はじめに
※注意事項●考察を円滑に進めるため、単行本・本誌掲載のページを記事内で引用しています。
●ワールドトリガーの前身となる読み切り作品の詳細なネタバレを含みます。
●今後の展開予想を具体的に行っています。
●この記事の内容は全て一個人の解釈です。
第1章 アフトクラトルの国旗は2つある
ブログを閲覧いただきありがとうございます。突然ですが皆さんは、アフトクラトルの国旗には2種類のデザインがある事をご存知でしょうか?
かく言う自分もその事を最近知り、当該のページを開いてみると確かに国旗のデザインは2種類ありました。
その比較画像が以下になります。
上が本誌、下が単行本から引用したコマですが、この二つの画像を拡大してよーく観察すると、そのデザインの細部が異なっている事が分かると思います。
アフトクラトルの国旗のデザインが単行本収録時に少し変わっていた…というただそれだけの話と思うかもしれませんが、新旧二つのデザインが揃う事で初めて分かる情報もあるのです。
デザインが変わってもなお変わらない要素、見比べることで相互に補完される情報、そしてそれらとの関連性を無視できない本編中の数々の描写、はたまたワールドトリガーという作品の垣根を超えた伏線…等々数えきれないほどの考察の余地がそこにはありました。
今回の記事では、それらの考察から導かれる今後の展開予想や、アフトクラトルのトリガー技術・国土・社会・軍事の情報、そして角・通信・マント・伝承・国宝・四大領主・野球少年・技術顧問・家・文化・政略結婚・序列・歴史・王家・後頭部…etc……について、色々な視点から好き放題に語っていきますので、よろしければお付き合いください。
国旗に描かれた四体の生物
まずは本誌掲載時の国旗と単行本掲載時の国旗にそれぞれ描かれた四体の生物は一体何なのか?について考えて行きたい。
本誌・単行本ともにアフトクラトルの国旗はコマの中にとても小さく描かれており、デザインの細かい部分が印刷でつぶれてしまっているため、そのまま普通に見ても何の生物が描かれているか特定する事ができない。
そこでワールドトリガーが掲載されているいくつかの媒体を見比べ、最も解像度が高く鮮明な画像を抽出する事から始めてみようと思う。
その様に検討した結果、本誌掲載時の国旗は紙版ジャンプSQ掲載時の物が、単行本収録時の国旗は英語版単行本電子書籍の解像度が最も高いという結論になった。
それでもやはり細かい部分は輪郭線がぼやけてしまい、ただの印刷染みなのかデザインの一部なのか判別がつかない有様だったが、自分なりにそれっぽく補完しながら解釈した物が以下の画像だ。
結論を先に見せたが、その検討過程は非常に難航した。 高解像度の画像ですら非常に小さく曖昧で、描かれている生物がギリギリ判別できるか否かのレベルだった。
だが新旧共に『右上』に関しては、比較的はっきりと『鹿』だと認識する事ができた。
次に、『右下』の生物を新旧で見比べると『ヤギ?orヒツジ?』の様に、こちらも比較的はっきりと認識する事ができた。 そしてヤギもヒツジも『ヤギ亜科』に属する近縁種、つまり実質同じような生物が同じ位置の紋章のモチーフになっていると言えるのだ。
『鹿』と『ヤギ』の例を見るに、同じ位置の紋章には新旧デザイン共に同一の生物が用いられていると想像できる。
もしそうならば、生物が判別できなかった他のデザインも予想できるかもしれない。 欠けた情報を補完するためなら先入観は時に役立つこともある。
旧デザイン左上の生物は『蛇』に見えたため、新デザインの左上の生物についても「蛇かもしれない」という先入観をもって見ると、以下の特徴が見えるような気がする。
・鎌首をもたげたコブラのフードと、フード部が内側に丸まった時の凹みの様な影・腹部に並んだ鱗の様な模様
・中央の蛇を取り囲むもう一匹の蛇?に、クサリヘビ科特有の網目っぽい模様
よって左上の紋章に関しても、新旧デザインにおいて同一のモチーフ『蛇』が描かれている事になる。
左下の生物は新デザインでははっきりと『竜』をモチーフにしていることが分かる。そのため旧デザインの左下もきっと『竜』を表しているのだろう。
つまり国旗に描かれた四つの紋章は、単行本収録時にデザインこそ変化したものの、そのモチーフには(ほぼ)変更が無かったと言えるのではないだろうか?
この推測は本誌と単行本でデザインが異なる部分を見比べる事で初めて補完された情報と言えるだろう。
- アフトクラトルの国旗のデザインを為す四体の生物はそれぞれ『鹿』『ヤギ』『蛇』『竜』
アフトクラトルの国旗のモチーフに描かれた四体の生物にあたりを付けることができた。
そしてその中でもとりわけ『鹿』『ヤギ』『竜』は、ワールドトリガーという作品において複数の重要な示唆を与えている可能性がある。
キャラの何気ない発言や、本誌掲載時の扉絵、はたまた作品の垣根を超えた関連性など枚挙にいとまがない。 この章ではそれらの可能性について触れて行こうと思う。
巻頭カラーの『鹿』
まず一つめが、巻頭カラーイラストとアフトクラトルの関連性についてだ。 ワールドトリガーの連載当初から中期において、巻頭カラーの見開きイラストには、 『遊真、修、千佳、迅が四人並ぶ象徴的な構図』が描かれる事が度々ある。 そしてその中には『鹿』をモチーフに取り入れた巻頭カラーも存在するのだ話数 | タイトル | 背景の要素 | 暗示? |
---|---|---|---|
第1話 | 三雲 修 | 夜の暗黒とキューブ | 惑星国家の在り方 |
第51話 | 木虎 藍 ④ | 鳩と警戒区域 | アレクトールの生物弾 |
第104話 | 玉狛支部 ⑦ | 魚と地下鉄入口 | アレクトールの生物弾 |
第145話 | 玉狛第2 ⑬ | 鹿と改札口 | アフトクラトルの国旗 |
第170話 | 玉狛第2 ㉓ | 蝶と駅構内 | ランビリス(蝶の盾) |
元々巻頭カラーのイラストについては、徐々に電車(≒遠征艇の暗示?)に近づいている事から、遠征という目標に一歩ずつ前進する主人公たちの様子を表しているのでは?と方々で言われていた。また、登場する動物(鳩、魚、蝶)はアフトクラトルのトリガーを連想させるため、アフトクラトルへの遠征を強く暗示しているのかもしれない。
鹿の巻頭カラーが登場した時は「何の暗示だ?」とは思ったが、アフトの国旗に鹿が居る事を踏まえると、鹿のイラストもアフト遠征を暗示したイラストだったと言えるだろう。
- 『鹿』はアフトクラトルへの遠征を暗示した生物である可能性。
ベルティストン家と『竜』
そしてここからは国旗に描かれた紋章と、『領主:ハイレイン=ベルティストン』が治める領土『ベルティストン領』の関連性について話を進めて行きたい。
ここで言いたいのが『竜』の紋章はベルティストン家の家紋なのではないか?という事だ。
単にハイレインの角のモチーフが『竜』だから…という事でもあるのだが、実は他にも理由がある。
『竜』のデザインが国旗の『左下』にある事がとても重要な意味を持つ可能性があるのだ。
この事を説明するためには、アフトクラトルにおけるベルティストン領の配置について語らなければならない。
エリン家の配置とベルティストン領の配置
この2つの画像は、14巻においてエネドラがアフトクラトルの国家を構成する『家』について説明した時の描写だが、よく見ると両方のコマで同じ図が用いられている。
この建物はアフトクラトルを紹介するコマで度々見かけるが、毎度同じアングルから描かれており、もはや『お馴染みのアングル』と言えるだろう。
その『お馴染みのアングル』を、領土の概略図に当てはめると、アフトクラトルの四つの領土を隔てる境界線が、アングルの視点から見て丁度水平垂直に交わる様になる。
そして『お馴染みのアングル』から見るとベルティストン領は『左下』に配置される事になる。
アフトクラトルの国旗を思い返すと、四つの紋章がチェスの盤の様に格子状に並んでいる。 そしてその国旗のラインと領境を重ねると『竜』の配置はベルティストン領にピタリと一致している事になる。
つまりアフトクラトルの国旗はアフトクラトルの領土の在り方、四大領主の領土の配置そのものを表している可能性すらあるのだ。
この事を図に纏めると以下の様になる。
この偶然を見過ごすことは出来ない。やはり国旗に描かれた『竜』とはベルティストン領を表しているのだろう。- アフトクラトルの国旗の『竜』はベルティストン領を表している
- 国旗の紋章と各領主の領土の位置関係が対応している可能性
『鹿のツノ』『ヤギのツノ』を持つ者
国旗に描かれた『竜』、そして『竜』をモチーフにした領主ハイレイン。
この対応関係を他の紋章に当てはめると、今後登場するであろう三人の領主のデザインにも、それぞれ『鹿』『ヤギ』『蛇』が組み込まれている事にならないだろうか?
とりわけ『鹿の角』と『ヤギの角』に関しては、キャラデザインに組み込まれている事を示唆するセリフが既に登場しているのだ。このセリフは大規模侵攻対策会議の回想シーンにおける鬼怒田さんの発言だ。
このとき鬼怒田さんは『ツノ』と聞いて真っ先に鹿とヤギを連想していたが、つまり『鹿』と『ヤギ』のトリガー角を持つ近界民を想像していた事になる。
作中キャラの何気ない発言に、元々構想している設定を盛り込む事は漫画的表現としてよくある事だが、鬼怒田さんのこの発言は『鹿の角を持つキャラクター』『ヤギの角を持つキャラクター』がそれぞれ登場する前振りだったとも解釈できるだろう。
そしてその前振りは鬼怒田さんの発言だけにとどまらない。 『鹿の角』と『ヤギの角』を持つキャラは既に存在しているのだ。
その人物はワールドトリガーの前身となる読み切り『ROOM303』『トリガーキーパー』に登場する人物の事だ。
①白屋敷係の人『ROOM303』
まず1人目が『白屋敷係の人』だ。 本名が明かされていないため仮称だが、彼女は読み切り作品『ROOM303』に登場し、ラストシーンで悪魔の様な角が生えた姿が描かれ、底知れない不気味さを放っていた。
②シュバイン『トリガーキーパー』
2人目が『シュバイン』、読切作品『トリガーキーパー』に登場する敵陣営のキャラクターだ。 後に掲載された『(連載版)賢い犬リリエンタール』にも同名キャラが登場している。
シュバインは両作品において、公正で冷静な判断力を持つ大人として描かれており、最終的には主人公と和解するキャラクターである点が共通している。
③桐島伊吹『トリガーキーパー』
そして最後に3人目が『トリガーキーパー』に登場する主人公『桐島 伊吹』だ。
『トリガーキーパー』は週刊少年ジャンプ2009年8・9号の2号に渡って掲載された読切作品だが、まだ単行本等に再録されていないため、現在読む方法は国立国会図書館東京本館の蔵書を閲覧するしかない。
なお週刊少年ジャンプは、ネットの電子複写サービスに対応しておらず、関西館への輸送も対象外のため、東京本館に足を運ぶしかない。遠かった。
この読み切りには宇宙人がもたらしたテクノロジー『トリガー』、トリガーオンの掛け声と共に頭部に現れる『ツノ』など、ワールドトリガーに引き継がれた要素が多く存在する。
伊吹の見た目や言動は遊真を彷彿させるが、その名前は旧ボーダーで命を落とした少年『脇坂 イブキ』に引き継がれている。
読み切り版における伊吹は物語の終盤でトリガーの能力に覚醒し、頭にシカの様な角が生えた。
つまり前身読切において『シカの角』とはイブキの象徴なのだ。
だがワールドトリガー本編において、シカの角はアフト国旗のデザイン(右上:鹿)として描かれている。
なぜ前身読切の主人公のモチーフが、アフトクラトル領主(鹿家)のモチーフに引き継がれているのか…?
ここで話が少し飛んでしまうが、旧ボーダーの写真を見てもらいたい。
この写真が単行本19巻に収録された時点で読者に開示されていた情報は以下の三つだ。
●そのうち何人かが黒トリガーになった事
●写真中央のサングラスの人物が最上さんである事
これらの情報が開示された事で一部の読者は、最上さん以外にあと数人は居るであろう『黒トリガーになった人物』が誰なのかを予想したことだろう。
後にQ&Aにて天羽の黒トリガーは梅崎鉄弥が作ったものだと明かされた。
そして旧ボーダーの数名には、単行本10巻に掲載された没ネームのキャラである甲斐、相馬、眞都(真都)の名前が一部引き継がれている。本編プロトタイプの没ネームに登場したキャラを、主人公の先輩集団にスライドさせる事はとても綺麗な対応関係だと感じる。
だからこそ唯一読切作品から名前が引き継がれた脇坂イブキの異質さが一層際立つ。
『何人かが黒トリガーになった』。
最上さん、梅崎さん、あともう一人いるとすればその役割は脇坂イブキなのでは無いだろうか?そして話をアフトクラトル鹿家領主の件に戻す。
前身読切では主人公でトリガー使いだった脇坂イブキ、そして元主人公の象徴である鹿の角を国旗に掲げるアフトクラトルの領主。
この二つの要素を結びつけるとどうなるか?五年前にアリステラを襲撃したのは鹿家領主の関係者であり、鹿家領主は旧ボーダーから鹵獲した『イブキが作った黒トリガー』を現在所有しているのでは?という予想が生まれる。
もし鹿家領主がイブキの黒トリガーに適合しているなら、その能力は読切版の伊吹の能力に倣い『物体を任意に操作可能な”矢印”を身に纏う能力』になるのだろうか。
- 『鹿家』関係者と旧ボーダーの間に因縁がある可能性
生物学的観点から考える四大領主の『角』
『鹿の角やヤギの角がキャラ造詣として組み込まれる可能性がある』、このことを念頭に置いた時、ベルティストン家のキャラクターのある共通点に気が付いた。
それはモチーフとなった生物がいずれも空想上の生物であるという事だ。
彼らの角のモチーフは、ハイレインが『竜』、ランバネインが『赤鬼』、ミラが『悪魔』、エネドラが『般若』である事がそれぞれカバー裏で語られている。
ヒュースのみモチーフが明かされていないが、いずれも空想上の生物の角がモチーフになっているのだ。
角を持つ生物は現実世界にいくらでも居るが、なぜハイレイン達のモチーフとして採用されなかったのだろうか? その疑問を追求するべく、そもそも角を持つ生物とは何なのかを考えて行きたい。
現実世界におけるツノとは?
(一部参考:角 : 進化の造形 : 国立科学博物館・コラボミュージアムin奥州牛の博物館第23回企画展 (奥州市牛の博物館): 2014|書誌詳細|国立国会図書館サーチ)今回は哺乳類の角に限定して話を進めて行くため、しばらく『蛇』の話は置いておくものとする。
生物学的観点における角とは、『奇蹄目(ウマ目)』『偶蹄目(ウシ目)』に属する哺乳類に見られる角質・骨質突起の事を指しており、それに似た円錐状の突起もまとめて角と呼ばれる事もある。
哺乳類に属する生物の内、角を持つグループ(科)は『①サイ科』『②プロングホーン科』『③キリン科』『④シカ科』『⑤ウシ科』の5種類に分かれ、それぞれのグループ毎に異なる特徴の角を有している。
これらの5つの科に属する動物の多くは頭の左右に一対2本の角を持っており、サイだけが顔の中心ラインに角を持っている。
『鹿家』の紋章は旧デザインが『ニホンジカ』、新デザインが『トナカイ』をモチーフにしている様に見えるが、どちらもシカ科に属する動物である事に変わりない。
一方『ヤギ家』の紋章はヤギ亜科(∈ウシ科)の範疇から出ておらず、ヤギ家も同様に紋章のモチーフは同じ科の範疇に収まっていると言える。
つまり、アフトの国旗のデザインは単行本収録にあたりデザインに一部変更があったが、生物が属する科には変更が無いと言えるのだ。
そしてベルティストン家のモチーフは、これら5つのグループ(科)のいずれにも属していないが、『空想上の生物』という6つ目のグループの中でキャラデザが統一されていると言う事もできるだろう。ここから考えられる仮説だが、四大領主の家毎に角のデザインのモチーフとなる生物のグループ(科)は統一されているのではないだろうか?
葦原先生はこのQ&Aを見る限り生物分野にも明るいと思われる。そのため、角をモチーフとするキャラを登場させる際、所属する派閥ごとにキャラ造詣に用いる生物のグループ(科)を統一する…みたいな事は十分に考えられるだろう。
つまり今後アフトクラトルで角を持つキャラクターが登場する場合、そのモチーフが鹿家の人間は『シカ科』、ヤギ家の人間は『ウシ科』、ベルティストン家は『空想上の生物』で統一されるのではないだろうか?
『サイ科』の角を持つキャラクター
角を持つ動物の5つの科の内、『サイ科』『プロングホーン科』『キリン科』の生物は、四大領主の紋章のモチーフとして現状確認されていない。
メタ的な個人の意見となるが、シカ科とウシ科のモチーフの豊富さに比べると、『プロングホーン科』と『キリン科』の生物は種が非常に少なくモチーフとして心許ないため、この2科はキャラ造詣に適していないと判断されてもおかしくないと思う。
そして『サイ科』だが、実はサイ科の角を持つキャラクターは本編に既に登場している可能性がある。
14巻でエネドラがアフトクラトルの神の寿命について言及した時に登場する人物だ。
このイメージに登場する人物の角は、これまでに登場したツノとは明確に異なり、額に一本だけ角が生えている。 この様に顔の中央ラインに角が生えるのは『サイ科』に固有の特徴だ。
この事について先ほど提唱した仮説『家毎にデザインモチーフとなる生物の科が統一されている』に基づいて考えると、このイメージ図に登場する人物は四大領主のいずれの派閥にも属さない人物として描かれている事になる。
その様な派閥は1つしか存在しない。アフトクラトルの4つの領土の中央に存在する『お馴染みの建物』だ。
すなわちこのイメージ図の人物は『アフト中央の建物に住む一族』であり、四大領主とは異なる派閥である事を特に意識して描かれている可能性があるのだ。
- 同じ領主に所属するキャラデザインは、『ウシ科』の様なグループ毎で統一されている可能性あり。
- 『サイ科』=アフトクラトルの現在の実権を握る一族に相当する可能性
アフト四大領主の分裂
『アフトクラトルの現政権の人間は四大領主と異なる派閥である』。 この考えを基にすると、アフトクラトルが四つの家に分裂したタイミングも分かるかもしれない。
ここで考えたいことが、現政権の人間は四大領主の出身なのか否かについてだ。
仮に四大領主の家の出身だとすると、アフトの内政において自身のルーツである家に対して贔屓している事も考えられる。
逆に言えば四大領主に対して完全に中立な立場を取っているならば、その人物は四大領主とは異なるルーツを持つ可能性が高い。
角のモチーフが四大領主とは明確に異なっている事を考えると、後者の様に思える。
つまり現政権の一族が神を献上する少し前までは、アフトクラトルには4つより多くの派閥が存在したことになるのかもしれない。
その場合、アフトクラトルが四つの領土に分かれたのは、サイ?の角を持つ一族の先祖が神を献上した『数百年前』のタイミングである事になるだろう。
この事は今後エネドラッドの口からアフトの内政に関する情報が出てくれば分かる事なのだろうか?- アフトクラトルが四つの家に分かれたのは、現在の神が献上されたタイミングの可能性
- エネドラが語った角付きの人物は、現神を献上した一族の末裔の可能性
もう一人の『角』を持つ人物
ここで少し話が戻るが、読切に登場するキャラクターの事について少し触れたい。
実は葦原先生の読切作品にはもう一人ツノを持つキャラクターが存在する。 その人物とは『トリガーキーパー』に登場するヒロイン『プエラ』だ。
プエラがトリガーの才能を覚醒させた時、プエラの頭からはS字形状の角が生えてきた。 この角の形状に該当する動物が居ないか調べたところ、ブルーバック亜科やインパラ亜科に属するいくつかの動物に似た特徴がある事が分かった。
そしてそれらの動物はいずれも『ウシ科』に属している。
そのため、もしプエラが今後本編に登場するのであれば、ウシ科の角をモチーフにする『ヤギ家』所属の人物として描かれるのではないだろうか?
葦原作品の読み切りキャラはほぼ全員本編時空に転生済みのため、未登場のプエラも今後登場してもおかしくないと言えるだろう。
- 読切ヒロイン『プエラ』が『ヤギ家』のキャラとして本編に登場する可能性
レプリカが持つアフトの情報源
ここまでアフトクラトルの角の描写を見返す中で、一つの違和感をずっと感じていた。
それはレプリカが持つ角の情報が不自然なまでに正確だったことだ。
レプリカ曰く、角の技術は軍事機密であり他国に流出しにくいとの事だが、それならば何故旅人である有吾達がその詳細を知る事ができたのだろうか。
考えられる可能性は二つ。
①有吾さんはアフトに寄ったついでに基地をハッキングして情報を抜いた。レプリカにとって近界のシステムは簡易であり、その気になれば機密情報を抜き出すことも簡単なのだろう。
だが無法なやり方はその惑星に滞在する有吾たちにとってリスクにもなる。 レプリカが追加した惑星配置図を数えてみると、有吾は十数年を旅する間に50~70ほどの惑星国家を渡り歩いている事になり、単純計算で一つの国に数か月以上は滞在している事になる。
長期間同じ国に滞在するなら、現地に協力者を作りながら旅をしていたと考えた方が自然だろう。つまりもう一つ考えられる可能性が、
②有吾さんはアフトの事情通と太いコネクションを持っていた。そして②に関して、その人物との関連を示唆する描写が存在する。
このコマはアフトクラトル対策会議の回想で、角の研究に関する詳細な情報を話しているところだ。
このコマが単なるイメージに留まらないのであれば、この角はレプリカが実際に出会った黒トリガー適合者の物であることになる。つまり有吾とレプリカは黒トリガーとの適合性を高める研究に立ち会っていた事になるだろう。
この事から、有吾たちはアフトクラトル滞在時に『トリガー角の研究者』、すなわち軍事機密にアクセス可能な地位を持つ協力者とコネクションを作っていたのではないだろうか。
この角は湾曲した一対2本の角であり、この特徴はインパラによく合致している様に思える。 つまり『ウシ科』の角であり、この角の持ち主は『ヤギ家』の人間なのかもしれない。
したがって、有吾さんがアフトクラトルにコネクションを持っているならば、それは『ヤギ家』の人間である可能性が高いと言えるだろう。
もしかすると遊真がアフトに遠征した時には、当時の縁で協力をこぎつける展開もあるかもしれない。
- 有吾達はアフトクラトルの『ヤギ家』領土に滞在していた可能性
1章まとめ
1章で行った考察を纏めると、遠征時のアフトクラトル四大領主とボーダーの構図が少し見えてきた気がする。●旧ボーダーと浅からぬ因縁を持つ可能性がある『鹿家』
●読切キャラのプエラが今後味方として登場する可能性(ヤギ家?)
●有吾さんの情報源となる謎の人物が存在する可能性(ヤギ家?)
アフト遠征時には『ヤギ家』が現地味方枠となり、『鹿家』と対立する構図が生まれるのでは無いだろうか?
ここまで角を軸にして進めて来たため全く触れてこなかったが、『蛇家』とは物語の中でどのような役割を持っているのだろうか?
調べたところ蛇を含む爬虫類は、ごく一部の種を除いて角に相当する器官を持っていない。
これはつまり『蛇家』の領主は単に角を持っていないキャラ、もしくは角の技術を拒絶した保守的な立場として描かれるのではないだろうか。
しばしば創作において、科学技術は既存の文化的価値観や生命倫理に反する物として描かれる事がある。 創作でそのような対立構造が描かれる場合、科学技術を推し進めた派閥は倫理を無視した代償を支払わなければならない事がある。
角が脳の深くまで根を張り、余命僅かだったエネドラがその最たる例なのだろう。
だがミラはエネドラのデータがあれば、今後より簡単に黒トリガーの適合者が見つかると言っていた。つまりエネドラの死後も生命倫理を軽視する研究を推し進めると言っているのだ。
科学技術と倫理の対立構造が精算されないまま物語が進むのであれば、角を持つ人間には更なる悲劇が降りかかるのかもしれない。
1章で使用した動物の写真の引用元
引用 | 種族名 | 引用元ページ |
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wiki*1 | ビックホーン | ビッグホーン - Wikipedia |
wiki*2 | ヌビアアイベックス | ヌビアアイベックス - Wikipedia |
wiki*3 | コーブ | コーブ - Wikipedia |
wiki*4 | プークー | プークー - Wikipedia |
第2章 トリガーホーンの機能とデザイン
1章では国旗に描かれた生物の『角』に注目して考察を進めて来たが、この章では『角』そのもの、アフトクラトルの『トリガー 角』に注目したい。
アフトクラトルの戦力、戦術、はたまたトリオン器官という生命機構にまで影響を及ぼす技術が『角』だ。
この章では角が持つ特徴の内、その機能や形状、デザインの意図に注目し、考察を進めて行こうと思う。
『角』が収集する生体情報とは
まず初めに角の機能の一つである、『生体情報の収集』について考えて行きたい。
角が脳にまで根を張っていた場合、角が収集する情報に『人格や記憶』が加わる、という考察を鬼怒田さんは行っている。つまり角が平常時に主に集める生体情報はそれら以外の物という事だろう。
まず考えられる候補としては『黒トリガーとの適合性』だ。このミラの発言から分かる様に、角が付いている当人の適合性だけでなく、調整時に得られた情報を収集し、積極的に後進に活かそうとする姿勢が見て取れる。研究に活かすならあらゆる観察対象が全てバックアップされているのだろう。
その他の候補としては『トリオンの量や質』の情報だろうか?
『量』については分かりやすい、『トリオン』のパラメーターの事を指しているのだろう。 では『質』とは何だろうか?
前後の文脈から察するに、『トリオンの質』とは『トリガーを身体の一部の様に扱って戦う』事に関連する尺度の様に思える。
剣の達人やプロアスリートの道具の扱いが巧みな様子を『まるで体の一部の様に操る』と表現する時がある。 つまり『トリオンの質』とはトリガーを自由自在に操作する時に関係する尺度なのかもしれない。
例えるなら、ギトギトのトリオンよりもサラサラのトリオンの方がスムーズに操作しやすい…みたいな事があるのかもしれない(絶対違う)。トリオンの『操作性』や特定のトリガーとの『親和性』に近い概念だろうか?。
また、トリオンの『量』には似た概念として『拡張性』という尺度も存在する様だ。
「角つき」で実戦配備された中では一番新しい世代で、安定性・トリオン拡張性も過去最高の逸材だが、うつ伏せにしか寝られないという重すぎる業を背負っている。生きろ。
おそらく『拡張性』とは、角無しで成長した場合と比較してどれだけトリオン器官を成長させることができたかを表す尺度だろう。つまりトリオンの総量ではなく成長幅を指している。
そしてヒュースのプロフ欄にもう一つ『安定性』という尺度が存在している。『安定性』という言葉が他に用いられたのは、大規模侵攻で烏丸がガイストを使用した時のハイレインの独白だ。
『武器も身体の一部と見做して変形させるのは アフトクラトルのトリガー技術と発想が似ている』
『しかし角の補助がない分トリオン体の負担が大きいな 不安定なトリオンが漏れ出している』
ハイレインの独白とガイストの性能を基に、『安定性』が何を指す尺度なのか類推してみる。
安定性とは…… 武器やトリオン体そのものにトリオンを流すと、その性能を向上させたり変形させることができるが、その状態のトリオン体には大きな負担がかかり、ひび割れが発生しトリオンが漏れ出ることもある。 だがツノの補助があれば、武器やトリオン体に流し込むトリオンの安定性を向上させることができる。
つまり『安定性』とは、トリオンに起因するトリオン体への負担を軽減し、戦闘を補助するための制御データの性能を表した尺度だと考えられる。
ここまでの検討を基に、角が収集する生体情報を纏めると以下の様になる
分類 | 収集の項目 |
---|---|
①トリオン器官の成長 | トリオンの量 |
トリオンの質 | |
拡張性 | |
②戦闘時のデータ | 安定性 |
③人格のデータ | 黒トリガーとの適合性 |
人格や記憶 |
黒トリガーとの適合には使用者の人格や感性が重要な事から、『黒トリガーとの適合性』に関する情報も『人格のデータ』として纏めることができると考えた。
また、上記の表に分類として定義した『トリオン器官の成長』は、その成長が止まる20歳までは最優先で収集するべき最も重要な情報だと考えられる。
- 『角』が収集する生体情報は、大きく分けて『トリオン器官の成長』『戦闘時のデータ』『人格のデータ』の3つに分類する事が出来る。
『角』の成長とデータ収集期間
そしてレプリカが説明した角のイメージ図を見ると、角は身体の成長と共に大きくなっている。 どちらかと言うとトリオン器官の成長に合わせて角も成長していると言った方が適切だろうか。
文部科学省の定義によると、幼児とは『小学校就学前の者』を意味する。 つまりアフトクラトルでは、遅くとも7歳の誕生日を迎えるまでにトリオン受容体が頭に埋め込まれるのだろう。
角を埋め込んでからトリオン器官が成長を終えるまでの生体情報収集サイクルについて、その時期ごとに用語を定義しようと思う。
ステップ | 対象年齢 | 定義など |
---|---|---|
幼児期 | 7歳まで | ツノを埋め込むまでの期間 |
成長期 | 7~20歳まで | トリオン器官の成長が終わるまでの期間 |
成人期 | 20歳~ | トリオン器官の成長が終わり、生体情報の収集がひと段落 |
トリオン器官の成長は20歳で止まるため、成人期以降は収集される生体情報の項目が減少すると思われる。
例えばエネドラの様に20歳を迎えトリオン器官の成長が止まった者に対しては、戦闘データ等の収集が主になるのだろう。
もしかするとこの事は本編でエネドラ殺害計画が浮上した事と関係しているのかもしれない。
エネドラが真面目でいい子だったのは、『黒トリガーに適合する前』でも『角が脳に根を張る前』でもなく、『角を移植する前』と書かれている。
その事を先程の定義に当てはめると、エネドラは6歳までは真面目でいい子だったが、7歳以降は角の悪影響で問題行動が目立つ様になった…という事になる。
つまり10年以上様子見された上で、本編の玄界侵攻のタイミングでようやくエネドラ殺害計画が浮上した事になる。
エネドラは既に黒トリガーに適合済みで、戦闘スタイルもやや大味な印象を受ける。つまり成人を迎えてトリオン器官の成長が止まった後のエネドラからは、有益なデータが得られないと判断され、角の被検体としてこれ以上生かす必要がないと判断された可能性がある。
きっと本編の大規模侵攻はエネドラが20歳を超えてから初の大きな戦闘だったのだろう。
そして最も重要なポイントなのだが……ミラは聡明で優秀だった時期のエネドラを知っていた、つまり最低でもエネドラ6歳&ミラ9歳の頃から深い交流があった事になる。
- エネドラは成人済みだったから殺害計画が浮上した可能性
- ミラとエネドラは年季の入ったガチ幼馴染
『角』の世代交代
ツノの技術に関して気になる事がある。 それは『世代』という概念がある事だ。
ヒュースは実戦配備された中で一番新しい世代。 つまりエネドラ~ヒュース間で世代交代が生じている事、まだ実践投入されていない年齢層に真の最新世代がいる事が分かる。
そして『世代』を考えたとき、もう一つ気になるレプリカのセリフがある。
レプリカがアフトクラトルとキオンの2国に滞在していたのは7年以上前。
当時のヒュースはどれだけ高く見積もっても9歳だし、もっと若いかもしれない。
そんなヒュース世代を指して角の機能が実用化に至っているかを判断するのは時期尚早に思える。 最低でも当時13歳のエネドラ~22歳のハイレインあたりの世代が、レプリカの言う『実用レベルにあった』世代だろう。
そしてレプリカは角の研究が『以前より進められていた』とも言っていた。 つまり実用レベルのハイレイン世代より前には、プロトタイプとでも言うべき『第一世代』が存在した事が示唆されている様に感じる。
ハイレインよりも上の世代の『角つき』というと、エネドラの説明時に登場した現政権?の人物だろうか…?今回の考察では仮にその人物を『第一世代』である事にしようと思う。
科学技術や工業の文脈で『世代』というと、大きな技術革新を伴う改良が行われた時に『世代交代』と言う事が多い。
これは個人的な意見だが、角の技術の場合、抜本的な改良を行うためには、最低でも角を移植してからトリオン器官の成長が終わるまでのデータが欲しい所だ。
つまり角に技術革新が起きるためには、先ほど定義した『成長期』に相当する約13年のスパンが必要だと感じる。
ここで一度ハイレイン達に『角』が埋め込まれた時期について、時系列で整理しようと思う。
もし世代があったとしても、その境界線はもっと曖昧なグラデーションで、日々細かい調整や改良が行われているだろうが、世代交代が生じるようなマクロな改良スパンは約13年だと考えた。
そしてこの図を眺めていると、ヒュースに角が埋め込まれる時期にちょうど『成長期』が終わり、ヒュースの角にデータをフィードバックできそうな人が一人いるではないか。
もしかするとヒュースの角はハイレインの角をベースに改良が加えられた後継モデルなのかもしれない。
- ヒュースの角はハイレインからのフィードバックを受けて作られた可能性
ヒュースが背負う『角』の業
カバー裏のキャラ紹介等でヒュースの角とハイレインの角は何かと比較される事がある。
彼の角はヒュースの角より横に張り出していないので、仰向けは無理だが横向きには寝ることが可能。なぜヒュースの角もそうしてやらなかった。
ハイレインのプロフ欄の書きぶりを見ると、ハイレインの角とヒュースの角は比較対象になる程度には同系統の形としてカテゴライズされている。
もしヒュースの角がハイレインの後継モデルなら、横に張り出す形状は何らかの機能改善のために行われた結果という事になる。
角が横に張り出すことで有利になる事。 生物的に考えると放熱に有利、工業的に考えると電波の拡散だろうか…?
アンテナはその向きと垂直な面方向に電波が拡散するが、アンテナを複数本持つ無線LAN等の場合は、アンテナの角度によって電波拡散の性質が変化する。
(一部参考: 無線LANのアンテナ方向、電波の飛び方メモ - ぼくんちのTV 別館 )例えばアンテナを2本持つ場合、平行な時はアンテナに垂直な面方向の電波がより強化されるが、その角度が90度に近い時は複数の面方向に電波が拡散する。
ここで2人の『角の角度』に注目すると、ハイレインの角はほぼ真後ろを向いている一方で、ヒュースの角はこれでもかと横に張り出している。
この2人の「2本の角」をアンテナに見立て、その角度の違いによって「電波の拡散性質」がどのように変わるかを示すイメージが以下の図だ。
複数の外付けアンテナを搭載している無線LANを導入している場合、アンテナの角度の組み合わせによって電波を狙った方向に拡散させることができる。
話は逸れていない、これはちゃんと『角』の話だ。
『角』が電波の送受信に相当する機能を持っている事は本編で明かされている。その一つが音声の翻訳機能だ。
片方が生身でも翻訳機能が使用可能という事は、トリオン体には『相手が生身でも直接受信可能な形式でのトリオン情報の発信』や、『相手の生身から発せられる無加工のトリオン情報の受信』の機能が備わっているという事だろう。
『角付き』が生身の場合は角がアンテナの様な役割を果たし、トリオン情報送受信の起点になるのだろうか。
情報通信とは近代の情報戦において最も重要な要素の一つだ。その機能拡張のためならば、うつ伏せにしか寝られないという重すぎる業をヒュースが背負っても仕方ない…仕方ない?
- 音声の翻訳機能を使用する際、角はトリオン情報を送受信する。
- ヒュースの角はトリオン情報の送受信機能を改善したモデルの可能性。
『角』の形状とデザインの変遷
ヒュースとハイレインの角を比較した時に感じたのだが、角には世代毎にその見た目や技術的なコンセプトに差異がある様に思う。 ここで角の形状やデザインについて世代毎の相違点に注目してみようと思う。
①角の本数と埋め込み位置
第一世代は角が1本だが、第二世代以降は角が2本になっている。角の機能を二本に分散したおかげか少し小ぶりになり、第一世代に感じた無骨さが軽減されている様にも思える。
また、角が1本の場合、重心バランスためにその配置が頭の中央ラインに限定されるが、第二世代以降の様に角が2本の場合は左右のバランスが良くなり、角の埋込レイアウトの自由度が向上する。
そして角の埋め込み位置により、その系統を側頭部系統(2α)と額系統(2β)に分類する事も可能だ。 角が2本になったおかげで脳の特定部位を狙って角を埋め込む事ができ、感性や人格に効率よく影響を与え、黒トリガーの適合性向上に寄与できるかもしれない。
②角のヒダ(角輪)とデザイン
第二世代以前は角のヒダ(角輪)が根元から先端まで複数本あり、生物の角らしいデザインとなっている。
一方でヒュースの角は角輪が少なく全体的になめらかで、生物らしさよりも機能美やスマートさを感じさせるデザインとなっている。 *1
ミラのみ例外的に角輪が無く、刀の峰の様になっている部分に謎の線が一本入っているだけだ。
敢えて法則性を見出すなら、角輪のデザインには性差があり、女性の角には角輪が無いという事だろうか。
第一世代 | 第二世代 | 第三世代 |
---|---|---|
額に角が1本 | 2αは側頭部に角が2本 2βは額に角が2本 |
側頭部に角が2本 |
根元から先端まで角輪が複数 無骨な印象 |
根元から先端まで角輪が複数 (例外:ミラ) |
根元にのみ角輪が2筋 スマートな印象 |
- 角の世代ごとにデザインコンセプトがある可能性。
- 性差による角のデザイン差が存在する可能性
2章まとめ
この章では角の機能やそのデザインについて考察を進めてきた。
ここで得られた仮説を基に、本編に登場したもう一人の「角付き」について、その人物の『角』にどの様な特徴があったか確認してみたい。
ガロプラ遠征の最後尾に後頭部だけ映った人物が居るが、先程の理屈を当てはめてみると、 この後頭部の人物は角が側頭部に2本あるため、第二世代の側頭部系統(2α)の特徴によく合致していると言えるだろう。
もし2αと2βの『リリースされた時期』に差があるなら、この人物の年齢はハイレイン寄りだという事になる。その場合少なくともランバネイン(24歳)よりも年上という事になるだろう。
そしてこの人物の角にはミラと同様に角輪が無いため、先程提唱した基準に基づくと女性という事になるかもしれない。
また、この後頭部の人物はミラと同じ奥行きに配置されていて、なおかつミラとほぼ同じ身長に描かれている。 BBF時点のミラ(23歳)の身長は162㎝のため、この後頭部の人物の性別と当時の年齢が分かれば、現在の身長もある程度割り出せるかもしれない。
第3章 アフトクラトルが所持する黒トリガーの歴史
1章、2章ではそれぞれ、国旗に描かれた生物の『角』や、トリガー 角の機能やデザインなど、『角』を軸にしてアフトクラトルの歴史やトリガー技術について考察を進めて来た。
3章では少し視点を変えて、アフトクラトルが所持する黒トリガーに注目して考察を進めて行こうと思う。
アフトクラトルには現在4つの黒トリガーが確認されている。
『卵の冠』、『窓の影』、『泥の王』、そして『星の杖』の4つだ。
使い手にまつわるエピソードやその歴史には未だ謎が多いが、いくつかの推論を組み合わせれば、それらが作成された順番やその時期、それに付随するアフトクラトルの歴史について考察する事ができるかもしれない。
よってこの章では、アフトクラトルの黒トリガー、及びその比較対象としてボーダーが所持する黒トリガーについて検討していこうと思う。
黒トリガーのサブ装備に関する制約
黒トリガーの作成時期を考えるにあたり、最も軸となる考えはサブ機能を後付けできないという要素だろう。
作中で具体的に『後付けできない』とは明言されていないが、黒トリガーに関する複数の描写がその設定を示唆している。
『「だから基本は今まで通り部隊で戦って」「戦況に応じて風刃を投入したほうがいい」……三輪先輩は上層部にそう進言したんだよ』
風刃には通信機能がついているため、サブ機能の搭載が出来ない訳では無い。 だが本部預かりになった風刃にシールドや緊急脱出機能が追加される様子もない。
三輪は対応能力の低さを理由に風刃を返上したため、開発室をもってしても機能の後付けは出来ないのだろう。
これらの事から、『黒トリガーに装備を後付けする事は出来ないが、黒トリガー作成者が生きていた時代に存在した機能は使用可能である』と考えるのが最も自然だろう。
『しかし 先程の最上宗一の件で ボーダーでもそれは無理だということがわかってしまった』
黒トリガーとはまさしくブラックボックス。 それがもたらす『結果』は解析できたとしても、黒トリガーの中に何が存在しどのような『過程』を経ているかは、ボーダーの技術力をもってしても知る由が無いという事だろう。
『過程』を分析できなければ、機能を追加することなどできはしない。 例外と言えば、解析したトリガーを学習し、『印』として能力を追加可能な所までが標準機能である遊真の黒トリガーぐらいだろう。
- 黒トリガーには基本的にサブ機能を後付け装備できない
トリオン体の『標準機能』と『装備』
トリオン体で使用できる機能は、元から備わっている『標準機能』と、後から追加した『装備』に分類する事ができる。 例えば『内部通話』はトリオン体の『標準機能』である一方、『通信機能』は『標準装備』であり、その二つは異なるものだと明言されている。
このQ&Aからは、『内部通話』がトリオン体そのものに備わった機能である事、『内部通話』は話し声が届く範囲でのみ使用可能である事が分かる。
このQ&Aからは、『通信機能』を用いた通信は『標準装備』による機能だと分かる。
そして似たような言い回しに『基本装備』と言う用語も登場している。栞ちゃんのクッキー生地によるトリガーのコスト解説時に登場した用語だ。
『そして 緊急脱出システム これだけのトリオンを消費して残った分が弾丸とかシールドのエネルギーになるの』
トリオン体本体とは別途装備コストを支払う事で、トリオン体に『基本装備』を追加する事が出来る様だ。 特にベイルアウトが消費するトリオンはすさまじく、一般職員用の護身用トリガーには搭載されていない程だ。
そして『緊急脱出』や『レーダー』は『基本トリガー』とも呼ばれているようだ。
『標準装備』『基本装備』『基本トリガー(の装備)』、言い方こそ違うがこの三つは文脈的に同じ事柄を表している。そしてこれらはトリオン体に後付けされたものだと言うニュアンスを強く感じる。
だが唯一『内部通話』はトリオン体そのものに付随する標準的な機能として扱われている。
そして若村隊のヒュース曰く『内部通話』と『音声の翻訳』は同一機能の範疇であるほか、全てのトリオン体に共通の機能であるかの様に語られている。
内部通話等のトリオン体に備わる『標準機能』、トリオン体に後付けで機能を付与する『基本装備(基本トリガー)』、そして隊員が自由に付け替えが可能な『トリガーチップ』。 これら三つの要素を整理すると以下の図の様になる。
- 内部通話は全トリガーが備えている標準的な機能で、話し声が届く範囲で使用可能
- 通信機能は『基本トリガー』として後付けで装備され、遠く離れた相手とも会話が可能
風刃を起点にしたトリガー開発順の推定
『黒トリガーに装備を後付けできない』この考えを軸にすれば、サブ機能として装備されたトリガーの開発時期を絞り込む事ができる。
例えば風刃は『5年と少し前』のアリステラ同盟戦争で作成された黒トリガーなので、風刃に搭載されている『通信機能』は、旧ボーダー時代から存在する装備である事が言える。
逆に言えば風刃に搭載されていない『シールド』『ベイルアウト』は、現ボーダーの開発室が作成した物という事が推定できる。
そして『レーダー』についても、風刃が『レーダー』を使ったと確実に言えそうな描写は見つからなかったため、恐らくこちらも現ボーダー開発室の作成だろう。
だがここで注意したいのが、黒トリガーのサブ装備の有無を根拠に、何でもかんでも開発順を確定させることは出来ないという事だ。
例えば風刃には『エスクード』の機能が搭載されていないが、その理屈だけでエスクードの開発時期を絞る事は出来ない。 なぜならエスクードは全隊員が標準的に使用する様な性能ではないため、黒トリガーの素体となった人物が使用してなかったとしても違和感は無いからだ。
同じ様に弾トリガーも刃トリガーも、装備コストが発生する以上、全員にとって必須とは言えない。 つまりこの理屈を用いる時は、『戦略的に考えて標準的に装備されるべき機能』に限るべきだろう。
その他ボーダーのトリガーでこの理屈を適用できそうなのは『バッグワーム』くらいだろうか?
- 黒トリガーの作成時期が分かれば、サブ機能のトリガーの開発時期を絞り込む事が可能。
アフトの黒トリガーが持つサブ機能
風刃の時とは逆に、複数の黒トリガーが共通で持っているサブ機能に注目すれば、それらの黒トリガーの作成順を絞り込むことが可能だ。
どれか一つのサブ機能に注目し、それが装備されていない黒トリガーはそのサブ機能が開発される前に作成されたことになる。つまり4本の黒トリガーの中で最も古いのでは?という推測が可能になる。
ここで注目するサブ機能は『マント』と『通信機能』だ。
アフトクラトルが装備するマントトリガー
生身では着用していない事、戦闘中に再生する事、地味に硬い強度など、 あのマントはただの衣装(トリオン体の一部)では無く、何かしらのトリガーで有ることが示唆されている。
そのマントを唯一着用していないのがミラであり『窓の影』だ。
だがミラの戦闘服のカラーリングはマントと酷似しているため、服に『マント機能』が搭載されている可能性をまずは検討した方が良さそうだ。
ここで注目したい描写は、三輪のバイパーがハイレインとミラを貫通したシーンだ。
まずはハイレインのマントに注目してもらいたい。
マント含むハイレインに命中した弾は9発あるが、ハイレインの背中側に貫通している弾は全てマントの内側に命中した弾なのだ。
その後のコマを見ると、ハイレインの背中側マント部分からもトリオンが漏れ出ているため、マントに弾痕が残っている事が確定する。つまり三輪のバイパーはマントを貫通できる威力を持っている事が分かる。
一方ハイレインの左肩(マントの外側)には弾が2発命中しているが、どちらも背中側に貫通していない。つまり三輪のバイパーはマント1枚分の厚みは貫通できるが、2枚目には阻まれる様な力関係だと考えられるのだ。
【トリガーの強度】
マント2枚 > 三輪のバイパー > マント1枚
一方でミラに着弾した弾は5発全弾ミラを貫通しているが、もしミラの衣装にマント機能があるなら、弾は背中の内側で止まっていたはずだ。
したがって、ミラの衣装にはマントに相当する機能がない事が分かる。
よって『マント』を起点に黒トリガーの作成順を考えた場合、『窓の影』が最も古いトリガーという事になるだろう。
アフトクラトルの遠距離通信技術
数百m以上離れた距離でも通信を行うミラとハイレイン、遠征艇からエネドラの独断専行を咎めるハイレインなど、アフトクラトル組も遠距離通信の手段を持っている様だ。
だがヴィザが参加する遠距離通信でのみ、スピラスキアの補助を必要としている。
つまりヴィザの戦闘体には通信機能が搭載されておらず、外付けのトリガー(窓の影)でその機能を代替する必要がある様だ。
この事は通信機能が搭載されていない遊真の黒トリガーにとっても同様で、レプリカを外付けの通信機器として使用している。
よって『通信機能』を起点に考えた場合、今度は『星の杖』が最も古い黒トリガーである事になってしまう。
この様に『マント』を起点にした場合と『通信機能』を起点にした場合で、『窓の影』と『星の杖』の時系列に矛盾が生じてしまうのだ。
一見妥当そうな推論を重ねた上で矛盾が生じるなら、基準となる仮定に誤りがあるか、もしくは何か見落としている要素がある。
ここに至るまでにアフトクラトルの『通信機能』に関する本編の描写を一通り確認したのだが、一つ違和感が残っている描写がある。
ハイレインの独白に不自然な部分があるのだ。
このセリフは金の雛鳥を抱えた修が、民家を盾にして逃げたシーンのハイレインの独白だ。
直前まで戦っていた烏丸・米屋達から遠距離通信で修に情報が伝わったせいで、ハイレインは修を仕留めそこなっている。
だがこのセリフはおかしい、アフトクラトルにも遠距離通信の手段はあるはずだ。 自分たちでも難無くできる事を指して、わざわざ『玄界のトリガー』と強調する必要性は無い。 *2
ここで疑問が芽生える。本当にアフトクラトルのトリガーには『通信機能』が付いているのだろうか? 遊真の黒トリガーにすら通信機能が搭載されていないと言うのにだ。
もしかするとアフトクラトルの『通信機能』も、トリガーとは別の外付けの何かに依存しているのでは無いだろうか。
ヴィザに無くて他の隊員にはあるもの…そう、例えば角が遠距離通信を担っているのでは無いだろうか?
角はそれ自体がトリオン情報の送受信を行っており、まさしくアンテナの様な機能を備えている。 トリオン体になった時には、トリオン体が本来備えている内部通話の機能を拡張し、通話可能範囲を拡大する事が出来るのでは無いだろうか?
ちょうど、アンテナを伸ばしたトランシーバーの通信可能範囲が拡大する様に。
遠征艇のハイレインに話しかけられた瞬間、エネドラは自分の角に意識を向けている様に見えなくもない…かもしれない。
もし通信機能が角に依存するのであれば、ハイレインの独白の違和感も自然に解釈する事が可能になる。
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ハイレイン『対策に迷いがない 「 卵の冠」の特性をさっきの誰かが伝えたか』
ハイレイン(我々にとって遠距離の通信機能は「角付き」の特権であり、角が無い下級の一般兵士やヴィザの様な老兵とは戦場での情報共有も一苦労だ。だが玄界のトリガーには通信機能が標準装備されているため、あのような一般兵士(修)にも容易に情報が伝わってしまう事が)
ハイレイン『玄界のトリガーの厄介なところだな』ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
先程は『通信機能』と『マント』をどちらも黒トリガーに装備された機能だと仮定したせいで矛盾が生じてしまった。だが、通信機能が角による機能だとすれば、黒トリガー作成順の制約条件から『通信機能』を除外する事ができる。
よって、黒トリガーのサブ装備の有無に関する時系列は、以下の図の様に矛盾なく整理できる。したがってサブ装備の有無に注目した場合、アフトクラトルで最古の黒トリガーは『窓の影』という事になるだろう。
ガロプラの遠距離通信技術
その後の本編でガロプラが当然の様に遠距離通信を行っているため、通信機能に関しては軍事大国のアフトより、小国のガロプラの方が発展しているという事なのだろうか?
『対になるトリガーは私が持っています』
『これがあればどれだけ離れていてもお互いの位置が常にわかります ある程度星が近付けば通信ができてほかのトリガーに傍受される事はありません』
ヨミが作成した腕輪型通信機は、単なる通信機能にとどまらず大概な便利機能が搭載されている。
アフトクラトルがヨミをスカウトしたのは、高度な通信技術を自国に取り入れ、弱点である通信連携の脆弱さを克服するためだったのかもしれない。 *3
だがこの解釈の場合でも、ヨミが凄いと言う事が分かるだけで、アフトクラトルの遠距離通信技術が玄界と比べて制約がある事の直接的な説明にはならない。
何故玄界人が当たり前の様に実装できている『通信機能』が、近界では高度な技術の様に扱われているのか。それには恐らく『電気工学の未熟さ』が関わっている。
レギーと遊真の発言は、それぞれ『電気』と『磁力』が近界にとって馴染みの無い概念である事を示している。
『電気』と『磁力』は、電気工学的に密接に関わる要素であるため、2つ纏めて『よくわからない現象』として扱われているのは、世界観が一貫していると感じる。
『電気』を扱う技術が未熟ならば『磁力』を応用し生活基盤に組み込む事は到底不可能だろう。ならば同様に、電気によって生み出される『電波』の技術も、近界全体の傾向として未熟という事にならないだろうか?
トリオンという万能生体エネルギーがある中で、わざわざ消耗のある『電気』エネルギーに変換する必要性は薄い。そのため、『電気』を用いた技術が発展しなかったのが近界なのだろう。
逆に言えば『電波』をまともに扱えない状況下で、トリガー工学の範疇で遠距離通信を実装した『ヨミの腕輪』『角』『レプリカ』は、とても高度な技術の産物だったと言えるのかもしれない。
- アフトクラトルの遠距離通信は『角』の機能である可能性
- アフトクラトル最古の黒トリガーが『窓の影』である可能性
- トリガー工学において、遠距離通信はとても高度な技術である可能性
実体を伴う恐怖の伝承『窓の影』
『アフトで最古の黒トリガーは「窓の影」』、この考えに至った時、かねてより思っていたことが脳裏に過った。
ミラとは『なまはげ』なのでは無いか?
この紹介文においてアフト全土を恐怖に陥れているのは、『ベルティストン領のミラ』では無く『ワープ女』なのだ。
ミラ個人を知らない初見の米屋がそう呼ぶならともかく、 アフトクラトル人の中ですら抽象的な呼び名だけが広まっており、 まるで『なまはげ』や『雪男』の様な扱いだ。
ひょっとすると『ワープ女』とはミラ個人を指す呼称ではなく、 代々スピラスキアを継承した適合者を総称する呼び名なのでは無いだろうか。
民族に伝わる口伝の継承は親から子へ、子から孫へ代々伝わっていく物であり、 その性質は『似た伝承が伝わる民族は共通の先祖・ルーツを持つだろう』という民族移動の歴史の検証に用いられる事すらある。
そんな中でワープ女は、『子供の躾に用いられるほど』根強く、 『アフトクラトル全土』に伝わっているというのだ。
そこから考えると、アフトクラトル全土を恐怖に陥れた『初代ワープ女』の登場は、 アフトクラトルがまだ一つの集団だったころ、すなわち四大領主の家に分裂する以前の時代まで遡る可能性があるのだ。
卵が先か鶏が先か…窓の影を解析しゲートが生まれたのか、それとも『ゲート』を生み出すトリガーを素体にして窓の影が生じたのか… もしかすると窓の影の登場は近界創生期における、惑星間大航海時代開幕の引き金だったのかもしれない。
- 『窓の影』はアフトの領土が4つに分裂する以前に作成された可能性
角を拒絶する国宝『星の杖』
『 窓の影』はアフトクラトルで最古の黒トリガーである可能性を示したが、その場合あの国宝『 星の杖』より歴史が古い事になる。
だが『窓の影』は国宝ではない、つまりただ歴史を重ねただけでは国宝足り得ない。 ならば星の杖を国宝たらしめている要素とはいったい何なのだろうか?
そもそも国宝とは国が指定した『有形文化財(建造物・美術工芸品など)』の内、特に歴史的価値や学術的価値の高い物を『重要文化財』と呼称し、その重要文化財の中でも極めて優秀で、かつ、文化史的意義に特に深い物を国宝と言うのだそうだ。
(参考HP:
登録有形文化財登録基準 | 文化庁)
日本だと法隆寺等の寺社仏閣、刀剣や甲冑などの工芸品も多く登録されており、中には1000年以上の歴史を持つ物も珍しくない。きっと『星の杖』も同程度の歴史はあるのだろう。
国宝がどの様な基準で選定されるかを調査するため、文化庁が発表している国宝等の選定基準を眺めていた所、気になる文言を見かけた。 (文化庁HP:https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/bunkazai/kikaku/r02/03/)
『登録有形文化財登録基準』の建造物の部において、有形文化財として登録される基準に『再現する事が容易でないもの』という記述を見つけた。
黒トリガーの事を語る時に建造物の基準を持ち出すのは適切でないかもしれない。だが『機能の再現』という尺度で考えたとき、星の杖はアフトの黒トリガーで唯一その機能の再現や劣化コピーが実現していないのだ。
卵の冠はラービットのキューブ化機能、窓の影は遠征艇のゲートや改造ラッド、泥の王はモッド体ラービットの機能として、限定的だがそれぞれ黒トリガーの機能を再現する事が出来ている。
ではなぜ星の杖は機能を再現する事が出来ないのか?その答えは恐らく単行本おまけページに書かれている。
近界民の手下 | トリオン兵 |
トリガー使い捕獲用トリオン兵 ラービット(モッド体)
プレーン体ラービットに能力を付加したもの。角付きアフトクラトル勢のトリガー能力を限定的に使える様子。
ランバネイン型
高威力の砲撃がメイン武器。ランバネインの性格が影響してるのか、やることが派手。はっきりいって捕獲任務に向いてない。
エネドラ型
目の前なのに液体化奇襲してくる性格の悪さ。人をバカにしたようなポーズをとってるような気もする。
ヒュース型
ほかのモッド体に比べると動きが消極的。磁力の能力が複雑すぎて使いこなせてないのかも。
引用元:【ワールドトリガー7巻 P148】
恐らく『トリオン兵の卵生成器』の様な装置にトリオンを流し込むのだと思うが、モッド体に関する説明文は、まるでトリオンを供給した人間の人格まで一緒に流し込んでいるかの様な文章だ。人格のバックアップ機能を持つ角が作用しているのだろうか?
そして『角付きアフトクラトル勢のトリガー能力を限定的に使える』という説明は、 モッド体へのトリガー機能の付与は、角の機能により実現可能とも読みとれる。
もしかすると、単なる隠密偵察用のラッドにゲート発生装置を搭載できたのも、ミラの角の機能に依るものだったのかもしれない。
だとすれば角には驚くべき機能が搭載されている事になる。 『角』は機能再現や解析という形で黒トリガーのブラックボックスに干渉し得るのだ。 他に似た様な機能があるのは遊真の黒トリガーを使用可能なレプリカくらいだろう。
もし星の杖の機能をラービットに継承できるならば、遠征に投入しない手は無い。 オリジナルの性能があれだけ凶悪ならば、たとえ劣化コピーでも十分な戦果を挙げられるだろう。
だが実際には星の杖を継承したラービットは居なかった、つまりアフト本国に「角付き」の星の杖の適合者はおらず、 角の適合性向上の機能をもってしても、『星の杖』の適合は出来ないという事になる。
『ヴィザ以上の使い手が居ないからヴィザが遠征に投入される』とかそう言う次元の話ではなく、ヴィザ以外にそもそも適合者が現存しない可能性まであるだろう。
風刃は適合者の好き嫌いが激しくないが、その本体性能はやや控えめな印象を受ける。 その一方で、角による疑似適合すら許さない星の杖は選り好みの極致とも言えるだろう。
もし『適合の難易度』と『黒トリガーの出力』に相関があるならば、 『星の杖』は『卵の冠』や『窓の影』をはるかに凌ぐ、 国宝と呼ぶに相応しい出力を持っている事になるだろう。- 『星の杖』が国宝認定されているのは、その機能再現や適合の難易度が関係する可能性
神が生み出した『卵の冠』
『 卵の冠』はその名に冠を宿しており、アフトクラトルの 冠トリガーとの関係性が強く示唆されている。
卵の冠は冠トリガーなのだろうか? もしそうだと仮定した場合、冠トリガーがどのタイミングで生まれるのかが分かれば、『卵の冠』の作成時期を絞り込むことができるかもしれない。
ここからは、『卵の冠がアフトクラトルの冠トリガーである』、と仮定し話を暫く進めたい。参考として、ボーダーの母トリガーから生み出された雷神丸について考えてみようと思う。
ラタリコフと林藤支部長の問答
第201話ではアリステラ王女がボーダーに逃げ延びた経緯や、ボーダーが保有する冠トリガー雷神丸の正体について語られた。
そこではラタリコフの疑問に林藤支部長が答える形で話が展開されたが、ラタは『母トリガー運用の一般的な事例』を想像しながら喋っていたはずだ。
なので、ラタリコフが疑問に感じた部分、支部長が開示した情報、そこから生まれる新たな感想や疑問を手繰っていけば、ラタが想像していた『一般的な事例』を導き出せると思う。
ラタと支部長の会話を少しずつ確認しながら、母トリガーと冠トリガーにまつわるルールを検討していきたい。
①母トリガー起動の条件
この会話から分かる様に、王家は母トリガーを『管理』する役割を担っている様だ。
また、ラタリコフが発言した 『アリステラ王家が亡命した姿 ➡ だから母トリガーを動かすことができる』 という文の繋がりからは、母トリガーを『動かす』には王族の存在が不可欠という条件が読み取れる。
もしそうなら、ラタリコフが感じた『母トリガーを「手に入れる」事が出来るのか』という疑問も解釈できる。
他所の国から母トリガーを奪ったとしても、対応した王族が居なければ起動する事が出来ない筈なのに、 余所者である玄界民が何故運用できているのか?という疑問だったのだろう。
ガロプラは現在母トリガーをアフトに抑えられており、唯一?生存したオルカーンは身分を偽りアフトの目を欺いている。
もし王族でしか母トリガーを動かす事が出来ないのであれば、ラタリコフはアフトに対する切り札であり、正体がばれない限りガロプラの母トリガーが真にアフトの手に落ちるわけでは無い。
だがもし王族不在でも余所者が母トリガーを動かす事が可能な条件があるなら、その切り札は効力を無くしてしまう。 そのため、ボーダーが母トリガーを利用できている経緯は何としても知りたかった…という事だろうか?
②冠トリガーが生じるタイミング
もう一つ分かるルールは、冠トリガーの作成と母トリガーの継承のタイミングは無関係という事だ。
瑠花と陽太郎が母トリガーを継承したのは『5年と少し前』のアリステラ同盟戦争の時だが、一方でBBFのボーダー入隊時期グラフを確認すると、雷神丸が生まれたのは『現ボーダー設立時(4年前)』のタイミングとなっている。
つまり冠トリガーが生み出されるのは『継承』のタイミングではなく、母トリガーを初回起動し運用を開始した時なのだろう。
そして母トリガーを起動した後、実際に運用するのは通常『神』になった者だという事がラタリコフのセリフから分かる。
ラタは『アリステラの「王女」が母トリガーを動かしている』と聞いて、「王女」が神になったと思い込んでいた。
つまりラタリコフの認識だと、母トリガーを動かす者=神という事になる。
本来母トリガーを起動する目的は星を運営する事であるため、母トリガーの起動後は、『神』に母トリガーの運用を引き継いでもらわなければならない。そのために『神』の同化は、母トリガー初回起動時点で完了している必要があるだろう。
これらを纏めると、『神の同化』『冠トリガーの誕生』『母トリガーの初回起動』の三つは、ほぼ同時期に生じるイベントである事が分かる。
アフトクラトルの冠トリガーが生まれたタイミングもこれと同じなら、『卵の冠』は神の同化時に生まれた事になるだろう。
③母トリガーの『制御』と『操作』
これまでのラタリコフと林藤支部長の会話の中に、とても重要な示唆が一つある。恐らくこれまでの会話の中で登場した『母トリガーを動かす』というワードには、二つの意味が混在している。
一回目に『母トリガーを動かす』というワードが登場したのはラタの発言だが、この時点でラタに『瑠花=神』という認識はない。
そして続く林藤支部長の『母トリガーを動かしている』という発言にラタリコフは反応し、『瑠花=神』という誤認が生じていた。
つまり前者の『動かす』と、後者の『動かしている』が意味する内容は、それぞれ異なる事柄を表しているハズなのだ。
前後の文脈から察するに、恐らく前者は『王族』が母トリガーを動かす時の事を指しており、後者は『神』が母トリガーを動かす時の事を指している。つまり母トリガーを『動かす』際、『王族』と『神』はそれぞれ異なる役割を担っていると考えられるのだ。
ここで一応、英語版ではどの様なニュアンスで『動かす』が翻訳されているのか確認してみようと思う。 英語版単行本を確認すると、『王族が動かす』という文脈の時には【control (制御)】が、『神が動かす』という文脈では【operate (操作)】がそれぞれ用いられ、異なる単語が使い分けられている事が分かる。
どちらも機械を動かすという文脈で用いられる事がある単語だが、【control】の場合は対象を管理・制御してシステムの全体的な動作を望ましい状態に保つニュアンスを含む事がある一方、【operate】の場合は、機械を単に実行・操作する時に用いられる事が多い様だ。
これを踏まえた予想だが…
神が『母トリガーを動かす』言う時は、母トリガーを操作してトリオンを出力させる事を指している。【operate (操作)】
王族が『母トリガーを動かす』と言う時は、得られたトリオンを目的のために制御する事を指している。【control (制御)】
この様な解釈であれば、『王族が代々管理する母トリガー』というニュアンスに合致する王族の役割を見出すこともできるだろう。*4
林藤支部長が発言した時の『母トリガーを動かす』は、本来『神』の役割における『母トリガーの操作 (operate)』を指していたのだろう。
そして、母トリガーは星を維持する出力を得るために、神が同化するのは当然だ…という先入観がラタリコフにあったため、『瑠花=神』という誤認が生じたのだろう。
また、この解釈の場合だと、エネドラが発言した『神が星の面倒を見る』とは、神が母トリガーを『操作』して得られたトリオンを、星を運営する各装置にエネルギーとして供給する事を意味していた事になる。
④冠トリガーの操作権
ラタリコフのセリフは、『神が居ない事』と『冠トリガーがボーダーの管理下にある事』が結びついている。
このセリフからは、本来冠トリガーを操作できるのは神だけだが、神が不在の場合は外部の人間も操作可能になる、というニュアンスを読み取れる。
『冠トリガーの操作権』には優先度があり、神が命令を出している間は、たとえ王族であっても冠トリガーに命令する事が出来ないイメージだろうか?
ツチガミを思い出す遊真の反応を見る限り、冠トリガーには特定の使い手が居ない様に思える。 ツチガミの国では『神』が半自動的に冠トリガーを運用する様な状態なのだろうか?
冠トリガーが『母トリガー直属』である事を踏まえると、『母トリガーの操作』に『冠トリガーの操作権』が紐づいているイメージなのだろうか?
⑤アフト冠トリガーの現状を説明する1つの仮説
ここまで検討した内容を踏まえて、『一般的な事例』と『ボーダーの現状』、そして『卵の冠』が冠トリガーであると仮定した時の『アフトクラトルの現状』を表した3つの事例を図で纏めてみようと思う。
アフトクラトルの現状については、『神が母トリガーを運用している』という共通点から、一般的な事例におおよそ従うと仮定してモデルを作成した。
その結果を見比べてみると、アフトクラトルの現状は『一般的な事例』と『ボーダー』のモデルのどちらにも該当せず、ちょうど中間の性質を持っている。
『神』が母トリガーを操作している点では一般的なモデルに該当するが、『冠トリガー』をハイレインが自由に操作できる点ではむしろボーダーのモデルに近い。
3つのモデルを見比べた時に浮かび上がった、アフトの現状における『特異な点』は以下の2つ
①本来は王族が居るはずの位置にハイレインが居る事
②本来は神が運用している筈の冠トリガーを、神の管理下から切り離している所
矛盾が発生する場合、『卵の冠』が冠トリガーという前提条件が間違っているか、もしくは検討過程の解釈が誤っている。
前提条件が間違っていると考えた場合、『卵の冠』はただの黒トリガーだと考える方が自然という事だ。
だがここで、ある1つの仮説を持ち出せば、全ての要素を説明する事が可能になるかもしれない。 要はアフトの現状を説明しようとする場合、冠トリガーの操作権が神から喪失する様な状況について考えれば良い。
ここで提案したい仮説とは、『神の死亡をキッカケに、その神によって作られた冠トリガーは黒トリガーに変化するのではないか?』という説だ。 つまり、黒トリガーが生じる条件には、作中で明かされている方法以外に、『神』に由来する別の方法が存在するのでは?という仮説だ。
この仮説を採用すると、この章で浮き彫りになったいくつかの違和感を説明する事が出来るようになる。
例えば、『卵の冠』が神の管理下から離れている状況、いかにも冠トリガーっぽい名前の『卵の冠』が黒トリガーとして扱われている事、冠トリガーと黒トリガーが異なる定義で扱われている事、そして王族の位置にハイレインがいる事、……等々これらの要素をある程度説明できるようなる。
先程挙げたアフトの特異な点の一つである、『①本来は王族が居るはずの位置にハイレインが居る事』については、次のように解釈することで説明が可能になる。
ベルティストン家は過去に神を献上し、王族に迎え入れられた歴史があり、その結果ハイレインは当時の王族と血縁関係にあるのでは?という解釈だ。
つまり、「神を献上し実権を握る」という表現は、王族に迎え入れられる事を意味している…というのが今回の考えだ。 この解釈であれば、『神Aを献上した当時の実権者』とハイレインの間に血縁関係がある事になる。
そしてもう一つの特異な点として挙げた 『②本来は神が運用している筈の冠トリガーを、神の管理下から切り離している所』については、先程提唱した『神の寿命をキッカケに冠トリガーが黒トリガーに変化する仮説』を絡めて、以下の図を用いて説明しようと思う。
①かつて『卵の冠』を生み出した『神A』が存在し、その当時『卵の冠』は冠トリガーだった。
②だが神Aの寿命が尽きそうになり、新たに神Bを母トリガーに同化させ、神を世代交代させる必要が出てきた。
③神Aが不在になった事で『卵の冠』を操作する物が居なくなり、それにより『卵の冠』は外部の適合者が使用可能な黒トリガーに変化した。
④現在アフトクラトルの母トリガーは神Bによって運用され、星を豊かにする役目は現在『冠トリガーB』が担っている。
この仮説を採用した場合、神の世代交代を繰り返すほどに、その国が所有する黒トリガーが増えることになる。 もしかするとアフトクラトルに存在する13本の黒トリガーには、かつて冠トリガーだったものが何本か含まれているのかもしれない。
アフトクラトルにおける冠トリガーの役割
最後に『卵の冠』が冠トリガーたる機能を持っているのか?という側面から考えたい。
冠トリガーとは星を豊かにするたり、星を守るための機能を持つことがある。
もし『卵の冠』が冠トリガーならば、その本質は戦闘では無く星の維持、生命の循環に相当する役割を与えられているのでは無いだろうか?
アフトクラトルにとって戦争や内紛は日常であり、時には広大な平野や森の奥深く、深い水底に武器の破片やトリオン兵の残骸が散乱している事もあるだろう。
だが卵の冠の生物弾があれば、あらゆるトリオン生成物を無害なトリオンキューブに変換し還元する事が出来る。
星を環境を維持するための『分解者』としての役割を与えられたのが『卵の冠』の本質なのでは無いだろうか。
結局『卵の冠』が冠トリガーなのか、それともただの黒トリガーなのか、現状の情報ではおそらく確定させることができない。 だが、『卵の冠』のルーツに冠トリガーが関わる場合、『卵の冠』は神が同化した時に生じた事になる、とは言えるだろう。
- 過去の神の献上時に『卵の冠』が生じた可能性
ガロプラ侵攻と『泥の王』
『泥の王』が作成された時期はある程度までなら絞り込む事は可能だ。ガロプラ侵攻時にエネドラの角が黒く染まっていたため、『泥の王』が作成された時期はその遠征より前である、という所までは確実なはずだ。
泥の王作成時期に関する条件確認のため、まずはガロプラ侵攻が行われた時期について考えて行こうと思う。
①第二次大規模侵攻におけるレプリカの誤算
ガロプラ遠征の時期を推測するための手掛かりとして注目したい事がある。それは レプリカが行ったアフトクラトルの戦力予想が実際と大きく異なっていた事についてだ。
『遠征に複数投入される事は考えづらい多くても一人までだろう』
だが実際は、まさかの黒トリガー四本投入に加え、うち一つは国宝の使い手ヴィザまで参戦する始末だった。
(その使い手を遠征に投入するとは……一体アフトクラトルに何が起こっている……?)
確かにアフトクラトルでは現在進行形で神の寿命が尽きようとしており、国家存続の一大事が起こっている。
そんな異常事態をレプリカ達が知らないという事は、『神の寿命問題』が本格化したのは、レプリカ達がアフトクラトルに滞在していた時期より後だという事だろう。
逆に言えば『神の寿命問題』ぐらいの異常事態が無ければ、星の杖が遠征に投入される事は通常あり得ない筈なのだ。
つまりヴィザが参加したガロプラ遠征も『神の寿命問題』に関わる何かの一環という事になる。
時系列を整理すると、『レプリカ達のアフト滞在期(7年以上前)』➡『神の寿命問題の顕在化』➡『ガロプラ遠征』という順番になるだろう。
②ガロプラ高校甲子園出場
オルカーンが王族から野球少年に擬態する原因になったのはアフトクラトルから受けた侵攻が原因だ…つまり『野球』とは戦場、『野球少年』とは兵隊、『甲子園出場』とは遠征の暗示であり、『2度目の甲子園出場』とはハイレインの指示で行った足止め遠征を表す事になるだろう。
ならば『7年前』に出場した甲子園とは、アフトに助っ人メジャーリーガー4人をねじ込まれ、ホームの戦術的有利を活かせず涙ながらに母トリガーを奪われたあの屈辱の侵攻の事を指しているのだろう。
ここまでの検討により、ガロプラ遠征が行われた時期を推測する手がかりが2つ得られた。
レプリカの発言から導かれる『7年以上前より後』、オルカーンの甲子園出場が暗示する『7年前』。 これら2つの要素はギリギリだが両立する。
矛盾が無いのであれば、今回の考察ではこの『7年前』を、ガロプラ遠征が行われたタイミングとしてぜひ採用したい。
『7年前』にガロプラ遠征が行われ、その時期に既にエネドラの角は黒くなっていた。 したがって、『泥の王作成』➡『ガロプラ遠征(7年前)』という条件を設定できる。
③ベルティストン家の領土と所有する黒トリガーの本数の関連性
泥の王が作成された時期についてもう一つ考えたい要素がある。 レプリカのアフト滞在時点で13本の黒トリガー存在していた、という発言についてだ。
13本の黒トリガーの所在を1領主辺りで考えると『13÷4=3あまり1』であるため、 黒トリガーを4本持つ場合かなり優位な立場になる事が想像できる。
ここまでの考察を振り返ると、『窓の影』『星の杖』『卵の冠』にはそれぞれ数百年以上の歴史がある事になってしまう。 そのため、『泥の王』まで歴史の古いトリガーだと仮定すると、 ベルティストン家は長年に渡って黒トリガーを4本持っている事になり、近年のアフトはベルティストン家1強の時代だった事になりかねない。
しかし四大領主の領土のバランスに注目すると、むしろベルティストン領は狭い方だ。
(中略)
『トリガー使いが多いほど広い範囲を支配できて ザコ市民もたくさん飼えるからな』
ベルティストン領だけ狭いのは単なる地形の問題か、それともコマ内の台詞枠を避けて説明するためのレイアウトの問題か。
仮に領土の狭さがトリガー使いの少なさに依るものならば、長年黒トリガーの本数で1強だった領主だとは到底思えない。
従って、泥の王が作成された時期は『黒トリガー13本時代』より後だと考えた方が自然に思える。
すなわち『レプリカ達のアフト滞在期=黒トリガー13本時代』の後に『泥の王』は作成されたのではないか?…という意見だ。
そしてこれまでの要素を一つの時系列に纏めたのが以下の図だ。
この考えを基にすると、泥の王が作成されたのは、『7年以上前』~『7年前』のわずかな期間である事になり、ガロプラ遠征の直前という事になる。 もしかしたらエネドラの『泥の王』使用の初陣がガロプラへの遠征だったのかもしれない。
ただしレプリカ達が、キオン➡アフトではなく、アフト➡キオンの順に訪れていた場合は、もう少しスケジュールに余裕が出る。
- 『泥の王』が作成されたのは、『レプリカ達のアフト滞在終了後』~『ガロプラ遠征』の間である可能性
アフトクラトル開発室技術顧問
角の技術はアフトクラトルの戦略を支える重要な機能をいくつも備えている。
恐らくトリガー工学では高度な技術である『通信機能』。ハイレインをして玄界のトリガーは厄介だと言わしめる要素だ。
遊真の黒トリガーも『通信機能』を外付けのレプリカに頼らざるを得なかったくらいだ。
そして『黒トリガーの解析と機能の再現』。「角つき」が黒トリガーに適合した場合、角を介して黒トリガーの機能を解析し、モッド体ラービットとして限定的に機能を再現する事すら可能だった。
似た様にレプリカは解析したラービットに、遊真の黒トリガーの能力を付与するだけでなく、トリオンに余裕があればキューブ化の能力すら再現可能という口ぶりだった。
『通信機能』と『黒トリガーの解析・再現』、『角』と『レプリカ』にはトリガー工学的にとても高度な機能が共通して備わっている。
両者の共通点はそれだけではない、『角』と『レプリカ』には互換性すらあるのだ。
レプリカの機能の一つに、角に保存されたデータを読込み、再生するための機能が備わっている事が分かる。 この機能は、レプリカが持つ『情報記憶・開示機能』の機能を応用した物だろう。
豊富なデータベースの中に、空閑有吾と共に歩んだ軌跡を蓄積した。その情報を活用して、息子の遊真と戦闘の復習と戦術を学んでいた。
データの読み書きは、基本的に特定のルール(拡張子など)の元に行われる必要がある。 『角』と『レプリカ』には共通のOSが搭載されているからこそ、開発室はあのスピードでエネドラッド生成が実現したのだと思う。
この様に『レプリカ』と『角』が持つ機能には共通点が多く、図でまとめると以下の様に比較できるだろう。
トロポイにルーツを持つ自律思考型トリオン兵レプリカ。そしてレプリカの機能と互換性を持つ『角』。 もしかすると『角』のルーツにもトロポイが関わっているのでは無いだろうか?
ここで1章で考察した有吾さんのアフト滞在時の協力者の事について思い出してほしい。 そのとき有吾さんには『軍事機密にアクセス可能な協力者がいたのでは?』と考察した。
だが角のルーツにトロポイの技術が関わっているなら話は別だ。
『有吾さんはどうやってアフトクラトルに滞在していたのか?どのような役割を持っていたのか?』
考えられる可能性の一つ、有吾さんはトロポイの技術を用いて角の研究に協力していたのではないか?
軍事機密にアクセス可能な協力者が居たどころの話ではない、有吾さん自身がアフトの軍事機密の中核たる開発室の技術顧問だった可能性すらあるのだ。
レプリカはアフト滞在時の事を自分の体験として語っているため、有吾さんはアフト滞在前にトロポイと関わりがあった事が示唆されている。 トロポイの技術は珍しいため、アフトに訪れた際はその腕を開発室にスカウトされ、現地に長期滞在できたのだろう。
その場合、有吾さんのアフトでの功績は以下の2パターン考えられる。
①角の技術のコンセプトは前々からアフトで構想があり研究されていたが、有吾さんがもたらしたトロポイの技術体系を組み込むことで、その性能が飛躍的に向上した。
②かつてトロポイからもたらされた『角』の技術がアフトにはあったが、その技術を解析できるエンジニアがおらず、実質オーパーツと化していた。そんな折にトロポイの技術を解析可能な有吾さんが訪れ、行き詰っていた角の研究にブレイクスルーが生じた。
いずれにせよ、有吾さんはトリガー 角の改良にとても大きな貢献をした事だろう。
だがそれも良い事ばかりではない。角の技術とレプリカに互換性があるなら、角の技術を研究しているアフトには、レプリカを解析するための下地が十分すぎるほどに構築されている事になる。
ボーダーがエネドラの死体の角から情報を引き出したように、アフトもまたレプリカを改造し情報を引き出す事は容易いのかもしれない。
- 有吾さんはアフトクラトル滞在時に、トリガー 角の改良に協力していた可能性。
3章まとめ
3章で考察した結果を元に黒トリガーの開発順、及びそれに付随するアフトクラトルの歴史についても纏めようと思う。
まずは最も古いトリガーだと考察した『窓の影』。これはアフトクラトルがまだ一つの集団だった頃のアフトクラトル黎明期まで遡るかもしれない。
次に国宝『星の杖』。日本における国宝は古いもので飛鳥~平安時代、新しいもので明治時代の物まで登録されている様だ。この事を参考にするなら、星の杖は100~1000年ほどの歴史を持つと見込めるだろう。
そして『卵の冠』。このトリガーが冠トリガーに由来があると仮定するなら、その出現は恐らく神が誕生した瞬間、すなわち数百年以上前に遡るだろう。今回の考察では、ベルティストン家の先祖がN代目の神を献上したタイミングに『卵の冠』が誕生したと考える。 また、1章で考察した案を採用すると、現在の神の献上時にアフトは4つの領土に分かれている。
そしてアフトクラトルの現在の神と初代の神の間には、国力をねちねちと厳選した世代が存在するはずだ。 『ねちねちと厳選』というワードからは、最低でも2~3回以上の世代交代が発生してそうなニュアンスを感じるため、神の寿命を数百年とすると、おそらく1000年ぐらいは厳選が行われてきたのだろう。
これらの歴史を図に纏めると以下の様になる。
この図を纏めてみた感想が一つある。『マントトリガー、ロングセラー過ぎないか?』
黒トリガーへのサブ装備の制約を考えると、『マント』は『星の杖』作成よりも前に開発されている必要があり、その場合『マント』は数百年以上現役で使われているトリガーである事になってしまう。
傑作トリガーは長く使われるだろうが、それにしても長い。流石に機能の改良はあってしかるべきだろう。
そう思いながら本編を見返すと気付いたのだが、ランバネインとヒュースが纏うマントはハイレインの物に比べ耐久力が格段に高い描写があるのだ。
この2コマはそれぞれ、ランバネインが茶野隊のアステロイドに被弾するシーンと、ヒュースが烏丸のバイパーに被弾するシーンだが、両者共にトリオン体は無傷だ。
ここでマントの強度についておさらいすると… ハイレインのマントは三輪のバイパーを被弾し、1枚分の厚みでは貫通されてしまう強度だった。 つまり『トリオン6・拳銃・バイパー』よりも弱いという事だ。
一方でランバネインが茶野隊のアステロイドに被弾した時、マントの端がちょっと欠けたがトリオン体は無傷だった。 そして茶野、藤沢は両者共にトリオン6のため、ランバネインのマントは『トリオン6・拳銃・アステロイド』をほぼ相殺できる強度を持つ事になる。
偶然にも弾丸使用者のトリオンと銃型が共通なため、両者の強度は明確な比較が可能だ。
【トリガーの強度】
ランバネインのマント ≧ 茶野隊のアステロイド > 三輪のバイパー > ハイレインのマント
なおヒュースに関しては銃型と射程が異なるため厳密な強度の比較はできないが、それでも烏丸の『トリオン7・突撃銃・バイパー』を被弾して無傷な程度に強度が高いと言えるだろう。
つまりアフトが近年開発したトリガーには、改良された『高性能なマント』が搭載されている可能性があるのだ。
アフトクラトルの衣装を見比べた時、ミラだけマントを装備していなかったため、『後方支援担当だからオペレーターみたいに隊服が異なるのかな?』とか『香取隊みたいに男女でデザインが異なるのかな?』という感想を抱いていた。
3章の考察を基にすると、アフトの戦闘体において、性別・ポジションとマントの有無に直接的な関係は無いという事なのだろう。
第4章 アフトクラトルの指揮系統
ここまでの章では国旗や角、トリガーに注目する事で、アフトクラトルのトリガー技術と国土に関する考察を行った。
今回の記事では最後にアフトクラトルの『社会』と『軍事の情報』に関する考察を進めて行きたい。
ここで注目したいのが、アフト遠征部隊の衣装に描かれた特徴的な模様についてだ。
あの大小の円を組み合わせた謎の模様が一体何を表しているのだろうか?この章ではアフトの文化的側面について、現実世界の制度も参考にしながら考察を進めて行きたい。
衣装の円が示す部隊の序列
アフトクラトルの遠征メンバーの衣装には大小の円を組み合わせた模様があしらわれているが、模様の違いで1~6が表されている様に見える。
あの数字が何を表しているのか?真っ先に思いつくのはやはり部隊の序列だろう。
隊員一人一人の序列が明確であれば平時の指揮系統はもとより、数人単位の小隊で別行動する時や、上官が死亡した際の指揮系統の再構築をスムーズに行う事が出来るだろう。
そしてそのシステムは恐らくガロプラでも採用されており、隊服のタグに1~6を表す円が刻まれている。
序列 | キャラ名 | 役職 | 年齢 |
---|---|---|---|
1 | ガトリン | 隊長 | 35 |
2 | コスケロ | 副隊長 | 28 |
3 | ウェン・ソー | ー | 24 |
4 | レギンデッツ | ー | 17(先輩) |
5 | ラタリコフ | ー | 17(後輩) |
6 | ヨミ | 支援? | 14 |
ガロプラの序列はとても分かりやすく、タグの円の数と年齢順が対応しており、兵役年数順に序列が決まる事が推察できる。
同い年のレギーとラタリコフについても、同様に兵役年数順に序列が決まっている事が言える。 ラタが兵士になったキッカケはアフトの侵攻だったが、その時点でレギーは既に兵士だったため、レギーが先輩である事が分かるからだ。
- ガロプラの指揮系統は年齢or兵役年数順で決まる
アフトクラトル遠征部隊の序列
では次にアフトクラトルの大小の円の模様がどうなっていたか確認したい。
アフト遠征部隊の衣装の円には2パターンあり、一つは本編の第二次大規模侵攻、もう一つは回想時のガロプラ侵攻が行われた時だ。
ガロプラの序列は年齢順に綺麗に並んでいたがアフトクラトルの序列には法則を見出す事が出来ない。
そればかりか二回の遠征でヴィザ等の序列が変化している事もその謎を深めるばかりだ。
一見無秩序にも思えるこの2つの序列に、何か一定の法則を見出せないか検討していきたい。
アフトクラトルの二度の遠征の序列を見比べたとき、注目するべき要素が4つある
①黒トリガー所持は序列に直接関係しない
②年齢・兵役年数順ではない
③[指揮]のパラメーターは直接関係しない
④支援役の人間が序列最下位になるとは限らない事
これらの事について順を追って整理する事で考慮するべきポイントが絞られるだろう。
①黒トリガー所持は序列に直接関係しない
まず①について、二度の遠征においてランバネインの序列はどちらも『3』だが、それより下位の序列『4』に黒トリガーを使うエネドラが居たりヴィザが居たりする。そのため、単純なトリガーの性能や腕っぷしでは序列が決まらないことが分かる。
この事について、ヴィザとエネドラの序列が入れ替わった…と言うよりも、『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』の二つについて考えるべきだろう。
②年齢・兵役順ではない
次に②について、大規模侵攻において20歳のエネドラが序列『2』である事、16歳のヒュースがミラより高い序列である事からも、年齢と序列に直接的な関係が無い事は明白だ。
つまりアフトクラトルの部隊において、単純な年齢よりも優先するべき重要な序列が存在するという事だろう。
③[指揮]のパラメーターは直接関係しない
やはり指揮系統を分析するからには、ハイレイン達の[指揮]のパラメーターを一度整理しておきたい。
現在の時間軸で比較するために、大規模侵攻時の序列とBBFの指揮で比較する。
序列 | キャラ名 | [指揮]BBF |
---|---|---|
1 | ハイレイン | [10] |
2 | エネドラ | [5] |
3 | ランバネイン | [7] |
4 | ヴィザ | [8] |
5 | ヒュース | [6] |
6 | ミラ | [5] |
この表を見て分かる通り、序列と[指揮]のパラメーターは対応していない。
今回の考察では『序列=指揮系統』だと扱っているが、その場合序列『2』に[指揮]が[5]のエネドラが居る事に大きな違和感が残ってしまう。
指揮[5] と言えば、『優秀な隊員』or『B級中位~下位部隊の隊長レベル』に相当し、指揮と戦闘の両立に負担が生じる事もある値、という印象だ。
つまり『さほど[指揮]が秀でていないエネドラが遠征部隊で序列「2」である事』に対して、それ相応の理由を示す必要があるだろう。
④支援役の人間が序列最下位になるとは限らない事
そして④について、この事は二度の遠征におけるミラの序列の変化から伺う事が出来る。
第二次大規模侵攻においてミラの序列が最下位の『6』である理由の候補として、『後方支援役だから』という理由がまず最初に思いつく。
だがガロプラ侵攻時のミラの序列は『5』であり最下位ではないのだ。
その当時のミラの役職は不明なため断言はできないが、後方支援の人間だから序列が最下位になるとは言い難い状況だ。
つまりミラの序列がヒュースよりも低い『6』になっている事には、何か別の理由が必要なのだ。
腕っぷし、年齢、兵役、[指揮]のパラメーター、ポジション、あらゆる可能性が排除される。
だがその中でもたった一つ、ほぼ確実に言えることがある。
ハイレインが隊長なのは、彼がベルティストン家当主、すなわち領主だからだ。
そもそもの話、ガロプラとアフトの遠征部隊のメンバーには決定的に異なる点がある。
ガロプラのメンバーはラタという例外を除いて全員軍所属の専業軍人である事に対し、アフトクラトルは高貴な身分の人間が複数人紛れ込んでいるのだ。
- アフト遠征部隊には年齢よりも重要な序列が存在する可能性
アフトの貴族における『角』の役割
アフトの遠征メンバーには領主やその親族が選抜されており、いくら黒トリガーの適合者とは言え、指導者が最前線で戦うという本来なら避けるべき異常事態が起きている。
恐らくこの特殊な状況には、近界特有の事情『トリオン』が関係している。
『ある程度の確率で遺伝する』、つまり高い素質を持つ家系の子孫もまたトリオンの才能に恵まれる確率が高いという事だ。
この事はエネドラの発言からも伺う事が出来る。
『上の連中はそういうガキを探して買ってツノ付けて 将来の兵隊候補として育てるんだ』
エネドラの発言は裏を返せば、アフトクラトルでトリオン能力が高い人間の大多数が高貴な家柄出身という事になる。 遠征部隊のメンバーすなわちアフトの精鋭に、やんごとなき身分の者が多かったのはこのせいだろう。
だがトリオン能力は『ある程度の確率で遺伝する』、つまり必ず遺伝するとは限らない。
トリオンが文化の中心であり、とりわけ身分階級にまで影響するアフトクラトルにおいて、跡継ぎのトリオンがもし低ければ、武勲を上げることも難しく家の立場を危ぶめてしまうかもしれない。
だがアフトには角がある。角さえあれば後天的に才能を伸ばすことができるのだ。 なら角を移植しない手はない、貴族にとって角は地位を保証するための命綱にもなり得るだろう。
そして角の移植時に被験者を『厳選する』という行為は、角のリソースには限りがあり、そのコストが高い事を示唆している。 その結果、金持ちばかりが角の技術にアクセスでき、角が金持ちの身分を盤石にする循環が生まれてもおかしくないだろう。
その様なサイクルが数世代も繰り返せば『トリオン貧富の格差』は世代を追うごとに更に開いていく。
本来棲み分けされるべき『個の武力』と『貴族の地位』が、『角とトリオン』により深く結びついてしまった歪な社会構造がアフトクラトルの現状を形作っているのだろう。
そう、つまり『家』だ。アフトクラトルの軍の序列には『家』の事情が複雑に絡み合い成り立っているはずなのだ。
『家』というアフトクラトルの社会構造に注目する事が、遠征部隊の序列の法則を解き明かすカギになるだろう。
- 軍の内情には『家』の事情が深く関わっている可能性
ベルティストン家配下の御三家
ここからはアフトの『家』の階層構造に注目しようと思う。 アフトクラトルでは四人の領主が土地を治めており、その下にも配下の『家』がある。
それを表した図がこのコマだ。
葦原先生が描く概略図でハッキリと個数が描かれている場合、既に決まっている設定から引用している事がとても多いと感じる。
これはメタ読みでしかないのだが、この図に意味を見出すならベルティストン家には直属配下の家が3つある。
もちろんそのままの意味ではない、このコマの前後に描かれた領土概略図にはそれ以上の『直属配下の家』の凡例があるからだ。
つまりこのコマが表しているのは、ベルティストン家配下に武闘派の『家』が3つあるという事ではないだろうか?
ベルティストン家、すなわち『領主の家』には領主ハイレイン、弟のランバネイン、そして恐らくハイレイン直属の兵士ヴィザが所属している。
そして配下の家には大きな戦力が三つある。
一つ、『泥の王』を所持するエネドラの家。
二つ、『窓の影』を所持するミラの家。
三つ、『配下の中で一番トリオンがでかいやつ』、当主エリンが率いるエリン家だ。
この三つの巨大な戦力がベルティストン家を支えているのだろう。
ここで1つ提唱しておきたい仮説がある。アフトクラトルの遠征メンバーはその御三家から均等に選抜されているのではないか?という考えだ。
遠征で得られる戦果はとても大きく、遠征が成功すれば功績に応じて報酬を貰い、参加した『家』は土地や名誉を得ることができるだろう。
その分代表を選ぶときには注意が必要だ。もし特定の家から何人も選抜すれば、手柄が集中し各家のパワーバランスが崩れる事態にもなりえる。手柄の均等化のため、各家から均等にメンバーを選抜する事は、組織のガバナンスとして重要な視点だと思う。
特に国家の四大領主が内政で争う様な体質が根付くアフトクラトルでは。
つまり何が言いたいかというと、遠征部隊には『エリン家枠』があり、ガロプラ遠征で後頭部だけ見えていたあの人物はエリン家の人間、『当主エリン』その人なのでは無いか?という事だ。
エリンは神候補になる程のトリオン能力を持っており、もし居なくなれば『家』全体の戦力がガタ落ちになると言われるほど、高い『個の武力』も備えている。
したがって『当主エリン』が遠征部隊に選ばれる実力を持っていてもおかしくないだろう。
- ベルティストン家配下には戦闘を生業にする直属配下が3つある可能性
- ガロプラ遠征に参加していた『後頭部』の人は、エリン家当主『エリン』である可能性
アフトクラトルの封建制度的側面
ふとした拍子にコマの背景に映るアフトクラトルの街並みは、中世ヨーロッパを思わせる雰囲気があり、また、王家や領主という概念が存在する事も、その印象をより強く表している様に感じる。
王族や武士を題材として用いる創作において、その時代の世界観を表現する一つの手段として、当時の身分制度や社会構造の一部側面を作中に落とし込む手法は一般的な事だろう。
ここからは現実世界における中世~近代の歴史や制度を参考にしながらアフトクラトルの文化的背景を考えて行きたい。
封建制度:参考WEBサイト封建領主 - Wikipedia
https://academic-accelerator.com/encyclopedia/jp/primogeniture
長子相続 - Wikipedia
領主ベルティストン家の主従関係
現実世界での中世ヨーロッパでは封建制度という社会構造が存在しており、 この制度の下、主君は恩賞として家臣に土地を与え、家臣は軍事的な奉仕や忠誠をもってこれに報いていた。この様に土地を介在した契約は封建的主従関係と呼ばれていた。この契約は双方が義務を果たす必要があり、一方が義務を履行しない場合はその契約が解消されることもあった。
また、主君から土地を与えられた家臣は『領主』と呼ばれ、領主はその領土を荘園として経営し、農民を支配・保護する社会構造が成り立っていた。
この構造はアフトクラトルにもよく当て嵌まっている様に感じる。
アフトクラトルにおいても、トリガー使いの数に応じて、王家から四大領主へ土地の支配権が与えられるのかもしれない。
騎士階級とエリン家
中世ヨーロッパの封建制度では「騎士」と呼ばれる戦士階級が存在していた。彼らは領主と主従関係にある『小領主』である事が多く、領主から与えられる土地(恩賞)に報いるため、軍事的奉仕を提供する軍事担当者としての役割を担っていた。
このように、領主は自身の主君(国王など)から与えられた土地を家臣(小領主)に再分配する事があり、その結果として、主君から見れば下級の家臣へと連なる階層構造を持つことになる。
この構造をベルティストン家に当てはめるならば、『主君』とはアフトクラトル王家であり、『領主』とはベルティストン家、領主と主従関係を持つ『騎士(小領主)』とはエリン家当主の事になる。
なお、この様な階層構造を持つ場合、ヒュースはエリン家の人間であるため、ハイレインとヒュースの間に直接的な主従関係や命令権は無い事になる。そのため、ハイレインがヒュースに命令するならエリン家当主に話を通す必要があるだろう。
また、騎士階級の家において騎士になるためには、幼い頃から戦闘訓練に励むことになる。 7歳頃から小姓となり、主君に仕えて騎士として必要な技術を学び、14歳頃には元服(儀礼的成人)し従士となり、一人前の騎士として実際の戦闘に参加する事になる。
ヒュースが8歳頃から剣を習い、14歳で実戦を踏まえた最新鋭のトリガーを手にした事は、ヒュースもといエリン家が騎士の階級に相当する身分であり、軍事をつかさどる『家』である事を表しているのだろう。
長子相続とミラの政略結婚
ここからは家督の相続に注目した封建制度の社会構造に注目して行きたい。中世ヨーロッパの封建的社会においては、家の権力や社会的地位を維持するために、所有する領地をできるだけ大きく保ち、それらを維持統合する事が求められていた。
その様に土地を単なる生活基盤ではなく、権力を保つ手段として考えたとき、その相続は分割されるべきでなく、一人の跡継ぎに集中して継がせるべきだという視点から、長子相続が行われる様になった。
そして中世の、特にフランス等の地域における長子相続では、長男が優先的に土地を受け継ぎ『当主』になる事が認められていた。
また、『家』同士の結び付きを強める目的で、当主の娘が別の当主の後継者と政略結婚をすることもあった。
つまり政略結婚を予定しているミラは、自家当主の縁者に相当する上流階級のご令嬢だと考えられるのだ。
そして第2章の考察に基づくと、エネドラとミラは幼少期から旧知の仲であると推測される。2人の馴れ初めが上流階級の社交界での親同士の関係に由来すると考えれば、その関係性は自然だと思える。
したがって、ミラがご令嬢であるならば、エネドラも同様に自家当主の縁者に相当する高貴な身分だと考えられるのだ。
エネドラの軍における身分
今回の考察ではガロプラ侵攻を7年前の出来事だと扱っている。 つまりエネドラは当時13歳であり、若くして遠征部隊に選ばれるエリート軍人だった事になる。
エネドラはヒュースを『外回りをする雑魚』と見下しており、7年以上に及ぶ軍人キャリアで雑務等?を経験せず今の地位に居る事になる。
この待遇は相当なものだ。当主の縁者は兵役に従事する際、上級職からスタートする様な制度がアフトクラトルにあるのだろうか?
ここで一度ガロプラ遠征時点でのハイレインの身分に注目してみようと思う。
ガロプラ遠征時のハイレインの序列は『1』であり、これはハイレインが当時22歳にして既にヴィザの上官として遠征を指揮する立場にあったことを意味している。
この事から、ハイレインは20歳を過ぎる頃には領主の座を既に引き継いでいたと考えられる。
長子相続が行われる文化圏おいて跡継ぎが家督を継ぐ条件は様々あるが、跡継ぎが成人を迎えた時に、当主が隠居(生前に当主を退く事)し家督を譲るパターンも当然存在する。
20歳になりトリオン器官の成長が打ち止めになった際は、前線に立つよりも祖国の運営(領主や当主)に回るのが近界の文化なのではないのだろうか?
ならば当主の縁者は自身が家督を継ぐその時のために、兵役時も上級職としての責任を持ち経験を積む構造になっているのかもしれない。
- 階層構造を持つ主従関係において、領主は『配下の配下』に対して直接命令できる様な関係性を持たない
- エネドラとミラはそれぞれ当主の縁者である可能性
- ハイレインは20歳(トリオン的成人)を機に領主になった可能性
遠征部隊の序列変化①:近衛部隊
ここまでアフトクラトルの封建制度を示唆する描写に注目し、アフトの文化や軍の制度に焦点を当てて考察を進めて来た。ここまでの考察を踏まえ、アフトクラトルの遠征部隊における序列の変化を一貫して説明できるモデルを提唱したい。
だがその仮説を提唱する前に、もう一つ参考にしたい序列のモデルがある。 それはボーダーの指揮系統についてだ。
ボーダーの指揮系統の序列整理
ボーダーの指揮系統において、本部指令は各支部長や直属の隊員に対して直接命令する事ができる。
一方、各支部の隊員は本部指令との間に各支部長が挟まる分、指揮系統が『遠い』。
つまり『本部指令』をトップに据える作戦行動においては、本部指令の命令を直接受ける『本部指令直属の隊員』の方が『各支部の隊員』よりも指揮系統において上位であると言えるだろう。
これらの指揮系統について、『本部指令』と『各支部長』に注目した序列を整理すると以下の様になるだろう。
【ボーダーの指揮系統】
①本部指令
②各支部長
③本部指令直属の隊員
④各支部の隊員
ボーダーを参考にしたアフト遠征部隊の序列整理
それではボーダーの序列をアフトクラトルに置き換えて話をしたい。
本部指令とは組織の長、つまり領主が該当する。同様にアフトクラトルにとっての各支部長とは、配下の当主が該当するだろう。
そして本部指令直属の隊員をアフトクラトル風に置き換えると、領主の勅命に従って行動する兵士、つまり領主直属の近衛部隊とでも言うべき部隊になる。そしてその部隊に所属する兵士とは、ヴィザとランバネインであると考えられる。
そして最後に各支部の隊員とは、配下当主に仕えるヒュースの様な兵士が該当するだろう。
これらを踏まえ、アフトクラトルにおける軍のルールを3つ提唱したい。
【ルール①】
序列は下記の優先順位で決まる
①領主(領主家の当主)
②配下の当主
③領主直属の近衛部隊
④配下当主の所属部隊
【ルール②】
当主の縁者が自家の所属部隊に入隊した時は上級職に就く。(上級職は外回り等の雑用を行わない。)
【ルール③】
次期当主は20歳を機に、相応しい立場に昇進する
このモデルをまずはガロプラ侵攻時に当てはめる。
当時ヴィザが序列『2』だったのは、恐らく兵士の中で最も位が高い領主所属の近衛部隊に所属していたからだ。 歴戦の猛者であるヴィザは、普段は領主所属兵を率いる隊長の立場だったのだろう。
そしてこのモデルであれば、その後の第二次大規模侵攻において『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』をそれぞれ説明することも可能だ。
ランバネインとエネドラに共通する変化。それは二人が成人を迎えた事だ。
つまりランバネインは近衛部隊の隊長に、エネドラは自家の当主にそれぞれ昇進した可能性が考えられるのだ。
エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由は、近衛部隊よりも序列上位の当主に昇進したからだろう。
また、ランバネインとヴィザの序列の逆転に関しては、ヴィザをたたき上げの一般職、ランバネインを将来の幹部候補たる総合職と考えれば分かりやすいと思う。
ランバネインはヴィザの部下として経験を積み、20を超える頃には隊長に昇進したという考えだ。
ハイレインが死亡した場合、次に当主の座を継ぐのは恐らく次男のランバネインだ。ハイレインの側近たる近衛部隊隊長としてランバネインを重用する事は、当主死亡のリスク分散の観点から非常に重要だろう。
ただし政略結婚する予定のミラにとって、成人後に家督を継ぎ当主になる事は状況的に考えにくい。
もしミラに兄弟や姉がいた場合、彼らが優先して家督を継ぐ事になるためミラが当主の座に就くことはない。 もしミラに妹がいる場合は、相続権の順位が低い妹が政略結婚の対象となる筈だ。よって恐らくミラに妹はいない。
したがって、ミラが政略結婚する予定があるという事実は、ミラが当主の地位に就くことがない事を意味している。
- 『ランバネインの序列がヴィザを上回った理由』は、ランバネインが成人を機に隊長になったから
- 『エネドラの序列がヴィザを遥かに上回った理由』は、エネドラが成人を機に当主になったから
遠征部隊の序列変化②:家柄ランク
ボーダーの指揮系統を参考にして、アフトの指揮系統に『領主直属の近衛部隊』というモデルを組み込むと、ヴィザ、ランバネイン、エネドラ廻りの序列の変化を説明する事が出来るようになった。
だが序列下位の『配下当主の所属部隊』に位置する兵士は、先程の枠組みでは差が生じないため、序列の仕組みを説明する事が出来ない。
具体的に言うと、ガロプラ遠征におけるエネドラ、ミラ、エリンの3人と、第二次大規模侵攻におけるヒュース、ミラの2人の事だ。
迷った時は基本に立ち返って考えるべきだ。指揮系統の大枠にボーダーのモデルを採用したなら、詳細の部分もボーダーの指揮系統を参考にしたい。
そもそも遠征部隊とは、異なる部隊出身の隊員を選抜して、一つの指揮系統の中で再編成している状態だ。つまり遠征部隊は実質混成部隊とも言えるだろう。
そして、混成部隊の指揮系統がどの様に構築されるかは、作中本編で既に描かれている。
このセリフはガロプラのトリオン兵団VSボーダーの地上戦において、地上で追撃する部隊の指揮系統が決定されるまでの中で、来馬さんから発せられたセリフだ。
普通だと混成部隊のリーダーはランク順か年齢順で決まるらしく、実際にVSトリオン兵団に対しては年齢順に従い指揮系統が組まれていた。
具体的に言うと、狙撃班Aでは木崎が、狙撃班Bでは当真が、地上追撃混成部隊では 諏訪が指揮を執っており、それぞれ最年長が指揮する形に収まっていた。
『混成部隊において指揮系統は年齢順又はランク順で決定する』、この考えに基づきアフトクラトルの序列を再検討したい。
これまでの検討を踏まえるとアフトクラトルの序列に年齢はほぼ関係しない、ならば注目するべきは『ランク順』だ。ここからはアフトクラトルにおける『ランク順』に相当する何かを考えて行きたい。そして現状分かっている情報の中で、『ランク順』に相当する物を説明できるとしたら、それはおそらく『家柄のランク』になるだろう。
①ガロプラ侵攻時:エネドラ>ミラの理由
この2人の家柄の序列に関してハッキリとした根拠を示す事は難しい。 だが強いて挙げるとすれば、ミラの政略結婚が関係しているかもしれない。
政略結婚とは家の結びつきを血縁によって強め、互いの家が繫栄する為にしばしば行われてきた。 そしてその目的の一つに自家の立場を向上させる事も含まれていた。
つまり領主家に嫁ぎ結びつきを強めようと画策するのは、ミラの家の家柄が相対的に低いから…とも考えられる。
②第二次大規模侵攻時:ヒュース>ミラの理由
ここで一度基本的な考えに立ち返って、ミラとヒュースの[指揮]のパラメーターに注目したい。
ミラの指揮は[5]、そしてヒュースの指揮は[6]。 たった1の差だがこの差はとても大きいと考えている。
ボーダーの正隊員(戦闘員)を参考にすると、指揮[5]と指揮[6]の間には、隊長か否かを隔てる絶妙な分水嶺が存在するっぽい雰囲気があるのだ。
[指揮] | アフト部隊 | 役職:隊長 | 役職:隊員 |
---|---|---|---|
[10] | ハイレイン | 東 | - |
[9] | - | 風間 | - |
[8] | ヴィザ | 嵐山 木崎 | - |
[7] | ランバネイン | 太刀川 二宮 | 迅 |
[6] | ヒュース | 加古 三輪 来馬 三雲 柿崎 吉里 |
木虎 古寺 烏丸 |
[5] | ミラ エネドラ |
冬島 弓場 香取 荒船 諏訪 那須 |
犬飼 辻 村上 空閑 照屋 |
指揮[5]の隊員は優秀な隊員であり、指揮[5]の隊長は指揮と戦闘の両立に負担があるという印象だ。 個人的な感覚だが、ミラは『指揮[5]の隊員』に当て嵌まる気がする。
対して指揮[6]の隊員は極めて頭脳明晰な隊員であり、指揮[6]の隊長は普通に指揮が上手い隊長という印象だ。 個人的な感覚だが、ヒュースは『指揮[6]の隊長』に当て嵌まる気がする。
ヒュースは修の作戦や指揮に対して、的確ではあるが厳しい態度で臨んできた。これはヒュースが祖国で積み重ねた隊長としての経験と、それに裏打ちされた確固たる実力とプライドに起因するものと解釈できるだろう。
つまりヒュースとミラの序列を決定している要素とは、『家柄ランク』そのものでは無く、ヒュースが隊長経験者だからと考えられる。
ボーダーの地上追撃混成部隊では、正式な指揮系統が決定するまでの間、指揮の整理は隊長たちだけで行われていた。これは混成部隊においても、隊長経験者が指揮系統で上位に位置し、その経験と能力が尊重される事を意味しているのだろう。
③ガロプラ侵攻時:エネドラ&ミラ>エリンの理由
最後にガロプラ侵攻時において、エリンの序列が最下位の『6』だった理由について考えて行きたい。カギとなるのはアフト国土におけるエリン家の位置だ。
1章で示したアフト国土の概略図を参照すると、ベルティストン家周囲に直属配下の家が4つ、 そこから郊外に少し離れた場所にエリン家がぽつんと存在している。
『家の場所が国土の中央から近いか遠いか』、この事はアフトクラトルの国家の事情を踏まえると致命的な条件になり得る。
アフトクラトルは神を厳選する事で広大な国土を維持しているが、その大きさは神になる生贄のトリオン能力に左右される。
もし先代の神よりもトリオン能力で劣る者が次世代の神になれば、星が小さくなり土地が失われ『今いる雑魚市民どもを飼う余裕がなくなる』。つまり王都から遠い地域に住む人間は、神の世代交代に伴い土地を失う可能性が高く、安全や財産が保障されない立場なのだ。
『進撃の巨人』における壁内人類の様に、家柄が良い『家』ほど王都近くの安全な土地に居を構え、その一方で身分の低い『家』はより郊外の土地を割り当てられる可能性が高くなるのではないか?
この事から、郊外に土地を持つエリン家の地位は直属配下の中でも相対的に低い可能性があり、それが遠征の序列に影響を及ぼしていたのかもしれない。
つまりエリン家は僻地で『家柄ランク』が低く、エネドラの家とミラの家が実は内地のため『家柄ランク』が高い…という状況が起こっているのかもしれない。現在の四大領主の家が位置する土地の範囲が、初代アフトクラトルの国土と一致していると仮定した場合、国土の中央に近い『家』ほど、古くからの由緒正しい家柄である……と考える事もできるかもしれない。
- 『家柄ランク』が存在する場合、その序列が『エネドラの家』>『ミラの家』>『エリン家』である可能性
- ヒュースはエリン家所属部隊の隊長である可能性
ここで話が逸れるが、封建制度を踏まえたアフトクラトルの今後の予想について少し語ろうと思う。
鎌倉時代の日本にも「御恩と奉公」という形で封建制度が存在したが、モンゴル帝国の2度の元寇を契機に政権は崩壊へと向かった。その戦いは外国からの侵攻を防ぐのみで新たな領地獲得がなく、家臣への報酬(土地)が不足し、信頼と忠誠心が失われた事が、その政権崩壊の一因だった。 【鎌倉幕府の滅亡の理由】わかりやすく解説!!原因や滅亡させた人物・滅亡後など | 日本史事典.com|受験生のための日本史ポータルサイト
この事は星の大きさが有限である惑星国家もいずれ直面する問題だ。 そのような条件下で封建制度的な政権を維持する手段は二つ
●他の惑星国家を侵略し『御恩』のための土地を新たに確保する事。●神を厳選し国土を徐々に広げる事
アフトクラトルは封建制度に似たその政権を維持するためか、神をねちねちと厳選し国土を徐々に広げてきた。
その国土の広さがトリオン能力という『一個人の身体機能の才能』に依存しているとしても、 時間をかければ必ず前回の神を凌ぐトリオンの才能を持つ者が現れる。
これは確立の問題だ。
生物の身体的特徴に基づく『才能の高さ』毎の出現確率は、おおよそ正規分布に従う事が多い。
数年に一人の逸材、数十年に一度の逸材、数百年に一度の逸材、そして数千年に一度の逸材。 どれだけ確率が低くとも、必ず前神のトリオン能力を凌ぐ逸材は見つかるのだ。
そして求める才能が出現する期待値が神の平均寿命を超えた時、国土の広がりは限界を迎え、アフトクラトルの政権は終焉に向かうのだろう。
4章まとめ
この章では、アフトクラトルの指揮系統のモデルとして『領主直属の近衛部隊』『家柄ランク』を採用し、2度の遠征における序列の変化を説明できそうな理屈を考えてみた。
それではここで7年前当時のハイレイン達の役職と、現在の役職を予想しそれぞれ纏めてみようと思う。
4章の考察の起点となった『アフトの家と配下を示した概略図』があったが、今回はあの図の構成要素がそのままの意味を持っている前提で話を進めている。
あの図には1領主あたり『3配下当主』×『4部隊』×『3人』=36人が描かれており、+αで近衛部隊が存在するならば、ベルティストン家には最低でも40人程の兵士が所属している事になる。
その規模の所帯がアフトには4つあり、それぞれ領土で覇権争いをしていて、そこにボーダーの遠征部隊が突入した場合…………
今後200人規模の戦いが描かれる事もあり得るだろう。
考察記事総括
『アフトクラトルの国旗』『トリガー角』『アフトクラトルの黒トリガー』『アフトクラトルの指揮系統』
今回の考察記事ではこれらに注目し、様々な事柄について好き放題に仮説等を展開してきた。そしてそれらの中には、本編にたった一度しか出て来なかった『後頭部の人物』の詳細なプロフィールを絞り込むための要素がいくつか存在する。
今回の考察記事ではその後頭部の人物を『当主エリン』だと扱ってきた。それではこれまで考察した内容を基にその詳細なプロフィールを推察したい。
①年齢
まずは年齢からだ。2章の『トリガー角』に注目した考察の中で、『角のデザインには側頭部系統と額系統が存在し、それぞれリリースされた時期に差がある』という話を持ち出した。
エリンの角は側頭部に2本、すなわちランバネインとは異なる角だ。 そのため、ランバネインの年齢24歳よりも年上では?と言う事ができる。 (エリン≧25歳)次に4章で考察したアフトクラトルの序列の変化についてだ。4章の考察結果を元にすると、エリンは『7年前』のガロプラ遠征時点で当主では無かった事になる。この事について、『20歳を機に当主になる』条件と合わせて考えると、エリンは7年前時点で未成年かつ、現在成人済みという事になる。(27歳>エリン≧20歳)
これら2つの要素を併せると、エリンの現在の年齢は25歳~26歳という事になる。
②性別・身長
次に性別と身長だ。2章考察では、『角のデザインの内、角輪の有無は性別と対応しているのでは?』という話を持ち出したが、その事を参考にすると、エリンは女性という事になる。
そして身長に関してはミラの身長から割り出すことができる。 今回の考察では、ガロプラ遠征を7年前の事だと扱っているため、当時のミラの年齢は16歳という事になる。
ここで今回参考にするのが、日本人の身長の偏差値を年齢毎・性別毎に統計から割り出してくれるこのサイトだ。 身長偏差値チェッカー(2023年10月に使用)
ここにBBFミラの23歳・162㎝を入力すると、ミラの身長偏差値は57.0だった。これを7年前当時に当てはめると…16歳女性における身長偏差値57.0に当て嵌まるのは、161.3cmだった。
すなわち、当時ミラと同じくらいの身長だったエリンも161.3cmだった事になる。7年前当時のエリンの年齢を18歳と仮定すると、18歳・161.3㎝・女性に該当する身長偏差値は56.6、そして25歳・女性・偏差値56.6に該当する身長は162cmだった。
なんだか回り道をしてしまったが、結局は現在のミラと現在のエリンの身長は同じくらいという事だろう。
③身分・家族
4章の考察において、アフトの『家』で当主になる条件は、婚姻では無く年齢だと結論付けた。つまりエリン家当主は現時点で独身の可能性も大いにあり得る。
また、エリンの現在年齢を25歳~26歳だとした場合、作中ネームドキャラで比較すると、その年齢で結婚しお子さんが居た事が確定するキャラは香澄さんとライモンドのたった二人だけだ。
つまりエリン家には現在、血縁関係に基づく次期当主が不在の可能性が高い事になる。
つまり何が言いたいかと言うと……
もしその様な状態でエリンが『神』となり、エリン家当主が不在になった場合、次期当主の候補筆頭はおそらくヒュースなのだ。
『ヒュースのやつが拾われた「エリン家」はお人好しで有名だから 兵隊ってよりか家族みたいに育てられたんだろうよ』
エリンとヒュースの関係を表した『家族』。この言葉が単なる比喩でなく『養子』として迎え入れられたことを表しているならば、適当な跡継ぎが居ないエリン家で、次に当主を継ぐ権利があるのはヒュースだ。
もしヒュースをアフトに連れ帰った状態でエリンを生贄に強行すれば、『次期エリン家当主:ヒュース』との間に大きな禍根を残すことになる。
ヒュースは若くして『角付きで過去最高の逸材』と呼ばれるほどの優秀な兵士だ。『家族』を失った禍根は癒える事なく残り続け、直属配下の中で最も強大な戦力の一角を敵に回すことになる。
ボーダーで例えるなら、鬼怒田さん、根付さん、唐沢さんの三人の内、誰か一人が城戸司令の敵に回るようなものだろう。
エネドラを殺害しヒュースを捨て、配下で最も強大なトリオンを持つエリンすらも生贄に捧げてまで、アフトクラトルの実権を得ようとするハイレイン。その真意とは一体なんなのだろうか?
あとがき
ここまで読んでいただきありがとうございました。
今回の記事はアフトの国旗だけに注目してあっさり終わらせるつもりだったのですが、記事の着地点を見定めている内にどんどん書きたい事が増えてしまい、結局いつも以上のボリュームになってしまいました。
文章が長くなりすぎて、途中自分でも何を言っているのか訳が分からなくなりかけましたが、フォロワーさんに意見をいただき何とか完成させることができました。 記事の校正にご協力してくださったあきしまzさん、本当にお世話になりました…!
本当はまだ書きたい項目が8個ぐらいあったのですが、全4章の本筋と絡めづらい内容だったので、記事のボリュームを抑えるために泣く泣く削除しました。またどこかのタイミングで発信出来たらいいなと思っています。
今回の考察では好き放題に仮説を提唱していましたが、あくまで一個人の解釈であり、少し視点を変えただけで全く異なる解釈が生まれる事があります。
例えば1章の考察で『サイ科』の角を引き合いに出し、エネドラッドのイメージ中の人物を王族関係者に仕立て上げましたが、あの角を『麒麟の角』だと考えるとどうなるでしょうか?
『ベルティストン家=空想上の生物』という仮説に乗っけると、現在政権を握っているのはベルティストン家である事になり、今回の考察記事で取り上げたいくつかの前提や結論が大きく変わります。
ですが今回の記事では『サイ科』という解釈にした方が、続く王族の話題に切り替えやすく、3章の『卵の冠』周りの話題にも繋げやすかったので、『麒麟の角』の可能性を敢えて無視して論点を絞りました。
他にも総括で語った時期当主ヒュースの件ですが、厳密に言うと現実の中世ヨーロッパの封建制時代には養子縁組の制度がそもそもなく、当主の死亡かつ跡継ぎ不在の際は、血縁に基づき傍系縁者から次期当主を選んでいたようです。
ですが、あくまで現実の制度は時代の雰囲気作りのための参考であって、なんでもかんでも厳密に再現されてる必要は無いな?と思い、面白そうな結論に着地できそうだったので、養子の話をアリにして総括の結論にしました。
この様に自分が面白いと思った論点に誘導する為に、恣意的に伏せている重要な視点がいくつもあります。結びつける情報の取捨選択や、その解釈次第で全く別の結論が導かれるかもしれません。
そのため、今回の記事についても、単にそれっぽく仕上げた一個人の解釈以上の意味は持っていないと思います。
ですが、まだ確定していない情報だからこそ、好き放題に書き連ねることができる『それっぽさ』を楽しんでもらえたなら幸いです。
それでは最後に、考察の結果を載せて今回の記事を締めくくろうと思います。 改めまして、今回の記事を読んでいただきありがとうございました。
*1:角輪は現実世界においてはウシ科の洞角に見られる特徴で、加齢に伴いその数は増えていく。そのため、ヒュースの角だけ角輪が少ない理由として、『ヒュースが若いから』という可能性も考えられる。しかし18巻P173のヒュースの回想を見ると、当時8歳のヒュースの角と現在の角輪に変化が無いため、加齢に伴う角輪の増減は可能性から除外される。やはり角輪の少なさはヒュース世代のデザインコンセプトなのだろう。
*2:玄界のトリガーの厄介な所として、『ベイルアウトがあるせいで倒しても殺せず生きたまま情報を持ち替えられる事』、『遠距離通信で瞬く間に情報が拡散されてしまう事』の2つが挙げられる。だが米屋を取り逃がしている以上、ハイレイン視点ではベイルアウトの有無に関わらず『卵の冠』の情報が持ち帰られる事が確定している。そのため、敵に情報を持ち帰られる事自体は厄介の本質ではなく、リアルタイムに修に情報を伝えた『通信機能』を指して厄介だと考えた事になるだろう。
*3:歴史の古い先進地域がインフラ関係で後れを取るのはままある事だ。 なまじ先んじて発展したばかりにインフラに取り入れた技術が時代遅れになった時、改修に掛かる膨大なコストに二の足を踏んでしまう一方で、その時期にゼロからインフラを整備した後進地域は当時の最新技術を取り入れることが容易だ。 その結果、後に発展した地域の方がインフラの機能が良いという逆転現象が生じる。 例えばアフリカの一部地域では、固定回線普及のスキームを飛び越えて、一足跳びにモバイル通信が通信インフラとして整備されている事例もある。
*4:【control】が用いられたのは2回。一回目は英語版P122の『アリステラ王家が亡命した姿 だから母トリガーを動かす(control)ことができると』。
二回目は英語版P126の支部長の『そこから生まれるトリオンをコンピューター……えーとつまり機械で調整(control)して「ボーダー」はあれこれやってるわけだ』。
厳密に言うと、二回目の【control】の動作の主体は『王族』で無く『コンピューター』だが、ラタリコフはこの発言を聞いて『王女=神』と誤認した。つまりラタリコフは、本来王族が行うべき【control】の役割を『コンピューター』なる物で代替していると解釈し、王女が神になったと誤認したのだろう。よって、後者のcontrolも『王族』に対して用いる訳語である事が分かる。
【operate】が用いられたのも二回。二回とも英語版P126で【operate】が用いられている。どちらも動作の主体は『瑠花』だが、『動かす(operate)』と表現した結果、ラタリコフに『王女=神』という誤認が生じているので、【operate】とは本来神が操作する時の『動かす』を表している事になるだろう。
また他にも、P126で【opetate】が『規模(operation)が小さすぎるように思えますが……』の様に規模の訳語として用いられている。普通『規模』という単語に【operation】が訳語として当てられる事は無い、つまりこの【operation】は意訳的に用いられている。この【operation】を【作用、稼働】という意味で捉えるなら、先程の訳は『母トリガーの稼働が小さすぎる様に見えますが……』と意訳する事が可能になる。つまり【operation】とは母トリガーを神が操作(operate)する事によってもたらされるトリオン出力の事を指しているのでは無いか?………という連想から、【operate】が指す事柄は、【母トリガーを操作してトリオンを出力させる事】と言う解釈を今回の考察では行った。