となる位置に置きたい。
だがポジション別ランクで決めた順位では、加古は出水より下位、木崎は里見より下位である必要がある。

よってソロ総合ランク5位には小南を位置付ける。


次に6位についてだが、二宮と1対1で4割勝つことが出来る出水を位置付けたい。
5章でも考察したが、Ptに差があるのに4割勝つことが出来るという事は、出水は6Ptの中でかなり有望株だと考えられるからだ。

出水を6位に置いたので、方針②に従いその次の7位に加古を位置付ける。


残った6Ptの奈良坂、東、村上だが、村上を最下位に位置付ける。

そもそも6Pt下限の12000点は村上の個人ポイントを参考に設定したからという理由もあるが、村上は個人ポイントが低い影浦空閑とよく遊んでいるため、個人ポイントが低くなりやすいと思われるからだ。


よって、8位奈良坂、9位東、10位村上である事とする。


【11位~17位】

次に5Ptの隊員及び迅のランクを付与する。

11位里見、12位木崎までは確定とする。
5Ptの中で目安のポイントを設定していない雪丸のみランク順が曖昧だが、弓場➡生駒➡嵐山の19歳組をどうしても並べたいので、雪丸はそのあとに続く16位である事にする。

そして2月10日時点で迅の個人ポイントは10000点であると仮定しているため17位に配置する。


【18位~(4Pt)】

ポジション別ランクを検討する際、4Ptの隊員にはできるだけ目安のポイントを設定する様にしたので、そのポイント順に並べてランクを付与する。


【41位~(3Pt)】

3Ptの頂点は元マスタークラスの南沢であるとする。


次に考えたいのが蔵内がどのあたりに位置しているのか?という事だ。

6章のチームパラメータ予想の際はTwitterアンケート機能を参考にして3Ptであると結論付けたが、その結果王子隊の合計Ptは9Ptとなり、B級最終順位で他の10Ptチームを差し置いてB級5位に君臨するというやや異質な立ち位置になってしまった。

だが蔵内と神田を3Ptにしたことで、初代弓場隊がA級にギリ行けていなかったことへの理由付けにもなっていたため、蔵内に3Ptを付与した事はそこまで的外れでは無かったと思う。

これらの違和感を最小限にするためには、蔵内はマスタークラスに限りなく近い3Ptだと考えるべきだろう。
よって蔵内は南沢に次ぐ42位である事とする。


次に考えたいのが照屋が新人王を争ったというエピソードについてだ。(16巻P182)
照屋の同期B級には半崎、熊谷、巴などが居るが、この3人よりも個人ポイントが高い事になるだろう。

よって43位以降の順位は、諏訪➡照屋➡柿崎➡半崎➡外岡➡穂刈➡隠岐(49位)である事にする。


そして隠岐の順位が決まったのでそろそろ水上に順位を付与したい。
恐らく修が水上より隠岐を警戒していたのは、個人ポイントが一つの要因だったと思われるので、水上のソロ総合の順位は隠岐より低いのだろう。

なんとなくだが水上は笹森、三浦より上位であってほしい。


よって隠岐➡水上➡笹森➡三浦(52位)である事にする。



このあたりから2級戦功で+350点得た2Pt勢が順位争いに絡んでくるが、ポイントが明かされていない3PtのB級下位隊長の3人は2Pt勢にまだ抜かされていない事にする。

よって松代➡海老名➡早川(55位)

熊谷の順位付けは保留する。


【56位~(2Pt)】

まずは2級戦功+350点により7000点を超えた隊員に順位を付与していく。

堤と古寺は個人ポイントが明かされていないものの、A級隊員である古寺はそこそこ高い順位であってほしい。

よって、堤(56位)➡古寺➡来馬➡小荒井➡奥寺➡熊谷➡巴(62位)である事にする。

古寺を高い順位に置くという事は、捕捉&掩蔽訓練で古寺より高順位だった乙川もそれなりの順位に食い込んでくるはずだ。

だが若村も2Pt勢の中ではトップクラスの個人ポイントを持っていて欲しい。

よって巴➡若村➡乙川➡樫尾➡帯島(67位)である事にする。



【68位~(2Pt)】

ここから先残っている隊員はB級下位の隊長とその隊員がほとんどになる。

B級最終順位を参考にしてなるべくB級隊長➡B級隊員という順番になる様に順位の付与を行っていく。

B級最終16位 常盤隊
B級最終18位 吉里隊
B級最終19位 間宮隊
B級最終20位 茶野隊(茶野は2級戦功+350込みで上位へ)


まずは常盤を68位に位置付ける。

次に吉里をガンナーランクから引っ張り出すため、69位以降は藤沢➡吉里➡茶野(71位)である事にする。

そろそろ狙撃手TOTALで古寺・乙川らと同率の日浦を順位に入れないと違和感が大きくなるため、72位以降は斎藤➡日浦➡別役(74位)である事にする。

次に間宮を75位に添えてB級下位隊長の順位付与を完了させる。


残ったB級下位の隊員はB級最終順位を元に順位を並べていく。

よって月見➡鯉沼➡宇都宮➡船橋➡北添(秀)(80位)。

比較的新入りの可能性が高いアタッカー三人を北添秀高より下位において土崎➡茂手木➡計良(83位)。

そして唯我を84位に添える。


唯我以下はB級上がりたての玉狛第2の三人、及び1Ptの丸井と秦、野良B級約40名が居る事になるだろう。


今回野良B級は無視する事にしているため、唯我➡空閑➡三雲➡雨取➡丸井➡秦(89位)である事にする。


7章まとめ

今回7章に渡り考察を進めてきたがいかがだっただろうか?

はじめは影浦のアタッカーランクを調査していただけだったはずが、いつの間にかソロ総合ランク考察にまで手をかけてしまっていた。

本当はここから更に『風間さんがソロ総合9位になった時、当時のランク上位に沢村さんと寺島がいないと多分成り立たない事』や『遠征選抜試験の臨時部隊のチーム総合力から各チームが選んだヘルプユニットの理由』等の考察まで行いたかったが、そろそろはてなブログの文字数制限に引っかかってしまうため、それはまた別の機会があれば考察しようと思う。


考察を進めて一つ新たな要素を見つけると、連鎖する様に別の考察を行うための手掛かりにつながっていく。
これもきっと葦原先生が大きな理論体系を予め用意した上で世界観を構築しているからに他ならないからだろう。

とは言っても考察の最後の方は願望や感覚論が多くなってしまったので、きっと他の人が考察すればまた違ったソロ総合ランクの順位になると思う。

あえて明石氏の言葉を借りるならば『理屈と膏薬はどこにでもつく』、きっと同じデータや情報を見ても結局は自分の都合で解釈に偏りが出てしまうので、人によって導かれる結論は全く異なるものになるからだ。

今回自分が行った考察がどこまで正しかったのかはBBF2が発売されて初めて判ることだと思うが、この記事を最後まで見てくれた人の何かの役に立てれば幸いです。




それでは最後に今回の考察記事の内容を元におまけを作ったのでどうぞ。

おまけ

『作中のあのチームのチームパラメータ作ってみた』


~遠征選抜試験編~













~旧部隊編~





~大規模侵攻編~



~黒トリガー争奪戦編~

ワールドトリガー3巻P182(集英社葦原大介)】


結論:やっぱ黒トリガーはんぱねーな!!

*1:BBF-P36には天羽のノーマルトリガー使用時のパラメーターが存在するため、規格内のトリガーを使った経験があり個人ポイントを持っている可能性が高いが、天羽について検討するための情報が少なすぎるため今回の考察ではあえて触れない事とする。

*2:なお米屋はアフト侵攻で1級戦功を獲得しており、5巻40話時点の9443から+800されているため、10,000越え経験自体はあると思われる。

*3:順位入れ替えの可能性として、『雪丸がスカウト旅に行ってる間に、元7位の生駒が個人ポイントを稼いで順位が変動した』というパターンも考えられるが、その場合アタッカー5位に迅がずっと居た事になる。つまり迅の個人ポイントは12000~11177程度だったことになるが、そこに論功行賞のポイントを足すとあっという間に村上の順位を越してしまい、村上の順位が不動であることと辻褄が合わなくなってしまう。

*4:Q&Aでは合算ランクの存在が否定されているが、文脈的に『レイジが装備しているトリガーが五個も六個もまとめて全部合算される様なランク付けは無い』と言っているだけであり、近中二つだけの武器を合算するランクならば問題なく解釈できる。

*5:海老名隊のBBFのトリガーアイコンがトリガー名と一致していない誤植があるためややこしいが、海老名はアサルトライフル使いである。

*6:考察でまとめたデータの中で、荒船の被弾数及び来馬の与ダメージ集計に誤りがあります。申し訳ありません

*7:ただし木虎のみ機動と回避が対応していないためこの要素は要件等事項として残る(ジャンプSQ2022年9月号P449)

*8:その身一つで狙撃を防ぐ場合、素早く身を翻し回避するしかないが、【回避】は【機動】に対応しているのでやはり【防御】は訓練結果に影響を与えない。 (ジャンプSQ2021年12月号で判明したユニットのパラメータでは、香取の【回避】は8、三雲は4であり、それぞれ【機動】の値に対応している。) 音も光も無い補足&掩蔽訓練の射撃を見てから回避できるのか?という論点はあると思うが、ここで言いたいのは『回避の要素が【防御・援護】に含まれていない』という事なので、今回その議論は行わない。

*9:感覚派スナイパーという語句の初出は4巻カバー裏

*10:空席の12位、千佳より上位の14~18位の6人は野良B級だと考えている。 1巻P179で木虎が示した隊員の構成比をみるとA級は30名と記載されており、これは玉狛第一~片桐隊の戦闘員人数と合致する。つまりB級100名とは野良B級含む『戦闘員』の人数に対応しているため、BBF掲載のB級59名(三雲隊除く)を差し引くと野良B級は40名ほどいることになる。また、BBF掲載の正隊員のポジション毎の構成比をみるとスナイパーは約17%。 この割合を野良B級に当てはめると、40人×17%=6~7人。つまり野良B級スナイパーは6人程度いても良い事になる。 また、捕捉掩蔽訓練の物語での役割は、『千佳は実戦形式だと正隊員と遜色ない実力を持っている事』を示す事である。 そのため野良B級含む正隊員の中で最下位の19位に千佳は配置されたのだろう。 なおこの訓練の参加者は127名であり、その上位15%と言えば丁度19位。狙撃手が正隊員になれる条件と一致している。

*11:桜子がB級に上がって以降荒船はずっとスナイパーだったと認識されていたので、長期間弧月を使用する場面はまったくと言って良いほど無かった様だが、『いざとなれば弧月を使う事が出来る』という余裕が重要なのだ。

*12:千佳の爆撃を防ぐため二宮は常にシールドを張っていたので、これらの操作は全て片手で行う事が可能

*13:加古さんが野良A級だった時代の事を考え出すとキリがないので今回の考察では考慮しない。(BBF-Q236)

*14:何より加古さんが7Ptだと二宮と同格な事になるためなんか嬉しい。

*15:三雲と空閑は千佳にポイントを移したので実質0(10巻P129)

*16:論功行賞の補正を差し引く場合、6Pt下限の参考として位置付けた村上の12042からも350差し引くことになるため、今度は6Ptの基準も動いてしまうのでは?という議論が発生するが、村上の場合は個人ポイント詐欺の影浦と個人ランク戦でよく遊んでいるため、ボーナスポイントを既に溶かした結果が12042であると考えれば問題ない。11巻P91で個人ランク戦ブースに来るのは珍しいと米屋に言われているものの、村上は最低でも2月6日、2月10日、2月23日に個人戦ブースに訪れているため、週1くらいのペースで本部に来ている計算になる。よって米屋が言った珍しいというのは、米屋の方が個人戦ブースに来すぎているからこそ出た発言と思われる。また、19巻P154で示された遊真VS村上の遊真の勝率は38.8%。小数第2位を四捨五入して勝率38.8%となる試合数の組み合わせは、試合数が少ない順に、49戦19勝、67戦26勝、80戦31勝となる。11巻P106、13巻P38の個人ランク戦結果を見るに、遊真と村上は5本セット単位で勝負を行っているため、キリの良い80戦を累計で行っていたと思われる。つまり村上と遊真は一度ランク戦ブースで遊ぶ毎に大体20戦以上は戦っている見込みになる。村上と影浦も同じ程度ランク戦を行っていたとすると、大規模侵攻の論功行賞が付与された1月21日~2月10に至るまでの約3週間の間に、村上と影浦は40~50戦行っていてもおかしくないことになる。緑川と遊真が30戦行った結果264ポイント移動したため、村上と影浦が40~50戦程度も戦っていれば、350ポイントくらいは既に移動していてもおかしくない計算だ。

*17:巴と帯島は共に14歳。そして2年前当時唯一の小学生正隊員が巴なので、帯島のキャリアは長く見積もって1年ちょっとだろう。樫尾は木虎被害者の会の一員であり、同様に木虎被害者の会員である草壁は木虎と同期入隊である事から、樫尾の入隊時期も2人と似たような時期だと思われる。(19巻、24巻カバー裏)

*18:太刀川に7:3くらいで勝ち越す忍田さん(BBF-Q126)、その忍田さんと同じくらいの強さと評される有吾さん(10巻P168)、天羽のSEで忍田さんに色分けが似ていると判断されたガトリン(15巻P19)の三人は、ボーダー隊員の最高レベルを超える9Pt相当なのかもしれない。

*19:合同訓練は週2回行われるが、5巻P70の会話から訓練で満点or1位を取り続けても1週間で200ポイント程度の増となる様だ。一方部隊ランク戦でのポイント増減は修の戦績からある程度予想できる。修の個人ポイントはROUND3時点で4309(11巻94話)、ROUND3終了後に4282(13巻112話)だったため、このマイナス27ポイントは那須に落とされて増減したポイントになるだろう。那須と修の個人ポイントには倍ほどの差があって30点程度なら、マスタークラス犇めく環境で2Pt相当の隊員が落とされても大した痛手にならず、訓練で満点を取り続けて得られるポイントの方がやや高くなると思われるので、鳩原のポイントは微増を続けていたと思われる。

*20:生駒のみ特別扱いされる事も十分考えられるが、今回の考察では『近』にのみPtが付与されると結論付けた。

*21:『A級エースレベル』ではなく、『A級レベルのエース』である事について注意が必要。『A級エースレベル』だった場合、A級部隊のエースクラス、つまり最低でも雪丸の5Pt相当の強さが要求されるが、『A級レベルのエース』の場合『A級隊員の平均(4Pt相当)と同等レベルの隊員がB級部隊のエースの位置に収まっている』と解釈が出来るようになる。

*22:加古のみ改造トリガー装備による個人ポイントリセットで里見を下回る可能性あり

*23:弧月でマスタークラスになった直後に狙撃手に転向した荒船のポイント配分を見る限り、メインで取ったポイントがメイン側に武器に振り分けられる事は無い様だ。

*24:ガイストは多分汎用オプションのため同時使用するためには武器をメイン側に固める必要があるのだろう。旋空を抜いてシールドを入れているのも『甲』シフトのため?(9巻P71)

*25:ほとんどの隊員が同じ武器を同じ段にそろえているのも、使い易いからという理由以外に、ある武器で稼いだポイントが別の武器に分散する事を防ぐ目的があるのかもしれない。

*26:香取がアタッカー引退宣言後、銃手ランクにしばらく居たことがこの会話から確定しているので、スコーピオンでマスタークラスに到達していてもガンナーランクに入ることが出来る理由を探さなくてはならない。 香取がアタッカー引退宣言後にトリガーセットからスコーピオンを外していたと仮定すれば、『香取がガンナーにポジション変更できたのは剣トリガーを装備していなかったから』と解釈できる余地がある。 スコーピオンを用いてアタッカーランクを上げていたが、上級者の壁を感じてガンナーに転向。 ガンナーランクでも伸び悩んだ末、スコーピオンを再度装備して万能手になるという順序だったと思われる。

*27:おそらく松代隊が羽鳥隊になったタイミングはROUND5開始前では無いだろうか? 『松代隊』という表示が作中で描かれたのはROUND4終了時点が最後であり、それ以降一切描写されていない。(16巻P53) それまで松代隊はROUND1・ROUND2・ROUND4終了時点で15位であり、16位の海老名隊より上位にずっと居たがROUND5を境にランク戦で表記されていない。 ROUND5昼の部で16位の海老名隊が勝利しB級中位に上がれたのは、ROUND5以降松代隊に松代が居なかった事が要因の一つだったのでは無いだろうか。

大規模侵攻考察 『なぜ二宮隊は大規模侵攻に参戦しなかったのか?』


はじめに

※考察を円滑に行うため、一部単行本のコマを引用しています。


B級ランク戦を通じて主人公の前に立ちはだかった、二宮隊を始めとしたB級上位の強敵たち。

そんな強くて魅力的な強キャラが、ボーダーの総力戦とも言える大規模侵攻編で何故登場しなかったのか?
ワートリ読者であれば誰もが思う疑問だろう。

そんな疑問に葦原先生はBBFで1つの答えを示してくれた。

【BBF-Q252】

Q:B級上位の二宮隊や影浦隊が大規模侵攻に参加できなかったのは何故ですか?
A:『忍田本部長が、B級以下の隊員はチーム全員が揃うまで戦闘に参加しちゃだめと命令を下したから』です。単独行動した隊員がラービットに捕まるのを危惧してだと思われます。もちろん、隊長がオフにドライブに行ってて参戦が遅れた加古隊みたいなチームもいます。


自分は忍田さんのこの判断が間違っていたとは思わない。

そこそこの戦闘力を持つ隊員が、2、3人集まったところで対ラービットへの決定力が足りず、とどめを刺すことはできないだろう。
そして厄介なことに一般トリオン兵を倒すと、新たなラービットを召喚される恐れがあるため、一般トリオン兵の相手をさせることもできない。

では次に、忍田さんの命令が合理的だとして、

『何故B級の増援が1部隊も無かったのか?』

『1部隊くらいは部隊全員が合流出来て、増援に駆け付ける事が出来たのでは?』

誰しも疑問に思う事だろう。




今回の考察では

『何故B級部隊の増援が無かったのか』

『どのような状況ならそんな事が起こりうるのか?』

この命題について色んな角度から考察したので、よろしければお付き合いください。



1. 警戒区域周辺の地理と形状についての考察


大規模侵攻が行われた舞台、『警戒区域周辺の地理』をまず整理していこうと思う。

警戒区域の中心にボーダーの本部基地が存在し、それぞれ北方面には山が、南方面には川が流れる地形になっている。

警戒区域は別名『旧東三門』と呼ばれる様に、本来三門市は東西に広い市であり、ワールドトリガーの舞台となる本部基地周辺は市の東に位置している事が分かる。
三門市は人口28万人の都市であるが、現実世界の日本だと大阪府茨木市や、福島県福島市が規模が近い。
それらの市の長手方向の長さは20㎞~30㎞程度であるため、三門市も同程度の大きさを持つのだろう。


また、警戒区域は南東部のみ川を跨ぐほど広範囲に指定されているのが特徴的である。

戦いの舞台となる警戒区域周辺のおおよその地理が分かった所で、大規模侵攻時の描写について考察を進めようと思う。

1-1.なぜトリオン兵は『北西・西・南西・南・東』の5方向に侵攻したのか?

先ほど整理した警戒区域周辺の地理を見ると、トリオン兵が侵攻した方向が『5』方向だった理由が分かる。

北部~北東部は山々が広がっており襲うべき住人はおそらくいない。

また、南東部は警戒区域が広い分、広範囲にわたって住民は移住済みであると考えられるため、手っ取り早く住民を脅かしたいアフトクラトルにとって侵攻の効率が悪いだろう。

そのためトリオン兵は人口が多い『北西・西・南西・南・東』の5方向を探知して侵攻を開始したのだろう。




そしてこの『5』という数字、BBFや単行本のQ&Aと照らし合わせると別の事実が浮かんでくる。

【質問コーナー⑪】ボーダーの支部は、玉狛支部、鈴鳴支部、綿鮎支部弓手支部、早沼支部、久摩支部の6つです。基本的には仕事や学業など優先で、A級を目指さない(週2回のランク戦に出られない)隊員たちが所属しています。支部警戒区域の外縁上に置かれ、玉狛以外の支部は地域住民への窓口にもなっています。

【BBF-Q217】通常の防衛任務では五つの支部に1部隊ずつ、5部隊が配備されます。

玉狛以外の『5』つの支部は、それぞれ地域の窓口であると同時に防衛任務の拠点となっている。
そして支部を配置するならば、当然人口が集中している方面に向けて整備するはずだ。

つまり人口密集地を狙ってトリオン兵が向かった『北西・西・南西・南・東』の5方向には、五つの支部が存在する可能性が極めて高いのである。

*1

なお、弓手支部と鈴鳴支部の位置は本編の描写を元にある程度絞ることができる。

弓手支部:南の支部
鈴鳴支部:南西の支部 or 西の支部




1-2.『荒船隊は北西部を防衛していた?』~支部の位置と防衛任務の関係性~

大規模侵攻が開始した時、警戒区域にはB級部隊が6部隊、A級が2部隊の計8部隊が配備されていた。

【BBF-Q216】門の開閉が活発な時は、増援として本部基地で待機する部隊が配備されます。

大規模侵攻間近という事もあり、普段よりも人員を厚くしていたのだろう。


次に『大規模侵攻開始時に各部隊は何処にいたのか』について考える。

A級2部隊は本部基地から出発してB級を援護していたため、本部基地の待機要員だったと見ていいだろう。


B級6部隊は各支部を拠点に防衛任務についていたと考えられるため、ラービット出現後の各部隊のレーダー座標を参考にすると、

各部隊が大規模侵攻開始時に拠点にしていた支部は以下の様になる。

西の支部:鈴鳴第1(他の部隊と合流するため南下、後に南西へ)
南西の支部:茶野隊
南の支部:東隊、柿崎隊
東の支部:諏訪隊

鈴鳴第1はラービットに対峙した時『南西部』に居たことになっているが、本部長の『現場のB級を東・南・南西の三手に分けるように』という指示に従い、南下している途中だったと考えれば辻褄が合う。

よって、余っている北西の支部には荒船隊が防衛任務に就いていたと考えられる。

この図をまとめたことで興味深い推測が2つ浮かび上がってくる。

1つ目は荒船隊の存在感が絶妙だったという事だ。

現場に居たB級部隊は荒船隊以外、最低でもレーダーに『△』印が表示されたことがあり読者に対して存在感を示している。

一方、北西方面は主戦場で無かったため、本部のレーダー表示からは悉く見切れており、

またあるコマではレーダー表示の北西部分が吹き出しに隠れていたりと、徹底して北西方面の戦況が隠されていた様に見える。

つまり大規模侵攻序盤における荒船隊の存在感はゼロである。

しかしそれが面白い演出効果を生んでいる。

荒船隊が初登場したのは、人型ネイバーが襲来し絶体絶命の東さんを颯爽と救うシーンである。

荒船隊の存在が直前まで伏せられていた事で、ランバネインに追い詰められて絶体絶命のハラハラ感と仲間のピンチを救うサプライズ演出が実現している。

だがそのサプライズも決して唐突な出来事ではなく、ちゃんと読み返してみれば6巻P22時点で現場に荒船隊が居ることが明かされている。

葦原先生の丁寧な伏線張りと読者の意識のコントロールの細やかさが見て取れる。


2つ目にA級戦力は温存されていたという事だ

本部に待機していた嵐山隊や風間隊は、大規模侵攻が始まった『後』に戦場に向かっている。
つまりトリオンを温存した状態で戦闘を開始することが出来ている。

【BBF-Q175】Q:トリオン体でいられる時間はどのくらいですか?
A:トリオンを使わずなるべくじっとしていれば、基本的にはずっとトリオン体でいることが可能です。

トリオン体で活動するだけでトリオンを消費するのであれば、直前まで防衛任務を行っていたB級6部隊はある程度トリオンを消費した状態から戦闘に入っている事になるが、本部に待機していた風間隊・嵐山隊はトリオン満タンの状態から戦闘を開始することが出来ている。

大規模侵攻を振り返ってみれば、終盤に間に合った加古隊を含めると、戦闘参加可能なA級戦闘員は全員大規模侵攻に参加することが出来ており、しかも直前に防衛任務のシフトに入っていなかったため、トリオンを消耗していない。
*2

つまり防衛任務のシフトがB級6部隊で構成されていた理由は、A級の戦力を全力でアフトクラトルにぶつけるためのボーダーの戦略だったのではないだろうか?



1章の結論:B級だけで防衛任務のシフトを組むことで、A級の戦力は温存されていた

2. 大規模侵攻があった日の防衛任務シフトについての考察

次に大規模侵攻があった日の防衛任務のシフトについて整理したい。

【BBF-Q218】Q:防衛任務はシフト制ですか?
A:基本5部隊3交代制です。

防衛任務は3交代制で行われているため、1シフト8時間で交代というスケジュールだろう。

本編ではその具体的なスケジュールが明かされたことは無いが、ヒントとなる描写がいくつかあるので、それを元にシフトの区切りを推測したい。

・大規模侵攻があった日の修の発言『ぼく2時から防衛任務があって…』
・閉鎖環境試験のA級評価が行われた時間から推測



(11時過ぎから遊真とレイジが防衛任務に行く描写もあるため、上記の表はあくまで参考に留める。11巻P9)

【BBF-Q261】Q大規模侵攻の戦いが始まってから終わるまで、時間にするとどのくらいなのですか?
A:昼ごはん時に始まって、終わった時はまだ日が高かったので、2時間くらいではと思われます。

よって大規模侵攻があった時間は12:00~14:00の間であり、その時間帯は早番シフトだったことになる。


そしてシフト表で最も気になることが、
何故B級中位ばかりで早番シフトが固められているのか?
何故B級上位の主力が現場に東隊だけしか居なかったのか?

この疑問を解決する手がかりが一つある。
大規模侵攻開始直前の迅の発言だ。

5巻P182でアフトクラトルのゲートが開く直前に、迅は『うお 早いな』と呟いている。

これはつまり、迅の予知では、大規模侵攻はもう少し遅い時間帯に始まる可能性が高かったという事である。

あと数時間でも大規模侵攻の開始が遅ければ、『遅番シフト』に防衛任務に就いていた部隊が初動対応に当たっていただろう。

そして遅番シフト時に大規模侵攻が起こる可能性が高いなら、そのタイミングに最大戦力をぶつける様に、迅なら仕向けるのでは無いか?

つまり遅番シフトはB級上位中心に組まれていた可能性がある

早番にB級中位中心で組まれたシフト、遅番にB級上位中心で組まれたシフトがあるならば、夜勤のシフトは必然的にB級下位中心で組まれることになる。
その場合、各シフト間の戦力の『ムラ』が大きかった事になるが、もしB級下位で組まれた『ハズレのシフト』時にアフトクラトルが攻めてきていたら、被害はどうなっていただろうか?
きっと正隊員が攫われたり、民間人に多大な被害が出るような悲惨な結果に終わっていただろう。

大規模侵攻収束時に迅と城戸さんが話していた『A級B級が捕まる様な悪いパターン』はハズレのシフト時にアフトクラトルが攻めてきた場合の未来の事を言っていたのかもしれない。



2章の結論:大規模侵攻開始時にB級上位がほとんどいなかった理由は、遅番シフトに組み込まれていたから

3. 警戒区域と学校の距離についての考察

大規模侵攻開始直後、忍田本部長が非番の隊員に召集をかけた事で、学校に居たA級隊員が続々と警戒区域に向けて出発し、人型ネイバーとの闘いに大きく貢献した。

そんな中、何故か平日にも関わらず本部で昼食を摂っていた太刀川慶の存在は明らかに浮いている。
もしかすると太刀川も当真と同じく、迅に頼まれて本部で待機していたのかもしれない。


だが実際には、太刀川が本部で待機していた理由に迅の思惑が介入していたかどうかは分からない。だが物語の都合上、太刀川を大規模侵攻に参加させるためには、本部に待機させる必要があったのだ

そう考える理由について、3章の結論を先に言ってしまうが、もし大規模侵攻開始時に太刀川が三門市立大学に居た場合、絶対に戦闘に参加することはできないからだ。


何故そのような結論になるのかを解説するため、この章では警戒区域と各学校の距離について考察を進める。

3-1.警戒区域から最も遠いのは『現・三門市立大学』

20巻から22巻のおまけページで紹介されていた学校の説明の内、警戒区域からの距離と方角についてヒントとなる記載内容を抽出したのが上図である。
距離について具体的に記述されているわけでは無いが、『どの学校が警戒区域に近いか』『どの学校が警戒区域から遠いか』という事はある程度推測することが出来る。

学校の紹介文の中には、警戒区域からの距離や方角を示す内容が記載されているが、唯一三門市立大学には『距離』も『方角』も記載が無い。
これはおそらく三門市立大学が『警戒区域との位置関係を語る必要が無いほど、遠くに立地しているから』ではないだろうか?

また、三門市立大学には他の学校と決定的に違う点がもう一つある。それは第一次大規模侵攻で唯一校舎が移転した学校である事だ。
第一次侵攻で三門市立大学の校舎は無事だったものの、警戒区域内の範囲だったため校舎を放棄させられている。
もし他の場所に移転するとなった時、近界民被害からは無縁の土地を選ぶのは自然な事だろう。

以上の推測を元に学校の位置関係を推測・整理した図を以下に示す。

参考として、三門市立大学がどれだけ警戒区域(東三門)から離れているか検討してみる。
加賀美が通う予定の美大は『電車で1時間』と言われており、その表現には『遠い大学』というニュアンスが込められている。よって、三門市立大学は東三門からせいぜい電車で20~30分程度の距離ではないか?
電車で20~30分の距離と言えば、大体20㎞前後だろう。
一章で触れた三門市の大きさについておさらいすると、三門市は東西におおよそ20~30㎞程度の大きさと思われるため、東三門から20㎞西に行った土地は、まだ三門市の範囲内だ。
よって、現・三門市立大学は三門市の西端に位置するという推測が成り立つ

3-2.何故三門市立第二中学校の生徒が最も攫われたのか?

先ほど整理した学校の相対的な位置関係を、警戒区域内のマップに当てはめてみる。

そしてこの図にトリオン兵の侵攻範囲を追記すると、何故三門市立第二中学校のC級が最も攫われたのかが分かりやすい。

10巻P75~の論功行賞の記載内容と太刀川・東の発言を読み解くと、

北西・西・南西は人的被害がゼロ
南部の被害がC級15人
東部の被害がC級17人

東部エリアと言えば、諏訪がキューブにされ風間隊が撤退した挙句、最後は太刀川がワンオペで回していた最も過酷な戦場である。
それにも関わらず民間人に被害が出なかったのは、記者会見で根付さんが言っていた通り、危険を顧みず最後まで避難誘導に当たっていたC級のおかげに他ならないだろう。

三門市学校紹介(20巻P168)
『三門市立第二中学校』ほどよくのんびりした校風で、多くの生徒たちは素直と天然の境界を行ったり来たりしている。

三門市立第二中学校の生徒はきっとみんな素直でいい子達だったからこそ、市民の盾となり危険を顧みず最後まで前線で働いたのだろう。

3-3.アフトクラトルのMVPはエネドラ

ここまでの考察で、学校の位置と本編の描写(C級の被害状況)が一致している事を確認できた。

ここからは今回の考察の本題『何故非番のB級隊員はチームメイトと合流できなかったのか?』について話を進めていく。

非番のB級部隊は、忍田本部長の命令により『チーム全員が揃わないと戦闘行為が許可されていない。』
(オペレーターを含む隊員全員が揃わないと、戦闘に参加できないものとして議論を進める。*3

この条件を絶対としたとき、チームメイト全員が合流するためには、以下の2つの条件の内、どちらかを満たす必要がある。
①全チームメイトの出身校が同じ
②連絡通路を通じて本部で合流

なお、①の条件に当てはまる部隊はA級B級問わず1部隊たりとも存在しない。
それどころか出身校の方角が一致している組み合わせすらないため、
チームメイト全員が合流するためには必ず警戒区域を横切らなければならない。
よって条件①を満たすことは不可能。


では次に、②の条件を満たすことが出来る部隊が存在するのかについて議論を進めていく。

まずは以下の図を見てもらいたい。

7巻P16時点で小南たち玉狛第1が南西部の増援に駆け付けた頃には、トリオン兵は既に警戒区域を突破し、川を挟んで南側のエリアにまで戦線が広がっていた。

その後烏丸がC級を引き連れて向かったのは、その戦線の内側にある連絡通路。

つまり小南が到着した時点で既に、連絡通路より外側に戦線が広がっており、戦闘無しで連絡通路に到達することは不可能になっている。

この状況を図で表すと下図の様になる。

星輪女学院からジープで駆け付けた小南と、同じく星輪女学院出身の那須で比較してみると分かりやすい。
ジープで戦場に駆け付けた小南ですら、戦闘を開始した場所は連絡通路より外側のエリアなのである。

よって、星輪女学院に通っている那須や、星女よりも遠い三門市立大学に通っている生徒は、戦闘無しで連絡通路に到達することが出来ず、条件②を満たすことが出来ない。


同じ理屈で、三門第四中学校と六頴館高校に通う生徒も連絡通路に到着することが困難だったと思われる。

何故なら三門第四(中)出身の緑川や、六頴館(高)出身の古寺、奈良坂が参戦したのは、小南よりもずっと後だからである。

もちろん緑川や奈良坂が警戒区域に到着したタイミングがはっきりと描写されているわけではないため、那須と小南の様に単純に比較することは出来ないが、
緑川や奈良坂が戦場に駆け付けた時点で、戦線が既に連絡通路より外側になっていた可能性は高い。

唯一連絡通路を使用できる可能性が残されているのは、天羽が防衛していた『北西・西』方面である。
北西・西方面は天羽の防衛により、トリオン兵が警戒区域を突破していないため、戦闘無しで連絡通路に到着する事ができる。

だがしかし、エネドラの独断先行により本部基地のオペレーターが殺害された事をキッカケに、以降連絡通路を使うことが出来なくなっている。
つまりエネドラが本部に侵入した時点で条件②を満たすことが不可能になり、非番のB級が戦闘に参加する望みは完全に絶たれたのである。

アフトクラトルがC級を32人捕獲できた事も、金の雛鳥確保まであと一歩の所までこじつける事が出来たのも、全てはB級の増援が無かったからである。

あと2、3部隊でも追加のB級部隊の増援があった場合、ラービットが十分に仕事が出来ていたとは思えない。

あの時エネドラが本部基地に独断専行で侵入していなければ、ハイレインは大した戦果も無くアフトクラトルに帰還しなくてはならなかっただろう。


3章の結論:非番のB級が戦闘に参加できなかった理由は、エネドラの破壊工作により連絡通路が遮断され、チームメイトと合流できなくなったため。

4. 『なぜ二宮隊は大規模侵攻に参戦しなかったのか?』

1章から3章までの結論を改めて整理すると以下の様になる。

●A級戦力の温存のため、大規模侵攻時のシフトはB級だけで組まれていた。
●B級上位は遅番シフトに組み込まれていた可能性が高い。
●出身校が遠い非番のB級隊員は、チームメイトと合流できないため戦闘に参加できない。

これらの条件を元に、具体的にどの部隊が戦闘に参加できなかったのか結論を出してみると、以下の図の様になる。



※20220705公式TwitterのQ&Aの情報を反映

学校と警戒区域の推定距離を元に、『参戦できる』『参戦出来ない』の境界を設けてみた。
その結果、大規模侵攻に参戦していないB級14部隊の内、8部隊は参戦不可能だという結論になった。


特に三門市立大学は、電車で通わなければならない距離だと思われるが、大規模侵攻時には警戒区域を越えてトリオン兵が侵攻しており、電車は機能していなかったと思われる。
その場合、三門市立大学から現地に駆け付けるためにはトリオン体に換装して全力で走るしかないが、大規模侵攻中に間に合う保証はない。

そう考えると、大規模侵攻終盤に参戦した加古隊の見方も変わってくるのではないか?

加古さんは大規模侵攻という大事な日にドライブしていたが、逆に言えばドライブしていたからこそ電車の状況や学校の遠さに左右されず、大規模侵攻終盤に間に合ったと言えるのではないか?


次に影浦隊について考える。
出身校の情報を元に、参戦出来るかどうかを考えた場合、唯一影浦隊は無理なく参戦出来る様に見える。

その他出身校が不明なB級の面々も普通校組が多いと思われるため、同様に無理なく参戦出来たのではないだろうか?
(荒船が『B級には珍しい進学校組(8巻カバー裏)』と言われているため、B級の出身校不明の隊員には普通校組が多い。)

最後に、大規模侵攻に影浦隊が参戦できなかった理由について考えていく。


4章の結論:二宮隊が参戦出来なかった理由は、三門市立大学が警戒区域から遠すぎたため。

5. 『なぜ影浦隊は大規模侵攻に参戦しなかったのか?』

非番のB級隊員が招集を受けて戦場に駆け付けようと思っても、戦闘に参加できない可能性がもう一つある。
それは夜勤シフトで防衛任務に就いていた場合だ。

【質問コーナー⑩】トリオン量が多い(=戦闘で使うトリオンが大きい)人間ほど、戦闘体構築のコストも大きくなるので、作り直すのに時間が多くかかります。千佳は時間がかかり、修は割とすぐに(1~2時間くらいで)戦闘に復帰できます。

つまり夜勤の防衛任務でトリオンを使い切った場合や、ベイルアウトしてしまった場合は、トリオン回復のためにある程度時間が必要であり、『戦闘復帰のインターバル』が存在する。

修の戦闘復帰のインターバルは1~2時間程度と短いが、トリオンが多い隊員のインターバルはどの程度なのか?
その条件を考えるにあたり、遠征選抜試験時の防衛任務シフトがヒントになるのではないだろうか?

この図は先日Twitterにアップした遠征選抜試験の一日目、二日目の防衛任務とA級審査のシフト表である。
ここで注目したいのが『冬島隊』と『玉狛第一』のシフト表だ。

この2部隊は、1日目に遅番防衛 ➡ 2日目に早番防衛となっており、トリオン回復のためのインターバルが8時間しかない事が分かる。

この2部隊にはそれぞれ『トリオン8の冬島』と『トリオン11の木崎』が居る。
二人ともボーダートップクラスのトリオン強者であり、もし戦闘でトリオンを使い切った場合、戦闘復帰にはそれなりに時間がかかると思われる。

そしてこのシフト表を見る限り、『トリオン10前後の隊員』は8時間のインターバルがあれば十分戦線に復帰できると上層部は判断しているのである。

トリオン2の修が戦闘復帰にかかるインターバルが1時間30分とする。
単純計算を行うと、冬島のインターバルは6時間、木崎のインターバルは8時間15分となる。
つまり上層部の防衛任務のシフト構成は理論上ギリギリ問題ないと言えるだろう。
(ブラックな労働環境という倫理上の問題はある)

よってトリオン強者が戦闘復帰するためには、最低でも8時間のインターバルを開けた方が良いと言えるだろう。

この理屈を影浦隊に当てはめるとどうなるだろうか?
影浦(トリオン7)➡ 5時間15分
北添(トリオン9)➡ 6時間45分
絵馬(トリオン6)➡ 4時間30分

そして夜勤シフトの終了時刻はAM6:00、大規模侵攻開始が12:00過ぎ。

もし北添が夜勤シフトでトリオンを使い切っていた場合、単純計算すると万全の状態で戦闘復帰できるのは12:45以降。
その頃には既に連絡通路は遮断され部隊の合流が出来なくなっていただろう。


そしてもう一つ戦闘復帰のインターバルについて確認しておきたいことがある。
本当に修は2時間で戦闘復帰できるのか?という事だ。

それを確認するため、1巻で三門市立第三中学校にモールモッドが襲撃した事件の日に描写された時計に注目して行こうと思う。

モールモッド襲撃日に時計が描写されたコマは三つある。

ワールドトリガー1巻(集英社葦原大介)】(左上:P95、左下:P98、右:P167)

それぞれ時計が指す時刻は、


①12:58(三好達と談笑開始)
②13:06(ボーダーの話題になり修が話を切り上げる)
③16:00頃?(放課後になりぐったりした様子の修)


時系列で言うと②のすぐ後にゲートが開きモールモッドが生徒を襲い始めている。
修が致命傷を負い換装が解けた後、遊真が訓練用トリガーを使い事態が収束したのは恐らく13:30位ではないだろうか?

そして時系列③以降の夕方、放課後に木虎と一緒にボーダー本部に出頭する途中に再びゲートが開き今度はイルガーが町を襲う事態になる。
その時修はトリガーを起動するが、トリオンが回復しきっておらずレイガストを出力することが出来なかった。


つまり修のトリオン体が破損してから確実に2時間以上経過しているのに、修のトリオンは十分に回復していないのである。

ここから予想できる『戦闘復帰のインターバル』のルールは以下のいずれかになるだろう。


①:質問コーナー⑩における『戦闘に復帰』とは、最低限トリオン体に換装できる程度に回復している状態を指している。

②:質問コーナー⑩で示された修の戦闘復帰までの時間は、十分な栄養と休息を取った場合の事を言っている。

諏訪『栄養 摂って しっかり寝りゃ 朝にはトリオンも 回復してる』(24巻P127)

諏訪さんの発言からは「睡眠による休息」がトリオン回復に大きなウエイトを占めている様に読み取れる。

よって戦闘復帰のインターバルの2時間を過ぎても修が武器を出せなかった理由は②が有力だろう。

イルガーの襲撃時点で、修のトリオン体が破壊されてから3時間ほど経っていると思われるが、再び換装した時はトリオン体を生成するのがやっとだった。
本来のインターバル(1.5h)の倍ほど時間経過している事を踏まえると、睡眠を伴わない場合のトリオンの回復効率は4分の1以下と見積もって良いだろう。
*4


このルールを改めて影浦隊の3人に当てはめるとどうなるだろうか?

影浦隊が夜勤明けすぐに就寝した場合、トリオン回復には6時間の猶予がある。


大規模侵攻が始まった12時ごろに緊急招集により起床して戦闘を開始しようとしたが、北添のトリオンが万全に回復していないことを鑑みて出動しなかったとも考えられるだろう。


だが彼らが学生である事を踏まえると考慮しなければならない可能性がもう一つある。

夜勤明けすぐには睡眠を取らず、そのまま授業を受けてから遅番の時間帯に就寝するつもりだった、という場合はどうだろうか。

夜勤が明けてから起きっぱなしだった場合、トリオンの回復効率は4分の1以下になる可能性を先ほど示した。

夜勤終了後から大規模侵攻開始までにおよそ6時間あったが、起きっぱなしの場合は実質1.5h分以下しかトリオンは回復していない。
1.5h分の回復、つまり修の戦闘復帰のインターバルと同程度のため、トリオン2位しか回復してない可能性もあるのだ。

そう考えると、もし夜勤でトリオンを使い切ったり戦闘体を破棄していた場合、トリオン能力の大小に関係なく普通に回復が間に合ってない。


よって大規模侵攻前に夜勤シフトに入っていた部隊は、大規模侵攻に参加できなくても仕方がない可能性があるのだ。



5章の結論:影浦隊が夜勤の防衛任務シフトについていた場合、大規模侵攻開始時刻に戦闘復帰できない可能性がある。

6.まとめ

●A級戦力の温存のため、大規模侵攻時のシフトはB級だけで組まれていた。
●B級上位は遅番シフトに組み込まれていた可能性が高い。
●学校の距離的に問題なく参戦出来そうな部隊も、夜勤シフトだった場合は参戦出来ない。

これらの条件を元に『大規模侵攻時にB級部隊が増援に向かうことが出来ないシフト』を考えると以下の図の様になる。


※20220705公式TwitterのQ&Aの情報を反映

大規模侵攻が行われた早番シフトでは、B級6部隊が警戒区域内を防衛していたため、同じく大規模侵攻に備えるのであれば、同様に6部隊ずつの防衛任務のシフトが組まれていたと考えられる。

つまり、『参戦出来なかった理由』が不明確な部隊でも、6部隊程度までなら『夜勤シフトだった』という理由付けをすることが出来るのである。

もちろんドライブをしていた加古隊の様に、個別の理由はいくらでも考えられるが、本編の描写から推察できる理由だけでも『B級部隊が大規模侵攻にこれなかった理由』をある程度示すことができたと思う。

【BBF-Q252】
Q:B級上位の二宮隊や影浦隊が大規模侵攻に参加できなかったのは何故ですか?
A:『忍田本部長が、B級以下の隊員はチーム全員が揃うまで戦闘に参加しちゃだめと命令を下したから』です。単独行動した隊員がラービットに捕まるのを危惧してだと思われます。もちろん、隊長がオフにドライブに行ってて参戦が遅れた加古隊みたいなチームもいます。

このQ&A一つでここまで話を膨らませる事が出来たのは、葦原先生が緻密な構成で物語を紡いでいるからに他ならないだろう。



あとがき

この考察記事を投稿してから多くの人に読んでいただき、中にはTwitter上で感想を呟いてくださっている方もいるみたいで、大変ありがたく思っています。

その中にすごく気になる感想を呟いていた方がいらっしゃったので、その事について少し書いていきます。

(大意)チームの合流が出来ず戦闘に参加できなかった隊員が多くいたが、その反省と対策のために行われているのが、遠征選抜のシャッフルチームではないか


確かに自分がこれまでに整理した考察でも、『同じ学校に正隊員が多くいるなら、混成部隊として出動できたのではないか?』と言う疑問がまだ残ってしまっている。
例えば三門市立第一高校に通う正隊員は40人近くいる上、駆け付けることが出来そうなB級は、影浦や香取をはじめ10人以上は居る。

それでもなお忍田本部長は、正規の部隊が合流できなかった場合は例外なく戦闘を認めておらず、本編では増援のB級が来れない事態となってしまった。

もし混成部隊でもいつも通りの戦力を発揮できたなら?
隊長としての経験を積んだ駒が複数いたのなら?

きっと問題なく即席の混成部隊を出動させることが出来ただろう。


大規模侵攻での苦い経験を糧にして、それらの課題に正面から取り組んだ結果が、今の本誌で連載中の遠征選抜試験なのではないだろうか?



起こってしまった結果に対して
『ああすれば最善だったんじゃないか?』『今にして思えば別の手があったんじゃないか?』
そう思いを巡らせることは誰にでもあるだろう。

だけど一番大切なのは、そこから課題を見つけて訓練を積み次に備える事だ、
という事を葦原先生は漫画を通じて読者に伝えたかったのかもしれない。

*1:ワールドトリガー HIDDEN WORLD-隠された世界-とは、JUMPBOOKS電子書籍の単行本第三巻の購入特典である。

*2:喜多川はトラッパーだから隠密していたのか…それとも実は大規模侵攻に登場していたりして??🐈

*3:葦原先生が『チーム』と表現するとき、オペレーターと戦闘員はセットで扱われている。例:BBF-Q231等多数

*4:トリオン能力が低い非戦闘員用のトリオン体には特殊な機能が付いていない。よってトリオン体の生成のみに使用するトリオンは1程度だと見積もった。(倍の時間が経過しているのに回復しているトリオンは半分以下、よって4分の1)

【なぜ鉛弾(レッドバレット)はシールドを貫通するのか?】

はじめに。この考察記事は多くの人のアドバイスやヒントによって完成しました。

協力してくださった考察民に感謝いたします。f:id:lshirasu:20220211194446j:plain

【この考察を始めたきっかけ】

とあるフォロワーさんが射程カバーに関する気になるツイートを呟いていた。

 

『射程カバーは弾体を大気から守るためだけの物(だからシールドと干渉しない)』

 

この呟きにより『鉛弾がシールドを貫通する理由を考察するためには、射程カバーに注目すればいいんじゃないか?』と思い付いた。

そして射程カバーの考察を進める内に作中のあらゆる描写が気になってしまい、全五章に及ぶ考察記事になってしまった。

(もし今後の説明で疑問や作中の描写との矛盾がありましたらコメント欄で教えてください。)

 

【①ワールドトリガー世界に存在する『次元の異なる5種類の物質』】

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2.今回の考察の結論をまず初めに以下に述べる。

ワールドトリガーの世界に存在する物質は5種類に分別される』

(この理屈は後ほどの論理展開に重要になるため覚えていて欲しい)

 

詳しく説明すると、ワールドトリガーの世界には

①トリオンの壁(トリオン製のものか)

②実体化(質量)の壁(実体(質量)があるか)

③物理的相互作用の壁(物理的に相互作用を及ぼすことができるか)

④可観測の壁(観測できるか)

という4つの壁に仕切られた次元の異なる5種類の物質があると思われる。

 

作中に登場するトリガーが、これらの階層のどこに位置しているかを図で表した。

中には実体化したトリオンにエネルギーを流し込むタイプのトリガーも多く存在しており、それらのトリガーは『②実体化の壁を跨いでいるグループ』として、ひとまとめにした。

 

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3.(※【説明欄】には非公式解釈を多く含みます。)

4つの壁に仕切られた次元の異なる5種類の物質について、自分の解釈をスライドに詳しく説明していく。

 

『非トリオン物質』とは玄界に存在する物質と言い換えても良い。

 

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4.この考察における『物質化トリオン』とは作中で『実体を持つ』と言われているトリオンの事である。

今後のスライドにも繰り返し出てくるが、『物質の次元と物質の強度の関係』は、重要な要素であるため頭の片隅においてほしい。

 

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5.『エネルギー体トリオン』とは、作中で『威力』や『攻撃力』と呼ばれているものに置き換えても良いだろう。

そしてこの『エネルギー体トリオン』には『質量と実体が無い』

 

f:id:lshirasu:20220211194520j:plain6.このスライドの『高次元トリオン』という概念は、今回の考察で重要な位置を占めるのでよく覚えていて欲しい。

作中のトリガーの描写を読み解く中で、『風刃のワカメ』や『遊真の印』など、『目に見えるのに触れない・破壊できないトリオンのグループ』が存在することに気が付いた(遊真の印は発動する前ならオルガノンの斬撃でも破壊されない)。

ベイルアウトの軌跡も攻撃を受けないと明言されており今回の考察では、物理的干渉を受けない性質を持つとして、『高次元トリオン』の位置に置いている。

そして『高次元トリオン』のグループに属するトリオンのいくつかは、『別のトリガーに変化する前の状態(≒プログラムを付与されたトリガーの原料)』という性質を持っている。例えば『風刃のワカメ』は斬撃に変化するし、『遊真の印』は様々な効果を発揮できる。

 

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7.そして5つの物質の中でも最高次元に位置するものがトリオン器官をはじめとした『生体トリオン』。

このトリオンはこれまで説明した物質とは一線を画しており、観測することすらできない性質を持つ。

 

余談だが『SE持ちは黒トリガー生成の成功率が高い』というQ&Aは、今回考察している『生体トリオン』で説明出来るのでは?と考えている。

SEを持つ人間は器官を通じて『生体トリオン』を観測・操作しており、その存在を知覚できている。

そして黒トリガーの生成には、トリオン器官という『生体トリオンの塊』のコントロールが重要になると思われるが、SEを持つ人間は普段から『生体トリオン』を知覚しているため、黒トリガー作成の成功率が高い…という理屈なのではないだろうか?

(呪術廻戦の虎杖が普段から魂の形を知覚していたから真人の術式が効かなかった理論と同じイメージ、と言えば伝わるでしょうか…?)

 

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8.風刃と遊真の黒トリガーを例にして『次元の異なる5種類の物質』を図解した。

風刃のワカメや遊真の印はどちらも、何らかの条件を満たした時に別の物質に変化している(発動者の意思や実体に触れる等の条件)。

また作中の描写において、それらの『高次元トリオン』は条件を満たすまでは『別の物質から干渉を受けて邪魔されない性質を持つ』様に見える。

 

 

【②物理法則を無視する『弾トリガー』の特異性】

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9.『高次元トリオン』が別の物質と干渉しない性質を持つと仮定すると、『弾トリガーの特異性』すら説明することができるようになる。

作中において弾トリガーは重力や空気抵抗など、あらゆる物理的干渉を受けずにどこまでも直進している。

そしてその機能を実現しているのは、物理的相互作用をキャンセル出来る高次元トリオンのおかげではないか?

つまり『射程カバー』は『高次元トリオン』なのではないかとの結論に至った。

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10.弾トリガーにおける『射程カバー』の役割とは、大気と反応してその身を犠牲にし、空気抵抗をキャンセルすることである。

例えるなら、常温に放置した鉄板の上に氷を乗せて滑らせるイメージだろうか?氷は自身を溶かしながら鉄板との摩擦抵抗をなくし、氷の上に乗せたものをどこまでも運んでいく。

そして弾トリガーが直進する特異性が、『質量がないから』『空気抵抗という物理的相互作用を無視できるから』に依るものとすれば、北添のメテオラが放物線を描く理由すらも説明できる。

単に弾の一部を実体化させて質量を付与すれば良い。それだけで北添のメテオラは重力の影響を受けるようになる。

 

【③なぜ鉛弾(レッドバレット)はシールドを貫通するのか】

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11.そしてようやくこの議論の本題の『なぜ鉛弾はシールドを貫通するのか』について説明したい。

だが、この理屈を説明するためには『次元の異なる5種類』の物質に存在する共通のルールについて順番に説明していかなければならない。

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12.まず初めにルール①とルール②。

次元が高いトリオンの方が強いという単純なルールである。

生身では決してトリオン体を破壊できないのも、オフにした弧月の切れ味が0になることもこのルールで説明することができる。(アレクトールのキューブについては別の章で解説する。)

 

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13.そして次にルール③。

このルールはトリガーが干渉できる物質の範囲について説明している。

このスライドでは、各トリガーがその効果を発揮できる『干渉範囲』を図に示している。

いずれのトリガーも『自分の次元以下の物質』に対してのみ効果を発揮できることが分かる。

グラスホッパーが物質化した物しか跳ね返さない』

『シールドが威力や攻撃力を防ぐ』

『アレクトールがキューブ化できないトリオンの存在』

『鉛弾がシールドを貫通する』

これらの現象はすべてルール③で説明することができる。

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14.そして作中のトリガーを検証していくうちに見つけたもう一つのルール④。

『実体への干渉を取り除くことが出来るのかどうか』というルールである。

このルール④は今後の考察で使用しないためあくまで参考程度に頭の片隅にとどめてほしい。

『トリオン兵の触手』及び『トリオン兵の触手により変質したトリオン器官』は、このルール④を技術的に突破できないため、トリオン器官を抜き取られた人間は胸に穴が空いて死んでしまうのである。

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15.『生身を傷つけずにトリオン器官を抜き取る黒トリガー(仮)』についてのQ&Aを今回の考察に落とし込むと、

『生体トリオンへの干渉』を行う場合に『実体への干渉』を取り除くことは技術的に難しいと言い換えることができる。

そしてその技術は黒トリガーレベルのチートでないと実現できない、と葦原先生は考えている。

でも似たような発想で、もう少し難易度が低いトリガーなら既に実現している。

例えば『エネルギー体トリオンへの干渉』を行うトリガーから『実体への干渉』を取り除く技術、つまり『シールド』である。

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16.ここで閑話休題『シールドの開発歴史』について考察したい。

シールドは昔と比べて性能が上がったというが、では『昔のシールド』はどのようなトリガーだったか考えたい。

結論を言うと、今のレイガストと似た発想で、物質化した盾にエネルギーを流し込むタイプのトリガーだったのではないか?

(この時期のシールドだったら、レイガストと同じく鉛弾を防ぐことができただろう。)

 

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17.『次元の異なる5種類』の物質に存在する共通のルールについて整理できたところでようやく結論なぜ鉛弾はシールドを貫通するのか』

 

それは鉛弾を構成する『射程カバー』と『鉛弾』が『高次元トリオン』だからである。

何故シールドを貫通して、実体を持つ物体にだけ都合よく干渉できるのかについて、『ルール③』をおさらいする。

例えば、三次元に存在する人間が、“紙の様な平面(二次元)の物質”に触れる事は容易だが、逆に紙に描いた絵が三次元の人間に触ることは絶対にできない。

つまり『干渉できる』『干渉できない』の決定権は常に、より高次元に位置するトリガーが持っているのである。

『エネルギー体トリオン』で構成されたシールドよりも、鉛弾は次元が高い『高次元トリオン』だから、シールドは鉛弾に干渉できないのである。

 

また、アニメの鉛弾の描写を着弾シーンを観察すると、鉛弾は着弾してトリオン体の奥深くに浸透してから実体化している。

つまり途中までは鉛弾は実体とすら干渉しておらず、『実体と重なった事を条件に鉛弾が実体化した』と言い換えることもできるかもしれない。

 

【④”アレクトール”は世界の『理』に干渉するトリガー】

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18.『次元の異なるトリオン』の考察を進めていくうちに、『ではアレクトールとはどの様なトリガーなのか?』という疑問が湧いたため考察を進めていく。

レプリカの言葉を引用すると、『ボーダーが使うトリオンの弾丸やシールドと同じ』であるため、アレクトールの生物弾は『エネルギー体トリオン』に分類される。

そして触れたトリオン製の物質をキューブに変化させるが、

『そのキューブは傷一つ付かない』

『キューブを吸収すると使用者は回復できる』

といった具合に、複数のチート性能を発揮していた。

だがそれらの現象は全て『高次元トリオンが持つ特徴』で説明することが出来るのである。

 

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19.生物弾の作用は『トリオン製の物質の次元を押し上げる』事であり、その作用を持つのは他に人間のトリオン器官のみ。

『物質の次元を押し上げることが出来るのは生命が持つトリオン器官だけ』という世界の理を、アレクトールの生物弾は疑似的に再現することが出来るのである。

 

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20.言いたいことを過不足なく表現しようとしたら、凄く判りづらいスライドになってしまいました。『高次元トリオン』を作るためには大量のエネルギーが必要とだけイメージしてください。

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21.(熱力学第二法則“風”の現象をイメージしながらスライドを作成しましたが、物理学ガチ勢からはたぶん怒られる図になっています)。

ここスライドで言いたいことは、外部の系から大量のエネルギー補給が無ければ、アレクトールの現象は実現できないという事です。

 

 

【⑤『ワールドトリガー世界』の”物質の循環”と、世界の均衡を保つ『何か』の存在について】

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22.『次元の異なる5種類の物質』を、その変換が行われる順番に円形に並べると、ある一つの疑問が湧いた。

それは『物質化トリオン』から『非トリオン物質』への変化を引き起こすものの存在が、作中で語られていないことへの違和感である。

人間が『生体トリオン』を作り出すことが出来るのなら、

その逆も然り、トリオンから生命への循環を構成する要素が生み出されるてもおかしくない。

その違和感を最後に考察していく。

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23.このスライドの結論『トリガーとは精神エネルギーを現実世界に具現化する技術』である。

葦原先生の前作リリエンタールを読んだことがある人なら一度はこの説が頭によぎった事があるのではないだろうか…?

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(『スキャモンの発育曲線』について補足。スキャモンの発育曲線とは、成人時の体組織の成熟度を100とした時の、子供の体の成長度合いを年齢毎に表した曲線である。

『一般型:臓器・身長・体重等』

『リンパ型:免疫力』

『生殖型:生殖器・乳房等』

『神経型:脳や脊髄・神経系・感覚器官等』

 

24.作中の至る所に『トリオンとは精神エネルギーである』事を確信させる描写が多いことに気が付いた。これは偶然なのだろうか…?

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25.最後にワールドトリガーとは何か?という結論を出したが、自分でも突拍子もない事を言っていると思う。

だが『マザートリガーの役割はトリオンから生命を生み出すこと』とするならば、

それよりも上位に存在する『ワールドトリガーの役割』を考えると、

この結論にならざるを得なかった。

トリオンとは感情や意思とともに体外に発信され、SEを持つ人間はそれを読み取ることができる。

もしワールドトリガーの世界に玄界を創造した『全知全能の神』が存在し、その意思から発せられる『トリオン』を受信できるSEを持つ者が居たのなら、『未来すら視る事が出来る』のかもしれない。

 

さいごに。この考察記事に疑問が湧いた方、矛盾点を発見した方はコメント欄でお知らせください。